ユダヤ問題のポイント ― 特殊稿9 ― カバラ(1)

 バラ十字会日本本部がカバラについて解説しています。バラ十字会は通信教育をしているので、受講者にはその中身を伝えていると思えます。
 カバラの語ですぐに結びつくのが魔術だと思いますが、これは正解でしょう。そしてカバラから連想されるワードが、タロットカード、数秘術、占星術、生命の樹といったところでしょうか。
 カバラは非常に雑多なものを内包しているのですが、前述のワード中では「生命の樹」のみは確かにカバラを知るのに極めて重要でしょう。しかし他のものは枝葉末節、もっといえば本質からすれば、イミテーションというかダミー的な要素があると感じます。
 お遊び程度ならともかくも、タロットカードや数秘術、占星術をカバラの本質として主題に取り上げて入り込むと、雑多で「ごった煮」のカバラの迷宮の中にさまよい続けることになりかねないと感じるのです。
 翻ってこのように雑多で複雑なカバラをバラ十字会がなぜ教えられているのか? これは当たり前のことですが、バラ十字会がカバラの本質と中身をよく知っているからでしょう。薔薇十字がカバラの根幹だからです。
 既に外伝23あたりで見たように、薔薇十字とは、薔薇に象徴される女性器と十字に象徴される男性器の結合、即ち「聖婚儀礼」「性錬金術」を意味するのです。これがカバラの根幹であり核の部分です。
 イエスの所属した原始エルサレム教会(クムラン宗団)がカバラの源流でもあります。
(seiryuu)
————————————————————————
ユダヤ問題のポイント ― 特殊稿9 ― カバラ(1)


「ごった煮」のカバラ体系 〜 グノーシス ≒ ミトラ教 ≒ カバラ ≒ 神智学


カバラの生命の樹
Wikimedia Commons [Public Domain]

カバラとはユダヤ神秘思想とされ、一般にはものすごく高邁で複雑神秘で理解し難く、近寄りがたいものだとの印象があるかと思います。実際にいざカバラ全体を説明しようとすると大変に難しいです。その原因は、私が門外漢でカバラの中身を経験理解していないところにもあるのですが、カバラに関わる人間たちがカバラをわざとわかりにくくしている(そうさせる理由もありますが)点があるのと、それ以上にカバラと一口に言ってもカバラが非常に雑多で、いわば色々なものの「ごった煮」である点にあります。

バラ十字会日本本部の「資料室」では「カバラ」を自称している伝統的な思想体系にも、ユダヤ・カバラ、クリスチャン・カバラ、ヘルメス・カバラに分かれること。それらが先行する体系から「考え方や用語や技法を借用」して独自の形で使用しながら、「さらに、他の系統の伝統思想をそれに織り交ぜています」とし、更には「近年は『ニューエイジ・カバラ』とも呼べそうなものまで出現」と解説しているような具合です。

「カバラ」は「ごった煮」なのです。カバラというと超古代からのものとのイメージがあるかも知れません。しかしカバラという名称自体はそれほど古いものではないのです。

カバラの重要聖典が「形成の書」「清明の書」「光輝の書(ゾハル)」3つで、中でも最重要なのが「光輝の書(ゾハル)」とされます。「形成の書」は3〜6世紀に形成。「晴明の書」は12世紀に、「光輝の書(ゾハル)」は13世紀にそれぞれ編纂され「出現」したのだとされます。この「清明の書」と「光輝の書」によって「カバラ」との名称体系が構成されたと見られます。

「カバラ」とはウイキペディアの同記事で「『受け入れ』『伝承』を意味する。」とあります。過去に成立していた様々な神秘思想や技法などを受け入れて独自に組み立て直したのが「カバラ」といえるでしょう。


それでは「カバラ」とは一体何の「ごった煮」なのか? 一口で言えばキリスト教(カソリック)から「異端」として攻撃排除された神秘思想や技法です。グノーシス主義などが弾圧されたのですが、キリスト教から最も激しい攻撃と弾圧を受けたのがミトラ教です。ミトラ教について特殊稿5で次のように触れています。

当時最も勢力を持ち、世界初の世界宗教と評しても良かったのがミトラ教でした。原初はアーリア人の宗教で、地域的にはイラン高原あたりが起源となるのがミトラ教で、ペルシャ、インド、中東全域、エジプト、欧州、中国へと広がり、その中で様々な宗教をその中に包含していったと見られる」。

このミトラ教は現代の神智学になっているのですが、結論から言えば「カバラとはミトラ教だ」といえるほどなのです。大雑把に示すと次のようになります。

 グノーシス ≒ ミトラ教 ≒ カバラ ≒ 神智学 

そしてこれら神秘思想の中核にあるのが「錬金術」です。

錬金術ブームを生んだカバラ 〜カバラの源流は秘密文書


過去において「異端」とされ歴史の地下に埋没していたその種々の神秘思想や技法が、12、13世紀に改めて「カバラ」として体系づけられて復活し「出現」してきたのですが、これは「錬金術」と深く関連します。

12世紀にイスラム世界から欧州に「錬金術」が輸入され研究されるようになったとされます。そして13世紀にカバラの中心聖典の「ゾハル」が出現。その後14世紀には欧州で「錬金術」ブームが湧き上がります。

実はこの錬金術ブームこそがルネサンス勃興に繋がるのです。錬金術ブームはイスラム世界とキリスト教世界の接触がその始まりとなるのですが、これの前提となるのが十字軍遠征であり、十字軍遠征と切り離せないのがテンプル騎士団でした。

1096年開始された第1回十字軍遠征でパレスチナのエルサレム陥落、1120年頃に創設された9名のテンプル騎士団騎士がエルサレムに赴きヘロデ神殿跡の地下を発掘し、イエスなどが所属した原始エルサレム教会(クムラン宗団)が秘匿した膨大な秘密文書を入手。約1000年間地下に埋設され発掘された秘密文書が、キリスト(ユダヤ王)を生みだす器となる知識文献、つまり「聖杯」の一部でした。そしてこの秘密文書がカバラの原点となっているのです。

表示されていないPin画像はこちら
編集者註:フリーメーソンの第13階級「ロイヤル・アーチ」のトレーシング・ボードが示す神殿の発掘の様子

カバラ教育研究所などでは「ゾーハルは西暦2世紀から11世紀までの900年間隠されてきました」と解説しています。「清明の書」と「光輝の書」は「聖杯」の秘密文書を再編集し作られたと見るのが自然です。テンプル騎士団によって発掘された秘密文書は多岐に渡るでしょうが、核になるのが「錬金術」です。その秘密文書が「清明の書」と「光輝の書」として再構築されて「出現」し、その体系をカバラと名付け、イスラムの錬金術知識と相俟って欧州での錬金術ブームを生み出していった。こう見ると全てが符号していきます。

原始エルサレム教会(クムラン宗団)の中心教義は「錬金術」つまり「性錬金術」だったのです。これを別角度で示すと 原始エルサレム教会はほぼミトラ教だったということです。エルサレム教会はエッセネ派に属し本部はエジプトのアレクサンドリアにあったのです。当時のアレクサンドリアは『レンヌ=ル=シャトーの謎』P146に次のようにある通りだったのです。

「紀元1世紀ごろのアレクサンドリアは秘儀活動のまさに温床で、そこではユダヤ教やミトラ教、ゾロアスター教、ピュタゴラス派、ヘルメス思想、新プラトン学派の教えが蔓延し、そのほかの無数の思想と結びついていた。あらゆる種類の教師がおり…」。


カバラの魔術は白か黒か? 〜サバタイもカバリスト


ミトラ教には最初から「最終戦争、救世主降臨」の終末思想が付随していましたので、カバラにも必然的に思想として終末思想が付随しています。そしてミトラ教などもそうであったように、カバラが用いる技法が錬金術なのです。

特殊稿5などで既に見ているように、錬金術とは通常での鉛のような身体とその精神を若返らせ、軽く柔軟に、いわば輝く黄金の状態にさせるためのものです。いわゆる『不老長寿』『不老不死』の妙薬(「賢者の石」を作りあげるのが目的」です。

このために性欲・性エネルギーを活用するので「性錬金術」なのです。性を用いたマジック(魔術)です。カバラは魔術として語られますが、その根幹部分がこの「性錬金術」となるのです。

魔術には必ず白と黒がついて回ります。性錬金術の黒魔術とは悪魔儀式が付随します。極端な具体例は幼児に対する強姦、殺人、食肉で、この悪魔儀式を通じて若い性・生命エネルギーを奪って吸収し、鉛の心身から黄金の心身を手に入れようとする性錬金術です。ミトラ教はこのような黒魔術の部分は削ぎ落としていたはずで、エルサレム教会の性錬金術は白魔術に分類できたでしょう。

フリーメーソンの儀式でのバフォメット
Wikimedia Commons [Public Domain]

しかしカバラはどうでしょうか? カバラは異端とされたあらゆる神秘思想と技法の「ごった煮」です。そしてエルサレム教会が所属するエッセネ派の本部があったアレクサンドリアには「無数の思想」と「あらゆる種類の教師がおり…」という状態だったのです。この中には「悪魔崇拝思想と黒魔術の教師がいなかった」と見るのはあまりにも無理があります。エッセネ派がそれを実践として駆使しなかったとしても、悪魔崇拝思想や黒魔術とは頻繁に接触していたと見るのが自然であり、それを秘密文書に入れていても何らの不思議はないでしょう。「ごった煮」のカバラはこういった猛毒部分も「受け入れ」「伝承」してもいたでしょう。

事実としてこの「ユダヤ問題のポイント」の重要人物として取り上げてきた二人、「背信のメシア」サバタイ・ツヴィと「サタニック・メシア」ヤコブ・フランクはカバリストだったのです。彼ら二人はカバラの思想(終末思想)と技法(黒魔術の性錬金術)を背骨として活動を展開したのです。

サバタイ・ツヴィ
Wikimedia Commons [Public Domain]
ヤコブ・フランク
Wikimedia Commons [Public Domain]

ただし、カバラ=黒魔術でもカバラ=白魔術でもありません。どちらも「ごった煮」で含んでいるのです。真実も虚偽も有用なものも猛毒も、いずれも含むのがカバラです。


Writer

seiryuu様プロフィール

seiryuu

・兵庫県出身在住
・いちおう浄土真宗の住職
・体癖はたぶん7-2。(自分の体癖判定が最も難しかった。)
・基本、暇人。(したくないことはしない。)
・特徴、酒飲み。アルコールには強い。
・歯が32本全て生えそろっている(親不知全て)原始人並み。

これまでのseiryuu氏の寄稿記事はこちら


Comments are closed.