「世界大学ランキングで東大は36位」というニュースからの考察 〜 日本の研究力の低下は投資を惜しむ「選択と集中」政策が原因

 ノーベル賞を受賞した山中伸弥先生が研究費の寄付を募らなければならず、あげく厚労省から恫喝まで受ける国ですから、いわんや大学の研究が大変な状況なのは推して知るべし。
世界大学ランキングで東京大学が36位に落ち、中国の多くの大学の後塵を拝すというニュースが出ました。これについて上海に住む日本人研究者、服部素之氏が書かれた興味深い記事がありました。このニュースではタイトルに「中国 清華大学がアジアトップ」とあるように中国勢の躍進が要旨でしたが、服部氏は中国の大学が伸びている話とは関係なく「日本の多くの大学の世界ランキングがここ10年ほど大きく低下している」ことこそ深刻だと書かれていました。これはかなりショックです。この大幅な順位低下の理由はすなわち「研究力の低下」で、他国の大学の伸びとは無関係に、唯一日本だけが科学技術論文の量、質ともに停滞し「一人負け」の状況だそうです。そして研究力低下の原因として指摘されたのが「研究費配分における選択と集中政策、そして国立大学の法人化」でした。「今後期待される研究分野に重点的に研究費を投資する」というギャンブルのような政策ですが、「何の分野が当たるか」事前にわかれば苦労はない。研究は広い裾野が重要だと書かれていますがシロウトにも納得できます。研究対象は絞られ、法人化で交付金は削減され、研究時間も奪われ、結局この政策自体が「ハズレ馬券だった」と言い切れるのは、服部氏が中国での研究生活を知っておられるからでした。「研究の裾野を広げるための地道な方策」とは「大学院生への経済支援」つまり、給料支給や授業料の無料化、格安学生寮の提供など研究生活に安心して取り組める環境ですと、なるほど納得です。高額機器は国が支援するという一見当たり前の政策が日本にはないことも知りませんでした。まさか自助がこんなところにまで及んでいたのか、、。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

————————————————————————
配信元)
————————————————————————
東大が中国勢より下位に…上海の研究者が見た、大学ランキング・日本「一人負け」の原因 中国の参考にできるところは参考に
引用元)
(前略)
(中略)「研究力」が重視される世界大学ランキングにおいて日本の大学の順位が低下するのも自然だと思われる。では、研究力低下の原因は何か? その大きな要因として大学教員らからよく指摘されるのが、研究費配分における「選択と集中」政策と「国立大学の法人化」だ

「選択と集中」政策は、大まかにいえば「今後重要であることが期待される研究分野および当該分野の主要研究者に対して重点的に研究費を投資する」といった政策だ。この手法でうまくいく分野もあるのかもしれないが、少なくとも大学における基礎研究に対して全面的に導入するにはかなりそぐわない手法であると思われる。

「何が当たるか」事前に予測することは極めて困難

 理由は簡単で「基礎研究分野において何が当たりかどうか事前に予測することが極めて困難」だからだ。また、個々の研究者に過度に研究費を集中させることは、投資した研究費に比例した成果へと必ずしもつながらないということは各種統計で示されている

 よって、基礎研究分野の場合、重要なのは「選択と集中」ではなく、むしろ研究分野、研究人口、その両方における「裾野の広さ」だと私は考えている。

 しかしながら、内閣府による「科学技術基本計画」をはじめとしてかなりの長期間にわたって日本の科学技術政策において「選択と集中」が重視されてきた。察するに、経済が停滞し、科学技術予算も伸び悩む中、少しでも予算配分の効率化を図ったのかもしれないが、結果的にはそれが大きく裏目に出たと言わざるをえない
(以下略)

Comments are closed.