ぴょんぴょんの「日本の闇に立ち向かう女性」 〜『安倍首相、麻生大臣、私は真実が知りたいです』

 元近畿財務局職員赤木俊夫さんの奥さま赤木雅子さんと、相澤冬樹氏の共著「私は真実が知りたい」は、ちょうど去年の今頃、初公判に時期を合わせて出版されました。
 私も、遅ればせながら読みましたが、亡くなられた赤木俊夫さんの背景や、財務省改ざんの全体を知るために良い本でした。
 自殺がからんだ重いテーマなので、恐る恐る読み始めましたが、雅子さんの素直な文章にホッとし、相澤氏の紳士的な取材手腕に感心しながら、あっと言う間に読了しました。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「日本の闇に立ち向かう女性」 〜『安倍首相、麻生大臣、私は真実が知りたいです』

赤木俊夫さんが肌身離さず持ち歩いてた「国家公務員倫理カード」


私は国家公務員としての誇りを持ち、その使命を自覚して、以下の規範を遵守します。
 ・国民全体の奉仕者であることを自覚し、公正な職務執行に当たること
 ・職務や地位を私的利益のために用いないこと
 ・国民の疑惑や不信を招くような行為をしないこと
 ・公共の利益の増進を目指し、全力を上げて職務に取り組むこと
 ・勤務時間以外でも、公務の信用への影響を認識して行動すること

自殺した赤木俊夫さんは、このカードを肌身離さず持ち歩いてたんだって。


「公正な職務執行」
「私利私欲のために地位を用いない」
「国民の疑惑や不信を招かない」
・・・政治家や官僚の連中に、赤木俊夫氏の爪のアカでも煎じて飲ませてえ。

飲ませがい、あればいいけどね。

しっかし今どき、こんな真面目な公務員、絶滅危惧種じゃね? 

俊夫さんが亡くなった後、すり切れたこのカードを見つけた妻の雅子さんは、ドンと胸を突かれる思いだったって。
「だって、みんながこの通りにしていたら、夫は改ざんなんかしていないし、死ぬこともなかったはずじゃないですか」(文春オンライン

ホント! ホントすぎて・・涙、出そう。

俊夫さんは、「公務員の仕事にプライドを持って熱心に取り組んでいた。普段から『ぼくの契約相手は国民です』と言っていたし、同じマンションの方に『私の雇用主は日本国民なんですよ。その日本国民のために仕事ができる国家公務員に誇りをもっています』と話していたそうだ。」(「私は真実が知りたい」28p)


赤木雅子さんが書いた「私は真実が知りたい」


悲しいほどに、公務員の鏡だな。
ところで、妻が書いた「私は真実が知りたい」、どうだった?



ふしぎな本だった。

ふしぎ?

前半は赤木雅子さん、後半は大阪日日新聞の相澤冬樹氏が書いているんだけど、
序章「トッちゃんの本を出すわけ」でいきなり、俊夫さんの自殺シーンでさ。

お、おう、だいじょぶだったかー?

そこが、ふしぎなんだよ。
首をつった「トッちゃん」、俊夫さんの愛称なんだけど、「トッちゃん」に雅子さんが駆け寄って「体はまだ温かかった」って、始まるんだけど。

ショーゲキ的なプロローグだな。

なのに、なぜか淡々と読めたのがふしぎだった。
読ませたのは雅子さんの「愛」だと思う。


「愛」? 仲が良かったんだな。

そりゃあもう! 雅子さんの趣味は「トッちゃん」だったと言うくらい。

こりゃまた「公務員の鏡」にふさわしい、「妻の鏡」だな。

雅子さんは、相澤氏のひとことに文句言ってる。
「この本をまとめてくれた相澤冬樹記者は当時の写真を見ながら『幸せな時代があったんですね』と言うけど、失礼やわ。結婚から二十二年、ずっと幸せだったんですよ。トッちゃんが改ざんをさせられる、あの日まで。」(「私は真実が知りたい」27p)

失礼やわ〜?!

雅子さんは、ジョークもうまいよ。
俊夫さんが亡くなった翌日、夫の親友だった近畿財務局の深瀬氏が自宅に来て、「近財(近畿財務局)は赤木に救われた」と言って、雅子さん「?」。
その深瀬氏に、「財務局で働きませんか?」と誘われたときの雅子さんの答がコレ。
「佐川さんの秘書にしてくれるならいいですよ。お茶に毒盛りますから」。

(「私は真実が知りたい」60p)


ハハハ! よく言った!

でしょ! 相澤氏も、感心してるんだ。
「ああいう状況でもユーモアを忘れない、強烈な皮肉に財務局沈黙、というのが本当に素晴らしいです」。(「私は真実が知りたい」134p)

で、雅子さんが愛したトッちゃんは、どんなヤツだったんだ?

俊夫さんは、高卒で国鉄マンになり、国鉄がJRに変わったとき、公務員に採用されて近畿財務局に入り、仕事をしながら、夜学で大学卒業資格を取った。

やっぱ、ガンバりやなんだな。

2017年2月8日、豊中市議会議員が起こした裁判で、森友問題が全国的に広まると、俊夫さんの残業がいきなり増えた。
残業に明け暮れる日々、たまの休日に家族で買い物をしていると、俊夫さんの携帯が鳴る。「池田総括が困っているから、ぼく助けに行くわ」と言い残して、職場に向かった。
それが、「まさか、公文書を改ざんさせられるために呼ばれたとは・・。」
(「私は真実が知りたい」35p)

正義の味方で助けに行って、改ざんの命令とは、残酷な話だ。

俊夫さん、必死に抵抗したが、聞き入れられず。
すべての責任を取ると言いながら、口だけの上司に比べて、俊夫さんはりっぱだった。
後輩たちには一切、改ざんに関わらせず、自分一人でかぶって後輩を守った。
だが、それは、地獄の日々だった。


ふつうなら、何も考えずに上司の言う通りにするだろうが、倫理観の強い俊夫さんは、苦しかったろうなあ。

ぼくなら、仕事を辞めてるよ。

アホ! 
「改ざんしろ」って言われて、「イヤです」「はい、そうですか」で、済むはずねえ!
必ず、口止めされるだろう。痴漢でつかまるか、電車のホームから転落するか。


どのみち逃げられない運命か〜 大きな組織はコワイね。
ただ、俊夫さんの唯一の望みは、7月の人事異動だった。
ところがふたを開けてみると、俊夫さん以外は全員異動したのに、俊夫さんだけ残された。


コワっ!

それだけじゃない、国有地売買に関する資料がすべて処分され、職場から消えていた。

ホラーだな、完璧にホラー。

俊夫さんが担当になったのは、問題の国有地売却の後だから、売買交渉の経緯は何も知らない。
実際、売買に立ち会った、上司の池田氏は異動しちゃったし。
5日後に大阪地検特捜部が来るというのに、資料も消えてるし。

(「私は真実が知りたい」41p)

ガクブルだな、こうゆうとき、おめえならどうする?

ガヤトリー・マントラで、祈るしかないね。

俊夫さんが、ガヤトリー・マントラを知ってたらなあ。

2017年7月15日、追い詰められた俊夫さんが訪ねたのは精神科。
そこで、うつ病と診断され、そのまま病気休暇に入り、復職することはなかった。
その頃の、俊夫さんの不安は壮絶なものだったらしい。
「心ならずも改ざんをさせられたトッちゃんは、自分が罪に問われることを恐れていた。ことあるごとに『大変なことをさせられた』『内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた』『最後は下っ端が責任を取らされる』『ぼくは検察に狙われている』とおびえていたことを、よく覚えている。」(「私は真実が知りたい」42〜43p)


抗うつ剤も出されたろうな。

給料が減るから、復職したい。
でも、検察の捜査がコワくて、とても職場に行けない。

検察って、そんなにコワイの?

俊夫さんは、検察のやり方を間近で見て知っていたんだ。
「検察は恐ろしいとこや。横暴なところ。何を言っても思い通りの供述を取る。検察のストーリーから逃げられない。検察はもう近畿財務局が主導して改ざんしたという絵を描いている。僕が何を言っても無理や。本省の指示なのに最終的には自分のせいにされる。僕は犯罪者や。」(「私は真実が知りたい」44p)

りっぱなノイローゼだな。

そんな折、俊夫さんの携帯に検察から電話があった。
ドクターストップがかかっていたにも関わらず、恐ろしい検察から直の電話だよ。
これをきっかけに、俊夫さんの病状はますます極端に悪化した。


はあ〜〜〜〜。

さらにもう1つ、大きな一撃が。
2018年3月2日、朝日新聞一面に「森友文書 書き換えの疑い」という記事が載った。
俊夫さんはものすごく落ち込んだ。
「死ぬ、死ぬ」とくり返し、夜中にロープと遺書を持って出ていこうとした
り、雅子さんの外出中に「もうぼくは山におるからメールもしてこんで」というのを連れ戻したり、「死ぬ所を決めている」と再び山に向かおうとするのをなだめたり。(「私は真実が知りたい」46p)

ヤバい、パニックになってきたな。

結局、朝日に「改ざん」が載って5日後、俊夫さんは命を絶った。

・・・。

そんな状況の中で書かれたのが、財務省と近畿財務局の不正を告発する「手記」だ。
その大事な「手記」が表に出るまで、なんと、2年もかかった。

なんで、そんなにかかったんだ?

トッちゃんの遺書と「手記」を見つけた雅子さんは、周囲から公表するなと止められた。でも、トッちゃんは公表してもらいたいはずだと思った。
だが、公表するにも、誰に頼めばいいのか。
思い悩んでいる時、雅子さんは相澤冬樹氏の動画を見たんだ。
「森友問題を追求してNHKを辞めることになった、そんな経緯が『トッちゃんに似ているなあ』と感じた。」
(「私は真実が知りたい」65p)


たしかに、似てる。

でも、大事な夫の手記を相澤氏に託せるようになるまで、時間が必要だった。
相澤氏のおかげで、良い弁護士とも出会えて、雅子さんは提訴まで決意した。
そして、提訴を機に、相澤氏は週刊文春に俊夫さんの「手記」を公表した。

2年かかったけど、公表してくれただけでも、感謝だな。
そう言えば、最近〈赤木ファイル〉って騒がれてたが。
あれは、「手記」とは違うのか?

俊夫さんが、職場のパソコンに残した、公文書改ざんの記録だよ。
国はずっと「そんなのない」ってゴネてたけど、雅子さんは存在を確信していた。
「夫は2017年7月20日にウツ病で病休に入る前から、私に対し、深刻な顔をして、『大変なことをさせられた』『内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた』『自分は犯罪者なんだ』と話すようになりました。その一方で、『自分がやってしまったことを事細かく書いて残してある』『上司から言われたことや、上司の犯罪行為も全部書いて残してある』『ドッジファイルに綴じてるんだ』と話していました」。
YAHOO!ニュース
俊夫さんの上司だった池田氏も、〈赤木ファイル〉を知っていた。
「どこがどうで、何がどういう本省の指示かって。修正前と修正後、何回かやり取りしたような奴がファイリングされていて、パッと見ただけでわかるように整理されている、これを見たら我々がどういう過程で改ざんをやったのかが全部わかる。
(「私は真実が知りたい」154p)

やらされた改ざんを、全部記録してたってことか?
スゲえな、犯罪を押しつけられて苦しみながら、真実を残したとは。

そして、開示要求から1年3ヵ月の6月22日に、やっと〈赤木ファイル〉は開示された。

おせーよ!!

だが、せっかく出てきた〈赤木ファイル〉も、具体的な命令系統は一切わからないように塗りつぶしてある。まるで、2018年に公表された「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」のように。(YAHOO!ニュース


それを塗りつぶすのに、財務省職員が1年3ヶ月ガンバったんか?
ガンバるとこ、まちがってねえか?

でもさあ、家族が自殺するほど、大きなショックはないよね。
そこから、人生がガラッと変わると思うんだけど、雅子さんは「愛」のために、「愛」に支えられて、がんばっている。

「愛」だけか?「憎しみ」もあるんじゃねえの?

驚いたことに、彼女の言葉や言動からは「憎しみ」が感じられない。
俊夫さんが「手記」で、「元はすべて理財局長佐川氏の指示です」と言ったから佐川氏を訴えているけど、憎んではいない、ただ、謝ってほしいだけ、と言ってる。

へえ、夫のカタキ打ちじゃなかったのか。

雅子さんはただ、「真実が知りたい」と言ってるだけなんだよ。
裁判前に相澤氏が、雅子さんを佐川氏宅に案内したことがあってね。
雅子さん「ここって幸せそうな街ですね」「この幸せそうな街に住んでいる佐川さんは、きっともう幸せではないんでしょうね‥‥」「佐川さんもこの家に済むご家族も、もう幸せではないんでしょうね。なんだか佐川さんもかわいそう‥‥」
(「私は真実が知りたい」137P)

まともだな、よく人間の心を失くさなかった。

そうさせるのは「愛」だよ。
「愛」は「憎しみ」よりも強し!

これから、森友問題はどうなっていくのだろう?

雅子さんばかりに、重荷を背負わせるわけにはいかないね。

だが、〈赤木ファイル〉だけじゃ、森友問題は終わらねえし。
たとえ、佐川に謝らせたとしても、終わらねえ。

たしかに、森友問題の氷山はまだまだ深いよ。
赤木ファイルは一連の事件のうち『財務省・近畿財務局ルート』のほんの一部で、維新案件と言われる『大阪府・文科省ルート』やファイナンスをした『銀行・金融庁ルート』、そして複雑な補助金の手続きを籠池氏にアドバイスした『設計事務所・弁護士ルート』などまだまだ手付かずの疑惑のルートが存在します。そして最も疑惑が深く黒い『官邸ルート』は菅前官房長官も関わっており、麻生財務大臣ともども本格的な検証と責任追及はこれからです。」(時事ブログ

ガースーが現役のうちに、全員、お縄にしちくれい!


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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