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本来は明日の心配をしないで遊び呆ける子ども時代
日本は弱いものが立ち上がれなくなる国。福祉制度があっても本当に困っている人に届いていないように思います。
子育てもしかり。悲しいかな、1人の子どもを国立大学までいかせるとしたら2700万円!
https://benesse.jp/kosodate/201509/20150910-2.html
子育ても自己責任なのです。
経済力がないから結婚をあきらめる若者。学生ローンで大学に行ったけれどコロナでバイトもできずに借金だけが残って返済に追われる日々。働き盛りの若者を苦しめて日本の未来はあるのでしょうか?胸が苦しくなります。
そんな状況でも、相変わらず学校では小学生から将来の夢を描かせて、それを実現するのが成功の道と教えています。今の小学5年生は1年生の時からコロナ禍で人との接触を極端に制限されて体験活動もできませんでした。でも将来の夢は?進路は?と問われます。
「わかりません」と言えない子ども達。与えられた情報の中でむりやり夢を描けば描くほど到達できない自分が悪いのだと自信を無くします。
本来は明日の心配をしないで遊び呆ける子ども時代。今は学校の宿題、塾や習い事に追われて自分の時間がありません。一言でいえば嫌なことを強いられてエネルギーが枯渇した子ども達です。
結果、不登校が増えました。子ども達はなぜ学校に行きたくないのか理由がわかりません。自分の気持ちを言葉にするのが難しいのです。ただ、みんなと同じように学校に行けない自分が悪い、親を困らせている自分が悪いと思ってしまいます。
親も誰にも相談できず孤立します。スクールソーシャルワーカーもいますが数と権限が保証されていないので機能していません。不安を抱えた親が勇気を出して予約を取って、仕事を休んで相談に行きます。「子どもをちゃんと育てられない悪い親」と思われるのではないかと心配しながら・・・。そして、相談してもなかなか解決策は見つからず、結局「様子見ましょうね」の自己責任です。
フリースクールがあったとしても学費、通学費は自己負担です。これも公費で学べる学校があるのに行かないのは自己責任ということでしょうか?
このような問題を抱えているママ達の何と多いことか!これはママ達の責任でしょうか?子どもが悪いのでしょうか?何だかおかしい。この日本はどこに向かっているのだろうと危機感を感じます。
ロシア人シングルマザーの苦しみ
ある、負のスパイラルから抜け出せなくなったママのお話です。
ロシア人のシングルマザーで子どもが3人います。9年前に日本人の夫と離婚して1人で3人を育てています。離婚したのはいいけれど過酷な現実が待っていました。母子家庭で外国人というだけで誰も家を貸してくれません。仕事もみつかりませんでした。
保育園に子どもを預けて昼・夜のパートを掛け持ちしながら働いていましたが、子育ての悩みと生活の不安で精神的にも追い詰められていきました。
睡眠不足、体調不良で仕事が続きません。学校、市の女性相談係やハローワークのシングルママの相談係などに頼りましたが話を聞いて助成金の申請書をくれるだけです。
探し当てた県の女性就労支援を受けて美容師の資格を取るために美容学校に通うことにしました。気分も上がって、貯金を学費に充てて頑張ってみましたが、子育てとパートの仕事をしながらの学業はそんなに甘くありません。日本語の壁にぶつかり勉強についていけなくなりました。もちろん学費は返ってきません。
子どもが大好きで、いい親になりたいと思うのですが、現実は暗い顔をして食事を作る気力もなくして横になっています。そんな自分を責める日々。更年期障害と鬱という診断を受けました。
それでも子ども達は素直に育ち、お兄ちゃんは学業を頑張って国立大学に合格しました。奨学金制度や企業の助成金などを利用して、入学金や授業料は確保しました。お兄ちゃん自身もバイトで生活費を稼ぎ、卒業してからのローン返済も頑張るつもりです。
それにしても、日本の申請書は複雑で、それを書くための説明書も意味が分からない。外国人にとっては途方もなく難しい手続きです。鬱と戦いながらやっとの思いで書いて提出しました。当然、学校は手伝ってくれません。
お兄ちゃんを見送ったら嬉しいはずなのに涙が止まりません。
お兄ちゃんのために振り絞った気力がぷつんと切れたのです。お金もありません。でも家には来春受験の高校3年生のお姉ちゃんと5年生の妹がいます。
無謀にも1年前に家を建てたのでそのローンも重くのしかかります。お金もないのになぜ家を建てたのでしょうか?
今まで外国人ということで家を借りるのも大変でした。やっと借りた家は変な老人ストーカーが付きまとって身も心も休まりませんでした。彼女は小さくてもいい、自分の家に住んで子ども達と幸せに暮らしたいという願望が膨らんで現実逃避をしてしまったのです。その夢を描く時だけは気持ちが軽くなったのでしょう。
1人で疲弊し苦しむ彼女と日本の福祉システム
そんな時、ロシアにいるお母さんが少しお金を出してくれるという話になって、小さな家を建てることにしたのです。気分が上がり、そのタイミングで介護の仕事が見つかり、正社員として働き始めました。就労証明書を出してもらい、3か月返済が滞ったら家を出るという条件で銀行もお金を貸してくれたようです。
働く気力がわいて家が建ち始めたらロシアとウクライナの戦争がはじまりました。日本はロシアに制裁を科してロシアからの送金ができなくなりました。
入るはずのお金が無くなり、多額の借金を抱えてしまいました。不安で眠れなくなり、更年期障害も悪化しました。鬱の薬の副作用もあったと思います。職場でも報告書の漢字が読めないと叱られたり、契約外の日曜出勤も求められて働けなくなりました。
精神科で診断書を書いてもらい、障がい者手帳の申請をしました。会社から手続きをしてもらって傷病手当をもらいましたが、お兄ちゃんの受験の手続き等で疲弊していきました。
精神科にはPSWというケースワーカーがいて相談にのってくれます。市の女性相談員もいます。福祉課に行って申請したらヘルパーを派遣して生活支援を受けることもできるはずです。シングルマザーなら申請すればフードバンクで食料を受け取ることもできます。
なのに、なぜ彼女はこんなに1人で疲弊していくのでしょうか?
日本の福祉は自己申請型。本人の自己決定が大前提です。どんなに制度があっても本人が意思表示をして、申請書を書いて提出しなければ始まりません。それに疲れ果てているのです。
お金の問題だけでなく一歩踏み出すまで心を支えて欲しいのに話を聞いてもらって申請書を出して結果を待つだけ。やっと障がい者手帳をもらって障がい者枠で仕事を探しても、こちらから結果を尋ねなければ返事も来ません。不採用続きです。
このまま福祉への不信感を抱いて足が向かなくなったり、鬱が悪化して何もできなくなったらおしまいです。
家を新築したので生活保護も受けられません。元夫も家を買うくらいお金を持っているなら援助はいらないはずだと養育費も入れてくれなくなったそうです。
子ども達の心も心配です。お兄ちゃんは勉強に励むことで乗り切りました。お姉ちゃんもクラブに入って土曜日曜も学校に行きます。いちばん下の子もスポーツを頑張ってとてもいい子です。
子ども達が家事を手伝ってくれないというのが彼女の悩みですが、家を離れて何かに夢中になっていなければやってられないのでしょう。むしろそれで救われているような気がします。
家で泣いてばかりのお母さんの姿を見続けていたらどうなるのでしょう?子どもは自分ではどうすることもできません。親に運命を託さなければいけないのです。社会の難しい仕組みはわからないでしょうが、鬱で暗い顔をして何もできない親に腹が立ったり、自分のせいではないかと思ったりします。
その感情を親にぶつけて反抗するようになりました。彼女は自己評価が最低な上に自分に向けられた子どもの暴言に傷つき、「もう自分はいない方がいい。子どもを育てる自信がなくなった。生きていく価値がない」と泣き崩れます。
そして、必ず出てくるのが子どもの頃の辛い思い出です。
「お母さんとお父さんが離婚して、お母さんに育てられたけど、忙しいお母さんは仕事に出て行って何日も帰ってこなかった」「一人ぼっちで寂しくて怖かった。お母さんに甘えたかったけど甘えさせてもらえなかった」「私が悪い子だから叱られてばかりいた」と泣くのです。こういうママの何と多いことか。そして増えている気がします。
自動的に無料で社会保障を受けられるシステムになっているフランス
私は話を聞くことしかできません。いつも手作りのひざ掛けに包んであげて温かいお茶を出します。
全部話してしまったら彼女の気持ちを一緒に整理します。そしてねぎらいます。頑張りすぎている事、この状況でよくやっていることも伝えます。
少し顔色が良くなって落ち着いてくれます。ひざ掛けをプレゼントしたら抱いて帰りました。
彼女の場合、市も病院も、子どもの学校のスクールソーシャルワーカーも関わっているのに苦しみが減りません。彼女だけでなく、子どもの将来までつぶしてしまいそうです。今ならまだ間に合うと思うのに・・・。
福祉って何なのでしょう?日本は福祉が整っていても自己申告制。他人がお節介をして「助けてあげてください」と言っても本人が申告しなければ始まりません。そして難しい申請書を出して福祉を受ける権利があるのかの審査を受けなければいけません。
ほとんどの人は、困った時に初めて知る制度です。困った時はそんな余裕もないのに。地震の救済も然り。これでは弱者が自滅していきます。自分ではどうすることもできない子どもや若者の未来はどうなるのでしょうか?
ちょうど「フランスの子どもの育ちと家族」安發 明子著(かもがわ出版)を読んでいたのでフランスの福祉との違いに愕然としました。
フランスは医療関係者が妊娠届を書くと自動的に無料で社会保障を受けられるシステムになっているそうです。無料で子どもを産み、子どもの受けたい教育を受けさせることができるのです。子どもは社会で育てる。親の経済状況が子どもの育ちと学びに影響しないようにという理念です。
利用できる福祉サービスの種類は日本も同じようにあるけれど、大きな違いは親自身が探さなくても専門職が目を配りコーディネイトしてくれるところです。
家庭生活、保育園、学校のソーシャルワーカーがいて、その仕事は個人の悩みは社会や政治的なものだから「困っている人を助ける」ではなく、すべての人に居場所があるように社会に働きかけることだそうです。
相談があれば、必要な支援の提案をして家族と毎週一緒に過ごしながら支援をコーディネイトしてくれるそうです。最初の3か月の集中的な支援で問題の4割は解決して自立していけるようになるそうです。
このような「親をすることへの支援」は、問題が悪化して社会的養護(児童施設などに入所)が必要になることに比べ、9000分の1のコストで済むと言われています。
こんな制度があればロシアの彼女は早い段階で救われていたのではないかと思います。まず、子ども達の学費の心配が要りません。子ども達も親の心配をしながら我慢して生活をする必要はありません。無邪気に遊び、学ぶ権利があるはずです。そして苦し紛れに親に暴言を吐くのではなく、人を思いやる優しい人に育つでしょう。
私は無力です。彼女を励ますことしかできません。子ども達の心を代弁して素晴らしさも伝えることしかできません。伝えても伝えても又枯渇して電話がかかります。
日本の社会は自己責任を強いるけれど方向が間違っていると思います。私の心はその法則に従いません。自分の除霊浄化をして愛のマントラを唱えながらここにいることしかできませんが、きっと、愛の法則が一瞬にして全てを変えてくれる時代が来ると信じています。
公園の木陰で赤ちゃんを抱きながら幸せな気分。
冒険遊びを毎月していたら参加者が増えて、たくさんの親子連れがやってきてくれるようになりました。でも、よく見ると赤ちゃんを抱っこしながら上の子と遊んでいるママ達。
私の役目は、そんな赤ちゃんを抱っこしてまったりする事。柔らかくてかわいい!
ママ達も「助かります~」と喜んでくれる。ああ、これが至福の時だなあと思うのです。