国会議員や政党への働きかけの有効な手段とは
何らかの議案が国会で採決される直前、関係する国会議員の国会事務所や政党本部に働きかけようという呼びかけがなされ、
大量の電話やファックス、あるいはデモや国会周辺での集会が行われることがあります。それはそれで尊い行動ですが、
「国会での手続を止めたり、議員の投票行動を変えたりすることができるか。」というプラグマティックな観点でいえば、残念ながら、永田町関係者である私の経験上、
ほとんど無意味です。
元民主党衆議院議員であるこの方のふたつのツイート(ちなみにこれは自民党が臨時国会を開かず逃げようとしていた時期のツイートと記憶しています。)には、一般人が政治家に圧力をかけるには、
①与党議員の地元事務所に
②与党が党議決定をする前に
とありますが、このとおりと思います。
与党内手続きが終わった後では法案通過を覆せない
種苗法の改正に即し、今は②の方を強調したいので、②からお話しします。
法案の提出前に、
与党は、自民党、公明党それぞれが
党内で了承手続をとり、最後に両党の政策責任者会議で与党として承認し、その後法案提出に至ります。
与党としての承認を経た段階で与党議員には党議拘束がかかり、造反は処分の対象になりますので、
この後与党議員個人への働きをしても反対に回ることはまずありません。
また、国会の委員会の与党理事や与党出身の委員長は、法案を通すのが党内での仕事ですので、
法案が提出されてしまえば(国民が内容に問題があることを伝えても)手続を止めることはまず期待できません。
しかし、
与党内手続が終わる前であれば、(よほどの特殊な案件でない限り)各手続は会議に参加する議員の全会一致で進めますので、
一人でも本気で反対する与党議員がいれば、党の執行部や政府は何らかの手を打ちます。むろんそれが大物議員であるほど丁寧に対応しますが、そうでない議員もそう邪険には扱いません。
「手を打つ」形は当該議員への「ご説明」かもしれませんが、「法案は修正しないが弊害が出ないように運用の工夫をする約束」という形や法案の修正という形になることもけっこうあります。昨年の
著作権法改正案提出見送りは古屋圭司議員が安倍総理と親しい大物議員であったという特殊事情はありましたが、与党内手続終了前であればこのようなよい形も稀にはあるということです。
今国会に上程される予定の種苗法改正案
さて、これを前提に種苗法です。
種苗法改正案の国会提出は3月上旬が予定されており、通常国会が開会されたこのタイミング以降、与党は党内手続を行うはずで、今政府は農林水産関係議員に根回しを行っているでしょう。
与党議員に自家採取禁止の問題を伝えるべきは今です。国会での採決直前に使われるエネルギーを今使う方が良い結果につながる可能性はずっと高いです。
主要農産物種子法廃止の後、与党議員が「こんな問題のある法案が出ていることを知らなかった。」と言っていたような類の話を読んだことがあります。先ほどの古屋議員も著作権法改正の中身を直前まで知らなかった旨言っています。
与党了承手続の前に議員への働きかけを行えば、味方になってくれる与党議員に出会えるかもしれません。
次に①、
働きかける先は議員の国会事務所や党本部でなく
議員の地元事務所である点について。
永田町の議員秘書にとって、選挙区の有権者でもない一般国民から電話がかかってきても、真面目にとりあう対象でないことが普通です。
しかし、
議員の地元事務所に選挙民が何か言ってくれば、国会事務所よりずっと真面目に対応せぜるをえません。さらに、働きかける側は、一度陳情するだけでなく、折々「あの件はどうなっているか。」と何度も確かめるとよいと思います。
これからは各自治体の意思が問われます。自治体が手を上げなければ計画は進みません。住民の声と、その声を聞く耳を持つ「首長」の存在が重要になります。まのじも地元の知事を思い浮かべてため息をつく前に、声を届けることを考えます。
さて、コロナ対策を巡っては各都道府県知事の対応が分かれました。コロナ禍で日本政府の無能が世界に晒されたのと同様、その政府の下で各県知事がどのようなリーダーシップを発揮したか見えてきました。政府の方針が住民に有益でないと判断される時にどのような行動をとるか、愛知県の大村知事や和歌山県の仁坂知事は自立的なメッセージを発信されました。
大村知事は、感染者数や救急件数など重要なデータの情報公開と検証が必要だと述べ、とりわけ周辺にも影響の大きい大都市圏の対策の重要性を訴えました。至極常識的な意見ですが、安倍政権下ではこれが「マトモすぎて聖人のよう」と言われてしまうのでした。仁坂知事も「住民に自粛を要請するならば、同時に行政が行うべき感染症対策を成功させるべき」と、これもまた至極真っ当な意見を発信されています。しかし現在の日本ではこれは画期的な「苦言」に当たるようです。
政府に対して当然の主張ができる首長を選んだ市民の方々、偉い。地方自治の時代です。