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早く出ておいで!
もう娘の出産が秒読み段階になりました。いつもはもっと落ち着いてその日を迎えていたのですが、今回は上に3人の子どもがいて、しかも夏休み。
理想は8月初めに出産して実家に帰るというものでした。そうすれば娘も少し体を休めますし、子ども達も夏休みなので気が楽です。
口ではおなかの赤ちゃんに向かって「いつでも好きな時に生まれて来てね!」と言いながら心では「夏休みだよ!早く出ておいで!」と都合のいい事を願っていました。邪念があると正確な検知ができません。今までは何となく生まれる日が予測できたのですが、今回ばかりはダメダメです。孫達と家庭内台風に巻き込まれながら・・・赤ちゃんの誕生を今か今かと気をもんで待っていました。
不思議な事に娘家族は全員、1.2.8の数字の日に生まれています。だから今回も候補の日が何日かありました。そして超安産の体質なので産科医から「墜落分娩の恐れがあるから産気づいたらすぐに来てください」と言われていました。だから遠くにも行けません。その上、家族中でお産に立ち会う予定なので夜中に一気に生まれてくるのを想定して全員の荷物を玄関に置いて、洋服を着たまま寝ます。まるで夜勤の救急隊みたい!
外が明るくなって娘が「おはよう!」とカーテンを開けたら「あ~、今日も生まれなかったねえ~」があいさつになっていました。出産予定日も過ぎました。結局どこにも出かけられなかったし、緊張しながら夏休みが終わってしまいました。みんな待ちくたびれて、娘までもが「もう生まれんような気がしてきた」と言い出す始末です(笑)
小学校の2学期は8月27日に始まります。前日の夜、忘れ物はないか?宿題はしたか?何度も確かめながら気持ちが落ち込んでいきます。毎年始業式の日は子どもの自殺者が一番多い日です。死ぬくらいなら学校に行かなくていいと思うのですが、抜け道が見つからないのでしょう。その子のせいではないのにと・・・悲しいです。
さて、始業式の日、家の中は少し静かになりました。でも幼稚園は9月からです。その日は産科の健診日でしたので孫と2人で留守番をしました。BIRD BINGOというゲームがお気に入りで、毎回「ばあば、ビンゴしよう」と誘ってくるのですがお兄ちゃんが邪魔をしてまともにできません。やっとこの子のペースで出来ました。とてもきれいなゲームです。
検診の結果、赤ちゃんはお産の段階に入っているとのこと。いつ生まれてもおかしくないということで早めに昼ご飯を食べました。夕方、お姉ちゃん達が帰ってくるまで待ってくれるといいね、など勝手なことを話していたら「お産前の腰痛かも」と言い出して慌てて産科に行きました。
「診察しますから待合室でお待ちください」と言われて孫と遊んでいたら「入院しましょう。部屋に案内します」と言われ部屋に入ったら「お産が始まりました。立ち会われますか?」と言われ、「オシッコ!」という孫のおちんちんを「早く!早く!」と出しながら戦闘態勢に入りました。
皆もこの日を待っていたのよ
分娩室に入ったらもう娘がいきんでいます。孫もびっくりしながら見守ります。何と3回いきんだだけで赤ちゃんが生まれてきました!「おぎゃあ~」という産声で一気に部屋が華やぎます。
「おめでとうございます!」「おめでとうございます!」と皆から祝福されて、孫を振り返ると一生懸命手で涙をぬぐっていました。それを見たママが孫の手を握りしめました。3歳だけど、人が生まれるという神聖な臨場感を感じていたのでしょう。
すぐに娘の胸に赤ちゃんを抱かせてもらい、臍の緒が切られました。元気な男の子です!
パパが飛び込んできました!タッチの差で間に合いませんでしたが、娘をねぎらって赤ちゃんを抱いていました。義理のお母さんも県外から駆けつけて、小学生の孫達を連れて病室に来てくださいました。
お姉ちゃん、お兄ちゃんも嬉しそうです。それぞれに抱かせてもらって弟の誕生を実感しているようでした。トッポンチーノという赤ちゃん専用のお布団を作っていたので小さい子が抱いても安定感があります。
1人目と違って、4人目ともなればゆっくりお産の余韻に浸っているわけにはいきません。でもその分、家族のエネルギーが赤ちゃんに注がれます。「初めまして!嬉しいね!手が小ちゃくてかわいいね!」と新しい家族に夢中で誰も娘のお産の疲れを労いません(笑)
赤ちゃんのベッドが部屋に置いてありますが、娘は最初から自分のベッドに赤ちゃんを連れてきて添い寝をします。おっぱいを欲しがるときはすぐに含ませます。手慣れたものです。私は何も介入する必要がありません。
貴重な親子水入らずの時間を作ってあげることが私の役目かも?と思って「さ、赤ちゃんとママは少し休憩した方がいいから帰ろうか?」と言ってパパだけ残して帰りました。歩いて行ける距離です。子ども達もお散歩しながら興奮を落ち着かせました。さあ、今日からしばらくお留守番です。
お祝いの夕ご飯を作りました。お茶で乾杯もしました。赤ちゃんの誕生で嬉しいのと、待つストレスが一気に解消されて、とてもお利口さんです。ママの入院もしっかり受け入れて、宿題も学校の準備も自分からします。
お布団を敷いてみんなで一緒に寝ました。いつも絵本を読みます。それぞれが好きな絵本を持ってきて読んでいるうちにひとり、ふたり・・・寝落ちしていきました。
一番下の子はママの首を触りながら寝ます。ママがいる時は「ばあばの首は気持ち悪い~」と言っていたのに私の首を触りながら寝ました(笑)。今日はお産に代表で立ち会って大活躍でした。久しぶりの安堵感で・・・私も9時には寝てしまいました。
ようこそ!ようこそ!赤ちゃん。
2018年8月28日2時…やっぱりの数字でした。この日、このタイミングを待っていたのね。まわりの喧噪も聞いていた事でしょう。少し落ち着いてから出てきたかったのね。
4番目で写真を撮ってもらう量が圧倒的に少ないと思うし、お兄ちゃん達からの濃厚な接触も覚悟しないといけないけど、百も御承知ね。皆もこの日を待っていたのよ。お兄ちゃん達は上手に気持ちをコントロールできなくてケンカもしたけど、あなたが生まれて来てくれたら一気に安心して落ち着きましたよ。あなたの力は凄いね。
さあ、今からどんな旅が始まるか?
どうかどうか平和な世の中でありますように!
そして、これからはあなたなしでは描けない家族の万華鏡がひかり輝くのね。とても楽しみにしています。
でも、赤ちゃんは立派!動じません。待っている方が勝手に期待して、がっかりしてイライラしてケンカになって自滅しそう!まさに苦行です(笑)。
そもそも、「待つ」こと自体に期待が見え隠れ。「待つ」より「任せる」方がはるかにレベルが高い!などと思っていたら突然「まつのき小唄」を思い出しました。
古い!セピア色の思い出です。かわいい小学4年生のかんなままが学校の掃除の時間にほうきで掃きながら「まつのきばかりがまつじゃない。時計を見ながらただ一人 今か今かと気をもんであなた待つのもまつのうち~」と歌っていたのを思い出しました。意味も分からず大声で歌っていたなあ~!(笑)。