ままぴよ日記 78 「GIGAスクール構想って知ってる?」

 夏休みです。海や山で思いっきり遊ばせたいのですが、外は体温より高い37度の世界。熱中症アラームが鳴っています。

 その上、コロナ感染者が拡大して緊急事態宣言が出されました。

 県や市の施設は全てクローズ。公園の遊具も使えません。ママ達が自主的に公園や市の施設で遊ぶ子育てサークルを立ち上げましたが、市からストップがかかりました。

 と、書いていたら今度は大雨。4日間で8月の平均雨量の4倍もの雨が降り続き、各地で災害が広がっています。今後も線状降水帯が居座り続け、トリプルパンチです。

 そんな中、子ども達が、ずっと家に籠っています。人類史上、経験したことのない光景です。エネルギーを持て余した子ども達が家の中でどんな状態になっているか、一般の大人に想像できるでしょうか?

 今回は、そんな子どもの現状と、それを無視する形で始まったGIGAスクール構想について書きたいと思います。
(かんなまま)
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4度目の緊急事態宣言が出されました


夏休みです。新型コロナ感染予防のために去年からラジオ体操や学校のプール開放はありません。里帰りも、旅行も我慢です。


その上、4度目の緊急事態宣言が出されました。保育園や学童に通っていない子ども達は、全ての施設がクローズなので家に籠るしかありません。友達と群れて遊ぶのは夢のまた夢。

だらだらしていたら「早く宿題を済ませなさい!!」と怒られます。エネルギーを持て余して走ったり、声をあげると「静かにしなさい!」「近所迷惑!」と怒られます。「面白くなーい!」を連呼していたら親もついスマホやゲーム機を与えてしまいます。しばらく静かになるので親はホッとします。でも、その面白さに引き込まれてゲーム、動画、SNSが止められなくなってしまい、また怒られます。

仕事で親がいない家庭は、ゲームし放題です。親は「仕方ない」と、あきらめています。

大人社会の都合で小さいころから電子メディア機器を与えられた子ども達。友達とも遊べず、家に閉じ込められている子ども達をゲームや動画の世界から遠ざけるには相当の覚悟が要ります。



我が家の孫達は絶滅危惧種で、ゲームをしません。中学生の孫にはフィルタリングをかけたスマホ、5年生の孫には連絡を取るためにキッズケータイを持たせていますが、遊びで使う気はなさそうです。

兄弟が揃ったらごっこ遊びが始まり、家中が想像の世界の舞台になります。孫が帰った後に、棚の中から「次のターゲットは玄関」など書かれた小さなメモが出てきます。押し入れの中も荒らされます。でも、そのメモに胸がキュンとなります。

そんな孫がお嫁ちゃんの実家のベランダでプール遊びをしていたら、隣の住人から「子どもの声がうるさい」と言う苦情と共に警察に通報されました。

怖い顔の隣人と警察が来たので孫はショックです。「なぜ、家で遊んでいるだけで警察が来て怒るの?外で遊んでもダメ。家で遊んでもダメならどうすればいいの?」と、泣き出しました。おじいちゃんが毅然と孫を守ってくれたそうですが、何という世の中でしょう。


GIGAスクール構想のスタート


そんな中、今年度からGIGAスクール構想が始まりました。学校でも電子黒板と一人一台のタブレットの授業が始まり、子ども達は家と学校でのデジタル機器の接触時間が一気に増えていきます。mobiconnectより)


子どもの成長と健康に全く配慮しないで進む政策に緊急事態宣言とアラームを鳴らしたい気分です。

実は、2018年OECD(経済協力開発機構)加盟国(37か国)の15歳児を対象にした学力到達度調査における比較において、日本の生徒の学校外での平日のデジタル機器の利用状況は2012年度に比べて
  • ネット上でチャットが60.5ポイント増(OECD平均15.4ポイント増)
  • ゲームが21.3ポイント増(OECD平均7.1ポイント増)
となっており、家庭での利用時間が急激に増えていることがわかりました。

つまり、日本は学校外での娯楽としてのデジタル機器の利用時間がぶっちぎりの世界一です。逆に、同じ調査で、学校の授業におけるデジタル機器の利用時間は最下位でした。

この結果により、デジタル社会における日本の学校教育は周回遅れという評価を受けて、150年来の変わらない学校教育システムを早急に変えなければいけないという危機感が走りました。

そこで、経済産業省の教育改造プランであるGIGAスクール構想をとり入れて2020年から4年をかけて一人一台の学習用端末と、高速大容量の通信ネットワーク環境を学校に整備する計画を作りました。その計画には、授業での有効的な機器の活用法を検証したり、先生方の学習会も含まれていました。

ところが、新型コロナウイルスの出現で、一斉に休校になり、学びの保障としてリモート学習の必要性に迫られました。コロナ対策という名目で、GIGAスクール構想の4年分に匹敵する補正予算が一気に4,610億円増額されて、2020年度内に納品を完了することになったのです。

そして文部科学省の萩生田文部科学大臣からメッセージが出されました。


萩生田文部科学大臣メッセージ「1人1台端末の安全・安心な利活用について」

YouTubeでは「家庭におかれましても、端末の使い方や使用時のルールなどを話し合いながらお子様の学びを支えていただけたら幸いです」と、笑顔でお願いされていますが、これができる家庭がどのくらいあるのでしょうか?スタートから取り残されてしまいます。

学校側も予定していた勉強会が吹っ飛び、指導方法もわからない、教科別の使い方もわからない、大容量の通信ネットワークの整備が間に合わないという事態になりました(何だかワクチン計画に似ているなあ)。もちろん子どもは蚊帳の外。

実は、OECD(経済協力開発機構)が2019年9月10日に発表した調査結果で、2016年の初等教育から高等教育の公的支出が国内総生産(GDP)に占める割合は、日本が2.9%と、35か国中最下位であることがわかりました。

文科省は以前から、クラスの児童数を減らして教員を増やすための予算要求をしていましたが、なかなか通りませんでした。でも、今のままではデジタル社会でグローバル競争を生き抜く人材を育てられないと見た経産省と財務省が動いて予算を一気に通したのです。

つまり、GIGAスクール構想の背後には、国家戦略として財界と政界が進めているSociety5.0構想が見えてきます。Society5.0とは、安倍政権時代に内閣府が掲げた「第5期科学技術基本計画」で、2016年1月に閣議決定されました。(内閣府「Society 5.0とは」より)

目指すべき未来社会の姿として「仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と掲げています。

つまり、最新のテクノロジーを使って、新たな経済成長と同時に、車の自動運転やドローンでの輸送、AIの診断とリモート治療、防災、社会福祉などの、あらゆる分野の社会の課題を解決する持続可能な人間中心社会を目指しているようです。

Author:HadasBandel[CC BY-SA]

もちろん、教育も視野に入っています。学校教育に、「国の目指すSociety5という未来社会を担う人材を育成する」という使命が課せられたのです。でも、これって子ども自身のため?

特に子どもは自分のリアルな体験なしには育ちません。発達に応じた体験を重ねながら自己を確立していく子どもの成長を何と思っているのでしょうか?子育てには愛と手間と時間が必要なのに。

Society5によっておこる失業・貧困・格差などの問題をどう解決するのでしょうか? 体験で培った想像力と愛が必要なのに。

法政大学キャリアデザイン学部教授の児美川幸一郎先生は「GIGAスクールというディストピア:Society5.0に子ども達の未来は託せるか?」(世界2021-01岩波書店)SEKAI 2021.1の論文で「本来、公教育の目的は「人格の完成」であり、「平和で民主的な国家及び社会の形成者」の育成である。形成者とは国家・社会の単なる一員ではなく、主権者や市民として国家・社会に能動的に参画し、それを協働的に創りあげていく主体を意味する。決して特定の社会像(ましてや経済界や産業界)に貢献する「人材」の事を指すわけではない」と言われています。

学校教育の主人公は子どもです。経済界、産業界中心の社会像(Society5.0)に貢献できる人材を育てるための教育であってはいけません。

でも、それはすでに始まっています。EdTech企業(Education+Technologyを合わせた造語)が生まれて、公教育の解体と市場化が進められています。そして、これからの教育に経産省が関われば、おのずとその目的が経済発展のためになっていく事でしょう。

今でも、子ども達は電子機器にベビーシッターしてもらい、動画、ゲーム、SNSに夢中です。過度なデジタル機器接触で、人の言葉に反応しない脳が作られたら学校で先生や友達の話がつまらなくなります。そんな子ども達は端末機を使った授業を歓迎するでしょう。


それは一見、学習意欲が出たように見えます。先生も親も、子ども達がこれからの時代を生き抜くためには必要な教育だと思うでしょう。教育熱心な親はもっと早い時期からデジタル機器に慣れさせようとするでしょう。

確かに、世界の潮流として後戻りすることはないと思います。多様性を尊重するという意味でも、1人ひとりの能力や適性に応じてAIが提供してくれる学習プログラムに単独で取り組めるのは魅力です。

そして、全て教育ビッグデータで管理されて、誰一人取り残すことのない個別最適化された学びが実現するのです。


人は愛されるために生まれてきた


世界はどこに向かおうとしているのでしょうか?子ども自身、それを望んでいるのでしょうか?

私の印象ですが、教育委員会や学校の先生すら、その向かっている世界に目が向いていないように思います。教育委員会でそんな議論がないし、国が決めたことを遂行するだけで精いっぱいのようです。

ではPTAは?親は?
コロナ禍で休校になろうが、学校行事がなくなろうが、先生の顔すら知らないで従っています。考えた事もないという親が大半だと思います。

自分の事なのに思考停止。これが一番怖いのです。

情報がありすぎて脳が疲弊。人とコミュニケーションをとりたくてFacebook、Twitter、SNSを始めたのに孤独感を募らせているのが現代人です。そして、ゆでガエルのように自分を見失っていきます。


「人は愛されるために生まれてきた」と実感したい。そして、「愛するために学び、自分を活かし、幸せが循環する世界を作る一員になるために生まれてきた」と言いたいのです。

もちろんこれは理想です。でも、この目的を忘れてはいけないと思います。

今、世の中はその軌道を大きく外れ、誰も気が付かないうちに我が子をもロボット化しようとしています。

みんな、目を覚まして!!あきらめないで!

目の前に生身の子どもがいます。今こそ、親の出番です。命の原点に戻り、肌と肌の触れ合いを通してその子の全存在を愛しむのです。

逃れられない5Gの世界がやってきます。Society5の時代に突入しようとしています。ナディー・チャートで電磁波から身を守り、家を結界し、食を選び、自然と大地に触れ、友を増やし、学校を選び、自分の中に確固たる自己を増やすのです。


そして、子育ては親だけでするものではありません。今の時代は子どもの姿が見えにくくなっていますが、全ての大人が、この世の中は子どもにとってどうだろうか?という愛の視点を持って社会を作っていってほしいと思います。


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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