ままぴよ日記 81 「産後ケアに愛と魂を入れたい!」

 文部科学省の調査で、不登校の児童生徒は19万6127人。小中高校の自殺が415人でどちらも過去最多になりました。この自殺は警視庁の発表と違いがあり、500人は超えているのではないかと言われています。

 小児科への心の相談も確実に増えています。産後鬱で闇の中にいるママ達も多く、時間を取って話を聞いたり、市へ繋いだりしています。子どもの虐待で早期介入と児相との連携が必要だと言われていますが、学校や子育て現場でも同じ事がおこっています。それぞれの支援を繋いで、そこに魂と愛を入れたいと思います。
(かんなまま)
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赤ちゃんのいる暮らしを想像できないまま出産するママ


子育て現場に居て、目の前のママにスポットの支援はできても、世の中の子育て状況が急速に悪化して無力感さえ感じます。でも、産んですぐから適切な支援があったら、ママは親になった喜びと責任感が生まれ、子ども達も無邪気に成長できるのではないかと希望は捨てていません。

我が町も、出生数が激減して、かつて1ヶ月50人生まれていたのが30人を切るようになりました。里帰り出産も少なくなり、身近に助けてくれる人がいない中での子育て。産む直前まで働いて赤ちゃんのいる暮らしを想像できないまま出産するママが増えました。40代の初産も珍しくありません。情報は何でもネットで集めます。

そして、産婦人科が激減して1軒になりました。近隣に産婦人科がないので一極集中で母乳指導も行き届きません。

あるママが退院して「母乳をうまく飲ませられないので教えてください」と産婦人科に電話すると「ミルクにしたら?楽になるよ」と言われてホッとしたと話してくれました。ここに寄り添って教えてくれる人がいたら、母乳育児をあきらめる事はなかったでしょう。


今や、4人に1人が帝王切開。そして、ママの口コミで計画無痛分娩の要望が急激に増えています。無理に陣痛を起こす上に、ママの感覚がないのでいきめません。自ずと鉗子分娩か吸引になります。事故になりかねないし、胎内で10ヶ月かけて準備してきたママと赤ちゃんの共同作業が強引に終止符を打たれます。

そして子育てアプリが大人気。ミルクの量はもちろん、時間や授乳の長さをタイマーで教えて、おしっこや便の回数、体重をグラフ化して管理してくれます。2ヶ月になったら○○の予防接種、3ヶ月になったら喃語を話し、4ヶ月になったら首が座り、寝返りが始まる、健診の心得、5ヶ月は離乳食・・・と赤ちゃんの成長スケジュールもアプリが教えてくれます。そのうちAIが子育てを指導してくれるでしょう。



ママ達はアプリが示してくれる標準に赤ちゃんを合わせるように頑張ります。ミルクの飲みが少なくても多くても、発育が早くても遅くても心配します。赤ちゃんが泣いて要求をしても頑なにミルクの時間と回数を守ります。学校で目標値を設定して頑張ってきましたので、このやり方の方が安心するのでしょうか?「赤ちゃんを見て自分で感覚を掴んでね」と言ったら何をしていいかわからなくなるようです。

だから、古臭いばあばの話は聞きません。今、布おむつ育児は99%なし。素手で抱っこやおんぶも見かけなくなりました。素手で抱かれたら赤ちゃんは自分でしがみついてママの動きに合わせてバランスを取らなければいけません。そうやって自分で体の使い方を習得していたのに・・・。ママ自身もずっと素手で抱いている背筋力がないようです。

首がグラグラする新生児から使える抱っこ紐が発売された頃から全身が緊張している赤ちゃんが増えました。床に寝せると泣くし、赤ちゃん特有の柔らかくて、しなやかな動きができません。とにかく体が開かなくて硬いのです。これは現場の感覚です。まだ医学的検証が追いついていませんが、赤ちゃんの発達を無視した親中心の製品がネットの口コミで広がっています。

ネントレも流行っています。赤ちゃんの健やかな成長のためには良質の睡眠をとるのが大事という医学的根拠をもとに、決まった時間に赤ちゃんが1人で眠れるように習慣づける睡眠トレーニングのことです。
https://www.jp.pampers.com/baby/sleep/article/baby-sleep-training


昼夜の区別がついてくる4~5か月から始めます。8時ごろにミルクをたっぷり飲ませて部屋を暗くして眠るモードにします。そして赤ちゃんを一人で寝せて、ママの手で優しくトントンしながら寝かせつけます。泣いても抱いてはいけません。

親は部屋を出ていき、泣き声が聞こえても決して抱かないでトントン。それを繰り返したら自分で寝る子になるのだそうです。小児科のドクターや、著名な子育ての専門家が睡眠の大事さをコメントで書いているので、これが正しいやり方だと思って我が子の泣き声を聞き流しているのでしょう。赤ちゃんは諦め、ママはぐっすり安眠です。

ママ達は育児休暇中は仮の生活と思っているようです。職場復帰して時間に追われる生活になるのが見えているので、早くからその習慣をつけたいのかもしれません。日本は子ども中心の、べったり型子育ての文化があるので、親子がいつまでも一緒にお風呂に入り、川の字になって寝ます。これは個人優先型の欧米では虐待と言われます。


離乳食教室も栄養士さんが指導をしてくれますが、ママは作り方を見学して、月齢に応じた「ごっくん・もぐもぐ・かむかむ」の形態を説明してもらって試食するだけです。ママ達は5ヶ月頃から始めましょうと言われると、それを守ります。赤ちゃんの食べたそうな信号をキャッチするより、標準月齢が優先です。

そして、料理に自信がないので栄養管理されている市販の離乳食の方が赤ちゃんのためにいいと思っているママが多くなりました。赤ちゃん用のりんごジュースは与えても、生のリンゴを食べさせたことがないママが大勢います。新鮮な気を頂くという感覚はありません。


赤ちゃんの発達も、通常ハイハイしながら自分でお座りができるようになるのですが、ママ達は5~6ヶ月くらいになったら、いきなりポンと座らせます。お座りの練習だそうです。

まだ座骨で支える体勢が整っていないので固まって身動きができなくなる赤ちゃん。手も使えないのでだんだん前かがみになって倒れます。やる気どころか赤ちゃんの発達を阻害します。お座りの形だけさせて全体の様子に気が付かないママ。

でも、これらはママが悪いわけではありません。子育ての体験はないし、学生の時から目に見える数値で評価されてきたので、それを示してもらわないと行動できないのでしょう。

まじめなママ程、数値目標型の子育てにハマって標準に赤ちゃんを合わせようと頑張ります。企業もそんなママ達をターゲットにして商品を作ります。

赤ちゃんは、自分の感覚をつかむ時期なのに、制限ばかりされて満たされません。必要のないおもちゃを手首に装着されて、手を動かすたびに音が鳴って迷惑です(笑)。親も自分の子育ての指針がないまま、いつも他人の評価に振り回されて愛からどんどん遠くなっていきます。

追い打ちをかけるように、子育て環境も悲惨です。孤立無援。コロナで人にも会えません。産後鬱が増えました。わけがわからない不安。涙が止まらない。まじめで完璧主義なママ程、疲れ果てています。



産後ケア事業のはじまり


さあ、そんな我が町で産後ケア事業が始まります。

長年の悲願であり、そのために子育て支援者や小児科医、産婦人科医、幼稚園や保育園園長、助産師と現役ママ達が手をつないで市に要望を出してきました。

お産直後から1年間の支援として産科や助産院で「お母さんの心と体の休息」「授乳の相談や指導」「育児に関する相談や指導」「赤ちゃんの発育相談」が始まります。宿泊3食付きで3000円。日帰り1食付きで1000円。母乳育児相談は無料。訪問指導は500円。生活保護・非課税世帯はすべて無料で利用できます。

問題は内容ですが、指導資格のある心あるアドバンス助産師が揃っています。私達の仲間です。市に一つしかない産科も私達の仲間に入ってくれました。どんな支援と連携が必要なのか情報交換しながら考えていきたいと思っています。

今日は、そのための会議を市に申し込みました。市と対等に話せるようになったのはありがたい事です。市の方も目を白黒しながら話を聞いてくれます。「考えさせてください」と言いながら、いつもその通りにしてくれます。

実は、市はこの事業に予算をつけて、産科と助産師と契約して、利用料を決めるまでが仕事で、あとは広報して利用者を集計すればいいと考えていたようです。ケア事例も1ヶ月分まとめて市に報告するシステムでした。

産後鬱など緊急を要するママへの支援は1ヶ月もほっとけません。すぐに報告して次の支援につなげて予防しなければ何のための産後ケアなのかわかりません。

又、一日だけ体を休めても、家に帰ったらまた元の生活が待っています。子育て環境が厳しいママ程、孤立させてはいけません。すぐに連携して、みんなで見守る体制を作らなければいけません。貧困なのか?生活支援が必要なのか?子育てセミナーや広場に繋げばいいのか?早いうちに関わっていれば救われます。

そのためにも、支援者会議を定期的に開いて情報交換するように提言しました。

市の職員は事務の専門家ですが、現場を知りません。多くの市町村が形だけ整えた産後ケアを始めています。でも現実は、請け負うはずの産科の都合によって断る、言う事が産科医や助産師によってバラバラ、逆に市からの補助金目当てにケアを独り占めする事例があるようです。すでに機能しなくなったところが多いと聞きます。何のために支援するのかの共通理解が必須です。これは子どものための社会貢献事業なのです。

仲間の幼稚園の園長先生が「私の頭の中にいつも産後ケアの事があります。これは幼稚園の仕事ではありませんが、妊娠している保護者や小さい赤ちゃんを連れて来ている保護者を見かけたら「何か困っていない?こんなサポートがあるよ」と口にしています。いつでもどこでも伝えています」と言ってくださいました。この愛のおせっかいネットワークが大事なのです。

そう言う意味で、私が勝手に始めた健診時の子育てアドバイスは結構役に立っていると思い始めました。

あるママは赤ちゃんの健診に来て帰りかけていました。私が話しかけたら「1歳半のお姉ちゃんの事でもいいですか?」と話し始めました。見ていたら一時もじっとしていません。他の待合室に入って行ったり、検査室のドアを開けたり、絵本を何冊も引っ張り出します。


ママは「すみません」「ダメよ!」と言いつつ、スマホの動画を見せて落ち着かせます。「いつも一人でお世話しているの?」と聞いたら「旦那では手に負えません」「実家が遠いので頼れません」との事。

「眠れている?」と聞いたら「夜中に何度も起きます。旦那は仕事があるので別の部屋で寝ています」「昼もコロナ禍で行くところがないし、赤ちゃんのお世話もあるし、公園に行くと追いかけられないし、思わず大声をあげる時もあります」


これはママの緊急事態です。「ママ、1人で抱え込まないでね」「子育て広場が開いているよ。今は少人数の予約制だから逆に行き易いかも」「上の子をスタッフが見守ってあげられるし、下の子を預かってあげることもできるよ。電話しておくから行ってごらん」「作業療法士などの専門家と遊ぶ親子教室も紹介するね。市役所の○○さんを訪ねてごらん」と言って市役所と子育て広場に連絡をします。最近は市からも連絡が来るようになりました。

一人でできる事は少なくても、みんなが子育てを応援したら大きな力になります。公園で子どもが遊んでいたら迷惑そうに見るのではなく、笑いかけるだけでも応援です。コロナ禍で人と人の分断が深まる中、私達を元気づけてくれるのは未来の象徴である子どもの笑顔です。
愛の感染拡大!愛のパンデミックが始まります!


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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