東京電力と広域暴力団との関係は世界的に知られるようになった。高線量の放射性物質を環境中へ放出し続けている
福島第一原発で被曝しながら作業する
労働者を確保することは容易でなく、
ホームレスを拉致同然に連れてきていることも世界の人びとへ伝えられている。
日本とはそういう国なのだということを多くの人が気づきはじめた。
福島第一原発が
事故を起こす前、通常運転していた時代にも現場の作業は社会的な弱者に押しつけられていた。下請け労働者、生活困窮者、ホームレスといった人びとを危険な作業に就かせるという仕組みは原発の歴史と同じ長さを持っている。その間、放射線が原因だと疑われる病気で死亡したり、癌にかかった労働者は少なくない。
そうした現場へ労働者として入り込んで調べ、その実態を『原発ジプシー』(現代書館、1979年)として明らかにした堀江邦夫、被曝しながら働かされる労働者の写真を約40年にわたって撮り続けている樋口健二といったジャーナリストはいる。が、マスコミは総じて「安全神話」を広めることに熱心で、多くの人は知らんぷりしてきた。
ローリングストーン誌の日本語版で樋口は次のように語っている。
「原発には政治屋、官僚、財界、学者、大マスコミが関わってる。それに司法と、人出し業の暴力団も絡んでるんだよ。電力会社は、原発をできればやめたいのよ。危ないし、文句ばっかり言われるし。でも
なぜやめられないかといえば、原発を造ってる財閥にとって金のなる木だから。」
ミヒャエル・エンデは『ハーメルンの死の舞踏』で「ねずみ」と「金貨」をひねり出す怪物を登場させている。金貨を欲しがる権力者たちは、人間に死をもたらすネズミを手放すことができない。この仕組みは原子力利権や戦争ビジネスにもあてはまる。
「東芝はウェスティングハウスを買収、日立はGE、三菱はアレバとくっついて、『国際的に原発をやる』システムを作っちゃったんだ。
電力会社からの元請けを三井、三菱、日立、住友と財閥系がやってて、その下には下請け、孫請け、ひ孫請け、人出し業。さらに人出し業が農民、漁民、被差別部落民、元炭坑労働者を含む労働者たちを抱えてる」
「
原発労働は差別だからね。」
しかも、日本の核ビジネスは核兵器の開発に足を突っ込んでいる。情報の世界では常識になっている話だ。日本はアメリカの核ビジネスと結びつき、核兵器に関する情報も手にしてきたが、CIAやNSAは監視を続けている。アメリカ軍も積極的に賛成しているわけではない。
原発をコントロールできていても現場の状況は悲惨だった。「過酷事故」の後は比較にならないほど作業は危険になっている。
既に相当数の死者が出ているという噂を荒唐無稽だとして片付けることはできない。これまでも被曝労働者は闇に消されてきたのであり、福島第一原発が事故を起こしてから闇はさらに深くなっている。