ままぴよ日記 5

 退院して家庭での子育てが始まりました。お国はちがっていても、赤ちゃんの育ちは一緒です。でも、子育てに関する考え方が少しずつ違っていて、その様子を見ながら日本の子育て事情を考えてしまいました。
(かんなまま)
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おっぱいの不安



2日目に退院してすぐに黒い胎便が出ました。初乳は少し出始めましたが足りているようには見えません。赤ちゃんはおっぱいが欲しくて泣いて、必死で吸い付いては疲れて眠ってしまいます。その繰り返しで眠れない夜を過ごした翌朝、ドアのチャイムが鳴りました。こんなに朝早く誰だろうと思ったら、おなじみの助産師さんが体重計を抱えて満面の笑顔で立っていました。

pixabay[CC0]


そして、どんどん家の中に入ってきておっぱいをあげている娘の所に行き、「昨日は眠れた?」「おっぱいはどうだった?困ったことはない?」と、まるで夜中の状態を見ていたかのように聞いてくれました。娘もホッとしたようでおっぱいの相談をしていました。「ちゃんと初乳は出てるし、焦らなくても大丈夫」と言ってくれ、赤ちゃんをチェックしたり、家の中を見回しながら赤ちゃんにとって快適な環境はどんなものかをアドバイスしてくれました。

以前は赤ちゃんの自立を促すために寝室は別にするのが常識だったようですが、今は母子愛着のために母子同室を推奨されていました。おっぱいをあげる場所やおむつを替える場所もチェックされますが、これは大事なことだと思います。おむつはいつも同じところで替えるというのが習慣になるのです。

それにしても、孫は4150gで生まれたのに3700gになり10%以上も体重が減ってしまいました。泣きすぎて声もかれてしまいました。2~3日飲まなくても大丈夫だと分かっているのですが赤ちゃんの悲痛な泣き声を聞き続けていると苦しくなって焦ってきます。今後出るという保証もないので娘夫婦の頭の中はおっぱいの不安でいっぱいです。お白湯をあげて見たら?とアドバイスしても哺乳瓶を使いたくないと頑なです。この不安を乗り越えておっぱいが出るようになるまでが最初の難関です。


こんな時は周りの励ましがとても大切です。本人たちはこれでいいのだろうかと迷いながらも必死です。それなのに周りも不安になって「大丈夫かしら?」「おっぱいが足りないのよ。ミルクを足したら?」「ほかに問題があるんじゃない?」と言ってもっと追い詰めてしまうのです。

現実、赤ちゃんは生まれた時に水筒と弁当を持ってきていると言われているように、しばらく飲まなくても大丈夫です。むしろ飢えていた方が吸い方も上手になるし、唾液も出るのでいいと言われています。このギリギリの時期こそ、上手くサポートしてもらったら誰でもおっぱいが出るようになるゴールデンタイムなのです。生後1週間が鍵でしょう。オーストラリアは何と1週間、毎日助産師さんが来てくれました。


お母さんと子どもの人生観を変えてしまう「いいお産と産直後の幸せな体験」


残念ながら日本ではこの時期に産婦人科で安易にミルクを与えたり、家では不可能なのに医療用の体重計でグラムまで母乳量をはかって足りない時はミルクを足すという指導をします。退院するときは粉ミルクのサンプルもくれます。逆に母乳指導が行き過ぎて母親を追いつめる場合もあります。

入院生活はゴージャスで、母親主体の快適さを売りにしてホテルのような部屋、母子分離、マッサージ、豪華な食事、たくさんの面会客・・・お母さんは大切にされていると勘違いして何も身につかないで帰ってしまいます。そして、1990年代までは1週間入院していたのが4~5日になってしまいました。退院後の支援はほとんどありません。

pixabay[CC0]



私はこの入院期間を赤ちゃんのいる生活への練習期と捉え直す必要があるのではないかと思います。例えば、授乳や抱っこ、おむつ替え、沐浴の伝授、その後の母体のケア、生活指導だけでも大変なことです。是非、専門の助産師さんや子育てアドバイザーが産後訪問も含めて直接指導できる体制を作りたいものです。(産前産後の切れ目のない支援として子育て世代包括支援センターが出来つつあります。フィンランドではネウボラと言います)

ただ、もう1つ落とし穴があります。
娘は妊娠中からお世話になっていた助産師だったから、気軽に家の中に迎え入れて何でも相談していましたが、日本ではどうでしょうか?「産後、泣きたいほど困っていたけど、知らない保健師さんが家に来るのは嫌だった。掃除も片づけもできていないし、流しもそのまま。何もできない親だと評価されるのが嫌で断った」「健診時のアンケートも「子育ては楽しいですか?」の項目で、心では助けて!と叫んでいるのに要注意人物と思われたくないから「楽しいです」と答えてしまってもっと落ち込んだとママ達が正直に話してくれます。信頼関係ができていないと相談しないものです。

とはいえ「いいお産と産直後の幸せな体験」はそれからのお母さんと子どもの人生観を変えてしまうと言っても過言ではありません。逆に希望したお産が出来なかったり、産後の不調で自己肯定感が下がってしまうことがあります。自分はいい親ではないという気持ちに襲われて産後鬱にもなりかねません。

あい∞ん(挿絵)


かんなままが提案する、安心して子どもを生み育てられる社会


是非、お産も自分の生き方と捉えて、どんなお産をしたいのか「バースプラン」をたててほしいと思います。それは妊娠した時から始まっており、食や働き方の見直し、夫婦関係の構築でもあります。それがうまくいくと母子愛着が生まれ、生命讃歌、過去の負の感情を癒し、夫婦円満で世界平和にも繋がるかもしれません!

又、同時に祖父母の寄り添い方講座が必要だと思います。ちょうど高度成長の時代で、紙おむつが始まりミルク育児が流行していた頃に子育てした世代です。ここで子育ての伝承が途切れてしまいました。そして今の親も子育てのイメージが湧かないまま親になっているのです。

やがて、「今の子育て常識の異常さ」に気が付かなくなり、問題があった時に「不安を抱えながらも待つ力」がなくなり、正解を求めてネットをググり、自分の都合のいい情報だけを受け取り、それに合わせて子育てしようとします。でも赤ちゃんは1人ひとり違います。だから思い通りにならなくてもっと不安になります。子育てセミナーに参加したママ達が、他の親子と交流したり、直接人に聞いて初めて安心できたと話してくれました。

pixabay[CC0]


マタニティセミナーが各地で行われていますが、せっかくパパも来ているのに交付金の説明、妊婦のボディを着る体験と沐浴指導だけの所がほとんどです。仕事優先の社会でその時間さえ取れない、聞いても実感がわかなくてスルーする人も多いようです。妊娠期のうちに母体の事、赤ちゃんの事、生まれた後の生活、特に夫婦の協力など伝えたいことがたくさんあるのにと思います。労働者の権利として働き方に組み込む必要性も感じます。

最近は女性も自分の性を無視して仕事中心の生活になり、結果的に高齢出産や不妊治療の増加となって自分の体を痛めてしまいます。子どももリスクが高くなります。働くのに反対しているのではありません。女性は子どもを生まなければいけないと言うつもりもありません。社会がもっと成熟して安心して子どもを生み育てられるように、出産や子育てを出世の邪魔とか社会のお荷物と捉えることを辞めるべきです。経済優先社会の都合に流されないでもっと命を大切にしてほしいと思います。


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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