ままぴよ日記 32

 マドレボニータの産後の実態調査で約8割のママが産後鬱の症状を感じていたと答えました。そして、国立成育医療研究センターと聖路加国際大、東京大の産後1年未満の自殺件数や背景を明らかにする調査で、産後鬱による自殺が8.7人/10万人で周産期死亡の3.8人/10万人を上回ったことがわかりました。
 助けを必要としている奥さんを見ながら育児休暇を取りたいと思っている父親は79.5%いるにもかかわらず実際に取ったのは5.14%。育児休業の制度があるにもかかわらずです。それも5日未満とのこと!
 何と多くの人が社会の中で自分の内なる声を抑えて生きているのでしょう!今回は日本人の同調圧力の話を書きます。それもチョー恥ずかしい私の涙の体験から・・・。
(かんなまま)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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突然の私の涙


いきなり、5年生の女の子から「ずるい!」と言われてしまいました。「えっ?なぜ?」と聞き返しました。「おばちゃんは去年オーストラリアに行って、今年はボストンに行ったくせに又オーストラリアに行くなんて!」と痛いことを言うのです。


実は私もボストンから帰ってきてすぐに「行く」なんて言いづらいなあ~と思っていたところです。前回は娘の手伝いという大義名分がありましたが今回はそれがないのです。なぜって・・・行く理由が「会いたいから」だけなのです。64歳にもなって「行きたい!」とポロポロ人前で泣いたのです。突然の涙に私自身が一番びっくりしました。

いきさつはこうです。

ボストンから帰ってきて一か月半後、息子家族と甥の家族が一緒にオーストラリアに行くことになりました。娘のところに遊びに行くのです。夫婦とも働いているのでお互いの休みを調整してやっと1週間休みが取れました。子ども達は学校を休ませて行きます。

日本では仕事を一週間休むのは大変なことです。その上、夫婦同じ日を確保するのは至難の業でした。初め、5日間で行くと言い出したほどです。子ども達まで「えー!そんなに休んだら怒られるー。ずる休みだもん!」と不安そうです。

私は「ずる休みじゃないよ。家族で楽しむための時間は大切よ」と言いました。「えっ?もしかして行きたくないの?」と確かめたら「行きたい!!」というのです。でも先生が許可してくれるか?友達がいろいろ言わないか?が心配だというのです。でも結局「行くぞ!」と勢いに任せてチケットを取りました。

その様子を見ていた私が「いいなあ~。私もかわいい盛りの〇君(孫)に会いたいなあ~」と、つぶやいてしまいました。それを聞いたみんなが「一緒に行こうよ!」と言い出したのです。その場にいた夫まで「留守番は慣れました。行ってきていいよ」と言うではありませんか!「えっ?この前帰ってきたのよ」というと「行きたいんでしょ」とほほ笑んでくれています。えっ?本当にいいの⁈

出発の10日前の話です。でもカレンダーを見たら仕事が入っています。子育て広場の仕事です。子育てセミナーに組み込まれた仕事なので日程の変更はできません。諦めました。



会いたい気持ち


ところが、私の中で何かが動き始めました。孫に会いたい気持ちが沸々と湧いてきたのです。かわいいだろうなあ~、抱きしめたいなあ~。「歩き始めたよ。写真見て、ばあばって言うよ」と聞いて喜んでいたけれど会えるとは夢にも思っていなかったので平気でした。

でも・・・「本当は会いたい」という自分の本心に気が付いたら会いたくてたまらなくなってしまいました。今回は無理でもいつか行けるかしら?と思ってスケジュールを見たら週に一回のセミナーが来年までぎっしり詰まっています。このセミナーの効果が市から認められて回数が増えたのです。このままでは休めないことが分かりました。

多分、ボストンの娘家族と別れてきたばかりで感傷的になっているのでしょう。フィンランドの息子とも何年も会っていないし、当分会えそうにありません。その上、会いたいという本心がわかっても自分で行けないように仕事を組み込んでいる現実。自分で自分を縛ってアホだなあ~。

夫の顔を見ては「〇君に会いたい!」と涙が出てきます。食器を洗っている時にもポロポロ涙が出てきます。これは重傷だ!と思って、ダメもとで仕事場に相談しました。そのままの気持ちを伝えるしかありません。でも、結果は「休まれたら困ります。それを許せばみんなに示しが付きません。協調性が乱れます」という返事でした。ああやはりそうか、と思いました。今までの私だったらここでおしまいにします。

でも、私の中で「示しがつかない?協調性が乱れる?」と新たな疑問が生まれました。

アメリカやオーストラリアで個人の生活を尊重する働き方を見てきたばかりでしたから日本社会の「示しがつかない」「協調性が乱れる」という見えない縛りに疑問が出てきたのです。病気や葬式で突然休むのは仕方ないけど「急に行きたくなったから休みます」を許していたら仕事が成り立たなくなるし「ずるい!あなたばかり好きなことして!」と皆から文句が出て厄介なことになるという訳です。

今の日本社会では「足が向かない」「何だかだるい」「休みたい」などは休む理由になりません。「甘えている!」とおしかりを受けます。でも、これは生きている中で出てくる当たり前の心と体の不調です。それを抑えて頑張ると悪化します。頑張らなければと思うほどエネルギーが枯渇して頑張れなくなります。そして行けない自分はダメな人間だと思い込むのです。


白状すると「示しがつかないから休まないでください」と言われて電話を切った後、仕事に対する疲れが出てきました。えっ?やりたい仕事でしょ?ライフワークでしょ?忙しくてもママの喜ぶ顔が私の喜びなのになぜ?

そうです。仕事が負担なのではなく、出てきた自分の気持ちに向き合えなかったストレスの疲れです。とりあえず、今は私の気持ちを受け止めて収めようと思いました。

私の事はもう大丈夫。でも仕事に関しては、皆のために話し合おうと提案しました。私の職場は私達で作りあげた職場です。お母さんたちの声なき声に耳を傾け、支えていくための居場所。学校の行き渋り、不登校の問題なども真剣に考えてきました。そこで仕事をしている者同士が「示しがつかない」で忖度し合ってはいけないと思いました。

そして、なぜそう思ったかを話しました。「ごめんなさい。これは私の問題です」と言いながら涙が溢れてきました。あはは!まるで子どもです。この年になって、こんなことで泣くなんて!と思いながらも涙が止まりません。とうとう泣きながら笑いだしてしまいました。

見回すとみんなもらい泣きしています。「ほんと、子どもみたいね!」と言いながら大笑いしてしまいました。「これって、わがまま?」「お互いわがままは言えないと思って我慢しているよね」「みんなの気持ちを尊重する前に事なかれ主義で我慢し合って調和を保っているのよね」「お互いが自分の気持ちを言えて、どうすればいいかを話し合いながら働けたらいいね」「これが本当のお互い様だね」と不思議な展開になっていきました。

その上、「見えない心のブレーキを取って、新しい窓を開けてくれてありがとう!行ってらっしゃい、私達でフォローできるから」と言ってくれたのです。自分のことはあきらめて今後の働き方を提案しに行ったのに、いきなり「間に合うでしょ!行ってらっしゃい!」と笑顔で進められるとは・・・。

「えっ?本当に行っていいの?」とキツネにつままれた気分でした。帰りの車の中で「こんな展開になるなんて、神様ありがとうございます!!」と言いながら今度は嬉し涙が出てきました。慌ててチケットを手配しました。2日後のフライトです。奇跡的に息子たちと同じ飛行機が取れました。オーストラリアの娘もベビーシッターが来る!と大喜びです。


そして不思議なことにフライトの時間を確かめたら15時発。11時まで仕事をしても間に合うことがわかりました。感謝の気持ちでいっぱいの私は仕事場にラゲージを持ち込んでギリギリまで仕事をしました。皆に喜んでもらえた喜びと、孫に会える喜びに満たされて飛行機に乗る事ができました。

そんな展開で「おばちゃんも一緒に行くことになったよ。よろしくね!」「おばちゃん、ずるい!だって、この前ボストンに行ったばかりでしょ」と言われたという訳です。

その子は今、学校で保健室登校をしています。とても利発ないい子ですが、自分の考えをはっきり言うので先生の攻撃のターゲットになって教室に入れなくなったのです。幸い、保健の先生が理解してくださって保健室登校をしているのですが、今度はクラスの子から「ずるい!自分ばかりラクして!」と言われ続けていたのです。「ずるい」と言われて嫌な思いをしているはずの子が、私に「ずるい!」と言いたくなるって何なのでしょう?

Author:Douglas P Perkins[CC BY]

自分を抑えて我慢できるようになるのが大人?


私達は生きていくうえで当然の権利として、学ぶ自由、遊ぶ自由、自分を活かして働く自由、休む自由、NOという自由があるという事を認められるべきです。これは子どもを育てる中で嫌というほど確認させられたことですが、残念ながら日本社会は成長していく中で人が作った規律に支配され、自分を抑えて我慢できるようになるのが大人だと勘違いしています。

5年生のお姉ちゃんは自分だけ楽しんだ代わりにお土産を買っていかなければいけないと気にしていました。何と、買い物リストにはクラス全員の名前がありました。小学生でこの気の使いよう?!

3年生の孫は学校の先生から1週間分の宿題をドーン!と出されて大変でした。旅行中であっても皆に遅れないように勉強しなさいとの配慮?です。帰りの飛行機の中でも眠たい目をこすりながら算数のドリルと漢字の書き取りと日記に格闘していました。

私はみんなが理解して送り出してくれたからスッキリ!かわいい盛りの孫に会えて夢のような時間を過ごすことができました。この時間を快くくれた広場のスタッフと家族には感謝しかありません。又頑張るぞ!という気持ちが湧いてきました。

さて、その後の便りで5年生の先生は複数の保護者からクレームが来てクラス担任から外されたそうです。そして廊下で生徒を捕まえては「私はそんなに怖かった?」と聞いて回っているとのこと。宿題をたくさん出した孫の先生は鬱病になって1か月休んでいるそうです。疲れているなあ~みんな。

Author:Ryo FUKAsawa[CC BY]

オーストラリアの娘が勤めている大学はブランケット休暇が年に10日間認められています。朝起きて「今日は体が動かない」という日のための休暇です。それが労働者の権利として保障されているのです。娘はまだ取った事がないけれど、いつでも取れるという安心感があると言っていました。ほとんどの人はそれを使い放題にすることはありません。むしろ安心して働く意欲につながります。それは心の保険なのです。


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は8人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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