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保護者と教師が協力しながら学校運営をサポートする組織PTA
PTA(Parent Teacher Association)は子どもの健やかな成長をサポートするために保護者と教師が協力しながら学校運営をサポートする組織です。子ども会は地域の親子で構成され、学校ではなく地域で子どもの健全育成をするための団体です。お祭り、餅つき、ドッジボール大会、親睦会、ラジオ体操、プール当番などがあり、どちらも任意加入です。
でも実態は組織の説明もなく、1年生になったら全員に配られる入学書類一式の中にPTAの会費納入の用紙が入っているので学校の組織だと思って加入してしまう人が多いようです。子ども会も地域の当番からいきなりお誘いが来ます。そして、いったん入ると年度ごとに役員決めがあって会長、副会長、広報、書記、何々委員会、監査などの役割を割り振られます。
「負担を平等にする会」になってしまったPTA
ひと昔までは自営業や専業主婦など比較的昼間の時間に出席できる人が役員になっていました。ところが、今は保護者の数が減ったので、ほとんどの保護者が何らかの役をしなければ成り立たなくなりました。
会議は夜です。働いている、妊娠中、子どもが小さい、介護をしている、病気などの個人の都合や、その役に向いていない、やりたくないなどの意思はかき消されて、みんな同じように我慢する「負担を平等にする会」になっています。
さて、今がまさに次年度の役員決めの季節です。
あるママが相談に来ました。シングルで3人の子育てをしているママです。子どものためにできる事は協力したいと思っているのですが朝早くから夕方遅くまで仕事をした上に、家事、子どもの世話と忙しい日々です。PTAなどの会議は夜にある事が多いので、子どもだけで留守番をさせなければいけません。
みんなに迷惑をかけるので退会も考えたのですが、子どもが楽しみにしている行事もあるので事情を話して役員は免除してくださいと頼みました。でも、皆も同じ状況なので例外は認められませんでした。
以前、こんなこともあったそうです。子育て放棄をしているシングルのお父さんがいて、会費は払うけど役員はしません。でも、子どもは将棋が大好きで子ども会に1人で参加していたそうです。ところが活発な子で、周りの保護者から不満が出て責任を持てないという話が上がったそうです。その後、その親子を抜きにした会議があり、みんなで脱退を促したとの事です。
その子は将棋が好きだったのに参加できなくなって引きこもりになり、とうとう不登校になってしまったとのこと。不参加=不登校ではありませんが、大人の都合で子どもの楽しみを奪ったことに間違いありません。
むしろ周りの大人が「親の都合はあっても、その子自身の遊ぶ権利、育つ権利を守るために何ができるか?」というスタンスで話し合いをしたら何かが変わっていたのではないかと思います。そもそも、子どもは守ってあげなければいけない存在の前に、子ども自身が1人の立派な権利を持った主体です。
来年度の役員決めの会議に出席したママ
さて、相談に来たママが来年度の役員決めの会議に出たそうです。まずは自薦。誰も手をあげません。みんな下を向いています。他薦もお互いに気遣って誰も何も言いません。時間ばかりが過ぎてとうとう前役員がくじで決めようと提案しました。
「くじで決めても本当にできない人はどうなるのか?」などの発言をすると責任を持たされるので誰も反論しません。仕方なくくじを引きました。実はこのママは外国人なので言葉の不安もあります。書記などは無理です。祈るような気持ちでくじを引きました。
広報でした。できるかしら?と不安でいっぱいになっていると、会長のくじを引いたママが悲痛な顔をして「無理です!子どもが1年生で学校の事は何もわからないし、下に子どももいます。会長は無理です」と泣き出しました。
周りもそのお母さんの気持ちがわかるだけに黙ってしまいました。それを見ていた元気そうなママが「私も初めてで自信がないけどみんなが助けてくれるならやってみます」と言ってくれたそうです。その流れで副会長もくじを引いた人ができないと言い出して、他の人が引き受けて…やっと決まったそうです。
その後、新旧役員が顔を合わせて、どんな仕事があるのかを申し送りして次回は新しい役員だけで会議をする事になりました。みんなでLINE交換をして解散になりました。本人は広報を頑張ることにしました。
そこまではよかったのですが、その日の夜遅く、とつぜんLINEに書き込みがありました。前役員さんからでした。
「今回はくじ引きで役員を決める事になりましたが、固辞する人が出て、別の人が会長になりました。このように皆で決めたことを自分の都合で取り消したら今後これが前例となってますます役を決められなくなります。だからくじ引きの結果を決定とします。私の不手際で皆様を混乱させたことをお詫びします」という内容でした。
それを見たママはショックを受けました。泣いていたママの顔が浮かびます。それは私だったかもしれない。そして、その様子を見て、自分から会長を引き受けてくれたママの好意と勇気はどうなるの?今の役員で決めた事なのになぜ前役員がこんなメールを?平等って何?前例って何?これは日本人のやり方?と次々に疑問が出てきました。
前回も同じようなことで意見を言ったら知らないうちに仲間外れになったことがあって、発言してはいけないという空気は感じています。でも、どう考えたらいいのか?私はおかしいのか?混乱して相談に来たのです。
残念な事に、よくある話です。
平等のはき違えだと思いました。特別扱いをしない事が平等だと思っているのでしょうか?日本人は自分はもちろん、全ての人に人権があり、それはいかなる時も尊重されるという意識が抜け落ちているのかもしれません。特にものを言いにくい弱者の権利は配慮して保証してあげなければいけません。お互い様です。
とは言え、結果的に子どもが喜び、学校運営にも貢献出来たら気持ちがいいものです。友達も出来て情報を交換し合ったり、先生と仲良くなるといういい面もたくさんあります。だから自分のモヤモヤを「子どもが喜んだからよかった!」と収めるのです。でも、根本の原因を解決しないと又違う場面で同じことが起きます。
保護者や地域の人が協力して活動するボランティア団体PTO
実は娘も日本の学校のPTAに疑問を持っていました。ところがボストンに行って学校にPTOという組織があるのを知りました。PTO(Parent Teacher Organization)とは学校ごとに独立した組織で、子どもや学校運営のために保護者や地域の人が協力して活動するボランティア団体です。
もちろん核になる役員は数名必要ですが、もともとボランティア精神の盛んなお国柄。スムーズに決まるそうです。そしてその時の役員が今年度のやりたいことを決めてHP上に公開します。その都度手伝ってくれる人を募るそうですが、目的や意義も示されているので興味がある保護者が手をあげます。つまり、自分主体でやりたい事をやりたい時にやりたい人がやるシステムです。賛同者が少なかったらキャンセルです。
娘も赤ちゃんがいますが、興味のある事に積極的に手をあげて参加しているようです。資金集めのためのバザー、校庭をきれいにする、図書係、お楽しみイベント、見守りなど何らかの役に立ちたいというボランティア精神を発揮できるし、友達ができるし、参加しない人も何も言われないし、肩身の狭い思いもしなくていいようです。
そろそろ日本も縛りあう罰ゲームのようなPTAではなく、子どもの健やかに育つ権利を保障するためにはどんなことができるか?どんなサポートが必要か?皆が自主的に楽しく活動できる組織になるにはどうしたらいいのか?を考え直す時期が来たのではないでしょうか?
嬉しいことに日本でも新しい取り組みが始まっているようです。
東京都大田区嶺町小学校の誰もが参加したくなるPTO
子どもの健やかな成長のために協力し合うのはとてもいいことだけど、目的のために役割を強いられて、行動を期待されて、責任を負わされるなんて何だか変だなあ。
そして、皆がおかしいと思っているのに与えられたものに盾突くのはいけないという空気が流れるのは何でだろう?
見回したら学校も会社も政治も、家庭の中も、子育ても同じ空気が流れている。
日本は市民革命が起きないわけだ。
みんな自分を生きているのかな?我慢して、あきらめて愛が枯渇していないかな?