ままぴよ日記 126 「子どもまんなか社会は実現できるのか?」

 12月初めに玉ねぎを植えました。今年は24家族が参加です。30年以上無農薬で米作りをしている農家さんから無償で田んぼを借りています。
 子ども達も手慣れたもので畝つくりを手伝い、小さな手で玉ねぎを植えてくれます。そして田んぼで火を起こして団子汁をいただきます。おなか一杯になった子ども達は田んぼで鬼ごっこをしたり、名も無い遊びを始めます。
 何て、気持ちいい農作業でしょう。
 ところが、数日後カラスが片っ端から苗を抜いてしまいました。田んぼに残る大豆がお目当てだったようです。
 困っていたら、農家さんが昔ながらの案山子を作ってくれました。子ども達は大喜び。さあ、知恵比べが始まります。

 最近、防犯カメラを設置した庭の柿を2個盗んで警察に逮捕された80代の老人のニュースを見ました。何という世の中でしょう。
(かんなまま)
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子ども主体の「こどもまんなか社会づくり」がスタート


2023年4月、全ての子どもや若者が幸せに育ち、生活していけるような社会を作るために子ども基本法が施行されました。同時に子ども家庭庁ができて、12月には子ども大綱が発表されました。

やっと、子ども主体の「こどもまんなか社会づくり」がスタートしたのです。

目を引いたのは「はじめの100か月の育ちビジョン」でした。妊娠期から小1までの100か月の育ちが特に大事だということで国が子どもの育ちのビジョンを示したのです。

Author:こども家庭庁[CC BY]

今後、このビジョンに基づいた施策を推進していくことになります。
①子どもの権利と尊厳を守る。乳幼児は生まれながらにして権利の主体である。生命や生活を保障する。乳幼児の想いや願いを尊重する
②「安心と挑戦の循環」を通してこどものウエルビーイングを高める→乳幼児の育ちには「愛着の形成」と豊かな「遊びと体験」が不可欠
③「子どもの誕生前」から切れ目なく育ちを支える
④保育者・養育者のウエルビーイングの成長の支援・応援をする→子どもに最も近い存在をきめ細かに支援
⑤こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す

 ※ウエルビーイングとはすべての子どもの生涯にわたる身体的・精神的・社会的な観点での包括的な幸福のこと。

これらのことは現場で子育て支援をしている私達がずっと言い続けてきたことでした。やっと市町村の施策に反映されるのかと嬉しい気持ちでした。

でも社会は経済中心に動いて、その流れを止めようとはしていません。本当に実現できるのでしょうか?現に、子ども家庭庁ができて1年以上経っていますが世の中は何も変わっていません。



加速する保育業界のビジネス化


我が町でも来年度から5か年の子育て支援の行動計画を作る「子ども子育て会議」が始まりました。市の子育てに関する施策を決定する重要な会議であり、全国の市町村が作らなければいけない計画です。でも、昨年閣議決定した子ども大綱を市の施策に反映させるかどうかは自由なのです。我が町は間に合わないから6年後の計画に入れるつもりでいたようです。

私はその委員長をしています。市との事前打ち合わせでそのことを質問すると「基本は変わりません。業者が作りますから大丈夫ですよ」とのんきな答えが返ってきました。モヤモヤしてきました。何も変わらない?6年後でいい?そんなバカな!

実は、この計画を作るにあたって市内の子育て中の全保護者へアンケートを実施しました。それを読み込むと、様々な親子の苦悩が見えてきました。仕事と子育ての両立に悩み、子育てに余裕がない親が増えました。我が町の母親は経済的な理由から早く仕事復帰をする傾向があるようです。

仕事復帰した親の悩みは子どもが病気になった時に預ける病児保育が少ない事。子どもが急に病気になった時に休めないという切実な訴えです。市は保護者のニーズが増えたので病児保育所を増やす方向で検討するようです。


はて?子どもは病気の時に知らないところで知らない人にお世話をしてもらいたいと思っているでしょうか?これまでの子育て支援は子どもにとってどうか?という視点が抜けているのです。

親も、急な発熱で慌てながら診断書を貰い、予約を取り、仕事前にバタバタと具合の悪い子を連れて行かなければいけません。前の晩に眠れなかったかもしれないのに。

子どもの権利が尊重される「こどもまんなか社会」は子どもの最善の利益が優先される社会です。病気の時はお母さんが安心して仕事を休める働き方が求められます。でも企業の働き方改革は市の管轄外なので進みません。

そして、今年は「誰でも保育園制度」が目玉のようで、それを施策に入れたいようです。子育てを誰にも頼れない親が急な用事やリフレッシュのために子どもを一時的に園に預ける制度です。

でも、赤ちゃんはいきなり知らない園に預けられて、知らない人からお世話をされたいでしょうか?特に人見知りの時期はトラウマになってしまいます。

園も大変です。預けられた子どもは「ママがいい!」と泣くでしょう。ただでさえ保育士が足りません。

「待機児童ゼロ。100%希望の園に入園可能!」も変です。はたして子どもが希望したでしょうか?


これらのことは松井和さんの著書「ママがいい!」(グッドブックス)に詳しく書かれています。加速する保育業界のビジネス化。11時間保育が標準化。母子分離に拍車をかける保育施策のゆくえ。幼児の扱いが国中で粗雑になっている・・・と警鐘を鳴らしています。
https://www.youtube.com/watch?v=KXq1bAoUNMA


困っている親子が増え続けている現状


さて、アンケートでは子どもの発達の悩みが急激に増えていました。集団に馴染めない、言葉が遅い、いきなり暴力をふるう、など子どもの行動が気になるけれど、どこに相談していいかわからないというのです。

要するに、困っている親子が増え続けているのです。何に困っているのか?どうすればいいのか?専門の相談機関も必要ですが、なぜそうなるのか?をしっかり検証しなければいけません。子育てを原点から問う必要があるのです。

不登校も増えています。子どもの教育を受ける権利、自由に遊ぶ権利、意見を言う権利もないまま家に引きこもっている子が増えています。

不登校でなくても放課後の居場所や遊び場が欲しいという意見も増えていました。親世代の余裕がないので、地域で子どもを見守ってほしいのです。

5年前のアンケートに比べて子育てが苦しくなっているのがよくわかります。これを見たら、のんきに6年後に子どもを主体にした施策を考えましょうとは言えないのです。

子どもは今を生きています。子どもの今を救ってあげないと未来はないのです。そのことが子ども大綱の6つの基本方針にも書かれていました。

①子ども・若者を権利の主体として認識し、子どもの今とこれからの最善の利益を図る
②こどもや若者、子育て当事者の視点を尊重し、その意見を聴き、対話する
③ライフステージに応じて切れ目なく対応し、十分に支援する
④貧困と格差の解消を図り、すべての子ども・若者が幸せな状態で成長できるようにする
⑤若い世代の生活の基盤の安定を図り、多様な価値観、考え方を大前提として若者の視点から結婚、子育てに関する希望の形成と実現に取り組む
⑥施策の総合性を確保し、地方公共団体や民間団体等との連携を重視する


子ども達はいつも親を一生懸命見ている


まずは子どもの日常である家庭からです。でも、その家庭で子どものことを決める時に子どもの意見を聴いているでしょうか?

あるランドセル会社の動画が反響を呼んでいます。
https://youtu.be/r1Bic3Go2dY?si=_Rcs9SxKSGE5ZCPC

この動画を見て泣くママ達。
子どもは親を喜ばせるために期待に応えようとしています。ところが親はどうでしょう?子どもの好き嫌いさえ気づいていなかったのです。

そう、子ども達はいつも親を一生懸命見ているのです。言葉の裏にある感情も読み取っています。だって、お母さんが大好きだからです。でも、親は子どもを「好き」とか「大事」と言いながら自分の価値観を押し付けているだけで子ども自身を見ていません。


これはどの国でも同じようなもの。でも、いち早く子どもの権利を意識始めたスコットランドは「乳幼児への誓い」を立てました。
https://note.com/childrights/n/nd56a09178097

乳幼児への誓い

 私は、スコットランドでいちばん幼い市民のひとりです。私がいちばんいい形で人生のスタートを切り、人生全体を通じて豊かに成長できるように、私を、自分自身の気持ちと権利をもったひとりの人間として見てもらわないといけません。私の合図(cues)や伝えたいことを解釈して、私の権利が守られ、私の声が聴かれるようにするためには、おとながたよりです。

 私のケアをしてくれる人たちとの関係は、大切で、私の脳がどのように成長発達するか、気持ちの処理や感情の方法をどのように身につけていくかに、直接影響します。安全で安定した関係と一貫したケアは、いまの私の幸せ(ウェルビーイング)を支えてくれますし、その後の人生でも、よりよい機会や成果を与えてくれます。

 乳幼児のメンタルヘルス分野の専門家と研究者が、赤ちゃんおよび低年齢の子どもの権利と福祉を守ることを求めて活動している団体とともに集まり、私のかわりに、私のライフチャンスを向上させるのに役立つはずだと思う、期待される行動を次のようにまとめてくれました。

 私は、次のことを期待します。
1.自分自身の気持ちと権利をもったひとりの人間として見られること。
2.自分の気持ちや意見を伝えることができると見られること。
3.私にとって大切なおとなが、私の気持ちや意見について注意深く考え、私のかわりにそれを話してくれると信頼できること。
4.ケアしてくれるおとなとの安定した関係を持てるよう、支えられること。
5.遊んだり学んだりするための安全でおもしろい場所があり、遊んだり学んだりするために必要な助けが得られること。
6.私の意見を、家族、コミュニティ、社会に大切にされること。
7.自分に起きることについての決定で、発言権を持てること。

 私にとって大切なおとなには、次のものが提供されます。
8.私が生まれる前も含めて、健康的でいるための支援。
9.私にとってよい選択をするために必要な情報。
10.私のニーズと自分自身のニーズを理解して満たすために必要な支援。
11.正しい知識とスキルをもった人々からの手助け。

 次のことは、みんなの責任です。
12.すべての段階の決定で、私のこと、そして私の視点を考えること。

というものです。

そして日本でも「保育における子供の権利を考える会」が取りまとめた「保育・教育における子ども憲章」が素晴らしいので紹介しておきます。

出典:北九州市


あらゆる場面で子どもを尊重しているか?


さて、子どもまんなかとはどういうことか?改めて意識したいと思います。あらゆる場面で子どもを尊重しているか?やりたいことに何度もチャレンジさせているか?その子が活躍できる機会を作ってあげているか?

学校でも然りです。有名人の名前、歴史の年号、地名などの知識、難解な数学、漢字の書き取りなどの正しい答えを教えられますが、生きて行くうえで最も大切なことは教えてくれません。

自分に問うとは何か?友達とケンカした時、友達を慰める時、ごめんねと謝る時、助けてと言う時、好きな子に自分の気持ちを伝える時にどうすればいいのか? 人は愛をはぐくむために生まれてきたのに。

いちばん大事な自分の気持ちを言葉にすることが難しい社会。こんな歌が若者の心を捉えています。

孫が中学校の卒業式の日に歌った「18祭 正解」。

https://www.youtube.com/watch?v=xKjFYKWCDas
「ああ、答えがある事ばかりを教わってきたよ。だけど明日からは 僕だけの正解を探しに行くんだ」と、泣きながら歌う子ども達。

まずは、気づくことから始めたいと思います。親はもちろんですが、むしろ子どもに無関心な大人社会がそのことに気が付かなければ始まりません。

これからは子どもが輝いているかを子育ちの軸にして、子どもの波動を高く保ってあげられるような社会になってほしいと切に願っています。



Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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