注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
————————————————————————
NNNドキュメント 2つの“マル秘”と再稼働 国はなぜ原発事故試算隠したか?
転載元)
YouTube 15/8/23
10:15〜
2つ目のマル秘とは?
倉澤さん「今年、もう一つの報告書が、情報公開請求によって明らかになりました。『原子炉施設に対する攻撃の影響に対する一考察』。
1981年にイスラエルがイラクの原発を攻撃したことをきっかけに、外務省が日本で起きたときの被害を試算したものです。
しかし、63ページのこの報告書も、30年間公表されませんでした。この報告書の1ページ目をご覧ください。“「取扱注意」なるも実質的に部外秘”となっています。反原発運動などを考慮して、事実上マル秘とされたのです。
ナレーター:70年代に2度のオイルショックを経験した日本は、80年代、原発建設を積極的に推進した。外務省の報告書は、そんな時期に作られた。
試算には100万kW級の原発が攻撃されたと仮定し、3つのシナリオが書かれている。
その中で格納容器破壊のシナリオに重点を置いている。格納容器攻撃で電気系統を破壊されたり、余熱除去系の末端が破壊されたりした場合は、やがて炉心は溶融に至り、最悪18000人が急性被爆で死亡。
さらに、事故から100時間を超えると、原発のほうが原爆よりも残留放射能が多くなることも(書かれている)。
この外務省の報告書を元・日本原子力研究所の研究員で、著書に「シビアアクシデントの脅威」がある舘野 淳氏はどうみるか。
舘野 淳さん「1984年ですから、チェルノブイリの前。この時期に非常に正確に原子炉の弱点はどこかと分析していることに感心しました。熱を除去するところを攻撃するということで炉心溶融に至るシナリオで....福島事故と非常によく似ている。軽水炉の最大の弱点というのは熱であるということが、当時から専門家は知っていたんじゃないか」
ナレーター:1998年、北朝鮮の放ったテポドンは、日本列島を飛び越え、太平洋に届いた。日本の原発は全てミサイル攻撃の射程距離内となるのだ。
報告書にもミサイル攻撃の記述がある。『今日の誘導型爆弾(ミサイル)のもつ命中精度は極めて高いので、格納容器攻撃が一旦実行されれば、その器壁が破壊される危険性は高い』
聞き手「こういう研究が今まで行なわれていながら、公開されてこなかったということについてどう思いますか?」
舘野さん 「それは、原子力に関しては、「自主、民主、公開」の原則があることからいって、当然これを秘密にする事は論外だと思います。原子炉がそういう攻撃に非常に脆弱であるということを国民に隠していたということが非常に大きな問題だと思います。公開の原則というのは、原子力を始めたときの国民とのコンセンサス(合意)なわけですから、それに抵触するのであれば原子力を止めるのもやむを得ないと考えます。」
倉澤さん「公開の原則は、国民が原子力について判断するために最も重要な原則です。しかし政府は安全神話の下、ことあるごとにこの公開の原則をないがしろにしてきました。一方アメリカは最新の知見を動員して、その都度、最新の被害予測を国民に公開してきました」
ナレーター:アメリカは1959年の「WASH740」を皮切りに、時代時代で試算をドンドン進化させ、必要とあれば、新たな対策をとってきた。
ナレーター:スリーマイル原発事故が起こると、アメリカは徹底した対策をとった。事故後、一番変えた対策は何なのか。アメリカ原子力規制委員会の元委員長ヤツコ氏に聞いた。
グレゴリー・ヤツコさん:一番大きく基本的な変化は、どう緊急避難が計画されるかでした。事故後、FEMAという組織が作られ、原発の外での避難計画を審査、監督するという権限を与えられました。FEMAが原発の外の避難計画を検証して、NRCが原発内の避難計画の検証をします。避難計画に実効性がなければ、NRCは原発稼働のライセンスを与えないのです。
ナレーター:これに対し日本では、避難計画がうまくいくかどうかは再稼働とは関係がない。また、内閣府は自治体の避難計画作りを支援するがその実効性を保証する仕組みはどこにもない。
2011年アメリカで9.11テロが起こった。もし狙われたのが原発だったとしたら…、9.11テロの翌年、アメリカは原発に対しテロ対策を義務づける命令を出した。旅客機が突入しても壊れない設計を新設の原発には要求。
今ある原発には大破してもメルトダウンしない対策を求めた。さらに、全電源喪失への対策、冷却機能の強化。アメリカは、同様の対策を取るように日本に提案したが、これも封印され、活かされることはなかった。
そしてあの日を迎える。
福島の事故後、日本では原子力規制委員会が生まれ、新規制基準を作り原発に新たな対策を要求した。移動式大容量発電機(川内原発)。
浸水対策として水密扉(高浜原発)の設置。
フィルター付きベント(柏崎刈羽原発)の装備など、9.11後のテロ対策もようやく加えられた。
一見、盤石にも見える新基準だが。」
安倍首相「安全だという結論が出ればですね、(再稼働を、ま、進めていきたいと)」
原子力規制委員会 田中俊一委員長「(基準への適合性は見ていますけれども、)安全だっていうことは、私は申し上げません」
小泉元首相「(規制委は)安全とは申し上げられないって言ってるんでしょ。政府が安全だから進めるって。矛盾してるじゃない」
ナレーター:ヤツコNRC元委員長は、この「世界で最も厳しい」という日本の規制基準をどう見ているのか。
ヤツコさん「世界で最も厳しい基準などどこにもないと私は思います。地震活動の活発な地域にある原発においては、地震がない原発よりもより厳しい基準が決められていますが、そのことが原発をより安全にしているわけではありません」
ナレーター:さらに、この新しい基準には、決定的に足りないものがあるという原子力の専門家がいる。元原子力安全基盤機構の松野 元氏は…
松野元さん「再稼働の問題は、事故原因を特定することですよね。事故原因を特定しないままで、いま日本では裁判が行われ、安全審査が行われ、再稼働へ進んでいて。これはおかしい」
舘野淳さん「航空機事故なんかがあった場合ですね、事故原因が究明されないままそのタイプの飛行機を動かすことは、まあ普通は考えられないわけで。事故の本質を解明するということに関しては、臭い物に蓋をするような形で再稼働を急いでいる」
ナレーター:二人の主張の共通点は、事故原因の究明が十分でないという点だ。燃料は溶けてどうなり、格納容器はどこがどのように損壊したのか、わからないまま新しい基準は作られた。ヨーロッパでも航空機テロへの対策が。新設の原発には大型旅客機の突入に耐える設計を要求。
また、格納容器を二重にすることなどを求めている。
日本にも建設中の原発がある。Jパワーが青森県に建設中の大間原発だ。
新設の原発だが、二重の格納容器にするなどの設計変更は、日本では求められていない。新規制基準では、格納容器が損傷したらどう対応をするのか。その1つがこれ。
大型放水砲。高さ60メートルまで届く水で、亀裂から出る放射性物質を叩き落とすという。
倉澤さん「私の目の前にうずたかく積まれているのが新しい規制基準です。防潮堤や耐震強化、免震棟、そしてフィルターベントと、ハード面では強化されたことは間違いありません。しかし、この新しい規制基準の中には、書かれていないこともたくさんあります。
複数の原子炉が同時に事故を起こしたらどこまで対応できるのか。運転員のミスや故意による事故はどこまで防げるのか。 机上の計算だけでは割り切ることはできません。
松野 元さん「私が要求しているのは、例えば1つの発電所の中に7つも原子炉があった場合には、おたくの電力会社は福島みたいな原子力事故が起きた時に、何期までだったら安全に対処できるのかという宿題を電力会社に与えるべきだし、
火山に近い発電所があったら、火山に対してどこまでどうすればいいと思っているのかという宿題を与えて、答えがあればそれは再稼働がありますよね。それぞれに宿題を与えて、その宿題を解決した所から…」
(2011年7月の九電のやらせメール指示について、当時の報道映像)
ニュースZERO「九州電力は今夜、一般人を装ってこの番組に再稼働に賛成するメールを送るよう、関連会社の社員に指示していたことを明らかにしました。」
ナレーター:そんな九州電力が、川内原発の再稼働に臨む。
今月、およそ2年ぶりに日本で動き始めた原子力発電所。今も全国20基の原発で再稼働に向けての審査が行われている。
倉澤さん「再稼働を推し進める国と電力会社、そして原子力規制委員会の責任は極めて重大です。自主・民主・公開の原則は、果たして貫かれるのでしょうか。 説明責任は果たされるのでしょうか。福島原発事故の損害額は現在9兆円に達し、廃炉費用も含めると11兆円を超えるとみられます。事故が起きたらツケは国民が払うという構造は、何も変わっていません。新しい規制基準は、事故が起きることを前提としています。誰が責任を負い、誰がツケを払うのか。根本的な議論がされないまま、再稼働のラッシュが始まります」
編注)これ以降の映像はこちら→ https://youtu.be/0-OTxUOaeQo?t=1565
ナレーター:追伸 九州電力様 川内原発1号機は、通常運転時に放射性の気体を放出していますか? 九州電力からの回答は、「はい」。
私たちは、日本にあるすべての原発に同じ質問を送りました。その答えは
Q:貴原発は通常運転時に放射性の気体を放出していますか?
川内 はい
玄海 はい
伊方 はい
島根 はい
高浜 はい
大飯 はい
美浜 はい
敦賀 はい
志賀 はい
浜岡 はい
柏崎刈羽 はい
東海第二 はい
福島第一 はい
福島第二 はい
女川 はい
東通 はい
泊 はい
線量目標値を十分に下回っており、健康に影響はないとのこと。でも、知ってました?
文字起こし: http://togetter.com/li/864775?page=2
先日の田中龍作さんの記事の中で泉田知事がこの報告書について「田中委員長が知らないということであれば、日本の原発の安全性の確保というのは、一体どうなっているのか?」と述べていましたが、その点について自分で原子力規制委員会(03-5114-2190)に問い合わせてみました。田中委員長同様「そもそも原子力施設の設置者に対する規制で対処すべき性質のものではない」の一点張りでしたが、保安院時代とは違い現在の規制委員会は国民の命を守るために独自の立場で被害を想定し国に意見を言えるのではないかと指摘すると「検討する」とのことで、どういった検討がなされたのか、その報告は後日電話すれば受けることができるとのことでした。
“続きはここから”以降では、安倍首相が言う「世界で最も厳しい安全基準」の実態が明らかにされています。アメリカ原子力規制委員会の元委員長ヤツコ氏は「世界で最も厳しい基準などどこにもないと私は思います」と明言しています。新規制基準では、格納容器が損傷したら、放水砲で“亀裂から出る放射性物質を叩き落とす”そうです…。