まさに革命の前夜と言った感じの今のアメリカ経済 ~金利を上げることも下げることもできないFRB / レイ・ダリオ氏「歴史を通して、いつも金利を下げるという誘惑がある。」

竹下雅敏氏からの情報です。
 2023年5月15日の記事で、世界最大級のヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者であるレイ・ダリオ氏の『変化する世界秩序に対処するための原則 レイ・ダリオ』を要約した動画を紹介しました。
 レイ・ダリオ氏はビッグサイクルと呼ぶ約250年間続く普遍的なサイクルについて説明し、“ビッグサイクルの終わりには金融バブルが崩壊し、お金が印刷され、富裕層と貧困層の間の内部紛争が激化し、富を再分配するための何らかの形の革命が起こります。これは、平和的に、または内戦として発生する可能性がある”と言っていました。
 今のアメリカを見ていると、まさに革命の前夜と言った感じです。
 “続きはこちらから”の動画と記事をご覧ください。アメリカも日本も株価は上がっていますが、これは金融緩和が今後も続くと見ているからです。「株式市場は金融緩和を続けられる限り長期的に上がり続ける」のです。
 アメリカではリーマンショック時にゼロ金利と量的緩和が始まりました。低金利では一般の投資家は、より高いリターンを求めて国債を買わずに株を買います。米国債を買い支えたのは中央銀行や銀行、そして日本でした。
 しかし、新型コロナウイルスのパンデミックの際の莫大な現金給付によって、アメリカはインフレが加速しました。
 インフレを抑えるには金利を上げる必要がありますが、「利上げをすると、ただでさえ急増している米国債の利払いが更に増加してしまう」のです。コロナ後の金利上昇により、「アメリカ議会予算局の推計によると、2028年には利払費が1兆ドルに達し、国防費を上回る大きな支出項目となる見込み」だということです。
 レイ・ダリオ氏は「この解決策は3つしかない。支出を減らすか、課税を増やすか、借金をして国債を中央銀行に買わせるかだ。」と言っています。しかし、借金をして国債を中央銀行に買わせると、更にインフレが加速します。
 このようにFRBは金利を上げることも下げることもできないのですが、レイ・ダリオ氏は「歴史を通して、いつも金利を下げるという誘惑がある。」と言っています。即ち、“インフレを引き起こし国民の預金の価値を犠牲にして政府の債務負担を減らす”ことを選ぶのです。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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30分で判る 経済の仕組み Ray Dalio
配信元)


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配信元)
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レイ・ダリオ氏: 米国は利上げを続けられず、すべての通貨は価値が下がってゆく
引用元)
引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏のColumbia Business Schoolにおけるインタビューである。
(中略)
アメリカはインフレを抑えるために利上げを再開しなければならないのかという帰路に立っている。だが前回の記事でダリオ氏が語っている通り、利上げをするとただでさえ急増している米国債の利払いが更に増加してしまう。


ということで、アメリカは金利を上げられるのか。ダリオ氏は次のように述べている。

  歴史を通して、いつも金利を下げるという誘惑がある。
(中略)
通貨の運命

アメリカはインフレを退治できるのか。長期的には、その問いに答えることは簡単である。ダリオ氏は次のように説明している。

  1700年からこれまでにおよそ750の通貨が存在した。

その中で今でも存在している通貨はたったの20%だ。そして生き残っている20%の通貨すべては、その価値が劇的に下がっている。

価値が下がっているというのはインフレで購買力がなくなったという意味である。ちなみに多くの日本人が円の価値下落を気にして購入している米ドルだが、インフレによる目減りを考慮すれば、ドルの価値は長期的には次のようになっている。1ドルをCPI(消費者物価指数)で割ったグラフである。1950年を100としている。



通貨の減価を避けるために通貨を買うこと自体が間違っているのである。
(中略)
利下げや量的緩和などの政策の目的は、インフレを引き起こし国民の預金の価値を犠牲にして政府の債務負担を減らすことにある。
(以下略)
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レイ・ダリオ氏: 紙幣印刷に備えてゴールドを十分に保有しているか?
引用元)
(前略)
多くの人が考えもしないことだが、預金は返ってこない可能性がある。

ダリオ氏は次のように続けている。

  負債については歴史的にも論理的にも次のことが明らかだ。負債は返ってこないリスクか、あるいは減価されて魅力がなくなった状態で返ってくるリスクがある。

実際、去年アメリカでそうした状況が起こった。2023年にシリコンバレー銀行など比較的大規模な地方銀行がいくつか破綻したが、それらの銀行は預金を預金者に返せない状況にあった。

その状況がどう解決されたかと言えば、中央銀行が紙幣を印刷して預金者に紙幣が返ってくるようにした。しかしこのやり方はシリコンバレー銀行の預金者の負担をアメリカ全土の預金者に転嫁したことに等しい。紙幣が印刷されれば、紙幣の価値そのものが下がるからである。
(中略)
ではどうすれば良いのか。負債性ではない資産を持てば良いのである。ダリオ氏はこう語っている。

  ゴールドは逆に負債に裏書きされていないタイプの貨幣である。デフォルトやインフレによる減価のリスクのある通貨や債券とは違い、債券のデフォルトやインフレはゴールドにとってむしろプラスになる。

中央銀行やその他の投資家たちがゴールドを保有している理由がそれだ。
(中略)
また、ダリオ氏はこう続けている。

暗号通貨もまた非負債性の貨幣だ。わたしは他に非負債性の貨幣を知らないが、宝石や美術品も似た性質を持つと言う人もいるかもしれない。それらは負債による裏付けがなく、持ち運び可能で、富の貯蔵手段として広く受け入れられているからだ。
(以下略)

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