トランプ政権がイランに敵対する理由:同盟スンナ派君主国にとっての実存的脅威とドル覇権の維持 〜対イラン政策の主要推進者:イスラエル・サウジアラビア・MEK〜

竹下雅敏氏からの情報です。
 昨日の記事で、ポンペオCIA長官がサウジアラビアの皇太子にテロ対策賞を授与したという、まるでイランへの嫌がらせとしか思えない記事を紹介しました。この行為に対して、元CIA諜報専門家は、“我々はイランと核協定を再交渉するつもりだ”というメッセージを送ろうとしているとありましたが、冒頭の記事を見ると、正にこの通りだったということがわかります。
 現在のトランプ政権が行っていることは、明らかにイランに対する圧力であり、イスラエル、サウジアラビアの思惑に沿った動きです。情報の専門家であるフリン氏が対ISISとの戦いにおいて、イランが絶大な貢献をしていることを知らないはずがありません。マティス米国防長官が言った、“世界最大のテロ支援国家”という、イランへの非難が間違っていることもよく知っているはずです。問題なのは、彼らのこうした強硬なイランへの敵対的な姿勢は何なのかです。
 それに対する回答と思われる重要な記事が出ていました。これによると“イスラエル、サウジアラビアとイラン反政府集団ムジャヒディン・ハルク(MEK)”がトランプ政権の対イラン政策の主要推進者ではないかとしています。アメリカはイランにおける政権転覆の代理として、MEKは有用だと見ているようです。記事を見ると、トランプ政権の運輸長官イレーン・チャオと大統領主要顧問のルドルフ・ジュリアーニは、このMEKとつながりがあるようです。彼らは先月、トランプ新政権にMEKとの政治対話を呼びかける書簡を書いたとあります。
 彼らがMEKを使ってイランの政権転覆を考えている事は間違いありません。しかし、マティス国防長官とマイケル・フリン氏は、政権転覆は現実的ではないと思っていたはずです。彼らの思惑は、“イラン封じ込め”の必要性だと思います。
 なぜイランを封じ込める必要があるのかは、記事の中で見事に解説されています。サウジアラビアを含む同盟スンナ派君主国は、イランの中東における影響力が拡大することを、自分達にとっての“実存的脅威だとみなしている”わけです。またアメリカは中東の石油によって裏付けられているドル覇権を維持するために、“このサウジアラビア‐イスラエル枢軸と、それによるイラン封じ込めにもっぱら依存している”というわけです。実に分かりやすい説明です。
 問題はこうしたイスラエルに有利な動きをとっていたマイケル・フリン氏をなぜスティーブン・バノン主席戦略官がCIAと一緒になって排除しようとしたのかです。おそらくマティス長官とフリン氏は、ロシア・イランとの戦争を考えていなかったと思います。フルフォード氏が言っているように、ロシア、中国、アメリカの軍部は、戦争を起こさないことで合意していたはずだからです。しかし、バノン氏はイエズス会からトランプ政権内に送り込まれた人物で、カトリックが支配する世の中が来るためには、ロシア・イランとの最終戦争(ハルマゲドン)が不可欠だと考えていたはずです。このことが、フリン氏排除の理由ではないかと思います。
 フリン氏のイスラム蔑視は相当なもので、“イスラム教を「癌」と呼び、イスラム教徒に脅威を感じるのは「当然のことだ」”と発言しています。これは本心だろうと思います。こうした人物が国家安全保障を担当していたわけなので、大変危ういのです。マティス長官とともに、フリン氏はSSP同盟のメンバーのはずで、地球に全面的な情報開示をもたらし、人類を解放しようとしているはずです。そうした人物が特定の宗教に対してこれほどの偏見を持っているとなると、地球の真の解放という意味では救い難い感じがします。
 彼らは本当のダビデ・ソロモンのエルサレム王国が今サウジアラビア、アメリカが空爆しているイエメンのアシール地方にあったことを知らないのだと思います。旧約聖書で神によって約束された土地が現在のエルサレムとは全く別の所にあり、しかもその聖なる地を自分たち自身が空爆しているという、どうにもならない状況です。この人たちは一体何時になったら目覚めるのでしょう。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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フリン氏 ロシア大使との会話の内容を語る
転載元)
13日に辞任したフリン米大統領補佐官は、大統領補佐官として応じた最近のインタビューで、キスリャク駐米ロシア大使との会話では「境界を越えなかった」と述べた。

(中略) 

フリン氏は「これは制裁には触れていない。話をしたのは追放された35人についてだ。これは結局こういうことになった。全体として会話は次のようなものだった-『私は何が起こったのかを知っています。我々は全てを調査します』。私は、我々が制裁を見直したり、あるいは何かそのようなことをするつもりだとは一度も言わなかった」と述べた。

Washington Free Beaconが多数の消息筋の情報として伝えたところによると、オバマ前米大統領政府のメンバーらは、トランプ新大統領の国家安全保障システムを妨害し、イランとの核合意を維持するために、何カ月にもわたってトランプ新米政権のフリン前米大統領補佐官の信用を失墜させる秘密の活動を展開していいた。

消息筋によると、オバマ政権で大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)を務めていたベン・ローズ氏を含むオバマ氏の支持者らは、イランとの核合意に反対したフリン氏の信頼を損なうことを目的とした資料をメディアに渡した。

消息筋によると、フリン氏はオバマ政権によって意図的に隠された核合意に関する数多くの詳細を公開する準備をしていたという。


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トランプは一体なぜイランを標的にするのか
Finian CUNNINGHAM
2017年2月11日

(前略) 

トランプの新運輸長官として承認されたイレーン・チャオと、少なくとも大統領主要顧問の一人、元ニューヨーク市長ルドルフ・ジュリアーニは、いずれもイラン反政府集団ムジャヒディン・ハルク(MEK)が主催する集会で招待講演者として登場している。

(中略) 

イラン当局はMEKを外国が支援するテロ集団に指定している。

(中略) 

アメリカとイスラエルの諜報機関が画策した近年のイラン人核科学者暗殺も、MEK工作員と結びつけられている。

(中略) 

2012年、彼らはアメリカの外国テロ集団ブラック・リストから外されたが、ワシントンに本拠を置くシンクタンク、ブルッキングス研究所が“イランにおける政権転覆の代理”として、MEKは有用だとして、早くも2009年に勧告していたものに沿った動きだ。

(中略) 

先月、ジュリアーニや他の元アメリカ高官連中が、トランプ新政権に、MEKの政治部門との“対話を確立する”よう呼びかける書簡を書いたと、APは報じている。

このロビー活動の背景は、一体なぜトランプ政権が、イランに対する敵対的な姿勢を突然とったかの説明になるかも知れない。

(中略) 

トランプ戦略には、両国ともイランが、この地域に悪影響を及ぼすと過激な主張をするイスラエルとサウジアラビアからの情報が関係している。トランプは今月末ワシントンを訪問するイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフと会談する予定だ。二人は既に電話会談をしており、そこで二人は“イラン封じ込め”の必要性を話しあったと報じられている。

先週、イランに“世界最大のテロ支援国家”というレッテルを貼ったトランプの国防長官ジェームズ・マティスも、“イラン封じ込めの必要性”を含め、地域安全保障問題に関し、サウジアラビア国防大臣ムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子との緊密な連絡を共有していると報じられている。ワッハーブ派サウド家は、シーア派イランや、より民主的に進められたイスラム革命を、自分たちの王朝やペルシャ湾の他の同盟スンナ派君主国による支配にとって、実存的脅威だと見なしている。

アメリカ経済の全てがそれにかかっているオイルダラー覇権を維持するため、ワシントンの既成支配体制は、このサウジアラビア-イスラエル枢軸と、それによるイラン封じ込めにもっぱら依存している。サウジアラビアとイスラエル独裁制とのアメリカ関係の象徴的本質は、誰がホワイト・ハウスにいようとも無関係に、体系的で不変なのだ。

(中略) 

記事原文のurl: http://www.strategic-culture.org/news/2017/02/11/why-trump-targeting-iran.html

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