ままぴよ日記 42 「私たちの町で産後ケアを始めよう! 1」

 こんなことってあるのでしょうか?
 私は人口6万くらいの市に住んでいますが、その町で子育て支援の大きなうねりが来ています。もう私達の手を離れて神様が働いてくださっているのではないかと感じるほどです。
 でも、実際に動くのは私達。どんな時もめげずに良心と共に働いていたら・・・このうねりが突然やって来たのです。

 もう一方で、コロナウイルス、娘が直面しているオーストラリアの火災、経済崩壊、地震の気配…世界中を巻き込む負のうねりが来ています。
 状況は悪化するばかりで私達個人では成すすべもないように見えますが、こんな時こそできる事に集中するしかありません。

 そうです。こんなことが起ころうが起こるまいが・・・できる事は1つ。自分の良心に従って目の前の事に愛を体現して生きて行く事。2月のカレンダーの言葉の通り、どんな時も自分が幸せでいる事だと思いました。それが出来ていなかったら今こそが生き方を変えるチャンスです。

 子ども達、孫達、すべての子ども達の顔が浮かんで不安になる時はガヤトリー・マントラ「愛しています。愛しています・・・」と唱えて冷静になります。そして私の手の届かないことは神様に祈ろうと思います。生活の中で真剣に祈る時間が増えました。

 さあ!今回からは、我が町の子育て支援が私達の提案によってどう変わっていくのか?そのうねりと共に実況中継をしていきたいと思います。
(かんなまま)
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垣根を越えた現場での支援者のネットワーク作り


ちょうど一年前、私達子育て支援者と現役ママ達が一緒になって老朽化した子育て広場の存続(もしくは建て替え)と、お産直後からの子育て支援の必要性を市長に話に行きました。そのことはままぴよ日記の2021に詳しく書きましたが、今回はその続編になります。

その結果は「これからも協議していきましょう」という事でした。でもこれは積極的に動かないという意味だと受け取りました。市は財政難で、既存の事業も見直されている状態です。これでは「子どもは宝、子育て支援は市の柱!」と言いながら何の支援策も取られないまま時が過ぎていきます。

思い返せば13年前、現場の支援者のネットワークを作って試行錯誤しながら子育て広場を作りました。その後ママのための親育ちセミナー、中学生とのふれあい広場、多胎児を持つママが集う日、助産師や小児科医の相談日、外遊びのプレーパーク等も全て、自分たちで学び、企画してきました。もちろんそのたびに効果を報告して市の予算を取り付けてきました。目的はこれらの支援を市の事業にして、全ての親子に無料で届けたかったからです。

Author:倉田哲郎[CC BY]

これは書いてしまえば5行くらいの話ですが、それに至るまでは何度も壁にぶつかり、無力感に襲われました。でも、目の前に必死で子育てをしているママ達が居たからやめられませんでした。そして一緒に支え合う仲間がいたからやってこられました。


困った親子に寄り添う支援


ところが、親子の置かれた環境は深刻さを増すばかり。親はますます孤立無援化していき、「国のために働きに行きましょう。保育園を増設します」という子離れ支援が行われています。

2016年のデータですが、産後鬱もしくは産後鬱の一歩手前だったという母親が80%を超えている事や、周産期死亡より母親の自殺が大きく上回ったことが衝撃でした。自殺のピークは産後4か月。これは産院を退院してから4か月健診まで何も支援がないことからもうかがえます。


赤ちゃんが生まれて幸せなはずなのに「涙が止まらない」「眠れない」「何もしたくない」「こんな私が育てるより専門家に育ててほしい」というママを何人も見てきました。そこまで酷くなったら「相談窓口があるよ」「私達の広場においでよ」と誘っても来てくれません。


このような産後鬱の深刻な現状を見て、国も令和2年度までに産後ケアや子育て世代包括支援センターをどの市町村にも作って支援を手厚くするようにと動き始めました。子ども自身の権利にのっとった成育基本法もやっと去年の12月に施行されました。まずは産後の一番困っている時に1人にしない支援が急務です。

でも、問題意識がない市町村は下手すると市役所の窓口に「子育て世代包括支援センター」という看板だけをあげて臨時職員が対応することにならないか…と危惧します。

さて、私達は「これからも協議しましょう」との返事をもらったので「子育て世代支援包括支援とは何か?」「私たちの町で何ができるか?」という学習会を市の職員さん、議員さんも誘って開催しました。子育てセミナーで目覚めたママ達もたくさん参加してくれました。


子育て広場での親子の実態や自分の思いなどを話し合いました。そこではママ達の率直な感想や意見も出されて「虐待や鬱の相談窓口があります。さあ相談にいらっしゃい!!」と、待っているだけの支援では相談に行かないと言ってくれました。

家に訪問されるのも「家が片付いていない、子育てができていないなど評価されるようで嫌だ」という声が多いのです。そして「大丈夫?」と聞かれたら、大丈夫でなくてもそんな自分を認めたくなくて「大丈夫」と答えると言ってくれました。それを聞いた市の職員さんは目が点!「市は窓口を作って子育て支援をしていると思っていました」という素直な感想が出ました。本当の支援は信頼した関係で丁寧なまなざしの中でしかできないのです。

ママ自身も産後のホルモンバランスが変わり、体調も情緒も不安定な上に眠れない日が続いて「おっぱいが出ないのは自分のせい」「育てられないのも自分のせい」と心を内側に向けて孤立感を深めて益々人に頼れなくなってしまうのです。この時パパが共感して一緒に頑張ってくれたら夫婦の絆が深まって乗り切れるのですが・・・。

でも、市の職員さん達はその後来られなくなりました。私達は行政を批判するのではなく今の子育てを一緒に考えたいと思っているだけなのですが、事務職の職員さんにとって専門家の熱い想いが負担でもあり、仕事の後に個人で参加するのは難しかったようです。

その後、私達だけで話し合いを続けていきました。そして、産院を退院してからすぐの支援をするために仲間を増やそうという事になり、


市内の小児科医、産婦人科医に声をかけて仲間に入ってもらいました。もちろん夫も動いてくれました。そして、前例はないけれど私達でやれる産直後ケアを考える事にしました。

まずは母乳が出るかという不安。これは最初の丁寧なケアと支援で劇的に改善します。そして病院に行くほどではないけど気になる赤ちゃんの不安、お世話の仕方。泣き止まない、寝てくれない、下痢、便秘、湿疹、手が冷たい等、たいしたことがないような不安も気軽に小児科医や子育てアドバイザーに聞けたらどんなに救われるでしょう!

だからメインは助産師によるおっぱい相談とケア、小児科医による何でも相談としました。退院後すぐから3か月までの母子が対象です。初めは月に1回(今後増やす予定)。平日なので皆の時間の確保も必要です。昼休みにボランティアで関わる覚悟をしました。小児科医と助産師はもちろん、市の保健師、相談員、子育てアドバイザー、地域の主任児童委員、子育て広場のスタッフ、保育園幼稚園の代表、先輩ママ・・・考えられる子育て支援者が一堂に集って関わります。こんな市はない!!!

市内の全支援者が生まれてきた赤ちゃんやお母さんのためにサポートするという事業です。みんなが同じ思いになって動くのは本当に感動ものです。


とは言え、お母さんの立場からすると、本来は家の中で安静にしておく時期です。

既存の小児科や助産院、産婦人科にいつでも相談に行ってショートステイもできる制度を作っている市町村もあるのですが、個人の開業医が自分の主たる業務の時間に専属のスタッフや相談時間、場所を個人レベルで確保するのが大変だと聞きました。市からの協力要請なのでやらされ感もあり「もう紹介してくれるな」と、後退している実態も聞こえてきました。事業所によって格差も出ます。

だから、今の私達でできる最善の支援は何か?と知恵を絞った結果、家に居て何のサポートもない親子にとって孤立感を深めて産後鬱になるよりも出てきてもらって支援する方がいいという判断をしたのです。そしてたくさんの人が「気軽に行ってごらん」と後押しして、勇気を出してきてくれたら専門家が何でも相談に乗り、市内の支援者が寄り添って独りにしないという支援をしたいと思いました。

このやり方のもう一つの利点は、行政と専門家、先輩ママが共通理解して母子を見守り、どうしたらいいかを考え、助け合っていけることです。その連携ができる事で子育て環境のレベルアップが図れます。そして現場をよく知っている私達が主導権を握り市にバックアップしてほしいのです。

そしてここに来たお母さんを子育て広場やセミナーに誘って、次の親支援、仲間づくりにつなげたいのです。


しり込みする市行政に提案するサポート案のゆくえ


さて、やれる技量も志も持った仲間がボランティアでもやる!とその気になったのはいいのですが、問題はここからです。

私達はこのサポート案を正式に市に提案することにしました。市は私達の話しを聞きながら「え~!もう待てない?小児科の先生も助産師さんもボランティアでもやる⁈」と驚きつつも「予算が~」「議会が~」としり込み気味。

でも市を抜きにして私達だけで勝手にできません。個人情報の問題があって該当者に声掛けもできません。設備の整った会場の確保も必要です。やはり行政と一緒に取り組まなければやれないのです。

さてさて、どうなる事でしょう。


(続く)


※成育基本法とは
成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し、児童の権利に関する条約の精神にのっとりながら必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律。


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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