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40年ほど前に厚生省(現・厚生労働省)に追放された、東風睦之博士の開発した「ベンズアルデヒド抗がん剤」は副作用がなく、安価で、広範のがんに効く! びわの粉末に関し、令和3年1月に更新されたのは何故? -その5-
(前回からの続きです。)
東風博士が設立した一条クリニックの院長である高橋亨医学博士の著書「進行がん患者を救う「奇跡の治療薬」への挑戦」の冒頭には、「約50年前、マスコミでも大きく取り上げられるほど注目を集め、効果を期待されながらも日の目を見ることなく葬り去られた“抗がん剤”がありました。あの時、横槍が入らず、研究が進められていたなら、現在のがん治療は大きく変わっていたかも知れません。あるいは今頃、がんも死に至る病ではなくなっていた可能性さえあります。それを研究者たちによって復活させようと取り組んでおります。」と記されています。嬉しいことに、ご家族や研究者の方々によって東風博士の遺志は脈々と引き継がれていたのです!
著書によると、東風睦之博士の長女斎藤潤医師は 2005年頃から、本格的にベンズアルデヒドの研究に関わるようになり、東風睦之博士の臨床を引き継ぐと、その効果を目の当たりにして改めて驚いたそうです。どう考えても延命治療が精いっぱいで、この状態で腫瘍の縮小が望めないと思われた患者さんでもベンズアルデヒド抗がん剤の投与によって著効が見られたからです。「そういう有効例がありますので、ますます世の中に出さなければいけない」と強く思われたそうです。
どんな妨害にあっても諦めることなく突き進んでこられた東風博士ですが、寄る年波には勝てず倒れてしまい、博士に代わって協力してくれる研究機関を求めて奥様の斡子氏と斎藤潤医師が奔走していると、誰に説明してもまず口を揃えて言われるのが「副作用がない、薬剤耐性もないなんて、そんな都合の良い物質が世の中にあるわけがない」という返答だったのです。作用機序が解明しない限り、誰にも信用してもらえない。それほど現代は安全性とともにエビデンスが重要とされ求められているというのです。1981年(昭和56年)には改正薬事法を中心に、医薬品の安全性・品質面への監視がさらに厳しくなりました。
大手製薬会社には見向きもされないので、当時、慶応大学の研究室の中にラボを持ち数名の研究員がさまざまな分析を行っていた中堅のベンチャー企業に、ベンズアルデヒドの解明を依頼することになり研究を続けていましたが、ベンズアルデヒドは確かに「ある細胞には効いている」のですが、揮発性の物質のため不安定で期待していたほどの進展が見られない状態であり、また経済的な諸事情のために、ここで外部に依頼しての研究を打ち切ったのです。その時の研究費はすべて奥様が負担されていたそうです。
ただ、この研究データーではベンズアルデヒドがmTOR(エムトール)の制御を有する経過に作用していることを突き止めていたのです。がんが活性化する経路はいくつか報告されていますが、その一つがPI3K/AKT/mTORで構成されているシグナル伝達経路で、ベンズアルデヒドもこのmTORの抑制が顕著にみられることが確認されたのです。分子標的薬に似た作用をベンズアルデヒドが持っていたということです。
引き継がれたベンズアルデヒドの研究
東風博士が設立した一条クリニックの院長である高橋亨医学博士の著書「進行がん患者を救う「奇跡の治療薬」への挑戦」の冒頭には、「約50年前、マスコミでも大きく取り上げられるほど注目を集め、効果を期待されながらも日の目を見ることなく葬り去られた“抗がん剤”がありました。あの時、横槍が入らず、研究が進められていたなら、現在のがん治療は大きく変わっていたかも知れません。あるいは今頃、がんも死に至る病ではなくなっていた可能性さえあります。それを研究者たちによって復活させようと取り組んでおります。」と記されています。嬉しいことに、ご家族や研究者の方々によって東風博士の遺志は脈々と引き継がれていたのです!
著書によると、東風睦之博士の長女斎藤潤医師は 2005年頃から、本格的にベンズアルデヒドの研究に関わるようになり、東風睦之博士の臨床を引き継ぐと、その効果を目の当たりにして改めて驚いたそうです。どう考えても延命治療が精いっぱいで、この状態で腫瘍の縮小が望めないと思われた患者さんでもベンズアルデヒド抗がん剤の投与によって著効が見られたからです。「そういう有効例がありますので、ますます世の中に出さなければいけない」と強く思われたそうです。
どんな妨害にあっても諦めることなく突き進んでこられた東風博士ですが、寄る年波には勝てず倒れてしまい、博士に代わって協力してくれる研究機関を求めて奥様の斡子氏と斎藤潤医師が奔走していると、誰に説明してもまず口を揃えて言われるのが「副作用がない、薬剤耐性もないなんて、そんな都合の良い物質が世の中にあるわけがない」という返答だったのです。作用機序が解明しない限り、誰にも信用してもらえない。それほど現代は安全性とともにエビデンスが重要とされ求められているというのです。1981年(昭和56年)には改正薬事法を中心に、医薬品の安全性・品質面への監視がさらに厳しくなりました。
大手製薬会社には見向きもされないので、当時、慶応大学の研究室の中にラボを持ち数名の研究員がさまざまな分析を行っていた中堅のベンチャー企業に、ベンズアルデヒドの解明を依頼することになり研究を続けていましたが、ベンズアルデヒドは確かに「ある細胞には効いている」のですが、揮発性の物質のため不安定で期待していたほどの進展が見られない状態であり、また経済的な諸事情のために、ここで外部に依頼しての研究を打ち切ったのです。その時の研究費はすべて奥様が負担されていたそうです。
ただ、この研究データーではベンズアルデヒドがmTOR(エムトール)の制御を有する経過に作用していることを突き止めていたのです。がんが活性化する経路はいくつか報告されていますが、その一つがPI3K/AKT/mTORで構成されているシグナル伝達経路で、ベンズアルデヒドもこのmTORの抑制が顕著にみられることが確認されたのです。分子標的薬に似た作用をベンズアルデヒドが持っていたということです。
研究を打ち切ることになり、ベンチャー企業からの研究データーは潤医師が引き取りました。これは、東風博士の研究を「自分が引き継ぐ」と改めて決意した表れでもあったのです。
そして、東風睦之博士は2010(平成22)3月14日にご家族に見守られながら穏やかに最後を迎えられたそうです。享年98歳でした。ご生前「世間はベンズアルデヒド抗がん剤を認めようとしなかったけれど、私は多くの患者さんを治せたことを幸せに思っている」と奥様に仰っていたそうです。
ご長男の東風貢氏は外科医となって大学病院に勤務しているので、ベンズアルデヒドの研究はご自分の手で完成させなければと強く思っていらしただけに、最愛の娘、斎藤潤医師が現代の基準に沿って臨床だけではなく、ベンズアルデヒドの基礎研究を本格的にやりたいと、東風博士に申し出た時には「やったら良い」と嬉しそうに答えられていたそうですが、その光景が目に浮かぶようです。
かつて、ベンズアルデヒドは12の大学病院で臨床及び研究に入り、基礎研究で興味深いデーターが出たことで臨床試験が行われ、記者会見を開いて報告しようとするほどの成果を上げていました。そのデーターは本来、世に出るべきものだったのですが、不幸にも握りつぶされてしまい、今となっては、どのようなデーターだったのか誰も知る人はいないのです。これについては東風博士も、最後まで語らなかったようです。
東風博士の亡き後、遺志を引き継いだ斎藤潤医師も臨床医であり、ベンズアルデヒドの基礎研究に関しては経験もなく、ある程度の知識はあっても一からの勉強となり、並大抵の努力ではなかったそうです。しかし、地道な研究を重ね、ようやく、基礎研究において仮説を立てることは大事なことで、その大切と言われる仮説をもって慶応大学の教授のもとを訪れると「それならご自分で実証してはいかがですか?」と提案され、2011(平成23年)から慶応大学の研究員として、ベンズアルデヒドの基礎研究に携わるようになったのです。そしてベンズアルデヒドのメカニズムの研究を進める過程で、がん細胞が増殖・転移するのに大きく関わっているタンパク質の存在を突き止めたのです。
著書によると、細胞が増殖する仕組みは、細胞のレセプターに酵素の働きで増殖因子が結合してタンパク質がリン酸化することで活性化し、情報のシグナルをリレーのように伝えていき、最終的には遺伝子の核に情報が伝わり増殖が始まります。通常は、ブレーキ役のタンパク質の働きによって必要以上の増殖は制御されていますが、このブレーキが利かなくなり際限なく増殖するのががん細胞です。
体内にはリン酸化を止めさせる働きをする酵素も沢山存在し、脱リン酸化してしまうこともあります。ところが、リン酸化を維持し、がん細胞の活動を維持する他の種類のタンパク質もあるのです。
そのタンパク質の種類を「アダプタータンパク質」と表現し、説明されていますが、斎藤潤医師はこのアダプタータンパク質の作用をベンズアルデヒドが抑制することを発見したのです。
これらの成果は日本癌学会、アメリカ癌学会に発表され、さらに多くのがん治療に関わる研究者、医師たちに理解されるために現在ではご尽力されているそうです。
このアダプタータンパク質自体は以前から発見されていましたが、当時はまだ機能が分かりませんでした。今のところ、一部の研究者が注目して研究を進めている程度ですが、いずれはその多用な機能性から注目される可能性のある重要な物質なのだそうです。
このアダプタータンパク質は、がん化している細胞に多く発現していることが確認され、リン酸化しているいろいろな細胞のレセプターにくっ付き、リン酸化している部分を守っているのです。ただ、正常な細胞の中では悪さをすることはなく、おとなしくしているのです。
このアダプタータンパク質の中にもいくつか種類があり、その中の一つに、特異的に悪さをしているアダプタータンパク質があります。より多くのがん種で高発現し、がん細胞の増殖シグナルの経路を活性化するように働いているのです。これを「悪玉タンパク質」と表現し、説明されています。
悪玉タンパク質を分かりやすく言うと、がん細胞の中で暴れている存在なのです。がんの増殖する経路は、mTORを有する経路だけでなく、Ras/Raf/MEK/MAPKから構成されている経路など幾通りもあり、がんはこれらの経路が活性化している状態にあるのです。この経路の、ある一つの蛋白質に作用し、がんが増殖するときに発信するシグナルを阻害しているのが分子標的薬です。
例えば、中央線の新宿駅をストップさせると中央線全体に影響を及ぼし使えなくなります。「新宿駅というタンパク質」を阻害することで情報伝達のシグナルを断ち切り、その経路である中央線全体を使えなくするのと同じように、分子標的薬が、ある一つのタンパク質に作用し、がん増殖が抑えられる仕組みだそうです。
その中でも有効とされる一つが「mTOR」の経路ですが、ベンチャー企業の研究でベンズアルデヒドもここを阻害していることが明らかとなったのです。そのため分子標的薬と似たような作用をしていると考えられたのです。
ところが、その後の研究によってmTORだけに作用するのではなく、他の経路もベンズアルデヒドが阻害していることが確認されたのです。それはいろいろな経路でリン酸化しているところにくっついて活性化を維持している悪玉タンパク質の結合を、ベンズアルデヒドが抑制していることが分かったからです。
分子標的薬が一つの蛋白質をターゲットにして狙い撃ちしているのに対して、ベンズアルデヒドは悪玉タンパク質に作用し、くっ付いている部分に結合して抑制することで多くの経路を阻害しているということだそうです。
経路がいくつもあれば、一つの経路を抑制しても別の経路が活性化してくるために、がんの増殖を完全に止めることはできません。しかし、いくつもの経路を同時に抑えることができれば効率が良いうえ、それだけ抗がん作用も高まるのです。
東風博士が治療にあたっていた当初においても、また、斎藤潤医師が中心に行っている臨床においても、すい臓がんと悪性リンパ腫に対し特に有効性が高いことが確認されています。
例として、大学病院でステージⅣと診断され、化学療法を受けていた余命数ヶ月と宣告をされていた膵臓がん患者さんが、すぐに CDBA(内服薬)による治療を行ったところがんが縮小し、その後大学病院に戻り定期的に検診を受けていますが、縮小を維持し元気に過ごされているのです。
膵臓がんで CDBA が高い効果を示すのは、ベンズアルデヒドが mTOR などの経路だけでなく、シグナル伝達兼転写活性因子で、細胞増殖、分化および生存などの過程を制御する STAT(スタット)というタンパク質を抑制することで、がんの増殖に必要なシグナルの伝達や転写を阻害し、がんの活動を止めることができるからなんだそうです。
免疫を強化し、生体恒常性(ホメオスターシス)を向上させることは健康を保つ上において欠かすことができませんが、STAT は体内の恒常性(ホメオスターシス)の維持においても重要な役割を果たしているようです。
免疫は、体のホメオスターシスを維持し、健康を保つ役割をしていますがこれには白血球という免疫担当細胞が関わっており、この細胞から分泌されるサイトカインというタンパク質が JAK-STAT 経路を介して情報伝達を行うことで、免疫システムが機能しているそうです。
ベンズアルデヒドが STAT を抑制することで、免疫機能の抑制も解除され、免疫も本来の機能を果たすことができるようになり、体内の恒常性も維持されると考えられるそうです。
こうして免疫システムも機能しはじめ、患者さんの免疫力が向上してくるとも考えられ、ベンズアルデヒドによる効果が得られた患者さんの全身状態が改善し、QOL が向上するのは、免疫活性が起こったと考えれば納得がいくというのです
東風博士の臨床においても、ベンズアルデヒドを投与してから効果が現れるまでの期間が 2~3ヶ月と比較的短く、また腫瘍が縮小、あるいは消失している症例が多かったのは、こうした複数の経路に作用しているからだと考えられるというのです。
ベンズアルデヒド抗がん剤を開発し、臨床を行っていた時代は、アダプタータンパク質の存在が確認されていませんでしたので、ベンズアルデヒドががんに効果があると訴えても、何処に作用しているのか、明確に説明できず、多くの研究者からは「そんな都合の良い物質があるはずがない」と無視されたように、想像ができなかったのです。
ただ、ノルウエーのペッターセン博士だけは1985年(昭和60年)に「ベンズアルデヒドのメカニズムはベンズアルデヒドが、がん細胞の蛋白質合成を阻害することが効果の主な原因で、生体化学の基本物質ともいえるベンゼン核が、がん細胞を攻撃すると考えられる」という研究結果を発表していました。ベンズアルデヒドの作用機序をいち早く見抜いていたのです。
(次回に続く)
そして、東風睦之博士は2010(平成22)3月14日にご家族に見守られながら穏やかに最後を迎えられたそうです。享年98歳でした。ご生前「世間はベンズアルデヒド抗がん剤を認めようとしなかったけれど、私は多くの患者さんを治せたことを幸せに思っている」と奥様に仰っていたそうです。
ご長男の東風貢氏は外科医となって大学病院に勤務しているので、ベンズアルデヒドの研究はご自分の手で完成させなければと強く思っていらしただけに、最愛の娘、斎藤潤医師が現代の基準に沿って臨床だけではなく、ベンズアルデヒドの基礎研究を本格的にやりたいと、東風博士に申し出た時には「やったら良い」と嬉しそうに答えられていたそうですが、その光景が目に浮かぶようです。
かつて、ベンズアルデヒドは12の大学病院で臨床及び研究に入り、基礎研究で興味深いデーターが出たことで臨床試験が行われ、記者会見を開いて報告しようとするほどの成果を上げていました。そのデーターは本来、世に出るべきものだったのですが、不幸にも握りつぶされてしまい、今となっては、どのようなデーターだったのか誰も知る人はいないのです。これについては東風博士も、最後まで語らなかったようです。
アダプタータンパク質の作用をベンズアルデヒドが抑制することを発見
東風博士の亡き後、遺志を引き継いだ斎藤潤医師も臨床医であり、ベンズアルデヒドの基礎研究に関しては経験もなく、ある程度の知識はあっても一からの勉強となり、並大抵の努力ではなかったそうです。しかし、地道な研究を重ね、ようやく、基礎研究において仮説を立てることは大事なことで、その大切と言われる仮説をもって慶応大学の教授のもとを訪れると「それならご自分で実証してはいかがですか?」と提案され、2011(平成23年)から慶応大学の研究員として、ベンズアルデヒドの基礎研究に携わるようになったのです。そしてベンズアルデヒドのメカニズムの研究を進める過程で、がん細胞が増殖・転移するのに大きく関わっているタンパク質の存在を突き止めたのです。
著書によると、細胞が増殖する仕組みは、細胞のレセプターに酵素の働きで増殖因子が結合してタンパク質がリン酸化することで活性化し、情報のシグナルをリレーのように伝えていき、最終的には遺伝子の核に情報が伝わり増殖が始まります。通常は、ブレーキ役のタンパク質の働きによって必要以上の増殖は制御されていますが、このブレーキが利かなくなり際限なく増殖するのががん細胞です。
体内にはリン酸化を止めさせる働きをする酵素も沢山存在し、脱リン酸化してしまうこともあります。ところが、リン酸化を維持し、がん細胞の活動を維持する他の種類のタンパク質もあるのです。
そのタンパク質の種類を「アダプタータンパク質」と表現し、説明されていますが、斎藤潤医師はこのアダプタータンパク質の作用をベンズアルデヒドが抑制することを発見したのです。
これらの成果は日本癌学会、アメリカ癌学会に発表され、さらに多くのがん治療に関わる研究者、医師たちに理解されるために現在ではご尽力されているそうです。
このアダプタータンパク質自体は以前から発見されていましたが、当時はまだ機能が分かりませんでした。今のところ、一部の研究者が注目して研究を進めている程度ですが、いずれはその多用な機能性から注目される可能性のある重要な物質なのだそうです。
このアダプタータンパク質は、がん化している細胞に多く発現していることが確認され、リン酸化しているいろいろな細胞のレセプターにくっ付き、リン酸化している部分を守っているのです。ただ、正常な細胞の中では悪さをすることはなく、おとなしくしているのです。
このアダプタータンパク質の中にもいくつか種類があり、その中の一つに、特異的に悪さをしているアダプタータンパク質があります。より多くのがん種で高発現し、がん細胞の増殖シグナルの経路を活性化するように働いているのです。これを「悪玉タンパク質」と表現し、説明されています。
悪玉タンパク質を分かりやすく言うと、がん細胞の中で暴れている存在なのです。がんの増殖する経路は、mTORを有する経路だけでなく、Ras/Raf/MEK/MAPKから構成されている経路など幾通りもあり、がんはこれらの経路が活性化している状態にあるのです。この経路の、ある一つの蛋白質に作用し、がんが増殖するときに発信するシグナルを阻害しているのが分子標的薬です。
例えば、中央線の新宿駅をストップさせると中央線全体に影響を及ぼし使えなくなります。「新宿駅というタンパク質」を阻害することで情報伝達のシグナルを断ち切り、その経路である中央線全体を使えなくするのと同じように、分子標的薬が、ある一つのタンパク質に作用し、がん増殖が抑えられる仕組みだそうです。
その中でも有効とされる一つが「mTOR」の経路ですが、ベンチャー企業の研究でベンズアルデヒドもここを阻害していることが明らかとなったのです。そのため分子標的薬と似たような作用をしていると考えられたのです。
ところが、その後の研究によってmTORだけに作用するのではなく、他の経路もベンズアルデヒドが阻害していることが確認されたのです。それはいろいろな経路でリン酸化しているところにくっついて活性化を維持している悪玉タンパク質の結合を、ベンズアルデヒドが抑制していることが分かったからです。
分子標的薬が一つの蛋白質をターゲットにして狙い撃ちしているのに対して、ベンズアルデヒドは悪玉タンパク質に作用し、くっ付いている部分に結合して抑制することで多くの経路を阻害しているということだそうです。
経路がいくつもあれば、一つの経路を抑制しても別の経路が活性化してくるために、がんの増殖を完全に止めることはできません。しかし、いくつもの経路を同時に抑えることができれば効率が良いうえ、それだけ抗がん作用も高まるのです。
東風博士が治療にあたっていた当初においても、また、斎藤潤医師が中心に行っている臨床においても、すい臓がんと悪性リンパ腫に対し特に有効性が高いことが確認されています。
例として、大学病院でステージⅣと診断され、化学療法を受けていた余命数ヶ月と宣告をされていた膵臓がん患者さんが、すぐに CDBA(内服薬)による治療を行ったところがんが縮小し、その後大学病院に戻り定期的に検診を受けていますが、縮小を維持し元気に過ごされているのです。
膵臓がんで CDBA が高い効果を示すのは、ベンズアルデヒドが mTOR などの経路だけでなく、シグナル伝達兼転写活性因子で、細胞増殖、分化および生存などの過程を制御する STAT(スタット)というタンパク質を抑制することで、がんの増殖に必要なシグナルの伝達や転写を阻害し、がんの活動を止めることができるからなんだそうです。
免疫を強化し、生体恒常性(ホメオスターシス)を向上させることは健康を保つ上において欠かすことができませんが、STAT は体内の恒常性(ホメオスターシス)の維持においても重要な役割を果たしているようです。
免疫は、体のホメオスターシスを維持し、健康を保つ役割をしていますがこれには白血球という免疫担当細胞が関わっており、この細胞から分泌されるサイトカインというタンパク質が JAK-STAT 経路を介して情報伝達を行うことで、免疫システムが機能しているそうです。
ベンズアルデヒドが STAT を抑制することで、免疫機能の抑制も解除され、免疫も本来の機能を果たすことができるようになり、体内の恒常性も維持されると考えられるそうです。
こうして免疫システムも機能しはじめ、患者さんの免疫力が向上してくるとも考えられ、ベンズアルデヒドによる効果が得られた患者さんの全身状態が改善し、QOL が向上するのは、免疫活性が起こったと考えれば納得がいくというのです
東風博士の臨床においても、ベンズアルデヒドを投与してから効果が現れるまでの期間が 2~3ヶ月と比較的短く、また腫瘍が縮小、あるいは消失している症例が多かったのは、こうした複数の経路に作用しているからだと考えられるというのです。
ベンズアルデヒド抗がん剤を開発し、臨床を行っていた時代は、アダプタータンパク質の存在が確認されていませんでしたので、ベンズアルデヒドががんに効果があると訴えても、何処に作用しているのか、明確に説明できず、多くの研究者からは「そんな都合の良い物質があるはずがない」と無視されたように、想像ができなかったのです。
ただ、ノルウエーのペッターセン博士だけは1985年(昭和60年)に「ベンズアルデヒドのメカニズムはベンズアルデヒドが、がん細胞の蛋白質合成を阻害することが効果の主な原因で、生体化学の基本物質ともいえるベンゼン核が、がん細胞を攻撃すると考えられる」という研究結果を発表していました。ベンズアルデヒドの作用機序をいち早く見抜いていたのです。
(次回に続く)
そのことを知った読者さんも潤医師の想いに応えるように、丁寧に研究内容を解説して下さいました。