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まみむのメモ(59)〈食べられる野草図鑑・夏(3)〉
ハス(蓮)
時期 | 7〜9月に花が咲き、秋に種ができる。秋〜春に根のレンコンを掘り取る。 |
場所・環境 | 原産地はインド亜大陸とその周辺。沼や池の沿岸部に沿って多く自生する。食用、薬用、観賞用として湿地で栽培される。根茎は泥中に深くもぐり、分岐して肥大(蓮根)して分岐して空洞があり、これがレンコン。 ハスは系統として2種類あり、花色が白や赤系統のアジア産と、花色が黄色のアメリカ産のハスがある。食用として流通するハスは、主にアジアにルーツを持つハスで、その原産地はインドとその周辺地域であり、オーストラリア、アフリカ、東南アジア、中国、日本に伝播した。日本におけるハスの歴史は古く、北海道から九州地方までの全国でハスの化石が発見されている。古代から自生もしくは栽培されていたと考えられており、近世には戦時の非常食として城の堀や寺院の庭に植えられた例もある。 |
花 | 7~9月に開花期を迎え、長い花柄を水上に伸ばして、先端に直径15~20センチの白色、淡紅色の花が咲く。ハスの花は短命で、花びらが開きはじめてから3~4日で散る。また、午前中に咲いた花は午後には閉じてしまい、満開の花は、開花2日目の朝7~9時頃。 |
葉 | 葉は、直径20~50センチで、緑白色の丸い楯形葉(じゅんけいよう)で、葉柄は長く水上にのびている。蓮の葉っぱの表面が水をはじくことを、ロータス効果(ハス効果)という。葉っぱの表面には、ワックスのような物質でできた無数の突起があり、水が表面に広がらず、水滴のまま葉っぱの上を滑り落ちる。これによって、葉っぱの表面についた汚れや虫を絡めとり、きれいな状態を保つことができる。このロータス効果は、ナノテクノロジーや薄膜技術、繊維の分野で注目されており、例えば外壁塗装や生活用品など応用研究されている。 サトイモの葉や、バラの花びらにも、同様に水をはじく効果があるが、これらは蓮の葉っぱのように表面から浮いているわけではなく、「花弁効果」と呼ばれる水滴を吸着する現象で、ロータス効果とは異なる。 |
実 | ハスの実が詰まった花托のことを果托といい、多くの種子が詰まった様子が蜂の巣に似ていることから「ハチス」、転じて「ハス」という植物名となった。緑色の種子は熟するにつれ褐色から黒色へと変化し、成熟すると硬化する。 果実は、花托(かたく)に理没した楕円形の石果になる。 果実の皮はとても厚く、土の中で発芽能力を長い間保持することができる。1951年(昭和26年)3月、千葉市にある東京大学検見川厚生農場の落合遺跡で発掘され、理学博士の大賀一郎が発芽させることに成功したハスの実は、放射性炭素年代測定により今から2,000年前の弥生時代後期のものであると推定された(大賀ハス)。その他にも中尊寺の金色堂須弥壇から発見され、800年ぶりに発芽に成功した例(中尊寺ハス)や埼玉県行田市のゴミ焼却場建設予定地から出土した、およそ1,400年から3000年前のものが発芽した例(行田蓮)がある。 |
根 | 地下茎はレンコン(蓮根)として食用になる。日本では茨城県、徳島県で多く栽培されており、中国では湖北省、安徽省、浙江省などが産地として知られている。 |
見分けるポイント | 花や葉っぱの形がよく似た水生植物に睡蓮がある。 |
間違えやすい毒草 | なし |
生え方 | 多年性水生植物 |
学名 | Nelumbo nucifera |
科名・属名 | ハス科・ハス属 |
採取方法 | レンコンの旬は晩秋〜冬、早取りは7月頃から翌年の5月頃まで順次掘り取る。ハスの実を食用とする場合は、夏、花が咲いて3週間後くらいの緑色の種子を採取する。花托は堅牢そうな外見に反し、スポンジのようにビリビリと簡単に破れる。この段階の種子はやわらかい。 秋に花托の中から果実を取り出して皮を取り除き、種子だけを蒸してから陰干しする。葉茎などは、水洗いして天日で乾燥してから断裁して保存。 果実の皮付きを蓮実(れんじつ)、皮を捨て去って種子を乾燥させたものを蓮肉(れんにく)、蓮子(れんし)、幼芽を蓮心(れんしん)、種皮を蓮衣(れんい)、葉を荷葉(かよう)、葉の基部を荷葉蔕(かようてい)、葉柄(ようへい)および花柄(かへい)を荷梗(かこう)、花のつぼみを蓮房(れんぼう)、オシベを蓮鬚(れんしゅ)、根茎を藕(ぐう)、根茎の節を藕節(ぐうせつ)、でんぷんを藕粉(ぐうふん)といってすべて薬用に用いる。 |
あく抜き | れんこんのアク抜きは必須ではないが、アクの成分として、ポリフェノールの一種であるタンニンが含まれており、切った断面が空気に触れると酸化して茶色く変色してしまう。タンニンは薬効もあるが水溶性なので変色を防ぎたいときは、切った後れんこんを水にさらす。れんこんが空気に触れるのを防ぐことで酸化の進行を止めることができる。 特にれんこんの白さを活かしたサラダやなますなどの場合は、水でアク抜きするのが一般的。シャキシャキ感を残したい場合は酢水につけることで、ペクチン(水溶性植物繊維)の分解を防ぎ、シャキシャキ感が残る。なおペクチンは過熱しても分解されにくい。 一方、切った後すぐに加熱調理するのであれば、水にさらさなくても変色はしない。ただし、鉄鍋など鉄をふくむ調理器具で煮たり炒めたりすると、れんこんに含まれるタンニンが鉄と結合し、黒く変色する原因になる。 |
調理法 | 地下茎:レンコン(蓮根)として食用になり、煮物、揚げ物、酢物、きんぴら等色々な料理に使われる。中国では、すり潰して取ったでん粉を葛と同様に、砂糖とともに熱湯で溶いて飲用する場合もある。 葉:蓮葉飯(はすはめし)とは蓮飯(はすめし)ともいい、蓮の葉を蒸しあげ塩を加え柔らかくして細かく刻んで炊き立てのご飯と混ぜたもの。(古くは蓮の巻葉を小さく刻み、温かい御飯に混ぜ、大きな蓮の葉に盛って食べる「蓮飯」は、江戸っ子に愛されていた料理。)盂蘭盆や一部の仏教宗派の祭礼の供物や名物として、現在でもその門前町の商店やお寺でも食することはできるが、一般ではほとんど作られることがない料理。また似たものとして蓮粥(蓮葉粥)という料理もある。 蓮の葉のちまき・中国や東南アジアの蓮飯(レンハン)、中国語では荷葉飯(中国語版)(フーイエファン)ともいいその他にもタイ語でカオホーバイブア(タイ語版)(ข้าวห่อใบบัว)といい日本で言うちまきのことで、粳米(うるちまい)や餅米(もちごめ)などをさまざまな食材と一緒に蓮の葉包みの蒸したものをいう。当然、ちまきの葉は他にも笹やコモ、タイではバイトゥーイなども使い、現在の中国では、料理のひとつとして紹介されているが、古くは蓮を使う時は宗教的意味合いをもっていた。 種子:まだ柔らかい種子は緑色のドングリに似た形状でこれをそのまま生食する。手で剥くことができる皮の中に白い胚があり、生で食するとほんのり甘味と苦みがあり、生のトウモロコシに似た食感を持つ。でん粉が豊富である。また甘納豆や汁粉などとしても食べられる。 中国や台湾、香港、マカオでは餡として加工されたものを蓮蓉餡と言い、これを月餅、最中、蓮蓉包などの菓子に利用されることが多い。餡にする場合、苦味のある芯の部分は取り除くことが多く、取り除いた芯の部分を集めて蓮芯茶として飲まれることもある。ベトナムでは砂糖漬けやチェー(Chè)の具として食べられる。 乾燥させたハスの実は、一晩水に浸してから用いる。用い方としては、スープや粥にそのまま入れたりするほか、他の料理にも使うことができる。生のハスの実は果托の部分ごと売られており、円錐形をした果托を割って種子を取り出し、まだ軟らかい殻を取り除いて食べる。日本では、甘納豆や汁粉にハスの実を用いることがある。また、蓮の実をシロップ漬けにして乾燥させた「糖蓮子(広東語版)」は、中国では一般的な菓子で、特に旧正月によく食べられている。 ハスの実は、バランキージャやカルタヘナなどコロンビア北部の都市でも一般的。現地住民は普通、ハスの実を「マルティージョ」と呼称する。生のハスの実は露天市で販売されており、現地住民は普通生食する。 芽:果実の若芽は、果実の中心部から取り出して、茶外茶として飲用に使われる。中国のハスの一大産地である湖北省では、春から夏にかけて、間引かれた若茎(葉の芽)を炒め物・漬け物などにして食べる。 花:生でサラダに入れるか、さっと茹でて食べる。 ハスを国花としているベトナムでは、雄蕊で茶葉に香り付けしたものを花茶の一種である蓮茶として飲用する。甘い香りが楽しめるという。かつては茶葉を花の中に挿入し、香りを茶葉に移していた。 また朝鮮半島・中国には茶外茶として花そのものを原料としたものがあり、こちらも蓮茶と称される。 茎:古代中国では、蓮の葉にお酒を注ぎ、茎をストローのようにしてお酒を飲むことを、象が鼻で飲むことに見立てて、「象鼻酒」「象鼻杯(ぞうびはい)」といい長生きができるという言い伝えがある。ベトナムでは茹でてサラダのような和え物にして食べる。日本においては食べやすく切った茎を煮物の材料として用いる。産地である秋田県では、茎を用いた砂糖漬けが作られている。 |
他の利用方法 | 茎の表皮を細かく裂いて作る糸を「茄絲(かし)」、茎の内部から引き出した繊維で作る糸を「藕絲(ぐうし)」と呼び、どちらも布に織り上げる等、利用される。 ハスの実(はすのみ、蓮の実)とは、ハス属の植物、特にハスの種子のこと。念珠に加工される |
効能 | レンコンに非常に多く含まれているのが、ビタミンC。加熱に弱いのがビタミンCだが、レンコンのビタミンCはでんぷん質が主体のために加熱しても損なわれにくいとされる。ビタミンCは強い抗酸化作用があるため、疲労回復効果や免疫力の向上が期待でき、動脈硬化やがん等の病気を予防したり、風邪予防、老化防止や美肌効果、皮膚や骨を強くする働きもある。 レンコンには、水溶性食物繊維であるペクチンも含まれているが、不溶性食物繊維の方が多い。ペクチンは水に溶けやすい食物繊維で、高血圧予防につながると言われている。そして不溶性食物繊維は、水に溶けにくい食物繊維で、水分を吸収して便のカサを増やし排便をスムーズにする働きがある。 カリウムも多く、尿中にナトリウムを排泄する働きがあるので、塩分の摂り過ぎを調整し、高血圧の予防に有効。レンコンを切るとすぐに黒く変色するのは、ポリフェノールの一種であるタンニンが含まれているからで、タンニンには、止血作用や炎症を抑える働きがあるため、胃潰瘍や十二指腸潰瘍に効果が期待出来る。鉄分も豊富に含むので、貧血の解消が期待できる。また産後の悪露(おろ:産後の子宮腔内からの排出物)が続くなど、子宮の回復のほかに、お乳の出を良くする効果もあるとされる。 絞り汁を服用して鎮咳、強壮、駆瘀血剤(くおけつざい:滞った血を除く)、風邪、喘息、口渇、二日酔、下痢、腸カタル、胃潰瘍、カニの中毒に効果がある(ショウガを加えるとさらに良い)。節の部分の絞り汁を盃に2〜3杯服用すれば、喀血、吐血、下血、鼻血、喘息に効果がある。この汁を塗布するか貼れば腫物の膿を吸出し、痛みをとる。乾燥ハスの実は、100gの基準量あたり332キロカロリーで、糖質を64%、脂肪を2%、タンパク質を15%、水分を14%含む。ハスの実はビタミンB群を豊富に含み、特にチアミン(ビタミンB1)は1日あたりの摂取量の43%分を占めるほか、マンガンやリンなどといった多くのミネラルも含む。1日5〜15g煎じて服用すれば利尿、 滋養強壮、通経剤として口渇、吐き気、浮腫、腎炎、糖尿病、身体の衰弱、しゃっくり、神経衰弱、腰痛、こしけ、子宮の各種疾患、遺精、夢精、房中(性欲)過度に効果がある。 若い実はアジア圏の料理や伝統医学に用いられる。主に殻を剥いて乾燥させた状態で販売されており、タンパク質やビタミンB群、食物性ミネラルなどが豊富に含まれている。薬としての種子は、石蓮子という。乾燥させて殻を剥いたものは蓮肉(れんにく)という生薬として、鎮静、滋養強壮作用がある。帰経に脾・腎・心とあり、内臓を整え下痢、心を落ち着かせ不安・不眠などに効果があるとされる。蓮肉を含む漢方薬には、啓脾湯や清心蓮子飲などがある。蓮実芽を食欲増進剤として3つ指でつまんだ量に熱湯を注いで飲む。 蓮の葉は、漢方医学の世界では、「荷葉(カヨウ)」と呼ばれ、乾燥させたものがお茶にして飲まれていた。血液中のコレステロールを減らし、脂肪や老廃物を排出する働きがあるとされている。また、ビタミンCやミネラルが多く含まれ、美容やダイエットに効果があるとされ、健康食品として販売されている。世界3大美女の1人である楊貴妃も、好んで蓮の葉茶を飲んでいたそう。 1日10〜15gを煎じて服用すれば解毒、止血剤に、キノコの中毒、吐血、喀血、血便、痔出血に効果があり、夜尿症にも効く。この煎液で洗浄すればウルシカブレに効果がある。黒焼粉末を塗布またはゴマ油で練って塗布すれば口内炎、歯痛、腫物、火傷によい。花の乾燥粉末を服用すれば滋養強壮剤になり性的神経衰弱に効果がある。また鎮静剤となり、不眠、身体衰弱、痔にも効果がある。花托を突き潰して塗布すれば、あかぎれ、しもやけに効果がある。 |
その他 | 穴が開いているれんこんは、その形状から「先の見通しがきく」という縁起物として、おせち料理や精進料理によく用いられている。ハスの花、すなわち蓮華は、清らかさや聖性の象徴として称えられることが多い。「蓮は泥より出でて泥に染まらず」という日本人にも馴染みの深い中国の成句が、その理由を端的に表している。 古来インドでは、インダス文明の頃から、ハスの花は聖なる花とされ、地母神信仰と結びつき、神聖なるものの象徴とされていた。ヒンドゥー教の神話やヴェーダやプラーナ聖典、仏教などにおいて、ハスは特徴的なシンボルとして繰り返し登場する。インド、スリランカ、ベトナムの国花。また、中華人民共和国マカオの区旗にもデザインされている。イギリスのスポーツカーメーカーであるロータス・カーズは、社名がハスの英語名(Lotus)であり、エンブレムにもハスをあしらった図柄が描かれている。 日本では、以下の地方公共団体が「市の花」に採用している。 ・愛知県愛西市・滋賀県守山市・埼玉県行田市 - 古代蓮 - 市の建設工事によって偶然掘り起こされた約1,400年から3,000年前のものと推定される蓮は、「古代蓮」とも「行田蓮」とも称され、市の花及び天然記念物とされている。 ・千葉県千葉市 - 大賀ハス - 1993年に千葉市花に制定。 |
参照サイト・文献 |
ウィキペディア イー薬草・ドット・コム HORTI わかさの秘密 シンクヘルス株式会社 トクバイニュース 食べる薬草事典/村上光太郎・著/農文協 |
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アザミ(薊)
時期 | アザミの開花時期は、一般的に夏から秋にかけてで、ノアザミの場合は、開花時期が長く4月~10月頃まで。育成種は春蒔き(寒冷地)と秋蒔き(暖地)がある。花後は地上部は枯れるが根が冬越しする。根生葉や新芽を出したロゼット葉で冬越しするものもある。 |
場所・環境 | 平地から高山まで広く分布する。日当たりのよい空き地、道端、野原、草原などにふつうに生える。山地の渓流の縁や、砂れき地や海岸などにも出るものもある。 世界に250種以上があり、北半球に広く分布する。地方変異が非常に多い。日本列島には150種を越えるアザミたちが生きている。そのうちタカアザミなど5種はアジア大陸と共通した種類だが、残りの145種以上が日本の特産種。 |
花 | 花期は春咲きのものと秋咲きのものがある。春咲きはノアザミが代表的で、その他は初夏から秋にかけて紅紫色の球状の花を咲かせる種が多い。花は球状から筒状で、茎先に多数の管状花(筒状花)が集まった頭状花序(頭花)がつき、多くのキクのように周囲に花びら状の舌状花が並ばない。花からは雄蘂(ゆうずい:おしべ)や雌蘂(しずい:めしべ)が棒状に突き出し、これも針山のような景色となる。 日中の開花しているころ、雌ずいに触れると雄ずいから花粉が押し出される接触運動の一種。雄ずいが先に熟す先熟花で、まず、雄ずいが花筒から表れ、それが引っ込むと次に雌ずいが出て受粉する。するとまた花筒内に引き込んでしまうといった具合。 それを目当てに、開花時の花粉媒介に多くの昆虫が訪れる。受粉は昆虫による虫媒花である。 山野にもっとも普通に見られるノアザミは、北海道を除く各地に分布する。茎に軟毛が多く、もっとも早く5~6月から直径3~5センチの頭状花をつける。総苞(そうほう)の外側が粘っていて、色は白色、淡紅色、濃紫色などがある。 鮮やかなものは、花アザミとかドイツアザミと呼ばれている。 |
葉 | 葉は、やや厚く通常羽状の欠刻があって大小の鋸歯があり、いづれも鋸歯の先端はみな堅い刺になっている。高さ0.5〜1m。根生葉は花期にも残り羽状に中裂する。茎葉の基部は茎を抱き、鋭い棘が多い。 |
実 | 痩果(実際には種子ではなく1個の種子を含む果実)の先端に綿毛(冠毛)がついており、風で遠くまで飛散して増える。 |
根 | 直根が伸び、ゴボウに似る。 |
見分けるポイント | アザミ属の植物とよく似ていたり、名前に「アザミ」が付いたりするが、アザミ属の植物でない物もある(ヒレアザミ、キツネアザミ、ミヤコアザミ、マツカサアザミ、ルリタマアザミなど)。また、トウヒレン属やヒゴタイ属もよく似た花を咲かせる。ゴボウも花はよく似ている。「チョウセンアザミ」の和名を持つアーティチョークはアザミ属ではなく、チョウセンアザミ属である。 |
間違えやすい毒草 | モリアザミの根は食用になり、「ヤマゴボウ」とよばれることがある。しかし、学術上の種名、ヤマゴボウとヨウシュヤマゴボウはいずれもキク科ではなく、モリアザミなどのアザミとは類縁関係の遠いヤマゴボウ科であり、薬用にはなるが、食用になるどころか有毒植物であり、混同して誤食しないよう注意を要する。 ヤマゴボウはヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年生草本である。かつては人家に植栽されたというが、有毒であり食用には適さない。この点は帰化植物のヨウシュヤマゴボウ(アメリカヤマゴボウ)と同じで、ヨウシュヤマゴボウの茎は赤みを呈するが、ヤマゴボウの茎は緑色である。果実が黒紫色に熟す事も同じで、インクベリーと呼ばれ、染料の原料とされた。 山菜の販売所で売られている“山ゴボウ”の名前で販売されている漬物の原料は、キク科のモリアザミ、オニアザミ、オヤマボクチなどのアザミ類やヤマボクチの根の総称である。山菜として「山ゴボウ」と称されているもので、“ヤマゴボウ”とは全く異なる植物である。岐阜県東濃地方では、モリアザミは食用として「菊ごぼう」としても、販売されている。野菜のゴボウもキク科である。 |
生え方 | 多年草、まれに一年草や二年草もある。 |
学名 | アザミ属:Cirsium |
科名・属名 | キク科・アザミ属 |
採取方法 | 主には花蕾が出る前の若い茎葉で、花や根も利用できる。採取時期は春(4 - 6月ごろ)が適期で、トゲがあるため手袋とナイフが必要で、やわらかな茎葉を採取する。花は初夏から初秋(6 - 9月ごろ)、根は一年中採取できるが秋が一番適している。薬用には夏から秋の花期に採取して、天日で乾燥させる。根は土を水洗いして落としてから天日で乾燥させる。 |
あく抜き | 茹でて色の変わらないものは苦味が少なく香りもよいが、黒変するものは苦味が強いため、何度か水替えしながら長い時間水にさらす。根はゴボウのように食べることができ、根を刻んでから水につけて灰汁を抜く。(茹でてから一晩米のとぎ汁でさらすとよい。) |
調理法 | アザミの種類で大部分のものが食べられる。若ければ刺は揚げたり、ゆでたりすれば気にならないが、直火にかざすとトゲが焼ける。てんぷら、ごまあえ、クルミあえ、からしあえ、油炒め、きんぴらなどに芽、葉、根を用いる。アザミの根は煮たり、きんぴらや味噌漬けにして食べる。山ごぼうとして販売されている。 |
他の利用方法 | 薬用、園芸。 蜜源植物としてはちみつが生産される。また、この植物は鳥や蝶など多くの種を養っている。(自然教育園におけるアザミに集まる昆虫) |
効能 | リグナン:有害な物質を除去する抗酸化作用を持つエストロゲン(女性ホルモン)の1種の植物エストロゲンで、エストロゲンの過剰な働きを抑える。子宮がんや乳がん、前立腺がんは、血中にある女性ホルモンの濃度や脂肪摂取量が高いほど、発生する確率が高いといわれ、リグナンには、がんを縮小する作用が期待できる。腸内細菌の働きによって、植物では見られない化合物のエンデロラクトン(動物性リグナン)として代謝される。ガンや心筋梗塞などの生活習慣病の原因をひきおこす酸化を防止する作用があるといわれる。さらに動物リグナンには血小板を活性化するはたらきを抑制させることで血液をサラサラにする効果が期待される。 シリマリン:「ミルクシスル(マリアアザミ)」の種子に多く含まれているフラボノイド混合物で、傷ついた肝細胞の修復を助けるとされる。 損傷を受けた肝臓の細胞を修復し保護する働きから、ヨーロッパでは肝硬変など肝臓疾患の治療薬として使われており、日本でも二日酔い対策のサプリメント成分として知られ、化粧品成分として利用の際は抗シワ作用も確認されている。真皮のコラーゲンを増やし、繊維構造を正常化する作用を持つため、シワを改善する。また体内で成長ホルモンの分泌を促し、細胞の老化を防ぐ。ガンを誘発する活性酸素の働きを抑えるなどして免疫力を高める。体内で合成される抗酸化物質グルタチオンの生成を促すことや、ガンや老化、動脈硬化、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの原因になる活性酸素を抑制する効果から、生活習慣病の予防、改善効果がある。 根の中には、持続性の血圧降下作用物質が含まれている。 止血には根を1日量15グラムとして同様に煎じて用います。止血には根を1日量15gとして煎じて用いる。出血、吐血、鼻血、痔出血などに効き目があるとされ、健胃薬にも利用される 。 胃痛、むくみ、不眠症、夜尿症には乾燥した根10g~15gをコップ2杯の水で煎じて1日3回に分けて服用する。 腫物、火傷、毒虫刺されに、根の生汁を絞り患部に直接塗る。 葉を利尿、解毒、止血、強壮薬として月経不順、子宮筋腫、鼻血、尿血、下血などに用いている。用い方は葉20~30gに水0.4リットルを入れて煎じ、約2分の1量までトロ火で煮詰めたものを1日量として食前か食間に3回服用する。 湿疹、皮膚の炎症に葉の生汁を患部に貼付する。 耳垂れには葉を濃く煎じた煎じ汁を脱脂綿に付けて拭き取るようにする。 花または根は焼酎に漬けて健康酒にもでき、強壮・健胃によいといわれる。 |
その他 | スコットランドでは、そのトゲによって外敵から国土を守ったとされ国花となっている。花言葉は「独立」「報復」「厳格」「触れないで」。ロレーヌ公国を象徴する花となっている。 |
参照サイト・文献 |
ウィキペディア 国立科学博物館 イー薬草・ドット・コム 松江の花図鑑 Kurashi-no わかさの秘密 BOTANIKA 熊本大学薬草園・植物データベース まだ海外で消耗してるの?・海外生活から日本の農村へUターン移住後、動物と一緒に農業と林業で自給自足の田舎暮らし |
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桃の実
桃は消毒したり、袋をかけたりしないと実らないのかなと思っていたのですが、種から育てた桃は何もしなくても実ってくれました。(他の木の花をいただいて受粉だけはしました。)
食べた後の果物の種などを植えておくと、かなりの確率で芽を出します。今育っているのは栗、杏、柑橘類、柿、アボガド(冬越しが難しい)などです。種から育てると、その土地に合った強い木に育つようです。原種帰りはするようですが、育ちやすいと思います。
庭陰のユキノシタ
畑のイチゴ
以上、”楽して採取生活を目指す”のお助け植物さんたちでした。