ままぴよ日記 36

 秋晴れの中、冒険遊び場には約300人の参加がありました。初めて参加する人の中から「何をして遊べばいいのですか?」「もっとマルシェみたいにお店を出してください」という声もありましたが・・・。
 子ども達は本物の木にぶら下げられたブランコを見つけて走り出します。揺れるたびに葉っぱを見上げて木を感じます。何だか楽しい!!いつものブランコと何が違うのでしょうか?きっと子ども達は自然が友達だったという事を思い出すのかもしれません。
(かんなまま)
————————————————————————

遊ぶ楽しさを親子で味わってほしい


冒険遊び場を作る活動を始めて13年になります。私達は毎年、この日のために公園を下見して、どんな遊びができるかを確認します。市にも占有許可をもらい「火を使います」「水遊びします」「木に登ります」と伝えておきます。元の通りに戻すことが条件で一日限りの許可を出してくれます。


でも、どうして?わざわざ?公園を貸し切ってまで、こんな遊び場を作るのでしょうか?なぜ遊びが深まるように仕掛けを考えるのでしょうか?

今の親世代は高度経済成長期に育ちました。日本中に都市化の波が押し寄せてきて車社会になり、ビルやマンション建設で子どもの遊び場が一気に失われていきました。その代わりに大型レジャーランドができ、子ども達は家の中でテレビやファミコンに夢中になっていきました。同時に高学歴=成功という価値観が生まれて塾やおけいこ事が子どもの遊ぶ時間も奪ってしまったのです。

与えられた遊びしか経験したことがない世代です。いい親になろうとして真剣に「どんなおもちゃを買い与えたらいいですか?」「遊園地を教えてください」「体操教室は何歳から行かせた方がいいですか?」と聞いてきます。だから「躾にいい」「知育」「早期教育」などの宣伝文句に飛びつきます。

逆にテレビやゲームの面白さは知っているから乳幼児のうちから与えます。全く悪気はないし、それが赤ちゃんにどんな影響を与えるかも知りません。だって子どもの成長を何も知らないで親になったのです。


というより、子育ては当たり前すぎて子ども達の育ちのことに誰も関心を持っていなかったし、伝えなかったのかもしれません。だから経済成長で都市化が進んだ時にあっさり子どもの時間と遊び場を手放してしまったのだと思います。子どもの姿がおかしくなって初めて、その失ったものの大切さを知る・・・というよくある話です。

そして子育てにかかわるたくさんの研究者、教育者、医者がこのままでは大変なことになると言い出したのです。

私達も身近にいるママ達に「子どもの育ちには遊びが大切ですよ」と伝えてきました。ママも子どものために良かれと近くの公園に遊びに行きます。ところが誰もいません。遊具もすぐに飽きて面白くありません。そもそも何をしたらいいかもわからないし、楽しくなければ続きません。

でも、楽(ラク)で楽しい!子どもがすごく喜んだ!お利巧になった!という体験があれば、そこから何かが変わります。実は本物の遊びは親は楽で、子どもは自由で楽しいし、賢くなるのです!!

私達はこの遊ぶ楽しさを親子で味わってほしいのです。



新しいことを思いつく喜びが遊びの醍醐味


本来、子どもは今も昔も遊びながら育つようにプログラミングされています。自分で考えた事を自分の力で実行したいという学びの要求と達成した喜びが成長を促すのです。逆に、させられたものは面白くないし身に付きません。本当にやりたいことは何度でも挑戦したくなります。達成した喜びも倍増です。子どもにとって遊びと学びは同義語です。

次のステップは「あっ いいこと思いついた!」と新たに思いついた方法でやってみる(応用)。やれた時の有能感!自分に満足してご機嫌です。すごい集中力です。途中でやめたくない!明日もやりたい!という気持ちが沸き上がってきます。

この学びたいエネルギーにはタイミングがあります。「ご飯よ!やめて片付けなさい」と言って台無しにしてはいけません。この時の子どもの生命の輝きを感じられたら、この大切さがわかるでしょう。その時こそが子どもの成長を飛躍的に伸ばしている真っ最中なのです。ご飯は後で食べればいい。満足してお腹もすいて消化も助けます。大人は子どもの命の輝きを子どもの成長のサインとして感じる力を磨かなければいけません。

そもそも子どもは赤ちゃんの時から「おっ!」と好奇心が生まれて体の動きを促します。何でも掴んでは口に入れるのも自分で感覚を掴もうとしているからです。口が一番感じ易いのです。少々の汚れもよだれで殺菌してくれるし、人間の身体は口から入った異物(初めての食べ物)の抗体を作るのは得意です。


自分で思いついたことができる喜び。新しいことを思いつく喜びが遊びの醍醐味です。その遊びに正解はないので安心して冒険ができます。想定外の事だらけです。これは忍耐力!困難を乗り越える力がつきます。

そこに友達が居れば自分の都合だけではできない事を学びます。コミュニケーション能力を育てながら喜びも倍増します。トラブルになれば修正能力と問題解決力がつきます。

夢中で遊んでいるだけで五感が育ち、様々な感覚が脳に伝達されて感覚統合が起こり、体の機能を育て、知らないうちに協調性、社会性がはぐくまれて感情のコントロールと共感能力が付きます。

特に自然の中の体験はスケールが飛躍的に広がります。お日様に当たることも体を作るうえで大切です。良質の睡眠にも関係します。鉱物、植物、動物、妖精とつながる世界であり、「目に見えない妖精がこの木にも花にもいて、皆と同じように暮らしているかもしれないよ」「いろいろな生き物のお母さんが子どもも育てているかもしれないから大事にしようね」と話すと自分に置き換えて目を輝かせます。


もしかしたら大人は忘れてしまったけれど、子ども達はまだまだそれを感じ取れる世界に住んでいるのかもしれません。環境を大切にする思いをはぐくみ、やがて自分や自分を取り巻く世界を知りたいという探求心に移行して聖なる科学の世界へと誘ってくれるかもしれません。

又、肌で感じる温度、風、雨、雪の感覚、匂い・・・土や石に触れて重さも知ります。火を起こせばまた世界が変わります。食べ物になります。これは絵本や図鑑の世界では味わえない丸ごと体験の世界です。


もちろん、外遊びだけが遊びではありません。ままごと、積み木、お絵かき、粘土・・・子どもの遊びの世界は暮らしの全てに広がっていきます。好きなことをやり続けさせることで自分の道を広げていきます。

でも残念ながら、今はこの環境を意識して作ってあげなければいけません。それは大人の都合でルールを決めたり指導したりすることではありません。

大人は子どもの個性や成長過程を知り、子どもが主体的に取り組めるように環境を作ってあげる必要があるのです。少し仕掛けをしたり、一緒に遊んだりします。それがプレーリーダーです。あとは子どもに任せます。遊びこんでいる姿を観察していると子どものしなやかな発想に感動します。


私は、ただただ感動して「すごい!好奇心が生まれた!」「あっ やる気全開!やる気はどこにも売ってないのよー」「あっ 何だろう?という気持ちに連動して体が動いた!凄いねえ~」何度も同じことをする子には「自分が予測したとおりになるのが楽しくて仕方ないのねーよかったねー」などなどつぶやいてしまいます。

不思議なことに、それを聞いていたママが「えっ?何度も同じことをするのはそんな意味があるのですか?しつこい子だと思っていました」と、我が子の成長に気が付くのです。しっかり子どもを観察して子どもを感じる感受性を育てなければ見えてこない世界です。


だから野球を解説付きで見るように、私が感動したことを実況おしゃべりします。それをすることでママも子どもの凄さに気づき、表情が明るくなります。だって、子どもの成長は親の喜びなのです。子どもも親の笑顔でもっと幸せになります。

でも、現実はそんな子どもの遊ぶ場がなくなり、子どものストレスが問題行動となり、それを躾けるために指導しなければ育たないと勘違いしている学校が増え、更に、それを利用する産業界、マスコミ。今の親は自分の体験がないゆえに疑いもなく子どもをそんな世界にはめ込もうとするのです。そしてストレスの悪循環が始まります。


常識を超えたフリースクール「自然スクールトエック」


そんな現代社会に「自然スクールトエック」という常識を超えたフリースクールが生まれました。
https://toec.jp/column
https://toec.jp/

ここは個々人の好奇心や関心を起点に遊学する学校です。0歳から小学6年生まで自然の中で遊び放題なのですが、もっと知りたいと思ったら自分で調べたり、本を読んだりします。一日の中で静かな時間が1時間あって、その時は好きな漢字や算数のドリルをするそうです。スタッフは子どものしたい事に必要な介入をするだけ。もちろんNOを言う権利もあります。

野菜を作ったり、ご飯を作ったり、生活そのものも自由に体験します。そしてこの学校を卒業したら突然普通の中学校に通い始めるのです。すでに12年間中学校に送り出しているのですが、先生の話を良く聴き、何事にも意欲的、他人に対しても寛容で身体能力、体力が高いという評価です。人と違うというだけでいじめられても気にしません。自分の弱さも不十分さもさらりと受容しているので自分の存在そのものへの肯定感があります。学力に関しても脱落者が居ないどころか成績優秀になっていくというのです。


親は普通の学校に入れた方がいいのではないかと?不安になったり自分を確かめたり悩みが多いそうですが、子どもの姿をしっかり見る習慣がついているので親も又、学びを深めていくとの事。

そうです。親はいつも子どもを通して想定外の事にぶつかり、子どものためにはどうしたらいいのか?自分に問いながら子育てをし続けるものなのです。でも、原点を間違わなければ結果はすべてOKです。


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
かんなままの子育て万華鏡はこちら



Comments are closed.