2022年にウクライナは、今回破壊されたダムの破壊試験を行っていた。それが起きた場合に、「ロシア政府は、ウクライナのせいにするだろう」と、ゼレンスキー氏が述べていた。 ~「その通りのことが今起きている」

竹下雅敏氏からの情報です。
 6月8日の記事で、ウクライナ南部ヘルソン州のドニプロ川にあるカホフカ水力発電所のダムが決壊して大規模な洪水が発生した事件に関して、2022年12月のワシントン・ポスト紙の記事を紹介しました。
 ウクライナ軍のアンドリー・コヴァルチュク少将は、「川の氾濫を考えた。ウクライナ側は、ノヴァ・カホフカ・ダムの水門のひとつに HIMARS ランチャーで試射を行い…テストは成功したが、この措置は最後の手段である」と言っていました。
 In Deepさんは、このワシントン・ポスト紙の記事も含め、ウクライナ側は「このダムを爆破した後は、ロシアを非難する」という段取りを、2022年10月の時点で既に決めていたようだと言っています。
 記事では、“2022年にウクライナは、今回破壊されたダムの破壊試験を行っていた。それが起きた場合に、「ロシア政府は、ウクライナのせいにするだろう」と、ゼレンスキー氏が述べていた。「その通りのことが今起きている」”と書かれています。
 ダムの決壊は、記事の中で引用されているゼロヘッジの『カホフカ爆破というキエフの長期「最後の手段」計画が暴露される』を見ても、ロシア側にとって自分の足を撃つような行為です。
 ロシアが勝勢であり、このままでは西側諸国の敗北が避けられないため、“ウクライナは、自国に有利なように形を変えようと必死の試みとして攻撃を実行した”と見るのが常識だと思います。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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最後の茶番の行方 : あまりのダーティさに辟易するにしても、事態が終末に向かい続けていることは確か
転載元)
(前略)
ウクライナ南部の水力発電所のダムが、破壊により決壊したというニュースがありました。
(中略)
これをやったのが、ロシアかウクライナか、それはわかりません。
現状でわかっていることは、

「昨年、ウクライナはこのダムを破壊させて洪水を起こす試験を行っていた」

という事実だけです。

ハイマース(HIMARS)という高機動ロケット砲システムで、「洪水を起こすために」ダムを試験攻撃したことが、昨年の米ワシントンポストで報じられています。

ウクライナ軍を取材したワシントンポストの記者によるその記事に、以下の部分があります。目的は、「ロシア軍を二分するため」と述べています。

2022年12月29日の米ワシントンポストより

…ウクライナ側は、東側のロシア支配地域から離れたドニエプル川の西側に位置するヘルソン市に焦点を当て、より狭い範囲の作戦に着手した。

コバルチュク氏はドニエプル川西側のロシア占領地域を分断し、ロシア軍をトラップにはめる作戦に出た。

これが失敗した場合、次の目的は、ロシア軍を強制的に逃走させることだった。ヘルソンのその地域にいた 25,000人のロシア軍は、広い川によって補給物資から隔てられ、非常に危険な位置に置かれていた。コバルチュク氏は、もし十分な軍事的圧力が加えられれば、ロシア側には撤退以外の選択肢はないだろうと語った。

ロシアは、アントノフスキー橋、アントノフスキー鉄道橋、そしてその上に道路が通っている水力発電施設の一部であるカホフカ・ダムの 3つの交差点を経由して軍隊に武器を与え、食料を供給する必要がある。

この 2つの橋は、米国が供給した M142 高機動砲ロケットシステム (HIMARS 発射装置)の標的となり、すぐに通行不能になった。

「我々が彼らの補給線を完全に遮断した瞬間もあったが、それでもロシア側はなんとか国境を建設できた。彼らは弾薬も補充した。……情勢は良くなかった」

コバルチュク氏は、「川を氾濫させる」という作戦を考えた。

同氏によれば、ウクライナ軍は、カホフカ・ダムの水門の 1つを、高機動砲ロケットシステムで試験攻撃し、金属に 3つの穴を開けて、ドニエプル川の水位をロシア軍の渡河を妨げるのに十分なだけ増水させられるかどうかを確認したが、試験では、付近の村々に洪水を発生させなかったと述べた。

コバルチュク氏は、実験は成功したが、この措置は最後の手段だと述べた。
washingtonpost.com

ここに「この措置は最後の手段だ」と述べられていますが、それほど、この行為は、周辺地域を著しく荒廃させるものです。その「最後の手段」に着手した

さらには、

「このダムを爆破した後は、ロシアを非難する」

という段取りもその以前より決められていたようです。

今から半年以上前の、2022年10月21日のビジネスインサイダーには、以下のような記事が載せられていました。抜粋です。


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ロシアは水力発電ダムを地雷で爆発させ、地域の 80の町や村を洪水で荒廃させるだろうとゼレンスキー氏は述べる

Zelenskyy says Russia wired a hydroelectric dam to explode and flood 80 towns in region it may have to abandon

businessinsider.com 2022/10/21

ロシアはウクライナの主要な水力発電ダムに地雷を設置しており、ウクライナへの攻撃として数十の町を水没させる用意があるとウォロディミル・ゼレンスキー大統領は 10月20日に主張した。

ゼレンシキー大統領は、欧州理事会との会合で「ロシアは意図的にウクライナ南部で大規模災害の土壌を作り出している」と発言した。

ゼレンスキー氏は、カホフカ水力発電所に地雷が設置されたとの情報を入手したと述べた。我々はこの主張を確認できていない。

このダムは、ダムのすぐ上流で幅約 2マイルの巨大なドニプロ川からエネルギーを生成する。

このダムはヘルソン地域にあり、そこでは占領中のロシア軍がウクライナの反撃による強い圧力にさらされている。

ゼレンスキー大統領は、「ロシアのテロリストたちがこのダムを爆破すれば、ヘルソンを含む 80以上の集落が急速な洪水地帯に入るだろう」と述べた。「何十万人が影響を受ける可能性がある」

ゼレンシキー大統領は「ロシアは新たな偽旗作戦を組織するためにこれを行っている」と主張し、ロシアは崩壊の原因をウクライナのせいにしようとするだろうと主張した。

ゼレンスキー氏は、ダムの喪失により広大な地域が洪水に見舞われ、ウクライナ南部から水の供給が失われる可能性があると述べた。

また、近くのカホフカにある貯水池を冷却に利用しているザポリージャ原子力発電所も危険にさらす可能性があると同氏は述べた。原子力の専門家たちは、この状況には問題があり、リスクをもたらすだろうが、その影響はすぐには起こらないだろうと述べた。

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くどいようですが、ダムを破壊したのがロシアなのかウクライナなのかという選択を私は述べてはいません。

このふたつの昨年の報道からわかるのは、以下の2つです。

  ・2022年にウクライナは、今回破壊されたダムの破壊試験を行っていた

  ・それが起きた場合に、「ロシア政府は、ウクライナのせいにするだろう」と、ゼレンスキー氏が述べていた

ということで、「その通りのことが今起きている」というだけです。

どちらかがやったのかはともかく、相当多くの人たちの命が、この洪水で犠牲になったことは確実だと見られます。

あと、上のビジネスインサイダーの記事で、

ザポリージャ原子力発電所も危険にさらす可能性がある

とありますが、これは現在、多くの国の専門家たちが述べていることです。

米ゼロヘッジは、以下のように記しています。「これはすべて軍事的戦略」だと。

これも長い記事で、この部分の抜粋です。
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「カホフカ爆破というキエフの長期「最後の手段」計画が暴露される」より抜粋
zerohedge.com 2023/06/07

このテロ攻撃が果たしたウクライナの第一の目的は、ロシアが管理するザポリージャ原子力発電所の安全性について世界的な懸念を引き起こすことであった。同原子力発電所は現在急速に枯渇しつつあるカホフカ貯水池からの冷却水を利用している。国際原子力機関は、「原子力の安全上の直接的なリスクはない」が、潜在的なリスクは排除できないと述べた危機が発生した場合、ザポリージャ地方北部におけるロシアの防衛が混乱に陥る可能性がある

・2番目の目標は、ウクライナとロシアで分断されているヘルソン地域の下流地域が現在浸水していることだ。時間が経てば最終的には水が引く可能性があるが、これによりドニエプル川左岸に沿ったロシアの防衛計画が複雑になる可能性がある。最初のシナリオに関連する結果と合わせて考えると、これは、LOC (接触線)の背後にある河畔戦線のかなりの部分がすぐに軟化して、ウクライナの反撃の次の段階を促進する可能性があることを意味する。

・実際、6月6日朝の攻撃が、運河を通じた半島の上水供給に影響を及ぼす可能性があるという脅威のため、ウクライナの「異例の軟化作戦」の地理的範囲はクリミアにまで拡大する可能性がある。同地方の知事は、 今のところ十分な水の供給は残っているが、今後数日でリスクのレベルが明らかになるだろうと述べた。クリミアはウクライナによる 8年間の運河封鎖にもかかわらずなんとか生き延びたが、この拡大がロシアにとって不利であることは疑いない。

・4番目の戦略目標は、すでに説明した 3つの目標に基づいており、この攻撃の心理戦の要素に関係している。外国面では、ロシアが「環境破壊」の罪を犯しているというウクライナの喧伝により、ロシアに対する世界的な圧力を最大化するためのものだ。昨年 12月にワシントンポストが(ウクライナのダム破壊試験を)伝えたにも関わらず、現在、ロシアに対する世界的な圧力が主流メディアによって増幅される一方、国内面では、ロシア国内にパニックを引き起こすことが目的であるウクライナの旧地域でのロシアの防衛をさらに軟化させることを目的としている。

・そして最後に、カホフカダムを部分的に破壊することで果たされた最後の戦略的目標は、ロシアが近いうちにジレンマに陥るかもしれないということだ。ウクライナのヘルソン・ザポリージャ接触線沿いの「異例の軟化作戦」は、クレムリンの焦点をベルゴロド・ハリコフ戦線およびドンバス戦線から分断する可能性があり、それによってこれら 3つの戦線のうちの 1つが弱体化し、突破の危険が生じる可能性がある。ウクライナがベラルーシやモルドバも攻撃して紛争を拡大すれば、ロシアにとって防衛状況はさらに困難になる可能性がある

完全に明確にしておきたいのは、ウクライナにおける NATO とロシアのこの代理戦争の軍事戦略力学は、当分の間、依然としてロシアに有利であるが、だからこそウクライナは、自国に有利なように形を変えようと必死の試みとして攻撃を実行したのだ。

前の 2つの段落で説明した軍事戦略力学は、西側諸国を変える大きな予期せぬ出来事が起こらない限り、これまでのところ新冷戦最大の代理紛争で西側諸国を敗北させる運命にあることは避けられない。それはまさにウクライナが、最近の攻撃での軍事戦略を通じて達成しようとしていたことだ。

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最後のほうはちょっと解釈が難しいですけど、もう少しわかりやすいものとしては、アメリカ空軍の元中佐であるカレン・クウィアトコウスキー氏という方がメディアに以下のように述べていました。

カレン・クウィアトコウスキー米空軍元中佐の言葉

この攻撃は、最近のウクライナの他の行動と同様、テロ攻撃のあらゆる特徴を備えており、民間人や民間生活に影響を及ぼし、失われた土地や資産の奪還を目的としたものではなく、それらを破壊することを目的としています。

明らかな原子力災害のリスクにもかかわらず、ここ数週間、ウクライナは、ザポリージャ原子力発電所を砲撃し続けています。

それ以来、ウクライナはさらに過激になり、農業生産、都市人口と産業、交通、エネルギー供給を直接破壊することを狙ったのです。カホフカのダムの一部の破壊は、これら 4つの目的すべてにおけるウクライナの意図と、一連の攻撃を組み合わせたものです。

infowars.com
(以下略)

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