17/10/13 フルフォード情報英語版 [番外編]:仮想通貨の現状――白龍会からの特別報告書 3/6

 前回は、仮想通貨を巡る周囲の反応を見ました。IMFやFEDは新たな世界でも支配権を確立しようと虎視眈々と狙っていますし、既存の大手企業も一儲けしようと参入して来ています。国で言えば、中国や韓国は消極的、日本やスイスは積極的。
 一昔前、IT系のベンチャー企業が雨後の筍みたいに乱立していたのと似ています。今は“スタートアップ企業”と呼ぶみたいですけどね、発想力勝負の戦国時代の様相を呈しております。本文では、スタートアップを「新規立ち上げ」などと訳していますが、会社ではなく“チーム”、事業ではなく“プロジェクト”と、なんだかゼミかサークルのノリっぽい。
 前回最後に出てきた“ブロックチェーン”は、トークンの全ての取引を記録した電子台帳です。一定期間毎に塊(ブロック)に分けて皆で保存し合い、前の塊が次の塊へとジグソーパズルのピースのように特定の繋がりを有して続いていく(チェーン)のだとか。
 争いの場はトークン(仮想通貨)の多様化だけではなく、仮想通貨市場を支える技術的な分野にも及んでいる、というのが今回のお話。
(Yutika)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

————————————————————————
仮想通貨の現状――白龍会からの特別報告書 3/6
投稿者:フルフォード

仮想通貨とは一体


実際には今年市場に参入してきた仮想通貨の多くは通貨と呼べるものではなく、どちらかというとアプリやプラットフォームへのアクセス権限を表象する“機能的なトークン”と言うべきものだ。

このように考えればよい:グーグルが“グーグルコイン”なるものを作り出して、貴方がグーグルで検索する度にそのグーグルコインを少量支払わなければならない仕組みになったとしよう。縦えそれが正確には通貨と呼べるものでなく、グーグルのプラットフォームのみでしか使用できないとしても、こうなるとグーグルコインの需要が生まれ、価格が下支えされることになる。


新市場のサービスも争いの場


多くの企業が仮想通貨の生態系における新たな“グーグル的存在”、つまり核となる必要不可欠なサービスを提供する企業になろうと、競い合っている最中だ。

例えばチェーンリンク社は「オラクル」と呼ばれる形で既存の金融データをブロックチェーンに移行させ、他の仮想通貨の企業にそのデータを提供しようとようと試みている。どうやらチェーンリンクのチームはスイフト【国際銀行間通信協会】と既に提携しているようだ。


しかし我々が思うに、スイフトのシステムそのものが廃止され撤退すべきではないだろうか。ロシアと中国はスイフトの代替機関を作り出そうと既に動いている。またの名を金融制裁とも称する金融戦争において、銀行カルテルが使用する主な武器の一つがスイフトなのだから当然のことだ。


さて次に移ろう。ビットクエンスは利用者が使い易い電子財布のアプリを構築しようとしている。ある意味、電子通貨のダッシュボードであり、ある意味ソーシャルメディアのアプリといったところだ。


イコノミは電子資産の運用会社であり、仮想通貨世界を熟知した参加者が管理する投資ファンドを提供しようとしている。

興味深いプロジェクトは幾つもあり過ぎる。こういった“トークン”を時価総額で分類した一覧はコインマーケットキャップにて確認可能【なので興味ある方はそちらを参照して頂きたい】。


取引所の開設も争いの場



他に興味深い新規立ち上げと言えば、0xプロジェクト(「ゼロ・エックス」と読む)である。分散型でP2P形態の為替取引のため、核となる構成要素を作出しようと試みているのだ【※ざっくり言うと、各種トークンを送ったり交換したりするため、分散型の取引所に類似するものを新設しようとしているみたいです】。

言わば、仮想通貨の生態系は金融取引にとっての新たなインターネットのようなものであり、各企業がその新たなネット上の核となる機能を作り出そうとしている。

中国が少し前に仮想通貨の取引所を閉鎖することが可能だったのは、それが集中型の取引所だったというだけであり、つまり取引所が特定の一つの場所に存在したか、特定の一連のコンピューターに存在したせいなのだ(中国の場合は後者)。

分散型の取引所が謳っているのは、それが特定のいかなる物理的な場所にも存在せず、よって閉鎖や統制されにくくなるだろうということだ。加えて、利用者に仮想通貨建て資金を預け入れることを要求しないものが大半なので、そういった資金が盗難されるリスクも排除される。分散型の取引所においては、【これまでの集中型取引所と異なり】利用者同士によるP2Pの形で取引が行われるのだ。

分散型の取引所という狭い分野においてでさえ、既に激しい競争が始まっている。「分散型取引所プロトコルにおける情勢」と題された最近の記事が、幾つかのアプローチの非常に細かい技術的な違いについてまとめてくれている。


ここでも出て来る既得権益


おまけに全ての競争が紳士的なものという訣ではない。実のところ、もしブロックチェーンが金融の未来だというのならば、世界金融の支配における“いつもの疑わしき面々”が急成長を遂げているブロックチェーンの生態系内部で地位を獲得しようと熾烈な争いを繰り広げているのは必至というもの。その確かな証拠も見てとれる。

つい最近、JPモーガンのCEOジェイミー・ダイモンは、ビットコインが「詐欺」だと露骨に言ってのけた。その全く同じ日にJPモーガンのサンフランシスコ支店がブロックチェーン協議会を主催していたというのにだ。結局、投資銀行というのは顧客ベースのビジネスなのであって、自分のところの顧客がビットコインを購入したり、取引したり、投資したいと望めば、それが業務の内容となるというのが実態だ。


分散型の取引所に話を戻そう。0xプロジェクトのICO【仮想通貨発行による資金調達】の当日、雑誌『フォーブス』(ベンジャミンの母校【※フルフォード氏のかつての勤務先】)とある記事を発表し、0xのプロトコルには幾つかの根本的な欠陥があるのではないかと論じた。


この記事はジェイコブズ・テクニオン・コーネル研究所に所属するアリ・ジュールズイドー・ベントフ研究を基にしたものだ。ジュールズ教授は記事で言及されている複数のプロジェクトの顧問を務めている。記事や研究には0xプロジェクトに対するまともな批判も多少は含まれているのかもしれないが、我々としてはこれが発表されたタイミングが気になって仕方ない。0xプロジェクトのICOプロセスに否定的な影響を最大限与えようと狙ったものなのだろうか?


過去の亡霊も争いに参加



上記の「分散型取引所プロトコルにおける情勢」の記事で挙げられていた0xプロジェクトの競合相手の一つは、イスラエルを拠点とするバンコール・プロジェクトだ。バンコールは経済学者ジョン・メイナード・ケインズの発想を基にしている。

ケインズの夢が実現することは無かったものの、第二次世界大戦の末期にバンコールと呼ばれた世界通貨の創出を提案した。これを理解するのは少々厄介なのだが、バンコール・プロジェクトがバンコール世界通貨の発想をどう現代的に解釈したものかは短い動画で解説されている。

【但し】この世界が現在陥った悲惨な金融状況の原因としてケインズ経済学がこのところ益々非難されている点と、仮想通貨が一般的にはケインズ経済学よりもオーストリア学派経済学と多くを共有している点は指摘しておく。

いずれにせよ、コーネル大学のまた別の研究者エミン・グン・シーラーがいかに「バンコールは欠陥」なのかという記事を執筆している。

我々が言えることはただ、IC3【上に登場したアリ・ジュールズやエミン・グン・シーラーやイドー・ベントフが所属する、直訳すると「仮想通貨と仮想契約におけるイニシアチブ」という名称の大学研究チーム】と「ハッキングと分散型」という【エミン・グン・シーラーの】ブログから、幾つかの多様かつ興味深い動向が発信されているということだ。


翻訳:Yutika

註:【 】内は訳者の解説部分です。また訳文は日本語での読み易さを優先して見出しを入れ、原文とは異なる形で文や段落を分割することもあります。原文にはないツイートや画像も加えています。


お願い
フルフォード氏本人から快く許可をいただき、英語版レポートをシャンティ・フーラで翻訳して転載させていただいております。ただ、フルフォード氏の活動を支えるためにも有料の日本語版メルマガを購読して応援してもらえると有難いです。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

Writer

Yutika

体癖:8−2、エニアグラム:4
関西の英語塾で教えつつ、翻訳業(英語&仏語)をしております。


Comments are closed.