ぴょんぴょんの「挑発するコソボ(11)」 ~アメリカがコソボにおしおきだと?

 緊迫するコソボ。
 5月26日に行われたセルビアの首都ベオグラードでの大集会には、コソボからも多くのセルビア人が集まりましたが、彼らの留守をねらって、コソボ政府は仕掛けてきました。
 4月23日、コソボ政府の横暴に反発してセルビア人らは選挙をボイコット。たった3%の投票率で誕生したアルバニア人新市長を、地元のセルビア人は認めていません。
 そこで、彼らが出払ったチャンスに、インチキ市長を市庁舎に登庁させようと企てたのです。そして、コソボ政府が、コソボ警察、コソボの特殊警察ROSU、NATOのKFOR軍を市庁舎に集めた結果、計画通りの惨事が起こりました。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「挑発するコソボ(11)」 ~アメリカがコソボにおしおきだと?

留守を狙った事件


風雲急を告げるコソボ、あれからどうなった?

それがだな・・。

6月1日って言ってたよね?
6月1日までに、セルビア人が多く住む北コソボから特殊警察ROSUを引き上げ、コソボ政府がセルビア人の不当な扱いをやめると宣言しなければ、何かやらかすって。

それがだな、それがでな、それがだよ・・。とんでもないことが起こっちまったんだ。
つうか、大方予想されていたことではあるが・・。
前回5月26日にセルビアの首都ベオグラードで、「希望のセルビア」集会が開かれたとこまで話したよな。

うん、コソボからもセルビア人が1万人集まったって。

その留守をねらって事件が起きたんだ。

やっぱ、そう来たか!

事件があったのは、セルビア人が多く住む北コソボのズヴェカン市、北ミトロヴィツァ市、ズビン・ポトク市、レポサヴィッチ市の4つの自治体。

Author:Anatoliy[CC BY-SA]

この4市は、4月23日の選挙をやった自治体だと言ったら、わかるか?

コソボ・セルビア人がボイコットした選挙だね。
セルビア人抜きの投票で、たった3%の投票率で、4つの市で4人のアルバニア人が市長になってしまった。

そうだ、ここからはこの記事を参考に、何が起きたのか追ってみよう。

ドキドキ・・。

5月26日金曜日、ベオグラードで「希望のセルビア」集会が開かれた日の朝、北コソボの4市で警報サイレンが鳴り響いた。その後、4市の市庁舎にコソボ警察、KFOR軍、EULEXが集結した。
KFOR ( Kosobo Force ) は「コソボ平和維持軍」、NATOの下部組織。
EULEXはコソボの人権を監視する文民組織、「コソボにおける欧州連合法治ミッション」。

コソボ警察もだけど、KFORとEULEXは何しに来たの?

KFORとEULEXの本来の役目は、コソボ・セルビア人や少数民族を守ることだ。コソボはセルビアの自治州だが、コソボ・セルビア人が襲撃されても、セルビア軍はコソボに入れない。セルビア軍はNATOの許可なしにコソボに入れないからな。
とは言え、KFORがコソボ・セルビア人を守っているようには見えないが。

KFORが守ってくれていたら、コソボ・セルビア人の不満はなかったよね。
で、コソボ警察は何のために市庁舎に来たの?

初登庁する新市長をコソボ・セルビア人から警護するため。また、コソボ・セルビア人を威嚇するため。
うまく行けば、彼らが暴徒化して、刑務所にブチ込めるし。


コソボのクルティ首相って、そんなこと考えてるの?

アルビン・クルティ首相


さんざんひどい目に合ってきた、コソボ・セルビア人ならわかってる。さて、その日の正午過ぎ、4市の市民らは物々しい雰囲気の市庁舎に集まった。
その一つである、ズヴェカン市の市庁舎で何が起きたか?
コソボ警察とコソボ治安部隊(KSF)が、市民に催涙ガスとスタングレネード(閃光手榴弾) を使用しながら、市庁舎に入って行った。


え? 市民がなにをしたって言うの?

おそらく市民は、コソボ警察が市庁舎に入るのをジャマしたんだろう。これによって数名のセルビア人が負傷し、病院に搬送された。

はあ〜。

ズビン・ポトク市でも同じように、コソボ警察が市民らに催涙ガスとスタングレネードを浴びせながら市庁舎に侵入した。レポサヴィッチ市でも、北ミトロヴィツァ市でも同様のことが起こっていた。
おそらく4市で、同じことが同時進行していたと見られる。


完全に計画的な犯行だ。

夕方5時頃、イリル・ペチ新市長がコソボ警察に付き添われて、めでたくズヴェカン市庁舎に入った。他の3市でも、新市長がめでたく初登庁を成し遂げたのであろう。

市民を犠牲にしてまで、やることかい?!

話はそれで終わるはずがない。

〈このビデオは、コソボで誰が暴力を始めたかを明確に示しています。
平和的な抗議活動に対する砲撃は、KFOR(NATO戦闘員)の陣地から開始された。
「平和維持軍」は、催涙ガスやスタングレネードをセルビア人に向けて次々と撃ち込み始めた。(DeepL翻訳)

詳しく、経緯を追ってみよう。5月29日朝の7時、市庁舎にセルビア人が集まり、現場のKFOR隊員に訴えていた。
3日前の26日、コソボ警察が市庁舎に侵入するのを、なぜKFORはだまって見ていたのか。不法な市長の登庁を援護したのはなぜかと。
同時に、市の職員らがKFORに中に入れてくれと頼んだらしく、KFOR隊員がそれを許可した。そして職員らが市庁舎に入ろうとした時、コソボ警察が催涙ガスで迎え撃った。

なんで? KFORは許可したのに?

一方、特殊警察ROSUの車両の通行妨害をしているセルビア人に対して、KFORがやめるように言ったが言うことをきかない。するとKFORはセルビア人を殴り、蹴り、引きずり回し、衝撃弾や催涙ガスを投げつけ始めた。そして「カラシニコフ」のROSU部隊が、セルビア人に向けて数発発砲し、二人が背中から撃たれた。
「その瞬間、セルビア人の反応は、石や他のあらゆる方法で始まりました。」
(KosovoOnline)
彼らは釘、爆竹、石を中に入れた火炎瓶 を投げ、双方に負傷者が出た。
(CNN)

うわあ〜〜〜!!
「平和維持軍」のKFOR、どうしちゃったの?
KFORの中にROSUが混ざっていた?

このせいで、セルビア人は2名が逮捕され、52人が病院に搬送され、そのうち3人が重傷。うち2人は背中から銃で撃たれた。KFOR隊員は41人が負傷、3人が重傷。(KosovoOnline)

なんで、こうなっちゃうの?


非暴力のコソボ・セルビア人に向けて、スナイパーが配置されていた!


ところで、この写真はなんだかわかるか?

〈コソボ北部で KFOR/警察のスナイパーらしきものが目撃される。(DeepL翻訳)

赤丸の中になにか見えるね。

銃口だよ。「コソボ警察が入り込んだズヴェカン市庁舎の窓の1つに、狙撃兵がいるのが見える。
2台のエアコン室外機の間にある窓の縁から、狙撃銃の銃身が見える。」

(Kosovo Online)

ひええ〜! なんでまた、そんなものが?!

非暴力のコソボ・セルビア人に向けて、スナイパーが配置されていたのよ。

これは、大問題だぞ。

セルビアのヴチッチ大統領「私は何ヶ月も前から、クルティの目的はただ一つ、コソボで紛争を起こし、この地域全体に流血をもたらすことだと言ってきた。セルビア人とNATOの間に紛争を起こそうとするのが彼の願望だ。」(KosovoOnline)

ヴチッチ大統領
Author:duma.gov.ru[CC BY]

だけど、こんなことがバレたら、コソボは世界中から非難されるよ。

そこはちゃんと考えてある。KFORがやったことにするから。
ヴチッチ「KFORが発砲したことにすれば、セルビア人とKFORを仲違いさせることができる。私は彼らに、NATOと紛争を起こさないよう強く求めます。なぜなら、それがクルティの最も望むことだからです。」
(KosovoOnline)

でも、KFORはセルビア人を守っているようには見えないけど?

たしかに、KFORはNATOの上の上、そのまた上みたいなとこからの命令で動いているから、実際どっちの味方かよくわからない。

今回だって、KFORはセルビア人に催涙ガスを浴びせたし。

基本的にはコソボ政府の言うなりだな。


国連安全保障理事会の5つの常任理事国(アメリカ、フランス、中国、英国、ロシア)のすべてが、コソボの攻撃的な行動に明確な非難を表明


よくわからないけど、今回の事件の世界の反応が知りたいね。
アメリカくんはなんて言ってる?

アメリカはコソボ政府に対し、北部の状況を緊急に緩和すること、4つの市庁舎からコソボ警察のメンバーを撤退させること、投票率わずか3%で当選した市長らが、これらの施設で仕事しないよう求めた。しかも驚いたことに、コソボ政府に罰を与えた。(KOSOVO ON LINE)

なんと?!
アメリカだけは、最後までコソボの味方だと思ってた。

アメリカは、コソボが参加予定だったNATOとの演習「Defender of Europe 2023」の、コソボの参加中止を発表した。(KOSOVO ON LINE)

そりゃ、コソボもガッカリだね。

だが、アメリカを怒らせた理由が「アメリカにお伺いも立てずに勝手にやりやがって」らしい。

へえ?

在コソボのアメリカ大使、ホベニア氏いわく、「今回の危機は不必要であった。特にコソボ警察の行動は、事前にアメリカになんの知らせもなかった。北コソボの新市長が代替地で活動し、警察が市庁舎から撤退することをアメリカはを望んでいる。」(KOSOVO ON LINE)
在セルビアのアメリカ大使、ヒル氏、
「コソボは、アメリカの助言を聞かなかったために結果を負うことになる。
アメリカのブリンケン国務長官も、私たちの助言に反するクルティの動きには反対であると明言している。」(KOSOVO ON LINE)

アメリカは、コソボの保護者のつもりかな。

セルビアがビックリしたのは、国連安全保障理事会の5つの常任理事国(アメリカ、フランス、中国、英国、ロシア)のすべてが、コソボの攻撃的な行動に明確な非難を表明したことだ。セルビア首相のアドバイザー、ストヤノヴィッチ氏「これは、現在の世界政治情勢において前例のないコンセンサスである。」
(KOSOVO ON LINE)

中国とロシアならわかるけど、あとの3カ国はコソボ側だと思ってた。

イギリスの西バルカン特使、ピーチ氏、「コソボ北部の市庁舎に、市長を強制的に入館させる決定は賢明ではなく、深刻な結果を招くことになった。イギリスは良い時も悪い時もコソボの味方であったが、今回の事件は、コソボの国際的なイメージや評判にダメージを与えた。」(KOSOVO ON LINE)

イギリスも。

フランスのマクロン、ドイツのショルツも足並みを合わせる。マクロン「最初の要求は、コソボ北部の4つの自治体で、セルビア人の参加を得て、できるだけ早く新しい選挙を実施することである。そして、遅滞なく『セルビア人自治体共同体(CSM)』の結成を打診することが優先事項だ。」
ショルツ「コソボ情勢は深刻であり、エスカレーションを緩和するためには、双方の勇気が必要である。それは、市民が選挙に参加することを意味するが、CSMの結成も含まれる。」(KOSOVO ON LINE)

左より マクロン大統領、ショルツ首相

二人とも CSMのことを言ってる!

在セルビアのアメリカ大使、ヒル氏もCSMに触れている。「私たちは羅針盤と方向性を見失わないようにしなければならない。つまり、それはCSMの形成することと、コソボとセルビアを正常な関係にすることである。バルカン地域が和解し、EUとユーロ・アトランティック統合の方向に進むためには、それが必要だ。」(KOSOVO ON LINE)

アメリカもCSMに賛成かあ。

EUも同じ。前EUコソボ特使のペトリッチ氏は、「もしセルビア人が多数を占めるCSMの形成プロセスがすぐに開始されなければ、対話は失敗したと言え、戦略を変更する必要がある。コソボがCSMの要求を満たすのを、EUが長く待ちすぎたのは間違いだった。」(KOSOVO ON LINE)

コソボ・セルビア人を心配してくれてるのかな?
でも、彼らの意見が一致してるのが、怪しい。
なんか、下心でもあるのかな?

ないわけねえだろ。セルビアはCSMが成立して喜ぶだろうが、その見返りにコソボを正式に独立国として認めさせられるんだぞ。
となるとセルビアにはCSMだけが残されて、その他のコソボの地域、特にアメリカ軍基地がある地域は完全にセルビアから切り離されて、アメリカも安泰ってわけだ。


コソボの存在意義は「アメリカ軍基地」ってことか。

州都プリシュティナの南に位置するボンドスティール米軍基地
Wikimedia_Commons[Public Domain]

日本の存在意義も似たようなもんだろ。

・・・・・。


アメリカに楯つくクルティの言い分


一方、今回のことで、コソボの内側からもこんな声が上がっている。「コソボの未来のため同盟」会長のハラディナイ氏、
「NATOとの演習からコソボが除外されたことは、我が国の安全保障に対する警鐘である。この微妙な時期に民主主義世界全体に敵対するのは、非常に近視眼的だ。」
さらに、彼はクルティに辞任を要求した。

「彼には、コソボのために何か良いことをするチャンスが一生に一度しかない! 今日、辞表を提出しなさい!」(KOSOVO ON LINE)

コソボにもまともな人がいる。
クルティ首相、アメリカからおしおきされたこと、どう思ってるんだろうね。

アメリカがなんと言おうと、クルティは特殊警察をコソボ北部の市庁舎から撤退させることはないと言った。

おお! 気骨のあるヤツだ!

おめえは、どっちの味方だ?

だって、日本なら、アメリカになにか言われたら、すぐにしっぽ振って「ごめんなさい」だよ。なんか、爽快な気分だ。

クルティは、自分のしたことを間違っているとは思っていない。クルティ「怒れる暴徒が路上にいて攻撃すると脅している限り、特殊部隊は市庁舎にいなければならない。これが平和的な抗議活動であれば理解できたが、銃を乱射し『殺せ、殺せ』と叫んだ暴徒には無理だ。私たちは、このファシストの暴徒に共和国を渡すつもりはない。この危機の解決策は、暴徒がセルビアに戻るか、コソボの刑務所に収監されるかだ。」(KOSOVO ON LINE)

でも、銃を持っていないセルビア人に銃を向けたのは自分たちでしょ?
スナイパーも配置してたし。

まあまあまあ、日本人政治家で、アメリカに楯ついてここまで言えるヤツはいねえぞ。クルティの言い分も聞いてやろう。
「コソボは西バルカンで最も民主的な国であり、民主主義は停止することも人質にとることもできない 。コソボ・セルビア人のボイコットで投票率は低かったが、4月23日に選出された市長たちは、市庁舎にいて市民に奉仕する権利のある唯一の存在である。したがって、コソボ政府は、彼らに揺るぎない支持を与える。」
(KOSOVO ON LINE)

「コソボは西バルカンで最も民主的な国」なら、セルビア人を除外しないでほしいね。
でも、ここまで亀裂が入ったコソボとセルビア、これからどうなるんだろう?

5月31日現在、事件のあったズヴェカン市庁舎の周囲は、KFORによって有刺鉄線が張り巡らされている。現地はKFOR兵士だけでなく、増員された特殊警察ROSUと装甲車で緊張が高まっている。
(KOSOVO ON LINE)

平和に解決されますように。


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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