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泣くことは赤ちゃんの大事なメッセージ
昨日は、市の産後ケア事業でお母さんの母乳・育児相談の日でした。私は待ち時間にママとおしゃべりをして赤ちゃんをお預かりする仕事をしました。今日は第1子を育てるママ達のセミナーでした。
ママの悩みで一番多いのは「泣き止ませ方」です。セミナー中も赤ちゃんが泣きだすので「すみません」と謝りながら赤ちゃんの口を手で押さえるママがいます。「どうしたの?」と、泣く理由を探す前に反射的に泣かせてはいけないと思ってしまうようです。迷惑をかけてはいけないと思っているし、泣かれたら困るからです。
早く泣き止ませたいママは、ネットで「泣き止ませ方」と検索して色々試してみます。中でもホワイトノイズが人気で一日中聞かせているママがいます。
https://www.youtube.com/watch?v=7oSTwvRjbfw
赤ちゃんはママやパパの関わり方を頼りに育っていきます。自分に関わる人の声や生活音は重要です。特に母国語を音楽のように吸収して人の情感まで理解しようとしている時期に、その音をかき消して不快な電子音でおとなしくさせるのは問題です。
保育士志望の学生に「公共の場で泣き止まなかったらどうする?」と言うテーマで話し合わせたら「口を手で押さえる」という結論になったと、先生が言われました。赤ちゃんと関わったことがない人はそれしか思いつかないのが現状だそうです。ママになったといえども、経験のなさではその学生さんと同じなのです。
でも、泣くことは赤ちゃんの大事なメッセージです。なぜ泣いているのかを探しながらお世話をしているとピタッと泣き止んで笑顔で応えてくれる時があります。「これだったのね!」と嬉しくなります。そして、よく観察していると、赤ちゃんは泣く前にメッセージを出しているのがわかってきます。
長年の経験で赤ちゃんの気持ちがわかるようになった私は、泣きやまない赤ちゃんを抱き上げ、気配丸ごと感じ取って代弁してあげます。
「そうだったの。びっくりしたのね」「いやだったのね」「待てなかったのね」と抱き方や歩き方、話しかけ方を変えるとピタッと泣き止んでくれます。最近は「神業!」と言われてちょっと嬉しくなっています。
よく「その泣き止ませ方を教えて欲しい」と言われます。コツは全身全霊で赤ちゃんに向き合うだけです。自分の都合(早く寝て欲しい、泣き止んで欲しい等)は忘れます。
私には経験と技術と余裕があるからできるのでしょうか?いえ、誰でもできます。ママ達は赤ちゃんを自分の期待通りにしようと思っているのです。赤ちゃんは本気で自分を表現しているのですからママも本気で「あなたを理解するよ」と腹をくくればいいのです。
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子育てには親子共に育ちあう仲間が必要
今の日本は、子育てと仕事の両立で親は疲弊して子どもに向き合う余裕がありません。子どもは赤ちゃんの時から愛情要求が満たされない上に、学童期になって色々なことに挑戦したくなっても自立要求も満たされません。結果、子どもの問題行動が増えています。
今の親に「子どもと仕事はどちらが大事?」と聞いたらきっと、「子ども」と答えるでしょう。子どもを健やかに育てたいという願いは変わらないのです。ならば、そのおかしさに早く気づいて「自分からドボンと飛び込んで子育てを軸にしましょうよ!」と言ってあげたい。でも、それだけでは足りません。
子育てには、親子共に育ちあう仲間が必要なのです。
「悩んでいるのは私一人ではなかった。みんな一緒ね」と救われたような顔をするママ。
そんな顔を見たくてとんでもないことを思いつきました。
思い起こせば26年前。子育て施設も何もなかった頃、私自身が子育てに悩み、話す仲間が欲しかったこともあって、子育てを支え合うママ達の居場所を作りたいと思いました。直感にも似た思い付きでした。
でも、私の想像を超えることが起こりました。竹下先生のご縁をいただき、ナディー・チャートを使った家相改善の実験場として、居るだけで心と身体が安らぐ設計をしてくださったのです。そう、以前寄稿させていただいた小さな家です。
そこでベビーマッサージを始めました。週に一回ママ達が赤ちゃんを連れてやってきます。毎回ベビーマッサージをした後にみんなで子育ての話をしました。話をして1週間頑張ろうと思えるようになりました。
初めは気持ちを言葉にするのが難しくて黙っていたママも、ここでは何を言っても否定されないので自分の本心を話すようになりました。特に子育ての話や夫婦関係の悩みは尽きません。話すことで自分を整理しながら家族ともいい関係を築き始めました。
「ここがなかったら今の私はいない」と言ってくれるママ達。私の方が皆から元気を貰えているのに、ありがたいです。
園や学校の問題、不登校や発達障害の問題は自分達だけで解決できるものではありません。でも、仲間や家族で出来ることもたくさんあると思えてきました。子どもの育つ環境を自分達で作ろうと、親子で畑づくり、味噌作り、プレーパークをしてきました。
又、市内の子育て支援者のネットワークを作り、市へ子育ての提言もしてきました。抗議団体ではなく、現場の声を届けて一緒に取り組んでくれる団体として行政も一目を置いてくれるようになり、会議にも来てくれるようになりました。
それらは今もしっかり続いています。次々に新しいママ達が加わり、先輩ママ達が支えてくれています。
夜のパジャマ会議をしよう
でも、この10年で専業主婦がいなくなりました。仕事で6時、9時の帰宅になることもあります。体はクタクタですが子どものことが気になります。みんなと話したくても仕事をしているママが集まれるのは週末の夜。
そうだ!夜のパジャマ会議をしようと思いつきました。
子どもをパパに預けて、やっと1人になれます。6時から玄関を開けているのでご飯を持ってくる人、お風呂も入ってすっぴんで来る人、子どもを寝かせて9時ごろ来る人、様々です。
ほとんどが小学生のママ達です。学校の事や子育てのことを話し出したら止まりません。気が付いたら夜中まで話し込んでいました。体は疲れますが心が軽くなり、前向きになれます。「生きている気がする」と言ってくれます。
先輩ママグループは子どもが高校生、大学生になりました。こちらも仕事をしているので夜しか集まれなくなりました。不登校の悩みを越えて今では夫婦の事、自分のことを話すようになりました。子どもが小さいころから語り合ってきたママ達です。若いママ達の力になりたくて時々合流します。
そして、時には夫とおじ様たちのグループも合流して子育てのことを語り合うようになりました。おじさまの中には元校長先生もいて、懺悔したり、笑い合ったり、夜が更けていきます。
そんな時、あるママが18歳になったお姉ちゃんを連れてきました。ここで赤ちゃんの時にベビーマッサージをしていた娘さんです。そのお姉ちゃんが皆の話を聞いて「子ども達のことをこんなに真剣に話し合っている大人がいることを知らなかった!」「お母さんが遅くまで帰ってこない理由がわかった」「これからは私も参加したい」と言ってくれたのです。
そう、前向きに語り合うだけで何かが起こります。現にこのお姉ちゃんの「大人像」が肯定的なものになりました。そして思春期でいろいろ思うところがあったけど「うちのお母さん最高!」と確信してくれたようです。それが一番大事なことかもしれません。
どんな政権になっても、これからも、目の前のママ達と子育てのことを語り、足元で出来ることをして、誠実に生きて行きたいと思います。遠回りのようですが、ひとり一人の生き方が伝播して家族を育て、人を動かし、社会を変えると信じています。
行くと笑顔で迎えてくれる母。もう私のことがわからなくなり、私を見て自分の妹の名前を呼びます。新しい記憶が次々になくなっていき、ついに私も退場です。
でも、変わらず笑顔で「ありがとう」「おいしい!」と言ってくれます。思い出も消え、できていたことができなくなり、ずっとベッドに寝ていても心が「ありがとう」の世界なのかな?と思うと感動します。
死ぬまでいろいろなことを教えてくれる母です。