[マスコミに載らない海外記事]無人機操縦者の苦悩

竹下雅敏氏からの情報です。
とても辛い記事です。自分と関係のない遠い国の話ではありません。すべての人は自分自身に問いかける必要があります。
自分が戦っている敵は誰なのか?
あなたの心の中に敵がいる以上、あなたは戦わなくてはならないでしょう。
アメリカのテロとの戦いは象徴的です。
敵など本来どこにもいないのです。アメリカが敵を自ら作り出して戦っているだけです。
覇権のために。
私たちの心の中も同様なのではありませんか?
むしろ、私たちのこうした心のあり方が、世界を形作るのです。権力を求めることをやめなさい。そして成功を求めることも。
成功を求める者の心には、平和も平安もないからです。
あなたは、ただ誠実に心を込めて、自分の出来ることをすればそれで良いのです。
(竹下 雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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無人機操縦者の苦悩
転載元より抜粋)
Nicola Abe

ブランドン・ブライアントは、エアコンで摂氏17度に保たれ、治安上の理由でドアを開けることができない長方形の窓のないトレーラーほどの大きさのコンテナの中で5年以上働いていた。ブライアントと同僚達は14台のコンピュータ・モニターと4つのキーボードを前に座っていた。ブライアントがニューメキシコでボタンを押すと、地球の裏側で誰かが死んだ。


それは空軍用語で言うコックピットとして知られている無人機の頭脳なのだ。だがコンテナの中にいるパイロットは空を飛んでいるわけではない。彼等は操縦席に座っているだけだ。

プレデター無人機が10,000キロ以上も離れたアフガニスタン上空で8の字型を描いて旋回していた時の、ある出来事を非常に鮮明に覚えている。陸屋根の泥作りの家のヤギを入れておくのに使われている小屋が標的になっていたとブライアントは回想している。砲撃命令を受け、左手でボタンを押し、屋根にレーザーで標識を付けた。彼の隣に座っていたパイロットがジョィスティックにある引き金を押し、無人機にヘルファイア・ミサイルを発射させた。命中するまでには16秒かかる。

“この瞬間はスローモーションのようなものです”と彼は言う。無人機に取り付けられた赤外線カメラで撮影した画像が衛星で送信され、2から5秒の時間差で彼のモニターにあらわれる。

あと3秒になった。突然、一人の子供が角をうろついていたのだと彼は言う。

ブライアントは画面上で閃光を見た。爆発だ。建物の部分が崩壊した。あの子供も消えた。ブライアントは胃がムカムカした。

“俺達は子供を殺したのか?”と彼は隣席の男に尋ねた。

“あれは子供だったのか?”二人はモニターのチャット・ウィンドウに書きこんだ。

すると、二人の知らない人物が答えてきた。世界のどこかにある軍司令部に座っていて、彼等の攻撃を観察していた人物が。“違う。あれは犬だった”とその人物は書いた。

二人はこの場面をビデオで見直した。二本足の犬?

現代の戦争は思想のように目には見えず、距離によって、その意味を奪われている。それは自由な戦争ではなく、世界中の様々な場所にある小さなハイテク・センターから制御される戦争だ。アメリカ合州国のバラク・オバマ大統領が、彼の前任者の誰よりも推進している戦争だ。

プレデターの絵画、キャンバス上の無人機が、軍指導者の肖像画の隣に掛けられている。軍の視点からすれば、“対テロ戦争”において近年のプレデター発明ほどの成功は他にない。

現在27歳のブライアントは母親の家の居間で長椅子に座っていた。彼は軍を除隊し、今は故郷で暮らしている。

“あれだけ多数の人々を殺そうとは思ってもいませんでした。実際、私は人など殺せないと思っていました。”

 

高校卒業後、ブライアントは調査ジャーナリストになりたかった。

彼が軍隊に入ったのは偶然だ。ある日、陸軍に入隊する友人に付き添った際、空軍には自前の大学があり、無料で大学教育も受けられると聞いたのだ。ブライアントは試験の成績が非常によかったので、情報収集部隊に配属された。無人機にとりつけられたカメラやレーザーの制御方法や、地上画像、地図と気象データ分析を学んだ。彼はセンサー技師となったが、これはおおよそ副操縦士に相当する。

イラク上空で最初の飛行任務を果たしたのは20歳の時だった。ブライアントの任務は空の“守護天使”として道路を監視することだった。

ブライアントは最初にミサイルを発射した時、二人の男を即死させたのを覚えている。ブライアントが見つめると、三人目の男が断末魔の苦しみにあるのが見えた。男の足は無く、男は足の付け根を両手で抱え、暖かい血が二分もの間地面に流れていた。ブライアントは彼は帰宅しながら泣いて、母親の家に行ったと言う。

ミズーラのシナモンとバターの香りが空気中に漂っているお気に入りのコーヒーショップに座って、“ほぼ一週間、人類から断ち切られたように感じていました”と彼は言う。

彼女とは最近分かれた。彼が抱えている苦悩について彼女が尋ねたので、彼はそれを話したのだ。だがそれは、彼女には対処することも、共有することもできない困難だった。

自由な時間には、ブライアントは、テレビゲームやインターネットの“ウォークラフト”で遊んだり、友人と飲みにでかけたりしていた。TVなど、もう興味がそそられたり、刺激的だったりしないので見てはいられないのだ。最近彼は睡眠障害を味わっている。

ある時点で、友人と会うのを楽しめなくなった。女性とも出会ったが、彼は機嫌が悪いと文句をいわれた。

ある日彼は仕事中に倒れ、体をよじって血を吐いた。医師は、家にいて、連続二週間、毎晩四時間以上眠れるようになるまで仕事に戻らないように命じた。

“半年後、コックピットに戻り、無人機を操縦していました”とミズーラにある母親の家の居間に座ったブライアントは言う。犬がくんくん鳴いて、頭を彼の頬に置いた。当面、彼は自分の家具を使えない。家具は保管されていて、保管料を支払う金がないのだ。彼に残されているのはコンピュータだけだ。

ブライアントは、インタビューの前の晩、Facebookに絵を投稿した。緑の草地に立って、手をつなぎあって、空を見上げているカップルが描かれている。一人の子供と犬が二人の横の地面に座っている。だが草地は世界の一部に過ぎない。その下には、最後の力を振り絞って体を起こそうとしている死につつある兵士達の海、死体と血と四肢の海がある。

退役軍人健康庁の医師達は、ブライアントを心的外傷後ストレス障害と診断した。心の傷無しに行える快適な戦争という一般的な希望は実現していない。実際、ブライアントの世界はアフガニスタンの子供の世界と融合してしまったのだ。無人機の頭脳で起きた短絡のようなものだ。

ある日、次回の契約には署名しないだろう気がついたのだと彼は言う。ブライアントがコックピットに入り、自分自身が同僚達にこう言っているのが聞こえた日のことだ。“おい、今日はどんな馬鹿野郎が死ぬのかな?”


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