[マスコミには載らない海外記事]ガスとシリア危機の地政学: イラン-イラク-シリア ガス・パイプライン建設妨害の為、武器供給されているシリア“反政府派”

竹下雅敏氏からの情報です。
 以前に、シリアの混乱は、記事の中に挿入した地図にあるイスラム・パイプラインが、欧米とペルシャ湾の同盟諸国の怒りに触れて引き起こされたことを紹介しました。
この記事では、現在のシリア反政府派の活動領域が、アメリカ政府が承認している別のパイプラインのルートに一致していることが示されています。このルートは、シリアを南北に通過しトルコを経由するということで、トルコに旨味があるとのこと。シリア政府の転覆にトルコが関わっているわけです。
 こういう状況を見ると、この連中は石油やガスの利権のためなら、人が何人死のうとおかまいなし。都合の悪い政権は、テロリストを送り込んで政権を倒す。しかもそのテロリストに対する支援の理由は、全てウソ。本当にいい加減にしてもらいたい。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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ガスとシリア危機の地政学: イラン-イラク-シリア ガス・パイプライン建設妨害の為、武器供給されているシリア“反政府派”
転載元より抜粋)
Dmitry Minin
Strategic Culture Foundation
2013年5月31日
 

中東で最も民主的な国家の一つ、シリアが、西部の隣人達の一部、獰猛な民主主義戦士を怒らせるような、一体どのようなことをしたのだろう? ヨーロッパでテロリストと見なされているのと全く同じ連中が、シリアのこととなると“自由戦士”だと宣言されるという、シリア危機に対する欧米諸国のやりくちの不合理さと無節操さは、シリアの悲劇の経済的側面を見ると、より明らかになる。ヨーロッパは、なによりもまず、エネルギー資源の為に戦っているのだと考える十分な根拠がある。21世紀の主要燃料として登場しつつある天然ガスが、そこで重要な役割を演じているのだ。

東から西へのヨーロッパ向けパイプラインを、イランとイラクから、シリアの地中海沿岸にするのか、あるいは、もっと北より経路の、カタールとサウジアラビアから、シリアとトルコ経由にするのかを巡って、戦いが行われている。“民主主義”の為の戦いというのは、全く別の狙いを隠蔽する為に放り投げられた偽の旗なのだ。

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イスラム・パイプライン(出典)            中東地図(出典


シリアにおける反乱が、2年前の、2011年6月25日、ブーシェフルでの、新イラン-イラク-シリア・ガス・パイプライン建設に関する覚え書き署名とほぼ同時に拡大し始めたことに気付くのはさほど困難なことではない… シリアの地中海の港経由で、ヨーロッパへの液化ガス供給の可能性も検討されている。このプロジェクトへの投資は100億ドルにのぼる。

“イスラム・パイプライン”と呼ばれているこのパイプラインは、 2014年から、2016年の間に稼働を始めるものと想定されていた。

イランからのガス・パイプラインは、シリアには大いにうまみがある。ヨーロッパも、それで恩恵を受けるだろうが、明らかに、欧米の誰かには気に入らないのだ。西欧にガスを供給しているペルシャ湾の同盟諸国にとっても、そうなれば、商売から外されるガス輸送国ナンバー・ワンになるのを希望しているトルコにも嬉しい話ではない。

カタール国内には、アメリカ中央軍ペンタゴン司令ノード、アメリカ空軍司令部本部、イギリス空軍第83遠征航空部隊と、アメリカ空軍第379遠征航空部隊が駐留している。実際、カタールは、その多くがサウジアラビア、パキスタンやリビア出身者であるシリア“反政府派”戦士への武器供与を含め、パイプライン建設を妨害する為、出来る限りのことをしている。


2011年に、シリアの地質調査会社によって、ロシアが租借している地中海の港タルタスからほど遠からぬレバノン国境に近いホムス周辺で、シリア内の巨大なガス生産地域、巨大ガス田が発見されたことで、カタールの決心は煽られた。事前の推測によれば、こうした発見で、それまでの2840億立方メートルにのぼるシリアのガス埋蔵量は大幅に増大することになる。シリア、あるいは、イランのガスの、欧州連合への輸出が、ロシアとつながりがあるタルタス港経由で行われる可能性があるという事実は、カタールにとっても、欧米パートナーにとっても不満だ。

アラビア語新聞アル-アクバルが引用した情報によれば、トルコとイスラエルを巻き込んだ、ガスを、カタールからヨーロッパに輸送する、アメリカ政府が承認した新パイプライン建設計画があるという。この新パイプラインは、カタールを発し、サウジ領を通過し、更にヨルダン領を経て、シーア派イラクを迂回し、シリアに至る。ホムス近くで、パイプラインは三方向に分岐する予定だ。ラタキア、北部レバノンのトリポリと、トルコだ。炭化水素埋蔵地もあるホムスは、“プロジェクトの重要な交差点”であり、最も激しい戦闘が起きているのが、この都市と、“鍵となる”アルクサイル近隣であることは驚くにはあたらない。ここでシリアの命運が決められつつあるのだ。アメリカ、カタールとトルコの支援を得て、反政府派の分遣隊が活動しているシリア領の一部、つまり、北部、ホムスとダマスカス周辺は、トルコと、トリポリ、レバノンへと向かうパイプラインのルートと一致している。武装敵対勢力の地図と、カタール・パイプライン経路の地図を比較すると、軍事活動と、こうしたシリア領を支配しようという狙いとのつながりがわかる。アジア・タイムズの専門家、ペペ・エスコバールは、カタールの首長は、どうやら“ムスリム同胞団”と取引をした模様で、それにより、カタール国内での和平協定と引き換えに、カタールが、国際的拡張を支援するのだと指摘している。

対シリア戦争は、テヘラン、バグダッドとダマスカス間の協定も破綻させることを狙っているのだ。2013年2月に、イラクは、パイプライン建設を可能にする枠組み合意に署名する用意ができていることを宣言した。この後、イラク・シーア派の益々多くの新集団が、アサド支援に立ち上がったことは留意に値する。ワシントン・ポストが認めている通り、彼等は、イラク内で、アメリカと立ち向かう上で、“少なからぬ戦闘経験”を持っている。レバノンのヒズボラ戦士と共に、彼等は更に手ごわい勢力となるだろう。BBCによれば、EU加盟諸国の大半が反対している、シリア反政府派への欧州連合による武器供給禁止の終了も(民主主義はいずこ?)、反政府派を助けられない可能性がある。

記事原文のurl:
http://www.strategic-culture.org/news/2013/05/31/the-geopolitics-of-gas-and-the-syrian-crisis.html

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