かんなままの「ぴ・よ・こ・とライフ」(35)育児の知恵

かんなままさんの執筆記事第35弾です。 
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かんなままの「ぴ・よ・こ・とライフ」(35)育児の知恵
テレビの映画やドラマになれてしまうと、人を傷つける言葉、傷つける行為が当たり前だと感じるようになると思うのです。
これはものすごく気を付けないといけません

出典:「ぴ・よ・こ・と」竹下雅敏(著)


メディア漬けの生活が与える「育児」への悪影響


市の事業として「初めてのママ講座」をしています。
連続6週間で子育ての第一歩を学ぶ講座です。その中でママ達に「やってみたらいいことあるかも、な宿題」を出しています。

授乳中にテレビやスマホを見ない。赤ちゃんにできるだけテレビを見せない。赤ちゃんのあやし道具にスマホやタブレットを使わない。というもので、やるかやらないかは自由です。

なぜ、こんな宿題を出すかというと、ほとんどのママが子育て中にテレビをつけ、スマホを使っているからです。「授乳中は何もすることがない」「誰かと繋がりたい」「情報が欲しい」という気持ちを簡単に満たしてくれる便利なツールですし、パパママ自身がテレビやファミコンで育った世代です。音が鳴っていないと落ち着かないという人も少なくありません。

赤ちゃんと二人きりで一番欲しい情報は「泣き止ませ方」と「眠らせ方」です。多分どの時代のママも同じ気持ちでしょう。昔は誰かが傍にいて教えてくれたり見本がありました。今は誰も教えてくれないどころか「迷惑」というチクチクビームが飛んできます。

その上、ママの声では泣き止まない赤ちゃんが増えたと言われています。それは胎児期からママの声を聞いている赤ちゃんが少なくなったせいではないかとのこと。生まれてからもママはテレビやスマホに没頭して無言。わらべうたを教えても声を出すママの方が少ないのが気になります。

その時、頼りになるのが「泣き止ませアプリ」です。無料でダウンロードできます。臍帯音からビートの効いたロックまで流れます。連続再生、タイマー付きです。「泣くと自動で再生してくれるのでわざわざ抱っこしに行かなくても済むので助かります」など感謝のコメントが寄せられています。

最近は赤ちゃんでも簡単に操作できるタッチパネルなので知育、遊ばせアプリも人気です。電子音と光の刺激で赤ちゃんの興味をごっそり引きつけ、「喜ぶ」「大人しい」「1人で操作できる」と、親はあたかも子どもが楽しく成長していると勘違いをしてしまいます。
タブレット中毒の乳児

そして、「人と目を合わせない」「指さししない」「言葉が遅い」「落ち着きがない」「人の話を聞かない」などの発達障害を疑われるような症状が出てきて受診してもメディア漬けの生活は関連付けされないまま、もっと深刻になるケースが後を絶ちません。
自閉症と診断された幼児

そもそも赤ちゃんは豊かな体験を5感を通して自分の中に取り込み、模倣し、応答、共感されながら育つようになっているのです。やがて自ら言葉を発するようになり、他者との関係性も生まれてきます。2歳までにその土台を築く必要があるのです。その前にメディア漬けになってしまうと視覚と聴覚のみの刺激を長時間受け、興奮と緊張状態が続きます。そこには応答も共感もなく関係も築かれません。特に0歳児の間は先端的、器質的障害に近いダメージを受けるとさえ言われています。これが「2歳まではメディアは見せないでください」と警告されている所以です。

pixabay [CC0] 1 & 2 & 3 & 4



5感を通しての体験ができないメディア漬けの遊び


やがて2歳を過ぎると見立て遊びができるようになります。大人しく散らかさないで遊んでほしいのが親の願いです。「知育感覚遊びやごっこ遊びアプリ」だと様々な疑似体験がエンドレスでできます。スポンサー付きでクーポンがもらえたりします。5感を通しての体験があってこその見立て遊びなのに、子どもはタッチするだけです。現実世界のお店でネットと違う展開になった時に戸惑うかもしれません。そもそも子どもの遊びと発達を知らなすぎます。

更に怖いのが戦隊ものや暴力ゲームです。昔の戦隊ものは悪者は悪者らしい言動でわかり易かったのですが今のドラマは悪者もヒーローも区別がつきません。やっつける意味もはっきりしません。見方によっては集団でいじめているようにしか見えません。子ども達は色々な装置やビームを出して、ただやっつける行為に憧れて、電子音と光のおもちゃを振り回して他の子に襲いかかります。手加減がわからないので危険です。

メディアの授業で小学生に「なぜ○○ハンターを見てはいけないかわかる?」と聞くと「グロイ」「エグイ」と答えます。それをいつでもどこでも長時間繰り返し見ているのです。初めて出会う情報が一番影響を与えるし、まして見ようと思っていないショックな映像だったら・・・子どもの潜在意識に与える影響は計り知れないものがあります。

そして、女の子用の内容はアダルト?と思うような恰好やしぐさが要所に見られ、小さい女の子に何をさせたいの?と心配になります。現に子ども達に「将来何になりたいですか?」と聞くと「アイドル」「○○レンジャー」などメディアの影響が大きく、決して生身のパパやママではないようです。


子ども達が安心して育つことのできる環境を!


さて、初めてのママ講座に来たママ達は、まじめに宿題をしてきてくれます。

赤ちゃんが時々飲みやめて私を見ていることに気がつきました
「寂しいのでずっとテレビをつけていたのですが、消してみたらよく寝てくれるようになりました
「テレビを見てしまうので散歩したら楽しかった」
なぜダメなのかを知りたかった。教えてもらって良かった」

などの感想を言ってくれます。

でも時には

テレビを消したら家族から怒られた。刺激が大切と言われた
「テレビを消したら赤ちゃんも寂しそうだった」
「無理」

という正直な気持ちも話してくれます。問題はテレビやスマホにあるのではなく、使う人の背後にありそうです。

今や社会全体が子どもを育てる養育力を無くしています。経済至上主義で大人の発想や都合で世の中が動いています。子どもの成長にダメージを与えるものが堂々と製品化され、赤ちゃんアプリと書きつつ利用規約には対象年齢は4歳、効果を保証しない、責任も負わない、与えた保護者の責任と明記されています。そもそも企業側はPL法で守られているのです。それを読まないで安易に与え続ける親。どう責任を取るのでしょうか?子どもの発達する権利、学習する権利。親は安心して育つ環境を作る義務。社会はそれを支援する義務と責任があるというのに。

想いは溢れても、できることは足元。目の前のママ達に伝えて励まし、そこで見えてきたママ自身や家族の問題を問いながら支援するしかありません。
でも、すぐに赤ちゃんの笑顔や反応が返ってきます。それを見たママはどんな講義を受けるより納得します。本当は子どもの幸せを願っているのです。

pixabay [CC0]


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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