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ユダヤ問題のポイント(近・現代編) ― 外伝61 ― 犯罪シンジケートの継承者 〜 アイゼンベルグ3
アイゼンベルグのパートナー
マイヤー・ランスキー
マイヤー・ランスキーが創設した犯罪シンジケート、その継承者を追うことで犯罪シンジケートの暴力支配の展開を見ています。マイヤー・ランスキーはその犯罪地下シンジケートを世界最強のビジネス・金融集団に、イスラエルを自分の「合法的」組織犯罪帝国の世界本部とする夢を持っていたとのことでした。
そのマイヤー・ランスキーは、1970年にイスラエルに一旦落ち着くことになりますが、2年後に帰化申請が却下され、国外追放されます。ランスキーはそれからはイスラエルに居住することはならず、組織犯罪帝国イスラエルの帝王になる夢は叶いませんでした。
しかし、ランスキーが目論んでいた「“合法的”組織犯罪帝国の世界本部イスラエル」自体は、その継承者たちによって実現していきます。
犯罪シンジケートを継承した代表が組織的にはADL、人物としてはサミュエル・ブロンフマン、ショール・アイゼンベルグ、表の企業としてはイスラエル・コーポレーションと表現するのが適切でしょう。
Wikimedia_Commons [Public Domain]
Author:LadyLorna860 [CC-BY]
The National Library of Israel [CC-BY]
Author:רונאלדיניו המלך [CC BY-SA]
もともとアーノルド・ロススタインからランスキーが受け継いだ犯罪シンジケートのスタイルは、銀行と弁護士をセットにするものでした。犯罪シンジケートには銀行が極めて重要な位置づけとなります。
犯罪シンジケート継承の企業体であるイスラエル・コーポレーションはショール・アイゼンベルグ設立とされますが、そのパートナーとして特に重要人物と前回指摘したのがフィリップ・クラツニック(ウィキペディアでは「クルズニック」と表記。)、もう一人はタイバー(ティボー)・ローゼンバウム。両者とも銀行家でもあったのです。
『ユダヤの告白』の第5章の以下の記述をご確認下さい。銀行名など細かな?はありますが、概ねは事実と見て良いでしょう。
フィリップ・クラツニックは、アメリカのシオニスト・ロビーの中でも最も力のある人物の一人である。彼はカーター大統領の下で商務長官を務めたばかりではなく、ブナイ・ブリスとADLを今日のアメリカの社会の中で最強の組織に変身させた人物でもある。
(中略)
シオニスト・ロビーがアメリカの政治を締め付ける力を強固なものにすることができたのは、カーター政権時代のことだった。クラッニック(編集者註:クラツニックの誤りだと思われる。以下同様)は、ソル・リノヴィッツをカーター政権内に招き入れた。リノヴィッツは、クラツニックとアイゼンバーグの友人であるだけではなく、彼らの仕事上でのパートナーでもある。(中略)
アイゼンバーグ、クラッニック、リノヴィツといった人物からなるこの人脈ができたのは、単に運が良かったからとか、ロスチャイルド家の支援があったからというだけのものではない。これには、もう1人の不可解な人物、ティボー・ローゼンバウムが果たした役割が大きい。彼はハンガリー出身のユダヤ人でジュネーブにスイス・イスラエル貿易銀行を設立した。ロスチャイルドが3分の1を直接出資していたこの銀行が、スパイ工作の隠れ蓑として利用されたアイゼンバーグの数多くのハイテク企業に資金を供与したのである。(中略)
1960年代にローゼンバウムが設立したスイス・イスラエル貿易銀行の別会社として、もう一つの銀行が設立された。それを動かしたのがクラツニックと、アルゼンチン生まれのユダヤ人デヴィッド・グラヴィエだった。このもう一つの銀行は、アメリカン・バンク・アンド・トラスト(ABT)と称した。CIAとモサドが所有するこの銀行は、麻薬の利益の洗浄(ローンダリング)を行う機関であった。カーター政権商務長官クラツニック
1960年台に設立されたアメリカン・バンク・アンド・トラスト(ABT)の代表となったのがフィリップ・クラツニックであり、彼と共にアメリカン・バンク・アンド・トラスト(ABT)を利用して“資金洗浄”していたのがアイゼンベルグだったと『ユダヤの告白』では記していました。
また、ユダヤ教ラビであり、第2次世界大戦中ではユダヤ地下組織レジスタンスの英雄であり、銀行家だったティボー・ローゼンバウムは、アイゼンベルグとは同体となって動いていたようなパートナーでした。アイゼンベルグはローゼンバウムの銀行から資金の供与を受けていたと上にありますが、アイゼンベルグがローゼンバウムの銀行を共同経営していた模様です。
クラツニックとローゼンバウムはアイゼンベルグと極めて深い関係にあったのですが、犯罪シンジケートの創始者であるマイヤー・ランスキーとも特別な関係にもありました。先にクラツニックです。
『ユダヤの告白』第10章に以下の内容記述があります。
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*ランスキーらは、ヴェスコと言う人物とメリデン・カルテルというコロンビア麻薬新興勢力を目くらまし的に表に立たせ、密かにカーター政権下の銀行に対する規制緩和を利して、パナマ共和国と西インド諸島を一夜にしてダーティー・マネーの新たな逃避先とする。
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*これで目論んでいた西半球一帯への麻薬供給の事業を大きく前進、ADLの大物を始め、ランスキーの組織は大金を懐にすることに成功した。
この成功への動きとして次の記述があります。
ADLの支持者ソル・リノヴィッツはカーター政権のパナマ運河条約交渉特別担当官だった。交渉に際しリノヴィッツには、パナマの銀行にオフショアのダーティー・マネーを受け入れさせるという別の目的があった。彼は私欲のない人間などでは決してなかった。パナマ・ナショナル・バンクの代行機関であるマリーン・ミッドランド銀行の取締役として、リノヴィッツ自身は投機資金であるホット・マネーを操っていた。パナマ運河条約交渉の最中の1978年、マリーン・ミッドランド銀行は香港上海銀行に買収された。香港上海銀行は、19世紀における中国でのアヘン戦争以来、世界でも最も悪名高い麻薬資金の洗浄機関である。
さらに1980年代にランスキー一味がコカイン取引でボロ儲けをする体制を築き上げていたちょうどその期間、カーター政権の商務長官はADLの最高幹部フィリップ・クラツニックだった。
ランスキーがカーター政権下にその麻薬王国を大きく発展できたのは、いわゆるタックスヘイブンを成立させたのが大きく、これを具体的に担当したのがソル・リノヴィッツ、上にあったように、クラツニックがカーター政権下に招き入れた男です。
ADLを含むランスキー一味の麻薬王国拡大の大成功のもとにあったのが、ADL最高幹部でカーター政権商務長官であったクラツニックだったということです。米国暴力支配の犯罪シンジケートは、カーター政権下でクラツニックによってその勢力をいよいよ拡大したということでもあります。
モサドの資金調達・供給責任者ローゼンバウム
ローゼンバウムとランスキーとの特別な関係については、『ケネディとユダヤの秘密戦争』p196~197に以下の記述があります。ランスキーの「イスラエルを自分の組織犯罪帝国の世界本部に」との夢の実現のために欠かせない男がローゼンバウムであったことが分かります。
ランスキーをイスラエルの情報機関と資金操作とに結びつけた主たるパイプは、スイスのジュネーブにある国際信用銀行(BCI)だった。ティボール・ローゼンバウムという人物によって設立された銀行だった。この銀行はランスキーのヨーロッパでのおもな資金洗浄機関となる。
(中略)
もっとも重要なのは、ローゼンバウムがイスラエルの秘密情報機関モサドの資金調達・供給責任者だったことだろう。毎違いなくイスラエルの国際陰謀の重要人物であり、世界的組織犯罪シンジケートのボス、マイヤー・ランスキーの“業界”でも決定的な役割を果たした。この続きの記述も重要です。アイゼンベルグもそうなのですが、ローゼンバウムが「組織犯罪帝国イスラエル」の創設と継続にとって不可欠な人物であったことが十分に窺えるのです。
ローゼンバウムはスイス・イスラエル貿易銀行の取締役も務めた。イスラエルの財務大臣でモサドの指揮官でもあったピンカス・サピルが設立した銀行である。ローゼンバウムがBCI(筆者註:ジュネーブの国際信用銀行のこと)を設立したのは、この銀行の取締役をしていた時期のことだ。
BCI ―ランスキーのヨーロッパでの資金洗浄銀行― はまさにイスラエル政府とモサドが操業していた銀行にほかならず、ユダヤ国家の存続にとって欠かせない存在だった。
BCI ―ランスキーのヨーロッパでの資金洗浄銀行― はまさにイスラエル政府とモサドが操業していた銀行にほかならず、ユダヤ国家の存続にとって欠かせない存在だった。
注意点として『ユダヤの告白』では、スイス・イスラエル貿易銀行はローゼンバウムが設立したことになっていますが、『ケネディとユダヤの秘密戦争』では、ローゼンバウムが設立したのはジュネーブの国際信用銀行(BCI)であり、スイス・イスラエル貿易銀行を設立したのはイスラエル財務大臣ピンカス・サピルで、ローゼンバウムはその取締役となっています。この点で『ユダヤの告白』と『ケネディとユダヤの秘密戦争』の記述には少し齟齬があります。しかし、実際のところは“大同小異”です。
スイス・イスラエル貿易銀行とジュネーブの国際信用銀行(BCI)も業務は同じで、犯罪シンジケートに資金供給し、イスラエルを組織犯罪帝国の世界本部へと導く組織犯罪銀行です。
ローゼンバウムとピンカス・サピルにしても、両者ともモサドの重要幹部であり、更にはイスラエル・コーポレーションの元になった「億万長者会議」のお膳立てをしたのはローゼンバウムであり、その発起人がピンカス・サピルであったことが、『ユダヤの告白』第10章に記されています。ローゼンバウムとピンカス・サピルも一体となって動いていたのでした。
ピンカス・サピア
アイゼンベルグが展開した事業の中心は軍事関係です。これは必然的に、アイゼンベルグがハイテク事業も展開していたことも意味します。なぜならば、殺人兵器の開発に使用された技術が後にハイテク技術として降りてくるからです。軍事部門には核兵器が当然入ります。ここからアイゼンベルグは原子力発電にも事業展開していたことも分かります。
彼はこのようにして「30か国で事業を行っている20社を所有」でビジネス(死の商人主体)展開していたわけです。それも「闇の国の住人」として。
そのアイゼンベルグが北京で死亡したということは、彼が中国で大きな事業展開をしていたことの表れでもあるでしょう。事実、AP通信記事には「イスラエルの中国との貿易関係の先駆者であるアイゼンバーグ」とあります。
彼の多国籍での巨大事業展開に当然必用なのが銀行です。アイゼンベルグのパートナーだった銀行家は、マイヤー・ランスキーとも特別な関係を持っていました。