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子どもの自殺が一番多い日
新学期が始まりました。子どもの自殺が一番多い日です。
特に今年は、若者のコロナ感染者が増えて緊急事態宣言も出された中での学校再開です。
新学期が始まるにあたって、文科省もコロナ感染症関連のガイドラインを発表しました。市町村の教育委員会も学校の感染症対策のマニュアルを作り、保護者に配りました。
でも、今回も当事者の子どもや親の意見を一度も求めることなく、説明もなしです。我が子に関わる事なので親の不安は膨らむばかりです。
子ども達も、そんな親の反応をみて心中穏やかではありません。どこにも行けなかった夏休み。学校生活も制限ばかり。不消化の気分を抱えたまま不安の気持ちでいっぱいです。
小児科の外来でも、学校に行きたくないと訴える子、朝起きられない子の相談が増えています。残念ながら、その子たちの生活を聞くと、ほとんどがスマホやゲーム漬けです。
特に、コロナ禍で外での活動が無くなり、友達とも会えないから家の中でゲーム漬けになってしまった子が増えました。
乳幼児を持った家庭も深刻です。コロナ禍でどこにも行けず、テレビやスマホなしの子育ては考えられないというママが増えました。そんなママに「スマホは子どもの成長に悪影響を与えますよ」と言うだけでは追い詰めてしまいます。
子育て広場など、ママ達が安心して交流できる環境を作ってあげた上で、電子メディア漬けの情報を与えたいのですが、今は叶いません。
学校での新学期のコロナ感染予防対策
さて、学校から新学期のコロナ感染予防対策として「検温、不織布のマスク着用、こまめな手指消毒、友達と密にならない、おしゃべりをしない、午前中だけ授業を受けて、黙食で給食を食べた後に帰宅する」を徹底する、と示されました。
帰宅時間は2時ごろになります。炎天下に大きなランドセルを背負い、マスクをして下を向いて歩いている子ども達を見かけますが、汗びっしょりです。
中学生も午前中授業、給食後の帰宅ですが、中体連があるので部活はあるそうです。そして、夏休みの宿題の未提出者は居残り。課題テスト、期末テストは予定通りありますが、運動会や修学旅行、宿泊訓練などのお楽しみは中止です。
帰宅後の過ごし方も、外出しない、友達と遊ばないという決まりです。子ども達の士気が上がりません。
ママ達に聞くと「学校には行くのに、午後の2時間をカットする意味が分からない」「働いているので急に帰宅時間を変更されたら困る。もっと早く説明が欲しかった」「コロナが始まってから、あれだけ時間があったのに、学校はオンライン授業などの対策や準備を何もしていない」「学校に行かせたくない親、行きたくない子どもも一定数いるのに、その対策が何も取られていない」等、モヤモヤが募ります。
「市内の小中学校や保育園でも感染者が出て臨時休校になっているのを聞くが、正確な情報が何もない」「学校を休ませる判断基準がわからない」「すべてがプリント一枚で済まされる」「コロナ禍で他の保護者と会う機会もなく、この不安を共有する人がいない」と、次から次に噴き出しました。
あるママは子どもを学校に行かせるのが不安で、担任の先生に電話をしたそうです。でも、先生は「感染対策はきちんとします。休校している間に授業が進んでいきますよ」と言われただけ。他の選択肢はないし、抱えている不安を話そうとしてもシャッターを下ろされた感じだったそうです。
実際に学校を休んでいる子も増えているようです。GIGAスクール構想は、学校に行けない子のためにリモート学習の機会を作ると言っているのに、親には動きが見えません。
「子ども達は、どこにも遊びに行けないので、いつもの夏休みの宿題よりつらく感じました」「夏休みの思い出の作文や絵を描く宿題が出ても、どこにもいっていないし・・・」と持って行き場のない不満が募ります。
我が家の2年生の孫も、家の中にいるばかりで、自由研究をどうしたらいいのか行き詰まっていました。
ちょうどNHKの地球ドラマチック「赤ちゃんラボにようこそ!~ヒトの始まりを科学する~」という番組を録画していたので、それを見せたら7ヶ月の妹に試したくなりました。やる気のスイッチが入ったのです。
https://ouchi-iku.com/chikyu-dramatic-akachanlabo/
これおもしろかったー
— ALPOKKO (@_alpokko_) March 14, 2021
赤ちゃんもみんなかわいー
「“赤ちゃんラボ”にようこそ!〜ヒトの始まりを科学する〜」 - 地球ドラマチック - NHK https://t.co/DwsgbIcqHv
繰り返し番組を見て、自分なりに工夫して実験道具を作りました。赤ちゃんに善悪の判断ができるか?の実験では、困った赤丸●ちゃんを助けてあげる優しい黄色三角▲ちゃんと意地悪をする青四角■ちゃんの劇を見せた後に、赤ちゃんが優しい▲ちゃんと意地悪な■ちゃんのどちらを選ぶかを試します。テレビではみんな優しい▲ちゃんを選びました。
さて、7ヶ月の妹にその違いが判るのでしょうか?妹は真剣に劇を見ています。そして迷わず優しい▲ちゃんを選びました。嬉しくなったお姉ちゃんは「赤ちゃんってすごい!」と感動しながら、次にレモンとオレンジを食べさせてどちらを選ぶかを実験をしました。妹はおいしいオレンジを何度も選びました。
その様子を写真に撮り、スケッチブックに貼って、実験の説明と考察も書きました。NHKの番組を見て実験したという事も明記しました。
次回は妹が1歳過ぎてから、鏡に映った自分を認識できるか?自分と他人の好みの違いを理解できるか?困っている人を助けられるか?などの実験をしたいと意気込んでいました。2年生のお姉ちゃんにとって、妹を通して赤ちゃんの発達のすばらしさを知る、いい機会でした。
学校が始まるのを嫌がっていたお姉ちゃんでしたが、自由研究には満足していたので頑張って登校しました。でも、それを見た先生からのコメントは「この研究は他人の顔が映っているからコンクールに出せません」と書いてあるだけでした。
コンクールに出すつもりで書いたものではありません。大きなスケッチブックに被験者の妹の写真を貼っていただけです。でも、お姉ちゃんはショックを受けて、やる気ゼロになって帰ってきました。
先生の一言で、こんなに傷つくのです。私なら「よく頑張ったね。赤ちゃんの能力って凄いね。せっかくだから夏休みの課題コンクールに出したいけど、発表する時のルールがあるのよ。まず、人の写真はその人がOKした写真しか使えない。そして、特にネットの世界では、その写真を悪い事に利用されることがあるから顔が映らない方法で発表した方がいいね。やってみようか?」と伝えると思います。
これはGIGAスクール構想でも求められる、プレゼンテーションをする時のマナーです。でも、お姉ちゃんが見たテレビはたくさんの子ども達が映っています。それを見たら何も疑わずに顔写真を載せるでしょう。
今こそ、子どもが実感しにくい肖像権侵害の話をするいい機会です。そして、どうすれば解決できるかを導くのが教育です。
子どもの現状を無視して始まる学校でのICT授業
教育は生き物。子ども達も一人ひとり個性が違います。カリキュラムに沿って教科書通りに教えても子どもが自分ごととして受け取らなければ学びになりません。だから、目の前の子どもに、現場でどう教えるか?が問われるのです。
デジタル機器を使う前に、先生は、一人ひとり違う、生身の子どもが発している無言の表現に敏感でなければいけません。そのためにはマニュアルに囚われるのではなく、子どもを見なければわかりません。
今後、デジタル機器を使いこなしながら架空の世界の情報を子ども自身の世界につなげる教育ができるかなあ~。あの先生に教えられるのかなあ~。不安です。
そうでなくても、ICT教育は視覚情報が多すぎるがゆえに、自分で深く考える事ができなくなるそうです。私達は与えられた情報をノートに取るなり、手間をかけて調べたり、自分で体験する事で脳の海馬に短期記憶として残し、寝ている間に大脳皮質に固定化して記憶させるそうです。
2015年の国際学習到達度調査(29か国)では、学校でコンピューターの使用が長くなるほど、読解力や数学のテストが下がるという結果が示されました。その理由は、深い思考をはぐくむ教師や生徒間の対話が減った事と、従来の授業スタイルのままコンピューターを導入する事の限界ではないかと言われています。
又、〇×で答えを入力すると正解なら次のステップに行くという、ゲーム感覚で学べるソフトが低学年の子どもに人気です。学校で使われるデジタル教材ですが、報酬型の学びなので、子ども達はあまり考えもせずにどちらかを選んでいきます。
これは物事を、〇か×の2元論で捉えるように誘導しているのではないでしょうか。子どもは刺激に反応しているだけで、短期記憶しか残らないのではないかと思います。
このやり方になれてしまうと、言葉の意味が分からなくても読み飛ばして答える習慣がついてしまいます。今、中高生の読解力が危機的な状況であることは「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」新井紀子著(東洋経済)に詳しく書いてあります。
目への影響も心配です。視力の低下も顕著に現れていますが、睡眠の質に悪影響を与える事もわかっています。
スクリーンの光はブルーライトで、見ている者に昼だと勘違いさせてしまいます。それで交感神経優位になって不眠症になるのです。特に成長期の子どもは睡眠中に成長ホルモンが出ます。長期記憶の固定化も睡眠中に行われます。子ども達には良質の睡眠を保障しなければいけません。
宿題でタブレットを使用する場合、端末使用の時間制限が必要になってきます。現状は小学生22時、中学生23時となっています。でも、スイッチをOFFにしてもしばらくは興奮状態で、眠たくなるのに1時間かかります。ベッドに入っても寝付けないから又スマホを見るという悪循環に落ち込みます。
今は学校の授業だけを切り取ってデジタル機器の使い方を決めようとしています。でも、子どもは生活者です。家庭と連携をとりながら、総使用時間を決めるべきです。
近隣の中学校で160名の生徒を対象に家庭でのスクリーンタイムの調査がありました。ゲームを1時間半以上する子に起立性調節障害の発症率が高くなるという結果が出ました。
その子達は朝起きられないので学校に行けません。低血圧の子、低体温の子も増えています。午後になったら活動できるので、昼夜逆転する生活になり、ますますネット漬けになってしまいます。
そのような子どもの現状を無視して始まるGIGAスクール構想。本格的導入の前に子どもの健やかな成長への視点を第一に考えて欲しいと切に願います。
特に、乳幼児期からのデジタル機器の利用は、子どもの成長に悪影響を与えます。この情報を夫婦で出席するマタニティ講座の時や乳児健診の時に伝えておく必要を感じます。
https://point-g.rakuten.co.jp/educare/articles/2021/kids_sp_brain/
「スマホ脳」アンデシュ・ハンセン著 新潮新書
「デジタルで変わる子どもたち」バトラー後藤裕子著 ちくま新書
がお勧めです。
(追記)
孫の自由研究は、その後、理科の先生が凄い!と認めてくださったから、又やる気が出ました。
でも、そんな思惑は誰も気が付かないまま、学校現場はデジタル機器の整備に追われています。追い打ちをかけるように、若者や子ども達への新型コロナ感染が広がっています。
感染に対する親の不安も高まり、子どもの生活にも影響を与えています。
授業のオンライン化にも拍車がかかって行く事でしょう。
今回は、親の気持ち、子どもの現状を含めてGIGAスクール構想の事を考えていきたいと思います。