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ぴょんぴょんの「ネコの家出」 ~手放すということ
いなくなった「羊羹」
子ネコがじゃれ合って遊ぶのを見るのも、至福だった。だが、大きくなるにつれて、また不安がよぎった。おれはこれから、これまでの2匹プラス5匹の面倒を見ることになるのか? となると、獣医に連れて行って去勢、避妊手術をさせなくてはいけないのか? 勘弁してくれ〜!って思っていたら、3ヶ月後、乳離れがすむと母ネコは、子ネコを1匹ずつどこかに連れ去り、2匹だけ残して姿を消した。
これまでも、数日いなくなることはあったが、必ず帰ってきてくれた。もしかして、このまま帰らないのか? ムリだ〜! と思っていたら、4日めの夜、ひょこっと帰ってきた。いつも通りに中に入れると、ガツガツとメシを食って、おれのベッドに飛び乗った。「羊羹」と一緒に寝られる幸せ! だが、おれにはわかっていた。これは、最後の夜なんだと。明日、出ていったらもう帰ってこないんだと。そしたら、思った通り、翌朝出て行って二度と帰ってこなかった。ウワ〜ン!!
「羊羹」はやさしい子だね。くろちゃんの寂しい気持ちに答えて、帰ってきてくれたんだね。そして、くろちゃんもエラいと思う。出したら、二度と帰らないとわかっていて、「羊羹」を出したんだからね。外に出さない選択はなかったの?
猫は自分の死期を悟ると身を隠す
そう言えば、知り合いんちの13歳のネコは、ちょっとづつ体力が落ちているとは聞いてたけど、ある日、外に出たきり帰ってこなくなって、1ヶ月になるそうだよ。飼い主さんは、その子を出した時にちらっと振り向いた姿が、まぶたに焼き付いて離れないと言っていた。
そうか、それはつらいだろうな。おれも、似た話を聞いたことがある。家の縁の下に、ボサボサの野良ネコが住み着いた。メシをやっていたら、だんだん毛づやも良くなっていた。が、いつからかヨボヨボしてきて、メシも食わなくなって、ある日忽然と姿を消した。
「教えて!goo」に、「推定23歳のメスネコがいなくなった」という相談があった。回答は、どれも似たような意見だった。〈死期を悟って死に場所(隠れて落ち着ける場所)を求めた、とは考えられませんか?〉〈野良猫/野良犬の場合、死期を悟ると人間の眼に見つからない所でひっそり死にます。〉〈猫の本能は終末を誰にも見せないということだそうです。〉
近所のばあちゃんが飼ってたネコもそうだった。ある日、ばあちゃんの目の前でネコが車にハネられた。「大変だ!」と駆け寄ると、ネコはびっこを引きながら、さっとこっちを一瞥しただけで、どこへともなく消えて、そのまま帰らなかった。ばあちゃん言わく、「ネコの墓場に行ったんじゃ。」
「教えて!goo」に、こんな質問もあった。「猫は自分の死期が近い事を知ると人から離れて、どこかへ行ってしまうときいたことがあります。これは本当ですか?」回答〈100%ではないにしろ、事実です。我が家のかつての飼い猫達は寝たきりでなかったものは、裏の畑(茗荷がうっそうと茂っている場所)で死ぬみたいなんです。白骨がゴロゴロ・・真夏に、体調の悪い猫が涼しいところを求めて入っていったまま、亡くなったという感じです。(中略)...何匹もの猫が死んでいるという決まった死に場所があるみたいですね。〉
もっとリアルな回答もあった。〈うちの近くには「猫墓場」と呼ばれているうっそうとしげった河原があります。そして、確かにそこには無数の猫のモノと思われる白骨があります。猫は猫同士で集会を開くらしいですから、その地域の猫の間ではその河原が死に場所のメッカになっていたのかもしれませんね。〉(教えて!goo)
ネコにまつわる話は、ふしぎがいっぱいだ。たとえば、こういう回答も。〈10年以上飼っていた猫は、寝たきりに近い状態でしたが、ある日突然いなくなり、家族が『死ぬから身を隠したんだね』と話していたところ、夏休みの最終日の朝、けたたましい鳴き声と共に家に這い上がってきて、その廊下のところで息を引き取りました。(中略)...その日は奇しくも私の誕生日でした。〉(教えて!goo)
外国の事情はかなり意外だった。室内飼いのネコの場合だと思うが、〈ペットを自宅でゆっくりと死なせてはいけません、かかりつけの獣医師と緩和ケアチームが、苦痛を与えずに「安楽死」させてあげます〉って言うんだ。(pet MD)
見つけられたネコは、ほんとにそれで幸せなのだろうか?
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本来、自由を愛するネコに、人間は慰められる。ネコも、清潔で安全な場所で寝て、メシも食わせてもらうが、狭い部屋に閉じ込められて、退屈な一生を終える。キライな家に閉じ込められるのと、保健所で殺されるのと、どっちが不幸か、ネコに聞いてみたいもんだ。
それがある日、一番のお気に入りだった子が家出してしまいました。
「ネコは家につく」と言うから、ずっと家にいると思っていたのですが。
しかし、こんなにガッカリするものなのか~ 正直、自分でも驚きました。
もしもこれが恋人、主人、かわいい子どもだったら、どれほどのショックなのだろう。
抜けきれないもやもやの中で、これを書きながらようやく気づきました。
「執着」を学ぶ機会だったんだと。
いずれこの世からおさらばするために、今のうちに「執着」を手放そう。