続「今国会に提出される種苗法改正を止めるために!」種苗法の核心部分と地元議員に訴える時のポイント

 1/23「種苗法改正を止めるためには」と題した記事に、フットワークの軽いしんしん丸氏が即応され、1/28「地元の与党議員に連絡してみました」という大変参考になる記事を上げてくださいました。
しんしん丸氏ならではのレポートですが、さていざ自分が電話の前に立つと、見知らぬ議員事務所に向かって何をどう言うべきか、あれこれ準備しておきたくなります。ただ単に「不安な有権者の感想」に終わらない効果的なメッセージをしたいと欲が出てしまいます。
今回の改正で一番気になるのが「原則としてすべての登録品種で、育成者の許可を得ることなくタネを採ったり、わき芽挿しをすることが禁じられる」点ですが、条文のみを見ていると問題点が見えにくいのも事実です。
 すると、まさにその姿を見越しておられたかのような投稿が届きました。
仮に自家採種禁止反対に耳を傾けてくれる与党議員さんがいてくれたとして、農水省からこの説明を聞かされてあっさり納得されては困りますので、」と、与党議員さんが官僚に丸め込まれないためにしっかり伝えるべき要点を記しておられます。ありがたし。
 この投稿をご覧になったしんしん丸氏の「相づちコメント」も併せて掲載しました。
貴重な参考意見をありがとうございました。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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種苗法改正について政府の説明とその問題点
なぜ自家採種が制限されるのか

 種苗法改正について少し勉強してみたのですが、政府は、今回の改正による自家増殖(自家採種は自家増殖の一形態)に対する許諾制の全面導入について、

①育成権を有する人や団体が増殖状況を把握して、海外流出を防げるようにするために必要
許諾性の対象は登録品種のみで、一般品種は従来通り。(今回投稿した「メダカのがっこう」の記事によると、登録品種は全体の5パーセントほどとのこと。)
③許諾制が適用される場合も農家の負担にならないよう留意する。
と説明するようです。
[参考]日本農業新聞「新品種流出で刑事罰 通常国会で法改正へ 農水省検討会」(19/11/16)

 仮に自家採種禁止反対に耳を傾けてくれる与党議員さんがいてくれたとして、農水省からこの説明を聞かされてあっさり納得されては困りますので、陳情される場合は、農水省の説明にどういう問題点があるか踏まえた上での方がよいと思います。

 ①の問題点については、しんしん丸さんの過去の複数の投稿にもありましたね。海外流出を防ぎたいならそれを直接禁止することではなぜ足らないのか私には分かりません。また、海外流出を防ぐことと、全面的に自家増殖の許諾制を導入することとに距離がありすぎて、説明になっていないと思います。

匿名読者さんの言われるように、①の海外流出を防ぐために自家増殖禁止するということのおかしさですよね。なので、目的はおそらく自家増殖禁止だろうと推測されるわけです。(しんしん丸)





 一方、②については、私が探した限り、政府に反論した記事はあまりないようで、ここに関連する部分を読んでいただきたくて今回メダカの学校の記事「自家増殖原則禁止とは(種苗法改正が次の国会で通ってしまうと大変です)」を投稿しました。

また、GrowRicci「種苗法で自家採種はどう変わる?」(19/9/24)の「小規模農家に影響が」「今まで栽培できていた農作物が栽培できなくなる?!」の段落も②に関連すると思います。

さらに、1月28日のしんしん丸さんの投稿記事で引用された山田正彦さんの記事ですが、しんしん丸さんが引用されなかった部分に②を念頭に置いていると思える部分があり、私はその部分も重要と思います。

 その他、「登録品種のみの自家増殖の禁止であってもこんなに困る。」という例がたくさん出てくれば議員にも分かりやすいと思いますし、仮に法改正を阻止できなかった場合でも③を充実させて弊害を少しでも減らすことができるのではないかと思います。
どこかにそういうことを詳しく書かれている農家さんでもいないでしょうか。

②の登録品種は、たしかにたったの5%ですが、山田正彦氏の記事にあるように(先の記事では、話が複雑になるので省略してしまいましたが)サトウキビなどは登録品種なので、農家にとっては大打撃となるわけですよね。
海外流出を禁止するためなのに、なんでこちらにとばっちりがくるんだ!といったところでしょう。他に安納芋も実は登録品種なので影響はかなり大きいとおもわれます。
具体的な情報は、山田正彦氏や稲葉光圀氏の情報しか私も知りませんが、種苗法に関する緊急院内集会などでは、熱く語る農業者の方々がたくさんおられました。(しんしん丸)

 

 これを見ると、農水省の本音は、海外流出の防止ではなく、従来からやってきた育成権の強化であり、やはり、その背後にはアグリビジネスがあるのだろうなと思います。
農林水産省 食料産業局
農業者の自家増殖に育成者権を及ぼす 植物種類の追加について

[編集部より]
匿名読者さんの指摘は、おそらくこの資料の最初にあるサマリーの部分だと思われます。
・種苗法上は、農業者は一定の要件の下に自家増殖が認められているが、植物の新品種に関する国際条約(UPOV条約)上は、農業者の自家増殖は原則禁止されており、EU等の主要先進国の制度とも乖離している状況にある。

・ このため、自家増殖については、植物の種類ごとの実態を十分に勘案した上で、生産現場に影響のないものから順次指定していくこととする。

つまり、種苗法では国際的な要請に間に合わないので、順次、指定品種を増やしていくぞ、と。


政府は「許諾性が適応されても農家の負担にならないように留意する」とあいまいな表現をしていますが、もし端から目的が自家増殖禁止であるとしたら、やはりこれはかなり危険な改正案となるわけです。今はたった5%の登録品種ですが、例えばグローバル企業が、ある固定種にちょっとした遺伝子操作なりゲノム編集をして登録したとしたら、その品種の登録区分はどうなるのか?とか。
さらに、種は登録していようがしてまいが、交雑していきます。そして純粋な固定種の存続は次第にできなくなるかと思われます。海外では、モンサントが交雑を理由に多くの農家に対して訴訟をおこしています。そういった問題が海外ではすでに起きているのです。

そもそもUPOV条約自体が、グローバリズムを正当化するためのものとなっています。国際条約というと聞こえはいいですが、実態は、食の支配です。命である種子に知的所有権(特許)を認めるとは、支配欲の極まりをここにみるかのようです。

種苗法改正(自家増殖禁止)による問題点を洗い出してみました。

・グローバル企業による種の独占、支配
 →食の主権、自立の危機
 →国家の危機
 →そもそも種子という命に知的所有権(特許)を適応し、金儲けをすることのおかしさ
 →食(種子)で人を支配するという暴挙
 →命は法(金)の上にある

・農家の経済負担の増大

・土地土地にあった固定種の存続危機
 →交雑するし、蒔かれなければ消える。

・種子の多様性が失われる
 →環境への悪影響

・種子購入で蔓延する、遺伝子組み換え作物による危険
 →人体の健康への影響(腸内細菌の破壊)、土壌の破壊

※そもそも、種苗法改正の本来の目的である「種子や苗の海外流出を防ぐ」件に関しては、現行の種苗法21条で禁止されていると解釈できる(Net IB News)とのことです。つまり、種苗法改正の必要はまったくないということになります。

だからこそ、この種苗法改正の本当の目的は、自家増殖禁止だろうと推測されるわけです。経済的植民地政策を合法的に完成させるために。

 おっと、大事な話を忘れるところでした。
本題の「仮に自家採種禁止反対に耳を傾けてくれる与党議員さんがいてくれたとして、農水省からこの説明を聞かされてあっさり納得されては困ります」については、投稿者さんのおっしゃるように、やはり問題点を認識したうえで、自家採取禁止に反対のおもいをお伝えすることが大切かとおもいます。
たとえ、「登録品種のみの自家増殖の禁止であってもこんなに困る。」と詳しく書かれている農家さんがほとんどいないとしても。

皆様の健闘を祈ります!私も、確認の電話をします。
(しんしん丸)


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