ままぴよ日記 82 「放課後の過ごし方」

 外国に住む孫達が、放課後、のびのびと過ごしています。当たり前のように休日は家族と一緒に自然の中で過ごし、平日は学校に行くのを楽しみにしています。

 同じ家族なのに、住んでいる国が変われば、生き方も変わっていくのでしょうか?子ども達の遊び、描く絵、興味が変わり、兄弟げんかも減りました。

 日本もいいところがたくさんありますが、子ども達の放課後の過ごし方を考えると頭を抱えてしまいます。
(かんなまま)
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学校生活より子ども達に影響を与えている放課後の過ごし方



日本の授業時間は1年間1100時間。一方、放課後(その日の授業が終わった後)は、長期休暇を含めると1650時間になります。むしろ学校生活より子ども達に影響を与えているかもしれません。働いている親にとって、子どもの放課後の過ごし方が悩みの種になっています。


最近では働く親のために、学校の敷地内に学童保育所が併設されるところが増えました。学童保育所とは、放課後、子ども達に安全で安心な生活を保障する場です。指導員は頼れる大人として関わっています。だから、特別な資格は要りません。

とは言え、指導員は年間2000時間近くも勤務して、子ども達と過ごすわけですから大変です。特にコロナ禍で学校が閉校になった時も朝から夕方まで預かり続けていました。みんな疲弊して、指導員不足が問題になっていますが、年収150万以下が半数以上。国が有償ボランティアとして位置づけしているからです。

学童保育所は6年生まで入所できるのですが、実態は定員オーバーで、3年生までの所が多いようです。生活の場なので、統一したカリキュラムもありません。宿題をさせてくれるところ、色々な遊びを提供してくれるところ、放任しているところ、子ども同士でゲームを持ち込んで遊んでいるところなど様々です。

子どもが学校より長く居るところですから、どんな環境を作ってどんなまなざしで子ども達を見守るのか?質がとても大事です。是非、専門的知識と資質を持った指導員を養成して、身分の保証をして欲しいと思います。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/07/dl/s0728-8b_0001.pdf

一方、家に保護者がいる子どもは入所できません。高学年や定員オーバーで学童に行けない子、行きたくない子も多くいます。

そんな子は放課後の隙間を埋めるように習い事に行かされています。水泳教室、体操教室、ピアノ、習字、公文、学習塾、英会話、リトミック、新体操、バレエ、絵。週に3つ4つ掛け持ちです。

行政の子ども預かり事業である、ファミリーサポートセンターは、子どもの習い事や塾の送り迎えのニーズがトップになっています。

他にサッカーチーム、野球チームに所属している子は、それだけで週に5日間練習、土日は試合です。家に帰ったら宿題が待っています。塾の宿題もあります。

大人に例えて言うなら、朝早くから仕事に行って、夕方から別の仕事をして家に帰り、更に家でもやり残しの残業をしているようなものです。ひと仕事終わって家に帰ったら、お風呂に入ってビールを飲んでホッとしたい気分なのに、子ども達は、それからも怒られながら夕食、お風呂、宿題の流れ作業・・・。これが毎日です。息が詰まりそうです。

何の束縛もなく自分の思いつくまま過ごしている子どもがどのくらいいるでしょうか?



疲れが溜まっているからこそ、満たされないものを埋めるように夜遅くまで過激なゲームをしたくなるのも頷けます。ネットで誰かと繋がっていたくて動画やSNSを発信している子も増えました。

最近よく耳にするのはゲームの事。「クラスでオンラインのシューティングゲームの話題がもちきりで、うちの子だけ仲間外れになるので買いました。でも、ヘッドフォンをつけてボイスチャットで「死ね!殺せ!」と言い合いながら殺戮ゲームをしている姿を見て、後悔しています」という相談です。こうなるのがわかっているのに仲間外れが怖くて同調して買い与えてしまうのです。


日本は大人も子どもも同質性が高くて、主体性や独創性が育ちにくい社会になってしまいました。

放課後は本来、学校から解き放たれた自由な時間のはずなのに、自分の時間がない、自然に触れる環境もない、自分の好奇心のまま何かに没頭する機会もないのです。そんなの・・・子ども時代って言わない!日本の子ども達は幸せなのでしょうか?


海外と日本における放課後の過ごし方


今や世界中の子ども達が大人都合の生活を強いられていますが、外国に目を向けてみれば、日本の特異性が見えてきます。

アメリカの孫達は午後2時から放課後です。宿題もない。塾もありません。仕事をしている保護者は2時に迎えに行くのは無理なので、民間のアフタースクールと契約しています。スクールバスが学校にお迎えに来て、様々な遊びやスポーツを用意しているようです。他に専属のシッターを雇って、子どもの送り迎えやお世話を頼んでいる家庭も多いようです。

孫達は娘が迎えに行きます。自然豊かな道を歩いて帰り、途中で動物たちに出会い、家に帰ればひたすら好きなことに没頭しています。

お姉ちゃんは中学生になったので宿題が出るようになりました。でも時間はたっぷりあります。子どもだけで外出できる年齢になったので、友達の家に遊びに行って、お泊りするようになりました。

学校のクラブ活動はありませんが、カルチャースクールはいろいろあります。3ヶ月単位なので色々なものにチャレンジできます。基本、自分の好きな事しかしませんが、今も続いているのはトランペットです。テストを受けて楽団に入りました。

長い夏休みはキャンプや自然体験、ファーム体験、乗馬、カヤックなどの短期プログラムが人気なので、早くから申しこむようです。


お兄ちゃんはひたすら家で絵を描いています。それが好き。だから放課後に友達と遊ばなくても幸せそうです。日曜日はどの家庭も家族の日。娘家族はコロナが少し落ち着いてきたので、車で遠出するようになりました。湖、森、ナショナルパークなど自然を満喫しています。

フィンランドの学校は年間190日で日本より40日も少ないようです。特に夏休みが2ヶ月半もあります。学校は午後2時には終わります。親の労働時間も短くて、たいてい16時には終わっています。残業はありません。

学童保育は平日16時半まで。長期休暇は親の休みも多いので、学童保育の数も減るとの事。指導員は資格が必要です。習い事はあるけれど日本より少ないし、学校の宿題もありません。アイスホッケーなどのクラブチームが人気らしい。

学童保育に行っていない子も多く、友達の家に遊びに行ったり、家でのんびり過ごすそうです。週末の過ごし方は家族とハイキング、バーべキュー、キノコやベリー摘みなど自然と触れ合う事が多く、特に夏休みなどはコテージに行ってのんびり過ごします。

多くの人が森に小さなコテージを持っています。電気もないところが多いけど、サウナは必ずついています。息子も彼女の家のコテージで過ごしているようです。外でバーベキューをして、サウナに入って、近くの湖にダイブすると言っていました。

特にフィンランド人は休みの日に何をするというイメージがなく、ぼーっとしたり、自分の好きなことをするのが休日だと思っているようです。フィンランドに住んでいる息子にはぴったりの国です。

逆に、日本では、ぼーっとしていると叱られそうです。でも、毎日、習い事や宿題をして忙しく活動している日本の子ども達より、ぼーっとしたり、好きなことをしているフィンランドの子ども達の方が、主体性が育ち、成績がいいのです。なぜでしょう?

フィンランドの子ども達は学校や家庭でlearning by doing(何でもいいから、やってごらん)と言われ続けています。そして、ペアワークやグループワークで学ぶ事が多いので、自分と違う考えがある事を体験していますし、認め合っています。正解は1つではないし、人と違う事は恥ずかしい事ではないという意識が根付いているようです。

日本の子ども達は40人くらいの集団で一斉授業を受けています。子ども達が色々意見を言っても、最後は先生が正解に導いてくれます。教室で勇気を出して意見を言ったら、皆から「同じでーす!」「ちがいま~す!」と評価されます。人と違う意見を言うと仲間外れになった気分です。これでは主体性は育ちません。


ところで、最近、ぼーっとするのがとても重要だということがわかってきました。ワシントン大学のM・E・レイクル教授が提唱した「デフォルト・モード・ネットワーク」という理論では、脳が消費するエネルギーの75%が何もせずにぼんやりしている時の活動のために使われているとの事。自動車のアイドリングのように、これから起こる出来事に備えるために、様々な脳の領域の活動を統括しているのだそうです。


フィンランド人が休日にぼーっとするのは理にかなっているようです。

さて、フランスの学校は2018年から週休3日制になったそうです。年4回の2週間休暇と、夏休みが8週間あります。宿題は禁止!低学年のうちは計算ドリルなど反復型学習や記憶したり正解を導いたりする学習ではなく、創造性や会話を展開させる授業が多いそうです。

フランス人はみんなと同じことをするのは最低限の事だけ。すべて選択性です。留年や飛び級も普通で、人と違うのは恥ずかしい事ではなく、自分に合ったペースで学ぶのが当たり前になっているそうです。

給食も選択制で、学校で食べない子は家で食べるので、保護者は一日4回も往復して送り迎えをするそうです。放課後の学童保育は16:30~17:45と17:45~18:45の選択制。朝も7:30~8:30の預かりがあるそうです。

土曜日、日曜日、水曜日は休み。放課後の居場所は学童保育所、習い事、シッター、自宅か祖父母宅、近所の家があります。近所の家は一般的で、アメリカに住む娘も近所の子を週に3日預かっているようです。


学童保育所は民間と自治体が運営して、民間は旅行やキャンプも企画しているとの事。責任者は大学生がなっている所も多いようです。

部活はなし。習い事は豊富でカルチャースクールが盛んです。アメリカと同じで小学生のうちは3ヶ月単位で色々な習い事を体験して、自分が好きなことを見つけるのだそうです。

日曜日は家族でのんびり過ごすことが多く、最近水曜日が休みになったのも、家族と過ごす時間を増やすためだそうです。長期休みも滞在型の家族旅行や祖父母宅に泊まりに行きます。

このように、放課後の過ごし方を比較するだけでも、日本の子ども達は忙しく、自分の時間がないのがわかります。放課後の過ごし方を選んでいるようで、実は同調意識に振り回されて自分を生きていないように思います。

そして、日本の子ども達は、のんびり自然の中で過ごす機会が圧倒的に少ないのもわかります。自然の中にいると落ち着きを取り戻すことができます。人間だけで生きているのではない事もわかります。この世は多様性に溢れ、知らない世界が広がっていることを感じます。


日本の子ども達にもっと自由をあげたい。宿題いらない!選択権をあげたい。ぼーっとする時間をあげたい。夢中になって時間を忘れるような体験をさせてあげたい。「この世に生まれてきてよかった」と思ってほしいのです。

そのためには、大人自身が自分を生きる事から始めなければいけないのかもしれません。


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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