ままぴよ日記 107 「今はいっぽいっぽ歩くのみ」

「私、生きてるよ!」と枯草だけの大地に芽を出して、いつの間にか花が咲いています。みんな本当にきれい!

天気のいい日に野原に行くと、一番小さな孫が、パパの肩車に乗って「どの花見てもきれいだなあ~」と指さして歌ってくれました。
お姉ちゃんと草花のリースを編みました。


母も愛犬も、若い娘婿まで命を閉じようとしていますが・・・
春の大地が、みんなの命が巡っていることを思い出させてくれます。
これでいいんだ。私もいつの日か・・・。と、教えられます。
(かんなまま)
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春から娘が大学院に入学


この春休みに娘からビックプレゼントが届きました。

フレッシュで、この上なくかわいくて騒がしいもの・・・そう、孫達がやって来たのです。「えっ⁈4歳の孫まで来るの?ママがいなくても大丈夫?」と聞きましたが、本人が「ママがいなくてもばあばの首を触って眠るから大丈夫。・・・ああ、やっぱり気持ち悪いから触らなくても大丈夫」と言ったそうなのです。

実はこの春から娘が大学院に入学する事になりました。子ども達の春休みに、入学準備、入学式、オリエンテーション、奨学金の手続き等があるので子ども達を私にプレゼントしてくれるという訳です。子ども達も、日頃どこにも行けないので、ばあばの家に行くのをとても楽しみにしていました。


嬉しいやら、考えただけで気が遠くなるやらですが、受け入れる覚悟を決めました。だって、娘の孫が来るという事は息子の孫も漏れなくやってくるのです。息子夫婦も平日は仕事で孫達だけでお留守番です。2歳のチビちゃんは別として合計7人の大合宿です。

娘は毎日の生活を1人で頑張っています。子育てのワンオペどころか介護もワンオペです。その生活だけでも忙しいのに、この4月から大学院に入学して勉強する事になりました。それを聞いた人は口を揃えて「無理しないで、倒れるよ」と心配します。

傍からそれを見ていた私は、娘自身がどれほど大変になるかを知りながら自分のやりたい仕事に向けて歩き出そうとしているのを感じました。だって判断できない時は1歩ずつ確かめながら進むしかないのです。ダメな時は何らかのサインが来るでしょう。入学して無理だと思ったら休学すればいい。


準備万端だった当初の計画


思えば去年の8月から想定外の出来事が娘家族を襲いました。

同じ大学を出て、卒業式の日に入籍して新生活を始めた2人。子どもが生まれる度に子育ては娘だけの肩に乗り、仕事との両立が困難になりました。仕事と子育て、どちらを取るかと問われて迷わず子どもを取った娘。

そのおかげで、13年間個性豊かな4人の子ども達に付き合い、夫の留学先であるアメリカまで行って豊かな経験をしてこられました。

日本に帰国する時に、今度は娘の社会復帰を優先して住む場所を決めようと夫婦で話し合ったそうです。娘は13年間、「子ども達が先生の学校」で色々体験したので、これからは小児科医として子どもの心理と発達について学び、社会の役に立ちたいと思ったようです。これは仕事を続けていたら思い至らなかった道でしょう。

帰国前に、その研究ができる大学院を探して、先方にも連絡を取りながら準備をしてきました。ある意味13年間のブランクですが、先方も娘の子育てをキャリアとして認めてくれて受験するように勧めてくれたようです。

帰国後に住む場所も大学の近く。そして、子ども達の学校や幼稚園も帰国子女の多い環境を調べて今の家を選びました。準備万端でした。

そして去年の8月から3月までは専業主婦で子ども達の学校や園の生活を整え、落ち着いたところでこの春から大学院に入学するという計画だったのです。

でも、帰国直後に娘婿の病気がわかり、死の宣告を受けて、今は自宅で介護をする日々です。子どもの送り迎えや通院以外に外出する事さえままなりません。

その上、子ども達の混乱にも拍車がかかりました。

見知らぬ土地で友達が1人もいない、アメリカとは全く違う学校生活、言葉がわからない、教科書に書いてある意味が分からない…それだけでも大変なストレスなのに、家ではお父さんの変わりゆく姿を見て不安になり、頼りのお母さんはいつも忙しそうで甘えてはいけない雰囲気、休みの日にどこかに出かけたくても事情を知っているから言い出せない・・・。行き場のないストレスで兄弟げんかが増えていくのです。



たくさんの人にSOSを発信している娘


文章に書くのは簡単ですが、全員が溜め込んでいるネガティブなエネルギーの渦中に居て自分を保つのは至難の業です。「いいかげんにしなさい!」と怒りたくなります。娘はその感情を切り捨てて怒らなかった。でも、辛い顔や無表情にはなっていたと思います。それを子ども達は感じ取ります。その全てを抱きしめてあげたい気持ちです。

娘は大局を捕らえて目の前の事を1つずつやりこなしてきました。1人で抱えきれない事もわかっていたので、たくさんの人にSOSを発信したようです。

福祉課に介護の申請に行ったら、話を聞いた職員が子育てにも理解があるヘルパーさんを紹介してくれました。他の職員の人が子ども食堂に頼んでくれて食事を持ってきてくれるようにもなりました。子どもが外で遊ぶので近所の人に事情を話したら子どもを見守り、時々おかずを持ってきてくれるようになったそうです。

学校や園の担任の先生にも子どもの心理状態を話しました。初めは学校に行く事さえ嫌がっていた子ども達も担任の先生が理解してくれているのを感じて落ち着いてきました。

自分を開示して人に頼るのは支援する側に立つよりずっと難しいのに、よくやったと思います。

娘は予定していた大学院入学の事をずっと保留にしていました。そして、この春「私はいつも忙しい。明日の事もわからない。この状態で大学の講義を受講できるかさえわからない。ただ、目の前の生活をしながらキャンセルする事態が発生しなければ入学するだけ。そして行けなくなった時に休学すればいい」と腹を括ったようです。

願わくば、母子家庭になって食べるためだけに働くのではなく、子どもの成長を第1に考え、それにつながる仕事をして社会貢献したいと思っているようです。私達夫婦も娘婿の両親も、それまでの生活費は支えようと話し合いました。

娘婿も、自分のせいで娘の夢をあきらめて欲しくないようです。子どもの世話はできないけど「お母さんが勉強しているから協力しようね」と言ってくれているようです。子ども達も同じ学生としてお母さんの頑張りを応援しています。逆に家族の危機が家族を1つにして協力しあう体制が生まれてきたようです。

私は遠くにいてせっせとおかずを作って送っています。今いちばん助けて欲しい事だそうです。

何が幸いするのかわからないけれど、研究テーマが小児の心と発達。まさに日々実践している生活そのものです。

院の先生方にも家庭の事情を全部お話しているし、小児の心理などを研究している方々なのでとても理解があります。全てオンライン授業なので家にいる事もできます。場合によっては休学してもいいよといわれているそうです。


現に、授業が始まってみたら、大学の時に学んだのと全く違って内容が手に取るように理解できるし、面白いらしいのです。

それにしても、娘のどこにそんな気力と体力があるのだろうと思います。悲壮感が全くないのです。「多分、誰よりも忙しいし、どうすることもできない現実を抱えているけど、明日の事は考えていないし、今幸せを感じる瞬間がたくさんあるから」と言ってのけるのです。

大学院に行けてよかったと思います。何ひとつ計画を立てられない状況ですが、きっと神様が行く道を照らしてくださっていると感じました。



Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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