ユダヤ問題のポイント(近・現代編) ― 外伝21 ― 薔薇十字の由来

 外伝19で記した通り、近代フリーメーソン結成には大きくは2つの流れがありました。即ち、約2000年前にヘロデ・アグリッパ王と宰相ヒラム・アビウデを中心に、9名のメンバーで結成された古代メーソン「秘密の力」、それとテンプル騎士団です。
 ただし、テンプル騎士団の流れには、実働部隊としてテンプル騎士団を作ったシオン修道会の存在、そしてテンプル騎士団自体も、悪魔主義グループとそうではないグループもあります。更には、近代フリーメーソンにはその中心にプロテスタントのメンバーが入っていて、また「黒い貴族」も関わっています。
 近代フリーメーソンには異なる色々な組織のメンバーが入り込んでいて、まさに複雑なごった煮状態の組織だったのです。共通項といえば「反カソリック」の「秘伝者・秘密主義者たち」、これだけでしょう。
 この近代フリーメーソンというごった煮の組織結成に大きな役割を果たしたのが、『ヘロデの呪い』で訳者林陽氏の解説通り薔薇十字団、薔薇十字運動だったようです。
 しかし、この薔薇十字が全くもって厄介なのです。確かにバラ十字会日本支部が解説する大元と見られる薔薇十字団があります。しかし、一口に薔薇十字といっても、その後に地域や時代を異なったそれぞれが「薔薇十字」を名乗る幾つもの団体が出てきていているのです。おまけにそれらの内容は要領を得ず、実像は分からないのです。
 薔薇十字を検索して調べると「多くのオカルティスト、錬金術師、学者、文人、貴族等」が参入している様子は見えますが、彼らは秘密主義者で、彼らの発表する薔薇十字の文献等はわざと「煙に巻き」実態を見せないようにしていたのです。
 このように複雑怪奇な薔薇十字ですが、それらが発生する源流となるだろう組織がありました。実はこの組織はどうもシオン修道会のルーツ、つまりテンプル騎士団の流れの原点であり、同時に古代メーソン「秘密の力」も関わっている様子なのです。
(seiryuu)
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ユダヤ問題のポイント(近・現代編) ― 外伝21 ― 薔薇十字の由来

シオン修道会の最古のルーツ ~オルムスによる秘教宗団



近代フリーメーソン発足には大まかには2つの流れがあり、その一つが古代メーソン「秘密の力」で、もう一つの流れがテンプル騎士団です。テンプル騎士団からの流れには、1099年にゴドフロワ・ド・ブイヨンがテンプル騎士団に先立ち創設したシオン修道会も含められます。

このシオン修道会の発祥について、ブログ「レンヌ・ル・シャトーの謎」では以下のように見ています。

シオン修道会の最も早いルーツはオルムスと名のる人物のある種のヘルメス、グノーシス組織です。この人物は異教とキリスト教をひとつにしたと言われています。」

オルムスという人物の秘教組織が、シオン修道会の最初のルーツだと指摘しているのです。次いで以下のように記述しています。

「シオンが姿を見せるのは中世になってからです。1070年にウルサス王子率いるイタリアのカラブリアからやってきた僧侶の集団がフランスのストネイ近くにオルヴァル修道院を設立しました。これらの僧侶たちがシオン教会の基礎を造り、1099年にゴドフロワ・ド・ブイヨンがそれを取り込んだと言われています。」

どうも、オルムス派の僧侶たちが、1070年にウルサス王子という人物に率いられて、シオン修道会の前身となるオルヴァル修道院を設立した、とのことです。

さて、オルヴァル修道院を検索すると、この修道院はシトー修道院に属しているようです。シトー修道院といえば外伝17で記述しているベルナールです。

聖ベルナルドゥス(聖ベルナール)と聖母
Wikimedia Commons [Public Domain]

ベルナールはシャンパーニュ地方の貴族出身で、シトー修道会に入会し、シトー修道会を発展させた人物です。そしてベルナールは、ゴドフロワ・ド・ブイヨンやシャンパーニュ伯、ユーグ・ド・パイヤンたちとの仲間で、彼がカソリック教会との仲介など、テンプル騎士団のプロデューサー役を勤めました。それによってテンプル騎士団が絶大といえる強大な権力を得たのです。

このような関係から、オルヴァル修道院がオルムス秘教組織から来ていて、それを1099年にゴドフロワ・ド・ブイヨンが取り込み、シオン修道会を設立したとすると、その後のオルヴァル修道院自体はシトー修道院に属すようになった。このこと自体は全く自然なことになります。

ただし、オルヴァル修道院がシトー修道会に属するようになったのは頷けても、オルムスの秘教宗団からオルヴァル修道院への流れがジャンプしてしまっていて、確認できないので何ともいえません。
しかし、オルムスについては著書『レンヌ=ル=シャトーの謎』とバラ十字会日本支部も言及していますので、そこからも探ります。

シオン修道会の副称 ~「オルムス」と「薔薇十字真理の修道会」


Wikimedia Commons [Public Domain]

著書『レンヌ=ル=シャトーの謎』は146頁で、「1188年にシオン修道会がテンプル騎士団と袂を分かちプリウレ・ド・シオン団と名乗り、その上にその副称として謎の「オルムス」の名を採用した」と指摘しています。

そしてオルムスとはゾロアスター思想とグノーシス文書では光の原理の同義語として使われている。」とした上で以下のように記しています。

オルムスとはエジプトのアレクサンドリアの賢人、神秘主義者で、グノーシスの「熟達者」であった。紀元46年、この人物と6人の信奉者が、聖マルコと見られるイエスの弟子によってキリスト教に帰依した。この改宗により、初期キリスト教の教義とさらに古い秘儀学派の教えが融合し、新しい宗派か修道会が誕生した。・・・紀元46年に新しく結成された「伝授者たちの団体」に、赤十字か薔薇十字を象徴するオルムスが授けられた。その後、この赤十字がテンプル騎士団の紋章に反映したのかもしれない。オルムスは、いわゆる薔薇十字団の起源とも考えられる。1188年、プリウレ・ド・シオン団は「オルムス」に続く2番目の副称を採用し、薔薇十字真理の修道会と名乗った。

オルムスはアレクサンドリアの宗教者で、聖マルコの洗礼を受けた模様
洗礼によってオルムスは、自身を含む7名の創設メンバーで紀元46年に「伝授者たちの団体」オルムス派を結成した。
シオン修道会は副称で「オルムス」以外にも「薔薇十字真理の修道会」名を採用したこと。

以上のことを指摘し、それ通して著書『レンヌ=ル=シャトーの謎』は、このオルムス派がシオン修道会のルーツであり、また全ての薔薇十字の起源であることを示唆しています。

Author:Raziel777red [CC BY-SA]

なお、引用文中の「「伝授者たちの団体(オルムス派)」に、赤十字か薔薇十字を象徴するオルムスが授けられた。」この部分は難解ですが、先の指摘のようにオルムスは「光の原理」でもありました。ここの「オルムス」とは人物で無く「光の原理」の意味です。

「光の原理」は、またグノーシス(英知)を意味し、その象徴が赤十字もしくは薔薇十字だ」としているのです。つまり、「オルムス派は赤十字もしくは薔薇十字によって象徴されるグノーシス(英知)をその実践で授けられていた」との意味になるでしょう。


洗礼者ヨハネの性錬金術を受け継ぐ宗団 ~全ての薔薇十字の起源

バラ十字会日本支部は、オルムス、そして古代黄金薔薇十字団について以下のようにしています。

メーソン組織である古代組織黄金バラ十字団・・・その起源は聖マルコに洗礼を受けたエジプトの聖職者オルムスあるいはオルミサスにまで遡ると主張していた。そしてオルムスはエジプト神秘学派とキリスト教を融合させ、オルムス派を設立し、赤色で装飾された黄金の十字を象徴として用いていた。西暦151年に、エッセネ派がこの学派と結合し、この学派は「モーゼとソロモンとヘルメスの秘儀の守護者」という名を掲げた。

4世紀まで、この組織は会員が7名を越えることはなかった。12世紀になって、1187年にエルサレムがイスラム教徒に奪還された時に数名のテンプル騎士団員たちが入門し、団員たちは世界中に存在するようになった。」

ここでは、オルムス派が古代黄金薔薇十字団になったとしています。そしてブログと著書の『レンヌ・ル・シャトーの謎』で記している内容と、バラ十字会日本支部の記述内容は整合します。ここでは「オルムス派がエッセネ派と結合した」とあります。

洗礼者ヨハネ、マグダラのマリア、イエスが所属していたのがエッセネ派です。その本部がアレクサンドリアにあったのです。アレクサンドリアの宗教者オルムスは、最初からエッセネ派に関係していた。

さらにオルムスは、聖マルコから洗礼者ヨハネとマグダラのマリアの性錬金術の技法が伝えられ、オルムス派を組織した、と見るのが自然です。そして4世紀まで、創設時と同じ7名のメンバーだけで秘かに存続していた模様です。

聖マルコのライオン
左から洗礼者ヨハネ、聖マルコ、マグダラのマリア、聖ヒエロニムス

オルムス派は、エッセネ派と結合した「モーゼとソロモンとヘルメスの秘儀の守護者」の名からも性錬金術とカバラ、グノーシスを奉じていた組織と推測できます。オルムス派の象徴が黄金薔薇十字なのです。シオン修道会の副称「オルムス」と「薔薇十字真理の修道会」とピッタリ重なります。

洗礼者ヨハネに初代総長の座を空け、崇拝信仰していたシオン修道会のルーツが、このオルムス派と見て間違いないでしょう。シオン修道会自体が「自らはオルムス派、黄金薔薇十字から来ている」と宣言しているようなものです。

オルムスの薔薇十字は1187年にテンプル騎士団員が入会し、世界に広がったとあります。秘伝宗団オルムス派は紀元46年設立の模様ですから、約1000年間地下に潜っていて、テンプル騎士団がダビデ神殿から秘密文書を発掘するのに併せたような形で世界に広まったのです。

オルムス派「黄金薔薇十字」が全ての薔薇十字の起源と見て間違いではないでしょう。オルムス派がテンプル騎士団を経由して薔薇十字団へ、そして近代フリーメーソン発足へと至った一つの原点だったわけです。


Writer

seiryuu様プロフィール

seiryuu

・兵庫県出身在住
・いちおう浄土真宗の住職
・体癖はたぶん7-2。(自分の体癖判定が最も難しかった。)
・基本、暇人。(したくないことはしない。)
・特徴、酒飲み。アルコールには強い。
・歯が32本全て生えそろっている(親不知全て)原始人並み。

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