イスラエルの実業家 アブラハム・“ラミ”・ウンガー氏の船が紅海でイエメンのフーシ派に拿捕された理由

竹下雅敏氏からの情報です。
 11月19日、イエメン沖の紅海で日本郵船が運航する貨物船「ギャラクシー・リーダー」を、イエメンの反政府武装組織フーシ(アンサール・アッラー)が拿捕しました。フーシ派は21日未明(日本時間)にSNSで船を制圧する映像を公開。フーシ派は貨物船をイエメンまで連行したということです。
 拿捕された「ギャラクシー・リーダー」は、日本郵船がチャーターし運航する自動車運搬船で、“船の所有者は英国の企業だが、その企業の親会社を所有しているのがイスラエルの実業家だとされる”と報道されていました。
 ロシアのRT によれば、そのイスラエルの実業家はアブラハム・“ラミ”・ウンガー氏で、“イスラエルで最も裕福な個人の一人であり、総純資産は20億ドルを超えている”とのことです。
 ウンガー氏は、パレスチナ人を「ヒューマンアニマルズ(人畜)」と呼んだヨアヴ・ギャラント国防大臣や、モサドのヨッシ・コーエン元長官など、イスラエルの右翼政治家と緊密な関係を持つ人物で、モサドの工作員である疑いも持たれているとのことです。
 「彼の船が紅海でイエメンのフーシ派に拿捕された理由」は、これでよく分かりました。
 フーシ派の軍報道官であるヤヒア・サリー准将は軍事声明で、「わがイスラム教の教えに従い、イスラエル船の乗組員に対処している」と述べ、「敵イスラエルに属するすべての船、またはそれと取引する船に対し、わが軍隊の正当な標的となる」と改めて警告し、「ガザ地区への侵略が止まり、パレスチナの同胞に対する犯罪がなくなるまで、軍隊は敵イスラエルに対して軍事作戦を遂行し続ける」と強調しました。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

————————————————————————
ヘリで急襲…操舵室を一気に占拠『フーシ派』貨物船“制圧の瞬間”映像を公開(2023年11月21日)
配信元)
————————————————————————
イスラエルの億万長者、モサド、フーシの復讐:なぜ紅海で貨物船が拿捕されたのか?
転載元)
最近船がハイジャックされた億万長者ラミ・ウンガーとは何者なのか? – イスラエル諜報機関は彼とどんな関係があるのか?



今週、イエメンのアンサール・アッラー運動が紅海でイスラエル所有の貨物船を拿捕し、イスラエルとガザの戦争における新たな「前線」が開かれた。これに先立ち、ヤヒア・サリー准将は、イエメン人は同国の国旗を掲げて航行する船舶や、イスラエル企業が所有または運営する船舶を攻撃すると明言していた。サリー氏はすべての国に対し、そのような船舶の乗組員として働いている自国民を撤退させるよう呼びかけた。

「これらの船舶での航行や取り扱いを避けること。これらの船舶に近づかないよう、自国の船舶に通告してください」とサリーは言った。

イスラエル国防省は、同船の拿捕を「世界的規模の事件」と呼んだ。一方、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の事務所は、この事件の責任はイランにあると非難した。


ブルガリア、フィリピン、ウクライナ、メキシコの乗組員25人を乗せた貨物船ギャラクシー・リーダー号の船主のひとりが、イスラエルの実業家ラミ・ウンガーであることが判明した。


ラミ・ウンガーとは?

アブラハム・ "ラミ"・ウンガーはイスラエルで最も裕福な富豪の一人で、自動車輸入と不動産に幅広い関心を持つ実業家であり、レイ・シッピング社の会長でもある。ウンガーは、ソウルとイスラエル間の自動車貿易の強化に貢献したとして、韓国政府から表彰されたこともある。

ラミは1947年にテルアビブ北部で生まれた。非常に裕福な家庭の出身で、イギリスで教育を受けた。イスラエル国防軍(IDF)の信号部隊に所属した後、オックスフォード大学で法律を学んだ。1971年にテルアビブ大学法学部を卒業し、2014年にはブルガリアのニコラ・ヴァプツァロフ海軍兵学校から名誉博士号(Doctor Honoris Causa)を授与された。

1960年代後半、ウンガーはトレーラーやバンの空調システムの輸入を専門とする小さな会社を設立した。その後、イスラエルで最初のアウトビアンキ自動車、次いでランチア車の輸入業者になった。1972年には、住宅やオフィスビルの建設、航空機のレンタルに携わるイスラエルの大手企業、ウンガー・ホールディングスを設立した。

彼の会社Ray Shipping LTDは、数十隻の自動車運搬船とばら積み貨物船を所有している。1,000人以上のブルガリア人士官と技術者(その80%はニコラ・ヴァプツァロフ海軍兵学校の卒業生)が同社で働いている。

影響力のある友人とモサドとのつながり

2019年、ラミ・ウンガーはイスラエルで最も裕福な人物トップ30のリストに含まれ、その推定資産は20億ドルに上った。ハアレツ紙は、この実業家がイスラエルの政治家と広範なつながりを持っていると指摘した。また、2000年7月に汚職疑惑で辞任したエゼル・ワイツマン元大統領に関するスキャンダルにも触れている。おそらく、ワイツマンは1980年代半ばにウンガーから2万7000ドルを受け取っていた。

ウンガーはイスラエルのヨアヴ・ギャラント現国防相の親友であることが知られている。この実業家は2018年7月のFIFAワールドカップ決勝戦のチケットを彼に買っている。

ウンガーにまつわるもうひとつのスキャンダルは、モサド情報機関のヨッシ・コーエン元長官と彼を結びつけている。このイスラエル人実業家は、コーエンの自宅の向かいにシナゴーグを建設するために110万シェケル(34万1000ドル)を寄付した。寄付金はコーエンに直接支払われた。その直後、コーエンはウンガーがイスラエル人実業家マイケル・レヴィと韓国の自動車会社キアのイスラエルにおける代表権をめぐる争いを解決する手助けをしたことが知られるようになった。

画像はシャンティ・フーラがツイートに差し替え
ヨアヴ・ギャラント © Elad Malka (IMoD) / Handout / Anadolu via Getty Images

ラミ・ウンガーがモサドと結びついているのは、汚職スキームを通じてだけではない。たとえば、2014年に『ニューヨーク・タイムズ』紙が取り上げた、反イランの支持団体「反核イラン連合」にまつわる話題にも、この起業家が関わっている。ウンガーが仲介役となり、イランに協力的な企業に接触し、テヘランとの貿易関係を放棄するよう説得したのだ。

しかし、ウンガーの主な仕事は、イランと関係のある企業の指導者をリクルートすることだったという推測もある。ウンガーはモサド情報機関のエージェントとして行動していたという推論だ。諜報機関にとって、そのような企業は金に値する。イラン人はそのような企業を信頼し、イスラエルはその信頼を破壊工作やスパイ活動に利用できるからだ。

これは、イスラエルの大富豪が直接的、間接的に関与したことのほんの一部にすぎない。しかし、彼の船が紅海でイエメンのフーシ派に拿捕された理由を理解するには十分である。

アッバス・ジュマ、国際ジャーナリスト、政治評論家、中東・アフリカ専門家
この記事をソーシャルメディアでシェアすることができる:

Comments are closed.