サイボーグが「カッコいい」世界

 英語を教えている学生の一人にTVゲームでもドラマでも(本人曰く可能であれば現実世界でも)、とにかくゾンビが大好きな子がいます。お友達になる方向ではなく、全員銃で殺しまくる方向です。余りに無邪気で、リアクションに困った自分の方が変なのだろうかと首を傾げてしまいました。
 世間一般の「カッコいい」がしばしば理解の範疇を越えているのです。サイボーグもその一例。トランスフォーマーみたいなノリなんですかね、アベンジャーズの一員になりたいんですかね。「俺TUEEE」ってやつですかね。
……私は縁側でお茶飲んで日向ぼっこして、畳の上で健やかにぽっくりが理想です。
(Yutika)
————————————————————————
サイボーグが「カッコいい」世界

従業員はモルモット




今年7月末、米国ウィスコンシン州のマーケティング会社でマイクロチップを社員の手に埋め込むことを決定したというニュースが話題になりました。一応、企業単位としてはアメリカ初。85人中50人もの従業員が同意したようです。しかもその半数は即座にOKしたのだとか。

8月1日にパーティを開いて実施するそうです(ということはもう開始されとりますな)。マイクロチップだけに、chips(ポテトチップス)が出されます。付け合わせにサルサソースも。めっちゃ楽しそっすね~、なんかいい感じぃ~って思ってもらいたいんでしょう。……思いません。

会社的に費用はそんなにかからないみたいですよ。この種の話題でよく登場するマイクロチップの草分け的存在、スウェーデンのバイオハックス・インターナショナルという会社と提携したので。とどのつまりは人体実験に名乗りを挙げちゃったのですな。

社員証を首から下げる必要がなくなります。鍵や暗証番号の入力なしでドアが開けられます。小銭の持ち合わせがなくても自動販売機を使えます。コンピューターやコピー機にもアクセス出来ます。

……コピー機くらい、認証システムなしで普通に稼働させたらえーやん、と思ったのは私だけでしょうか。いずれは珈琲メーカーにも「アクセス出来ます」とか宣伝しそうで怖い。んなもん、スイッチ押したら済む話やし! 多分、マイクロチップ・アンバサダーが自分好みの砂糖やミルクの量と種類に調整してくれるとか言い出すんですよ。

現在既にチップを埋め込んだ本人でないと撃てない改造銃が存在しますから、工場や研究室にある器具や機械類もほんの少しでも危険ならそうやって管理されるようになるのかもしれません。現在既にアメリカの半分以上の州やお隣の韓国では、出所後の性犯罪者の足首にGPSを装着させていますが、それをマイクロチップ化しようという案もあります。より多くの人へ埋め込むために、種々雑多な口実が次から次へと考え出されています。


医療面でのメリット


アメリカで2009年から続いている人気の健康バラエティー番組『ザ・ドクター・オズ・ショー』では昨年9月に「次なるブーム」として紹介しています。パスポートや免許証を持ち運ばずとも移動出来たり、スーパーで買い物する際にクレジットカードとして使えたり。

便利さを列挙した後、「なんの身分証明書も持たずに病院へ駆け込んだと想像してください」と視聴者に訴えます。「手元をさっとスキャンするだけで、医師はあなたの名前・生年月日・病歴・保険の種類・血液型・アレルギー、更には現在摂取している薬まで把握できるのです」……それ、誰がいちいち情報書き込んどきますのん。「手元のチップはあなたの生活を変えてくれるだけでなく、命も救ってくれるようになるでしょう」……だから、そこまでして救わんでええって。

先ほどのウィスコンシン州の会社側もペットのマイクロチップのような追跡機能は入れていないと公言していますが、将来的には健康面や医療の情報を記憶させられる設計だそうです。賛成派の論調としては「もう既にペースメーカーなどを人体に埋め込んでいるじゃないか」というものです。

アメリカだけではありません。スウェーデンのエピセンターという会社は2015年から従業員への埋め込みを開始し、今ではその数150人以上。今年2月にはベルギーの「ニューフュージョン」というマーケティング会社がマイクロチップを社員証代わりに採用この時点で「世界で既に1万人が埋め込んでいる」と書かれています。冒頭の動画では「アメリカ国内だけでも既に1万5千人」とあります。歯科治療などでこっそり埋め込まれて実験されている可能性もあるので、実際にはもっと多いのでしょう。

FRIDチップとも呼ばれています。実際には以下のように、親指と人差し指の間へ埋め込むそうです:


……普通の注射針よりも太いですね、結構時間掛かりますね、ぐにぐにしてはりますね。絶っ対、痛いですよね!

2014年の記事によると、チップの形は異なりますが、女性が避妊するために皮膚下に埋め込むタイプもあります。微量のレボノルゲストレルというホルモンを16年間毎日分泌させ続けられます。リモコンで一時停止させることも出来るそう。2015年には前臨床試験が、2018年には市場に出回る予定だと書いてありました。資金援助しているのはビル・ゲイツ。NWOの人口削減計画なのが丸判り過ぎです。

現役兵士や退役兵のPTSD費用削減を当て込んで、頭蓋骨にチップを埋め込む研究も進められています。PTSDだけでなく鬱病の患者さんにもどうぞ、だそうです。当初2019年から臨床が始まると言っていたのが、2015年の記事の時点で前倒しになると判明。敵を殺したり仲間を殺されたりしてPTSDになるって、人間として至極まともな反応ではないでしょうか。だからこそそんな状況に誰一人として置いてはいけないと思うのですが、逆にいくら殺しても平気なロボット兵士の量産がお上の描く理想社会なのです。


子どもへのメリット


日本でもペットに埋め込むことは一般化してきていますよね。最近では人間の子どもにも、誘拐や迷子対策で埋め込む親御さんが出現しています。冒頭の動画だとブラジルの大富豪たちが実行済みらしく、アンケートでは75%のイギリスの親が子どもの居場所を把握するのに埋め込みたいと回答。

おまけにこちらの記事によると、イギリスのIT好きの少年(15歳)が親に黙ってネットで購入し、自分の部屋で自ら挿入。スマホを認証させたり、ブルートゥースでスピーカーと繋がって音楽を聴くのだとか。

現時点では埋め込み用の注射器とセットで約50ドル。サイボーグに憧れる若者が気軽に挑戦出来る環境になってしまっています。どこぞの大富豪がキャンペーンなぞに肩入れした日には、もっと安価になるでしょう。

本来は医療機関での埋め込みが推奨されていますが、実際には刺青屋やピアス屋さんで入れてもらう人が多いようです。ネット販売しているアメリカの会社は「危険なもの(Dangerous Things)」という名前でして……若者受けするんですかね、そういうハラハラドキドキな感じが。

子どものころからSF映画やドラマやゲームで超人的な能力を持つ改造人間に親しんでいると、機械と合体する方が「カッコいい」と思える素地が培養されていくようです。数年前にはオイスターカード(※ロンドン版イコカないしはスイカ)の外側のプラスチックを溶かして、中のチップを取り出し、身体に埋め込む実験を試みた猛者もいます。

本人はオイスターカードの存在自体が世間的に古くなってきたのと、ロンドンに住まなくなったせいで、今では計画を棚上げしたようです。マイクロチップ自体には依然として興味津々ですけれどね。同記事では他にも、錠剤に合体させて飲み込む型のチップ、コンタクトレンズの端に合体させたチップ、チップの代用として肌に刻印する「電子刺青」を紹介していました。


個人的なイメージ



ですが「チップの埋め込み」と聞いて私が思い出すのは、映画『キングスマン』のこのシーン


VIP用のチップを首元に埋めてもらい、自分たちだけ世界の危機から助かろうと思っていた特権階級の皆々様。世界人口が大幅に削減され終わるまで隔離された場所で傭兵に守られ、優雅に待機あそばす筈が、忍び込んだ正義の味方に本部をハッキングされてしまいます。ついでにとあるボタンを押したら、その最新型チップがもれなく爆発しちゃったい、てへぺろ。ってオチです。

先に挙げた避妊用のチップはリモコンで操作可能な設計でしたし、社員証チップも外部の機械にかざして使うものなのですから、周波数いじれば幾らでも外部から刺激出来ませんか。

その反面、個人的な体験ですが、大手メーカーのラジカセやハードドライブなど買って帰った初日からスイッチが入らず、うんともすんとも動かなかったこともあります(※無事交換してもらえました)。現在は古くなったエアコンが連日の暑さで、妙な具合になってきました。家電製品ってそんなものでしょう。だって所詮は人間の作ったものですもの。

そりゃ1901年からカリフォルニア州でずっと点灯し続けている電球だってありますけれどね。一般大衆は医薬品にせよ何にせよ、企業が設けるために、数年もつかもたない粗悪品を押し付けられる気がします。現にマイクロチップが古くなったり、機能が違う物が開発されたからって二個目、三個目を埋め込んでいる方がいるようで。

経脈やチャクラという微細なレベルまで考えると、身体を機械化するサイボーグがカッコよく見えるのは漫画の中だけではないでしょうか。ワクチンのように法律で義務付けされる日が来ないことを祈ります。

文・Yutika

Comments are closed.