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自分の都合のいいときだけ甘えるマンゴ
3年前の8月。夫が両膝を手術して入院中にみすぼらしい子猫が庭に現れました。大雨警報が出て庭が池のようになっていました。以前の記事でも書きましたが庭に住みついてしまったので名前をマンゴとつけて飼い始めました。
家を建てた時からリビングに飾っていたキジトラの子猫の置物そっくりの猫だったので実物になって私の前に来てくれたような気がしたのです。
当時、家に飼っていた愛犬ルナはマンゴにも優しくて一度も攻撃しませんでしたが、マンゴは次第に個性を発揮してルナを猫パンチするようになりました。
後ろから、前から・・・武士道もなくスキを見てはハンターのように狙いをつけてパンチするのです。ルナは年を取って目が見えなくなっていましたし、耳も聞こえません。目を離せなくなったのでマンゴを別の部屋に隔離することにしました。
やがてルナが亡くなってマンゴだけになりましたが、性格なのかストレスなのか突然攻撃してきて嚙みつくようになりました。懐いていないわけではなく、自分の都合のいいときだけ甘えてきます。おなかも見せてゴロゴロいうので撫でているとガブッとやられます。
野生の強いキジトラ猫だから外飼いがいいのかしら?でも、夏は蚊やダニ、冬は寒さが心配です。雌なので赤ちゃんを連れてきてもらっても困ります。つくづく人間って勝手だなあと思いながら家で飼っていました。
2年後にやってきたメロン
マンゴが来て2年目の夏。又大雨の季節になりました。
雨音の中に猫の声がします。デッキを見ると小さなみすぼらしいキジトラの子猫がいました。2年前と全く同じ光景です。タイムスリップしたようで思わず家を見ると、でかくなったマンゴがいます。
「あなた、何しに来たの?この家がいいって猫通信で聞いてきたの?」と聞きました。「みゃああ~」と長く泣きます。このままにしていたら明日にでも死にそうなほど痩せています。
とりあえず、柔らかくしたキャットフードとミルクをあげました。いきおいよく食べました。朝、どこかに行ってくれればいいなあと思っていたら、ちゃんとデッキに居ます。
夫も「かわいいねえ、こまったねえ」といいながら撫でています。目を見るとメロン色。夫が「メロンちゃん」と呼びました。私は「メロン?何で名前をつけるの?名前を呼ぶたびにメロメロになってしまうじゃない」と言いました。ルナが亡くなって2か月目でした。私たちの心が癒される存在を求めていたのかもしれません。
調べると雌。マンゴが窓辺でくつろいでいると必ずそのガラス越しにくっついています。もしもマンゴと相性が良ければマンゴも喜ぶかもしれません。
メロンを抱いてマンゴのところに連れて行きました。お互いに鼻をつけて確認しあっています。メロンは好奇心なのか積極的です。マンゴは用心深く観察しています。会う回数を増やして見守りました。
でも、ダメでした。マンゴがシャーっと爪を立てて噛みつくようになりました。
一緒に飼うのは諦めてメロンを外飼いすることにしましたが日に日に懐いていきました。抱くと液体のように伸びます。足音もなく忍び寄り、トンと一気に登り、着地します。
犬との違いにも驚きます。犬は従順。表情が豊かでかわいいのですが、猫はマイペース。ほとんどの時間をまったり過ごしていますが、動くものを見つけたらハンターに変身します。狙う仕草が野生を感じさせます。この猫らしさがたまらない。
メロンに決めてもらうことにしました
そうこうしているうちに寒い冬がやってきました。猫は寒さに弱くて外飼いの子猫は越冬できないと聞いたので心配になってきました。
家の戸を開けて、家に入りたいのかメロンに決めてもらうことにしました。戸を開けると恐る恐る家に入りました。初めはテーブルの下などに隠れていましたが、私たちに懐いていたので何事もなく家でくつろぎ始めました。
トイレのしつけは犬より簡単です。おしっこの匂いが付いた土を少し混ぜてトイレを作ったら一度も失敗しませんでした。メロンはますます私たちに懐いて夫の腕の中でゴロゴロ言いながら寝るようになりました。やっぱり「メロン」と呼ぶたびに体が緩んでしまいます。
ご縁があって飼い始めた猫ちゃん達。やはり幸せになってほしいと思います。だからマンゴの攻撃がいつも気になっていました。「あなたはどうしたいの?」と聞くうちに、もしかしたら外で自由にしたいのかしらと思いました。人間の勝手で家に飼い始めましたが本人に聞いていませんでしたから。
勇気を出してマンゴの部屋の戸を外に開きました。「外に出ていいのよ。そして家に帰ってきたかったらいつでも帰っていらっしゃい」と伝えました。
マンゴは恐る恐る外を見まわして、一歩足を踏み出しました。私は祈るように見守りました。すると一気に飛び出しました。庭を駆け回り幸せそうです。その間、相性の悪いメロンは家に入れておくことにしました。
一度一緒に外に出したら、マンゴがすごい形相でメロンを追いかけ、追い詰められたメロンは庭で一番高い木に登って降りてこられなくなりました。厳しい世界です。
マンゴはひとしきり外を満喫して戸の前で家に入りたいと意思表示をしました。それ以来、毎日「行ってらっしゃい」と交代で送り出します。私は2匹の自由を尊重する気持ちに切り替わって楽になりました。いつか帰ってこなくなるかもしれない。でもそれも仕方ありません。
ただ、2匹とも雌です。外飼いをするには避妊の問題が出てきました。猫は1歳前から産むらしい。獣医さんと相談して避妊手術をすることにしました。人間の勝手で申し訳なく思っています。2匹に説明して謝りました。
やがて、マンゴも落ち着いたのか、私たちを攻撃しなくなりました。私も外で自由に過ごしている姿を見るのが幸せなひと時になりました。
あまりにも似たストーリー
そんな時、家に来た友人が「メロン」と呼ぶ私に「えっ?メロンちゃんなの?」と驚いて絵本を紹介してくれました。
「なまえのないねこ」(竹下文子文・町田尚子絵 小峰書店)です。
なまえのないねこって絵本はいいよ。 #猫の日 pic.twitter.com/P8uYV4DIMH
— kobakun (@koba87530389) February 22, 2022
名前のない野良猫が自分の名前を探して回るのですが見つかりません。雨の降る日にベンチの下に隠れていると小さな女の子が「ねえ、おなかすいてるの?」「君はきれいなメロン色の目をしているね」と声をかけてくれて「メロン」と呼んでくれたのです。
「メロン、おいで」と呼んでくれた女の子の後をついていくシーンで終わりますが、「探していたのは名前ではなく、呼んでくれる人だった」と気が付く猫。
わが家のメロンも絵本の猫と同じ目をしたキジトラの猫ちゃんです。雨の日にやってきたのも同じ。あまりにも似たストーリーで驚きましたが「あなたも名前を呼んでくれる人がほしかったのね」と目の前にいるメロンに言いました。
動物や植物は私たちにいろいろなことを教えてくれます。「好みも生き方も違って当たり前。大事なのはお互いを尊重する愛だよ」と言われたようで夫を振り返りました(笑)。
photo by かんなまま
この時期、夫は野バラハンターになり、庭をパトロールしては野バラだけを抜いてポイっと捨てます。「バラだけじゃなくて草もお願い!」と頼むのですが「まずは野バラを見つけて抜かないと大変なことになる」と他のものは目に入らないようです。私なら野バラと同時に草も取るのに・・・。
これは男と女の違いでしょうか?それとも体癖の違い?育った環境?家事や雑用は自分の仕事じゃないと思っているから?でも、仕事を辞めたら自分の身の回りのことはもちろん、人の世話なんてできないだろうなあ。父がそうだった!家事のことなど「何もしない」というより「気が付かない」「できない」人で、父の老々介護で母は疲れ果てていたなあ。
夫婦関係は日常が修行の場。トイレの便器の上げ下げ問題、排水溝の髪の毛問題、玄関チャイムの知らん顔問題・・・。イラっとする私は愛が足りないのか?年を取って疲れているのか?邪気か?
落ち葉を掃きながらネガティブな雑念が止まりません。そのタイミングで夫が家の中から「おーい、野バラはあったか?」と聞くので「野バラじゃない!草と落ち葉!」と睨んでしまいました(笑)。
夫はクワバラクワバラ・・と戸を閉めました。そして友人に「最近、妻からおこられてばかりでねえ~」と被害者になるのです。
あ~また邪気を飛ばしてしまった!と思って空を見上げたらナンジャモンジャ(ヒトツバタゴ)の花が天を向いて白い雲のように咲いていました。
今回はこの庭に訪れた野良ネコちゃんのお話です。