パータ様からこの「ダイソー創業者」の情報が届いた時も、とっさに「百均」イコール「安物買いの銭失い」という言葉が脳裏をかすめましたが、この決めつけも見事に裏切られました。ありのままを受け止めるための識別は難しいです。
国内外に店舗を展開するグローバル企業「ダイソー」創業者、矢野博丈氏ご自身もまた「決めつけ」を覆すような方でした。成功者にありがちな「険」はなく、気のいいおじさんに見えます。東広島市福富町(旧 賀茂郡福富町)の大地主の旧家に生まれ、医者の父に倣い兄弟は皆国立大学医学部に進む中、一人「何をやってもうまくいかない」「運も能力ない」「人生に諦めて成功しようなんて思っていなかった」「儲けようとか、偉くなろうとか」そういう欲は無く、ただただ食べられればいい、という一念で「仕方なしに泣きながら走ってきた」とは、あまりにも成功者のエピソードらしくない言葉が並び、驚きます。
経営面も戦略などなく「行き当たりばったりの一生懸命」とは、周りの方もさぞかしハラハラされたと思いますが、そのサッパリ潔い姿勢が、不思議と人生を好転させたのでしょうか。
矢野氏の非凡なところは「価格が100円でも良いものを売りたい」という発想です。常識人であれば原価だの利益率だの気になって、自分自身がなかなかそのように信じられず踏み切れないところ、矢野氏には心底買う人に喜んでほしいという強い希望がありました。それはイコール「神様やお天道様が喜ぶような生き方」で「その生き方が運だ」と語っています。
矢野氏の失敗続きだったという厳しい人生から得られた「悟り」のようです。
ダイソーは結果的に大きな企業に成長しましたが、これは矢野氏の目標だったわけではなく、それ故に引退についても何ら執着がなく「体力の限界を感じて働けなくなったことが、社員やスタッフさんに申し訳ないから」という謙虚な理由で決められたそうです。世のブラック企業に聞かせてやりたい。
何度も自殺を考えるほどの窮地に立ちながら、それでも振り返ると働くことが楽しかったと思える人生とは何と幸せなことでしょうか。矢野氏の生き方は、今を生きる人たちを勇気づけてくれそうです。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
(中略)
去年まで会社でも予算を組んだことがなかったんです。47年間予算を立てたことがないんですよ。目標、ノルマ、予算なし。売り上げなんてお客様が買ってくれて決まるものなのに、私たちが勝手に決めても仕方がない。だから、行き当たりばったり。私、この言葉が好きなんです(笑)。
(中略)
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矢野氏「運をつけるにはどうすればいいか。やはり笑顔のいい人や前向きになって働く人についてくる。私も一生懸命働いたときに、運をつけていたのだと思います。儲けたいとか見返りを欲しがらずに、ただただ働いたんです。」