電気汚染:ある中学校での癌の集団発生

 以前、日本ではほとんど知られていない「汚れた電気」のことを取り上げましたが、今回はその第2弾を翻訳者のYutikaさんが分かりやすく執筆してくださっています。
 とあるカリフォルニア州の中学校では、「汚れた電気」のために、癌発症のリスクが64%も上昇し、特に甲状腺癌、子宮癌などの発症率は平均の13倍だったことが紹介されています。
 記事の最後に"現代の私たちは「電磁気のスープ」に浸かっている状態"とあります。20数年前には無かったWiFiの電波や携帯電波が現在では田舎も含め至る所に飛び交い、家電からも危険な高周波が出ています。知識を身につけ、少しでも避ける術を知っておくことがそうした影響のリスクを下げることに繋がると思います。
(編集長)
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電気汚染:ある中学校での癌の集団発生




◆汚れた電気とは◆




フクシマ原発事故が起こってから、癌罹患率の疫学的データが注目されることが増えているように感じます。現在は、衣食住の多岐に渡って癌の発生源がバラ撒かれており、日本は癌大国ですから一概には語れませんが、地球に住まわせてもらっている者として人間が増やした原因を一つ一つ取り除く責任があるのではないでしょうか。

私たちの身近にある電気も、何故か年を追う毎に危険なものに進化――もとい、劣化しております。「汚れた電気」と呼ばれる問題です。詳しい説明は前回の記事に譲るとして、今回の主要記事その1によると「電気の流れが中断されるときに一気に噴出する高周波」のことだそうです。

主要記事その2や、別の記事では「電離放射線同様に発がん性である、高周波の電圧過渡現象」とも表現されていました。WHOは高周波を「発がん物質である可能性あり」の中に位置づけています。

私たちの肉体では癌細胞が常に作られています。免疫システムが機能していれば、消滅していきますが、汚れた電気で免疫システムが弱ってしまえばどうでしょう。死滅しないのだから、癌になりますよね。


◆アメリカの中学校で癌が多発◆



pixabay[CC0]


カリフォルニア州のラ・キンタ中学校に通った教師と生徒の癌罹患率が突出しています。2004年には学区に報告され、以降議論されている問題です。この学校は1988年開校、新校舎が完成したのは1990年ですから、近代的な建物です。

しかし2004年当時、学区から派遣されたジョン・モーガン医師(疫学者で州の癌登録機関に所属)は、癌の手術で卵巣や胸など様々な部位を摘出された被害者一同を前にして「信用できない」と言い切りました。学校が癌の発生源だとすれば、学区は大量の訴訟を抱えてしまいますからねぇ。

そこで別の内科医で疫学者であるサム・ミルハム医師が、学区には無請求で調査を請け負います。公衆衛生と職業上の電気による癌リスクの専門家です。教師の協力の下、同僚の電気技師ロイド・モーガンと共に、教室の「汚れた電気」の値を調べました。

グラハム・ステッツァー超微細測定器(Graham-Stetzer microsurge metre)というものをコンセントに差し込むと、高周波電流の数値を測定できます。値が50以上だと要対策レベルですが、教室では数値が振り切れてしまったそうです。700~1000、場所によっては2000以上だったとか。

また、教師の一人が毎年配布される教室割り当て表(どの教師がどこの教室で教えるかという表だと思います。通常アメリカでは廊下にあるロッカーに荷物を放り込み、科目ごとに生徒が教室を移動します)を保存していました。それと照らし合わせると、癌罹患と測定結果に関連が見られたのです。

このことを報告すると、サム・ミルハム医師は学区の弁護士から不法侵入で訴えるという警告の手紙を受け取ってしまいます。そこで2005年、教師たちはカリフォルニア州の労働安全衛生法違反を訴えることにしました。


◆お役所 vs 民間調査◆



これでカリフォルニア州の保険局が乗り出してきます。学校に設置された全てのコンセントを、同じくグラハム・ステッツァー超微細測定器で測定したのだそうです。やはり一部の教室で高い数値が観測されたと2007年の報告書にあります。これを書いたのはレイモンド・リチャード・ノイトラ医師という疫学者で、カリフォルニア保険局の環境および職業疾病管理部門の責任者です。

2005年時点で137名の教師の内、癌になったのは16名。これはカリフォルニアの癌登録機関の統計と比べて約三倍です。また、癌の症例で数えると18件。

癌登録機関のジョン・モーガン医師は、約三倍というのは間違った統計を比較対象にしたせいだ、地区ではなく州全体の癌発生件数を用いたせいだと反論したそうです。こういうの、お役人や御用訳者がよく使う手ですね。一般人はこう言われると、なんだ素人医師がいちゃもんつけただけかという印象操作をされてしまいます。なのですが、実は地区の癌発生件数と比較すると、さらに高校での発生率が突出しました。

ジョン・モーガン医師が癌だと認めた教師の数は16人中12人。それでも多くありませんか? というツッコミに対し、「確かに通常よりも2.1倍多いが、そんなのは誤差の範囲だ」とのことです。素人の私は「この職場では通常の倍、癌になりやすい」って言われたら働きたいとは思いませんが……そもそも不審点を「誤差」で片づけるなら疫学とか統計学って学問が成立しませんやん、ええのか自分の首絞めて。

さらに、教師の勤務場所に関する情報が間違っているという言いがかりもつけたそうです。学区は癌統計機関にしか情報を提供してない筈だから、と。確かに学区からは情報を貰えなかったので、サム・ミルハム医師は教師たちから直接募って、自分でまとめました。そして保険局のレイモンド・リチャード・ノイトラ医師が正確なものだと検証しちゃいました。

しかし学区は、そのレイモンド・リチャード・ノイトラ医師の報告書の一部を切り取り、問題なしだと証明された、と発表してしまいます。報告書をきちんと読めば、ノイトラ医師が「汚れた電気が原因だという説を疑わしいと思うものの、完全にはありえないと言い切れない」、「癌の発生率が偶然にしては高すぎる」、「他の地域よりも回路転圧の振動値が異常に高い」と指摘し、この電気の問題を解決すべきだと進言していたのです。


◆中学校調査の最終報告◆



pixabay[CC0]


2008年、サム・ミルハム医師が専門雑誌に発表した最終報告によると、教師が過渡電流に累積的に曝されることで、癌発症の可能性は64%上昇。建物内でたった1年間働くことで、リスクは21%増加。中でも黒色腫、甲状腺癌、子宮癌を発症した率は平均より13倍多くなっていました。

またそれ以外にも、元教師が把握しているだけで約1ダースの元生徒(※1ダースという単位で12人なので、「十数名」といった感じ)が癌だと診断されました。教師も生徒も、その内数名は死亡しています。

サム・ミルハム医師は、値を十分の一にしてくれる、グラハム・ステッツァー・フィルターをコンセントに取り付けるという簡単かつ安価(1個30ドルほど)な解決法を提案しましたが無視されています。

彼によると、中学校から1マイル(=約1.6キロメートル)ほど離れた変電所の欠陥が根本的な問題ではないかとのことですが、校内への立ち入りを許可されない現状では特定が難しそうです。

以上、2015年の記事を主に情報をまとめました。教師の皆さんが「何かがおかしい」と学区に対して初めて声を上げたのが2004年です。十年以上、問題が解決しないまま、のらりくらりと放置という、現代のお役所の理想的な仕事ぶりを窺わせる事件でもあります。


◆アーミッシュの農場にも◆




自分は山奥の田舎暮らしだから関係ない? それがですね、怖いお話を別記事からもう1つ。アーミッシュ教徒ってご存知ですかね。昔ながらの自給自足生活をしている方々です。当然、電気なんて殆ど使いません。

とあるアーミッシュ教徒が癌になりました。普通のお医者さんは発生源なんて特定してくれません。自分であちこち調べて、電気技師デイブ・セッツァーという汚れた電気の第一人者に特定を依頼します。すると、何故か自分のところの農場に「漂遊電圧」なるものが大量に溜まっていたんです。これを遮断すると、それまでの頭痛や腹痛、炎症が収まったそうです。

私もガチで文系ですから、苦手分野です。ですがどのような機器が最も危険かを知るだけでも予防に繋がります。脳神経学者のマイケル・パーシンジャー博士によると、現代の私たちは「電磁気のスープ」に浸かっている状態です。目に見えない電気汚染、軽減してみませんか?
(Yutika)

◇参考記事◇
IN-DEPTH INVESTIGATION: Examining reports of a cancer cluster at La Quinta Middle School
RAYMOND RICHARD NEUTRA, M.D., C.M., M.P.H., DR. P.H.

What Do The Experts Say?
"Dirty" Electricity is a National Problem Affecting Everyone’s Health in the United States
Is ‘electrosmog’ harming our health?

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