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Mr.Xの電話

pixabay[CC0]
電話大ッキライの私が、携帯の着信に気づいたのは雨の朝であった。誰からだろうと思ってみると、登録されていない人からだ。留守電が入っていたので、何気なく聞くとMr.Xだった。
「体のことでご相談があるので、お電話ください」と蚊のなくような声で録音されていた。
それを聞いた瞬間、わたしの体は硬直して金縛りのようになった。
昨日おとといと風邪気味で、寝られるだけ寝て、今朝はやっと爽快な朝を迎えたというのに、この電話のせいで不快感100%にされてしまったのだ。
この人はもと患者さんだけど、別に教えたくて携帯の番号を教えたわけでもない。しかも親しいわけでもないのに、ときどき忘れた頃に相談の電話がある。それも体のことだ。
前回は1年以上前だったが、一応相談にのった。ただし、「お金も払わずに、タダで相談してくるのは困る」と突っ込んだのにもう忘れたのか、よほどの鈍感なのか。
まあ小心の人ではあるが、自分の小心のせいで他人の平和な朝をぶち壊すとは。
ネコと遊びながら、ムシャクシャを振り払おうとしたがそれは無理だ。
それなら、自分の心の中を見てやろう。
怒り、罪悪感、恐怖


あいつのせいで、静かな朝が台無しになったという怒り。
ムラムラしている。あいつの鈍感さに怒りを感じている。


返事の電話はしないと決めたけど、
相手を傷つけるのではないかという罪悪感。
けっこう、わたしも人に気を遣っているんだわ。


怒りと罪悪感に気づいただけで、ずいぶん心が軽くなってるよ。
でもまだ、なにかわだかまっている。 何だろう?


平和な時間が一瞬で台無しにされた恐怖。
そして、無視したために相手がどう思うかの恐怖。
Mr.Xそのものにも恐怖を感じでいるわ。
男性だし、うちのありかも知ってるし。コワイ。
感情を増幅させる




黒い塊はどんどん大きくなって、
これ以上大きくなれないくらいにふくらんでいきます。
はい、それを宇宙のかなたに放り投げてください。
どんどん遠ざかって、爆発して消えてしまいました。
おしまい」ってやつかな?


どっちかというと、ホメオパシー的なのがいいかな?




どんどん今ある怒りを強く感じてみる。
あいつめ、あいつめ、あいつめって怒りが大きくなってるよ。
せっかくの休みの日を台無しにして、あいつめ、
なんて鈍感野郎だ!!! って、思ったら・・・
あらら・・あいつはどうでもよくなっちゃったよ。
本当の怒りは自分


なんかまだあるよ。なんなのこれ?
ええっ? もしかして、自分に怒ってるの?
ええっ? そっちが本命?って、どういうこと?

もっと、心のコントロールのできる人になりたいって、日頃思ってるからね。

悔しかったんだ。それが自分への怒りかあ。
幼い頃のトラウマ


怒りで動揺していることへの罪悪感。

いつからそう思うようになったの?

驚いたことがあるって言ってた。
2才くらいのとき、わたしは激しく泣いていたんだって。
それが父の姿を見たとたん、いっしょうけんめい涙を拭いて、
父の前ではまるで、泣いていなかったようにふるまったと。

もっと泣かせるのがうまかったからね。
そうやって、裏表ができる子になったんだよね。

思春期に読んだ精神世界の本からもそう学んだ。
感情のコントロール、イコール修行だということ。
聖者になると感情はゆれないと思っていたけど、
実際はそうじゃなかったみたいね。

どんなに揺れても、すぐにもとの静かな水面にもどることじゃないかな。

でもそれを無視して、別のもので揺らしてごまかしても、
いつまでも元のネガティブな波動は残っている。
つまり解決したことにならないよね。

Max Pixel[CC0]
恐怖の電話


さて残るはあと一つ。恐怖っていうのは何だろう。
ここまでくると、もうMr.Xに対するものじゃないってわかる。
恐怖って、とっても奥が深いよ。何か過去に、
信頼されている人にひどい目にあったことがあるような。
そう言えばわたしがまだ、「ひつじの皮をかぶった7種」だった
学生時代にこういうことがあった。
ノイローゼ気味の友人がいて、よく相談に乗ってたんだ。
そうしたら、毎晩電話がかかるようになって、
それでもいやと言えなくて何時間もつき合っていた。
でもだんだん、電話がなるだけでビビるくらいにつらくなって。
それでもいやと言えなくて、ついに電話線をはずした。
そしたら翌日その子から、
「どうしたの?電話局に問い合わせたわよ」と言われた。
なのにまだ、いやと言えなかったんだよね。
以来、電話恐怖症になった。結局、自分のまいた種だったけど。

そのために巻き込まれてひどい目にあったから。つまり、自分が怖いんだ。
いやと言えない自分がまた、自分を不幸にするのではないのか、
自分を守り切れないのではないのか、という自分不信からくる恐怖なんだよね。

これまでたくさん自分を裏切って、つらい目にあったから。
これからはもう、そんなことはしないよ。自分に正直になるよ。
そして自分を怖がってきた自分を、安心させてあげたい。

それが彼にとって自分で考えるきっかけになるといいね。

ありがとう。
こうして、静かな雨の休日がリセットされた。

Pixabay[CC0]
ぴょんぴょん
暖かく見守る大きな存在と、一途な少女との対話にも見える、朝のひととき。その先に見えたものは、、、?