セルビアのヴチッチ大統領に忠告した人物
6月14日にセルビア警察に逮捕された、ROSU ( コソボ特殊警察 ) 隊員3名、あれからどうなったかなあ?
セルビアの山奥で、セルビア軍を偵察していたROSUか。あれからコソボ当局はもちろん、アメリカ・EUも「釈放しろ」の大合唱だったが。
でも、不法に逮捕されて拷問されるコソボ・セルビア人のためには、だれも大合唱してくれない。
ああ、不公平だな。
となるとあの3名は、コソボ・セルビア人を釈放させるための取引に使えるかもしれない。セルビアもそうかんたんに釈放しないわけだ。
・・と思ったら、6月26日、セルビアはあっさり3名を釈放した。
へえええ?! 大事な人質を手放したの?
当初、30日間の身柄拘束だったが、無事釈放されて周囲をホッとさせた。
セルビアはよく決断したねえ。気になるのは、逮捕された3名は留置所で、ほんとにケーキをごちそうになったんだろうか?
ケーキにこだわるなあ。ま、
確かなのは、ROSUがセルビア人に対してやるような拷問を、セルビアはしなかったことだ。
えらい! クルティさんみたいに「目には目を」じゃなかったセルビアを評価する。
ビックリしたのは、クルティに味方するはずの、アルバニアのラマ首相さえこう言ったんだぜ。「理性の力が、力の理性に勝ったことを喜んでいる。」(
Kosovo Online)
ほお! なかなかの名言? 意味わかんないけど・・。
アメリカもEUも釈放に喜んだが、一番喜んだのはハンガリーのオルバン首相かもしれない。なぜなら、
「ROSU隊員を逮捕したことは、セルビアの利益になるより損害になる可能性が高い」とセルビアのヴチッチ大統領に忠告したのはオルバンだったから。(
Kosovo Online)
へえ、セルビアの英断は、オルバン首相のおかげだったのか。
ハンガリーとセルビアは隣り同士。オルバンとヴチッチは仲良しなのよ。見よ、2人のこの熱いハグを。
[オピニオン]「オルバンとヴチッチの治世が長引けば長引くほど、両国間の結びつきを取り戻し、指導者間の腐敗した特殊な関係から国益を切り離すことが必要になってくる」とイヴァナ・ランコヴィッチは書いている。(DeepL翻訳)
ぶっ! ハグって言うより、土俵で取り組んでるって感じだね。
KFOR(コソボ平和維持軍)が存在する理由は「決議1244号」にあった
のこったのこった〜♪
だがクルティは、セルビア警察がROSU 3名を逮捕したことは、国連安全保障理事会「決議1244号」に違反している、とか言いだした。
なんだって? 「けつぎ1244ごう」?
おれも、なんのことかさっぱりだが、ついこないだの6月10日が「決議1244号」の24周年だったそうで、コソボ関係の記事にちょこちょこ出てくるから
調べてみたのよ。そしたら、KFOR ( コソボ平和維持軍 ) が存在する理由が、「決議1244号」にあった。
KFORって、こないだの事件で、コソボ・セルビア人にケガさせたKFOR?
ああ、KFOR隊員も数十名、負傷したがな。
たしか、
ここで聞いたね。
5月29日、北コソボのセルビア人が多く住む、ズヴェカン市で起きた事件のこと。
そうだ、不当な選挙で選ばれたインチキ市長の登庁に抗議するために集まったセルビア人らとコソボ警察・KFORのにらみ合いで、KFORが抗議するセルビア人に向けて衝撃弾や催涙ガスを放ち、セルビア人も火炎瓶 などで応戦し、セルビア人52名、KFOR隊員41名が負傷した。
たしか、ROSUは2人のセルビア人をカラシニコフで背中から撃ったよね。
一人は、骨盤を負傷して一生歩けなくなるかもしれないと言う。
でもさ、なんで平和維持軍のKFORが、セルビア人に暴力を振るったんだろう。
そこのとこ、今だによくわかんないのよ。KFORに対する怒りの声があまり聞こえないとこを見ると、正当防衛だったかも。
そもそも、KFORって何のためにいるの?
それを説明するには、
コソボ紛争の直後に時間を戻さねばならん。紛争
が終結して、国連安保理に採択された「決議1244号」に従い、コソボは国連の統治下に置かれることになった。具体的には、コソボの行政はUNMIK ( The United Nations Interim Administration Mission in Kosovo :国連コソボ暫定行政ミッション) が暫定的に担うこと、そして治安はNATOの下請け、KFORが担うことが決められた。
KFORは、紛争の終結によって生まれたんだね。
「決議1244号」の前身「クマノヴォ軍事技術協定」によれば、「KFORは平和と安全の維持を任務とするコソボで唯一の合法的な武装組織」となっている。
「コソボで唯一の合法的な武装組織」なんだ?
と言うのも、
あの当時、コソボで戦っていたセルビア軍主体のユーゴ軍は、コソボから追い出されて、コソボには軍隊がいなくなった。そこで、国連軍としてNATOから派遣しよう、ってんで生まれたのがKFORだ。
ふうん、でも
現在、KFORはコソボの唯一の武装組織じゃないよね。ROSU以外にコソボ治安軍も重武装してるよね。なんで、誰も文句を言わないんだろう? こうゆう連中がいなかったら、コソボ・セルビア人たちも平和に暮らせたはずだよ。
おかしいよな。誰がコソボに、KFOR以外の武装組織を許しているかが問題だな。だが、それは置いといて、KFORの作られた目的はなんだと思う?
コソボに住んでいる人たちを守ることでしょ?
その通り。
「決議1244号」には、KFORの目的は「民族の出自に関わらず、全ての市民のために、コソボの全領土を通る移動の自由を保証する」とある。(
Wiki)
だが、紛争が終わってKFORがコソボに入る段になった時、あろうことか、周辺国にいたアルバニア人のKLA ( コソボ解放軍 ) が、KFORより先にコソボに帰ってきちゃったのよ。(
Kosovo Online)
あの、ならず者集団のKLAが??
結果はお察しの通り、誰も守ってくれないセルビア人に対して、KLAはやりたい放題やった。
セルビア人狩りだね、そして、セルビア人の臓器を摘出して売買するための「
黄色い家」もKLAのしわざだった。
そうだ。「すべての市民の正常かつ安全な生活を守る」はずのKFORはセルビア人を守れなかった、と言うより守らなかったんだよ。
ひどい! なんで、先にKFORを入れなかったんだろう? そうすれば、惨事も起こらなかったのに。まさか、わざと?
おそらく、コソボをセルビア人支配から、カネで動くKLAの支配に変えたかった連中だろう。
アメリカ・・?
でもさあ、後からノコノコやって来たKFORは見ていたはずだよ。セルビア人がどんどん姿を消しているのを。セルビア人が拉致されて「黄色い家」に連れて行かれて、臓器を抜かれていた間、KFORは何をしてたんだろう? おかしいと思わなかったのかな?
だよな、はたから見ても、
KFORは明らかにセルビア人の方を向いていない。それでも、コソボ・セルビア人はKFORに頼るしかない。なぜって、セルビア軍はNATOのお許しがなければコソボに入れないから。
それなら、KFORも期待に答えてくださいよ。
まったくだ。だが、彼らにはセルビア人を守る意志があるんか? ROSUに暴行されているセルビア人を見つけたら、それを止める意志があるんか?って聞きたい。
セルビア人に対するコソボ当局の暴力を、KFORが止めたことがあったんだろうか?
う〜ん、今年の初めからコソボの記事を追っかけているが、
そういう記事は一個もない。
じゃあ、何のためにいるのかわからないよ。ただ、見ているだけ? オブザーバー? それじゃ、コソボ・セルビア人はどうやって自分たちを守れるの? プロ仕様の武器ももたない彼らに、どうやって重装備のROSUを相手に戦えって言うの?
そこは、セルビア軍が黙っちゃいないだろう。
セルビア軍の大将が言っている。もしもこのまま、コソボ・セルビア人が脅かされ続けるなら、彼らの生存権を守るために緊急措置を要求し、それが認められれば、憲法と国連憲章に従って、セルビア軍はその任務を最大限に遂行すると。
大将、戦う気まんまんだ。
KFORがやるべきことをやらないと、セルビア軍が引っ張り出されて、ほんものの戦争になっちゃうんだよ。
もしかして、クルティさんはそれをねらってる?
かもな・・それでも、KFORには期待したい。
「決議1244号」の前身、「クマノヴォ協定」の「付属書Bの5項」にはこう明示されている。「KFORの司令官は、コソボとメトヒヤの誰かの安全が脅かされていると判断した場合、いかなる根拠に基づいても、あらゆる措置を講じる権限を有し、武力を行使することもできる」と。(
Kosovo Online)
KFOR司令官に言いたいね。なんでそこまでの権限を持っていながら、コソボ・セルビア人のために使わないのか?
その通り! KFORが当初の方針を守って行動していれば、戦争にはならない。だが、KFORが違う方を向いていたら、戦争になるかもしれない。
はあ~ KFORの親はNATOだからね、子どもは当然・・?
まずは、
KFORが本来すべき任務を果たすことだ。そして、勾留されている無実のセルビア人を釈放し、セルビア人居住区からコソボ警察やROSUを追い出す、という現地のセルビア人の切実な願いを叶えてやってほしい。「そうすれば、セルビア人住民に平和が保証され、北部にセルビア人機関を設立し、すべての政府機関にセルビア人代表を復帰させるための、正常な条件を作り出すことができる。それが望ましいシナリオだ。」(
Kosovo Online)
それができたら、大変な思いをして、CSM ( セルビア人自治体共同体 ) を作る必要もなくなるね。
言葉で非難するだけのクイント
単純なことなのに、なぜかそうはならない。そうならないように仕向けているヤツらがいるんだよ。
やっぱ、
元凶は「アメリカ・イギリス・イタリア・フランス・ドイツ」のクイントかあ。
とても、セルビア一国の力では叶わない相手だ。ヴチッチも嘆いている、何年も前から同じような構図が続いていると。クルティが何らかの動きを見せても、西側諸国は決まって「そんなことは起こすはずがない、起こったとしても、必ず反応すると保証する」と言いながら、いざクルティが動き出すと、言葉で非難するだけだと。(
Kosovo Online)
たしかに、ズヴェカンの事件でもコソボの非難だけはしてるね。アメリカはお仕置きもして見せたけど。でも、ハンガリーは本物の味方だよ。
そしてロシアも。
ロシア外務省のザハロワ報道官は、KFORをNATOと呼んで、ズヴェカン事件を非難している。〈セルビア人とNATOの暴力的な衝突で、コソボ当局とセルビア人の敵対関係を悪化させたNATOは、無能であることを示しただけでなく、不必要な暴力によってエスカレートさせてしまった。弾圧からセルビア人を守るはずのNATO が、コソボ当局を擁護することで、セルビア人を追い出す動きを支持し、テロの共犯者になってしまった。〉(
RT)
ザハロワ報道官
ほおお!
実は、
現在セルビアでは、首都ベオグラードで起きた銃乱射事件以来、ヴチッチ政権に反対する集会やデモが盛んに行われている。反対派のデモは、セルビアの野党が主導しているが、彼らはクルティを応援し、コソボの独立を支持しているそうだ。
コソボ・セルビア人はどうなってもいいってこと?
ああ、議会でも殴り合いをするような
過激な党らしいが、その中に工作員が混じっていると思われる。そんなセルビアの動きを見て、ロシアは「カラー革命」を警告している。ロシアのマトヴィエンコ上院議員は、西側工作員が、インターネットの「神経言語プログラミング」を使ってセルビアの民衆心理を操作していると言っている。(
RT)
ヴチッチさんも、「カラー革命」を警告されたって言ってたね。
だが、セルビアは「カラー革命」に対抗できるだろう、1999年のNATOの空爆で西側の欺瞞をよく知っているから、とマトヴィエンコ上院議員は言っている。(
RT)
NATO軍に空爆されたセルビアのノヴィ・サド(1999年)
はああ~ うまく切り抜けて欲しいよ。
「カラー革命」でヴチッチさんが転覆されたら、一気にコソボのセルビア人が追い出されて、大アルバニアが実現しちゃうからね。
そうなったら、クルティはウハウハだ。
そして、セルビアは欧米に餌食にされちゃう〜?!
そうはさせるかよ!!
Writer
白木 るい子(ぴょんぴょん先生)
1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)
そんな中でセルビア人は自由を求めて立ち上がり、コソボを中心にセルビア王国として栄えました。ところが、今も語り継がれるコソボの戦いでオスマン・トルコに惨敗し、ふたたびバラバラに。この時からコソボは、セルビア人が独立を取り戻すシンボル、「聖地」となりました。
一方、コソボを飲み込んで「大アルバニア」を実現したいコソボのクルティ首相。そのために、クルティは是が非でもコソボのセルビア人を追い出したい。だが、「意地」のセルビア人が、そうやすやすと「聖地」を手放すでしょうか?