ぴょんぴょんの「大出血の理由」 ~体はいかにして、血管内の異物を外に捨てるのか?

 先日、ある方が、「ふしぎな話なんだけど」と前置きをして、話を聞かせてくれました。
 この方は、自宅の窓から巨大なUFOを目撃したり、亡くなったネコが何度も夢に現れたりする方なので、今度は何だろう?とワクワクしながら聞きましたが、う〜ん、おもしろい。しかも、ここで書いたことに関係のある話だったので、「書いてもいい?」と聞いたら、「いいよ」と言ってくれました。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「大出血の理由」 ~体はいかにして、血管内の異物を外に捨てるのか?

止まらない喀血


「ふしぎな話」、聞きたいか?

聞きたい! ふしぎなこと、大好き!

おれの叔母は7年前、乳がんで、左乳房と付属リンパ節を全て摘出した。ただ本人は、その後の抗がん剤や放射線治療を選択しなかったし、病院に行くだけで病気になると言うので、定期検診もしなかった。それでも、今に至るまでずっと元気でいる、と思っていた。

何か、あったの?

1ヶ月くらい前のことだ。あれ?のどに何かが引っかかっている。と思って、吐き出してみたら、1センチくらいの黒い塊だった。レバーっぽいけど、レバーより固い。「何だろう?」と思っていると、咳が出始めて止まらなくなった。ティッシュで拭うと、ティッシュは真っ赤になった。

大変だ!すぐに病院に行かないと。 

咳は止まらないし、出血も止まらない。真っ赤になったティッシュの山を見た主人はビックリ仰天! すぐさま、乳がんの転移が脳裏をよぎった。

あ!

主人は「すぐに病院に行け」と言ったが、その日は金曜日。叔母は土曜日は病院は休みだと思っていたので「来週の月曜に行く」と答えた、か、答えないうちに、叔父はスマホで病院を探し始めた。そして、叔母を車に押し込むと、病院へ向かった。

ご主人は必死なのに、叔母さんはのんきだね。

叔母いわく、「最初の黒い塊が出た後、なんとなく体が楽になったのよ。だから、全然心配ないと思ったの。」

へえ?? 肺からいっぱい血が出たんだよ?

病院への道すがら、血相を変えて運転する主人に、叔母は昼に見た韓流ドラマの顛末を話していた。すると、「主人から、ジロっとにらまれたのよ」と笑う。

笑い事じゃないでしょ。

それでも、叔母には確固たる自信があった。黒い塊が出て、たくさん血が出た後、今までになく体が爽快で、軽く感じたからだ。

ええ? もしかして、出血多量で頭がおかしくなった?

病院に到着し、医師の診察を受け、血液検査や胸部レントゲン検査を受けた。医師は、レントゲンを見ながら言った。「気管支に問題があるようですね。」



ええ? 肺じゃなくて、気管支?

おそらく医師は、結核や肺ガンを疑っていたが、肺には異常が無かったので、出血源は気管支だと考えた。

でも、気管支からの出血って、そんなに大量に出るの?

う〜ん、ひどい咳なら出血することもあるけど、大量には出ないかな。それでこの日は、「非定型抗酸菌症」という診断に落ち着いた。結核じゃないから、「家族には伝染らないので安心してください」と言われた。

隔離とかになったら、大変だもんね。

そして、「次回はCTを撮りましょう」と言うことで、帰宅した。その日に処方されたのは、たぶん抗生物質と去痰剤。主人の監視の元、無理やり飲まされたが、2〜3日飲んだら胃が悪くなったので止めた。

抗生物質は、胃にくるからねえ。

だが依然として、咳も血痰も止まらない。叔母が咳をするだけで、家族がすっ飛んできて、真っ赤なティッシュを見てガックリする。出血だけでなく、血の塊も出てくる。外が黒くて、中が赤いのもあった。

お菓子のグミみたいだね。いや、もしかしたらガンの塊?

ある時は、赤く透き通った長い紐のようなものも出た。

長い紐? 寄生虫じゃない?

家族もスマホで検索したがわからない。そして、CTの日がやって来た。叔母がCT室で横たわると、途端に咳が止まらなくなった。出血も止まらない。検査技師にティッシュを持ってきてもらうと、あっという間に1箱が真っ赤なティッシュの山になる。新しいティッシュの箱を持ってきても、まっ赤っ赤。若い技師はオロオロしていたそうだ。


検査中に、出血多量で死んだら大変。

なんとかCTを撮り終わり、結果が出た。が、医師はまたもや首をひねった。「気管支が少し拡張している」と言っただけ。

ガンじゃなかったの?!

気管支拡張症を疑ったらしい。たしかに気管支拡張症でも血痰が出る。が、気管支拡張症はヘビースモーカーの病気で、細菌感染による緑色の痰も大量に出る。一方、叔母はタバコは吸わないし、緑色の痰も出ていない。決定的だったのは、初日に提出した喀痰の培養だった。「非定型抗酸菌」はおろか、なんの菌も検出されなかった。

なんだって〜?


治る過程で出てくる症状


困惑気味の医師に、叔母は恐る恐る話しかけた。「あのお〜、血の塊が出たり、たくさん血痰が出たあと、なんか体がスッキリした感じがするんですけど?」医師は、怪訝そうな顔をしただけで、叔母の話を無視したと言う。

「いきなり何を言い出すんだ、こいつは? 頭おかしいのか?」って思ったろうね。

そうだな。医師ってヤツは、学校でも病院実習でも、「血痰・喀血=危険な病気」としか教わっていない。まさかそれが、治る過程だとは想像すらできないはず。

ええ?! 治る過程だったの?

ねじれ医者ぴょんぴょんは、それを自分で体験した。

あの人、変わり者だからねえ。

7種のぴょんぴょんは、開業以来20年間、1日も診療を休まなかった。が、ある冬のインフルエンザで熱が上がり、咳が激しいために、とうとう1日休んでしまった。

患者さんにうつすより、休んだ方がいい。

激しい咳と高熱にあえぎながら、日頃から患者に言ってきた、「抗生物質や解熱剤は死にそうな時だけ」を守って、薬は飲まなかった、と言うか、飲みたくなかった。すると、熱が上がりすぎたせいか、鼻血が出始めた。ティッシュで拭いても拭いても、血の池地獄のように、熱い血がコポコポと吹き出して、洗面器いっぱいに溜まった。


うわ! ふつうなら、救急車を呼ぶでしょ? 怖くなかったの?

叔母と同じさ。「鼻血がたくさん出たら、なんかスッキリした。これはきっと、なにか悪いものを出している。」そして、意識朦朧の中で考えた。「あんなに出血したのに、弱るどころか元気になっている。ということは、出たのは体に必要な血ではなくて、いらない血か。それに鼻のすぐ裏は脳だ。きっと鼻血が出ていなかったら、脳出血や脳梗塞になっていたのかもしれない。」

なるほど〜!

実はこの体験には、ありがたいオマケが付いてきた。3日間、何も食えず、水しか飲めなかった。なのに3日目の朝に便意を感じた。何も食べてないから何も出るはずないと思いながらトイレに座ると、ポチャンポチャンと音がする。便器を見ると、石炭のような真っ黒な塊が2〜3個水に浮いていた。「宿便だ!」と歓喜したと言う。


インフルエンザのおかげで、宿便が出た?

もちろん、死ぬか生きるかの時は解熱剤も抗生物質も必要だ。が、本人が「これで楽になっている」と自覚しているなら、症状を見守ってやるのも悪くはない。

じゃあ、叔母さんの血痰はなんで出たの?

最初のエピソードを思い出してみよう。「黒い塊」が出たと言った。これはなんだったのか?

きっと、血が黒くなった塊。と言うことは血栓?

じゃあ、血栓はどこでできるのか?

血管の中。


そうだ。もしも、血栓を捨てるために、血管壁に穴が開いたとしたら?

血栓が出た後、血管内の血も一緒に出るよね。そっか、だから、咳と一緒に血痰が出たんだ。

それが、気管支壁の血管で起きたことだろう。血栓を捨てるたびに穴が開き、そこから出血して、咳と血痰が出るを繰り返していた。

と言うことは、叔母さんの肺の血管には、かなりたくさんの血栓があったんだね。 

そういうことらしい。もしこれが、全身に回っていたら、大変なことになっていただろう。肺動脈を塞げば「肺梗塞」、心臓に飛べば「心筋梗塞」、脳に飛べば「脳梗塞」。


うわあ!全部、命にかかわる病気だ。それが、気管支から血栓を捨てたおかげで、リスクを回避できたんだね。

ゴミ掃除ができたおかげで、体もスッキリしたんだろう。


赤く透き通るような長い紐の正体


ひとつだけ、疑問があるんだけど? 黒い塊が血栓というのはわかる。でも、「赤く透き通るような長い紐のようなもの」って何だったの? やっぱり、寄生虫?

これもぴょんぴょんの話。下腿の静脈瘤で、何度も手術を受けた爺さんがいた。手術してもすぐに再発するので、もう手術はしたくないと言う。血を浄化する漢方薬を飲んでもらったら、ある朝、爺さんが、ティッシュにくるんだものを持ってきた。「今朝のうんこをほじってみたら、こんなのが出てきました」と言う。ティッシュの中には、「赤く透き通るような長い紐」があった。

まさか、足にできた静脈瘤の血栓が、うんこと一緒に出た?

驚くべきことだが、下半身の血栓が大腸から捨てられたらしい。

へええ? そんなことできるんだ。

それから数年後にも、同じような静脈瘤のおばちゃんが来て、同じ薬を飲んでもらった。今度はあらかじめ、「赤く透き通るような長い紐」の話をしておいた。するとおばちゃんも、「赤く透き通るような長い紐」を持参して来た。

ふうん、足の血栓は大腸から捨てられるのか。叔母さんの場合は上半身だから、大腸は遠すぎる。それで気管支から捨てたのかあ。

そうゆうこと。「血管内は外界に接していない」ように見えるが、血管壁は自由に開閉できて、栄養をやり取りしたり、異物を出し入れしている。だから、血管内のゴミを、大腸や気管支から捨てることは可能なんだよ。


血管て思っているような閉鎖空間じゃないんだ。

血管壁には「どこでもドア」があるんだよ。もひとつ。叔母の出した血栓は、乳がんの原因だったとも考えられる。あの黒い血の塊を、西洋医学では血栓と呼び、東洋医学では「瘀血(おけつ)」と呼ぶ。「瘀血」は汚れた血のことで、ガンの原因の一つと言われるから、今回の大掃除で、がんの原因も取り除けたんじゃないか?


デトックスのきっかけとなった意外なもの


大量の血痰にビックリさせられたけど、ガンの再発も止められたとしたら、すごいね。だけど、なんで今、出たんだろう? 今までずっと叔母さんの体の中で、おとなしくしてたんでしょ?

そこだよ。叔母も考えたそうだ。デトックスはありがたいが、なんで今なのか? 何がきっかけになったのか? すると、あることに思いついた。

なになに?

まあ聞け。叔母の言うには、左乳房全摘出による後遺症なのか、最近、左手の親指が使いづらくて困っていたそうだ。特にものを運ぶ時に手が開かない。そこで、銅線グルグル巻きを思い出した。早速、左手首に巻いてみると、楽になった。


なんと! くろちゃんの腰が治った、あれかあ?

調子がいいので2日間、風呂に入るときも、夜寝るときも、ずっと巻きっぱなしだった。すると黒い塊が出た。銅線を巻いて2日後のことだった。

なんと、銅線グルグル巻きがデトックスのきっかけだったのか?!

どう考えても、それしか思い浮かばないと言う。医師を受診する時に外すまでは、ずっと巻き続けていたから、銅線グルグル巻きしか考えられないそうだ。

それ、お医者さんに話したら? いや、わかってもらえないかなあ。

主人にも話せていないと言う。

なら、どんなメカニズムが働いたの?

おれの思うに、親指には肺の経絡が通っている。親指の動かしづらさの原因は、肺経の滞りだったかもしれない。銅線を巻いたことで、肺経の気が流れ出し、邪魔になっていた血管の血栓を排除しようとしたのでは?

その結果、親指が治っただけじゃなくて、原因の血栓まで排出された。体は思いがけないことをやってくれるけど、それは全部、理にかなったことなんだねえ。

今は咳も落ち着いて、前より血色が良いくらいだ。すると主人が白状した。「あの時は、葬式をどこに頼もうかと考えた。」そんな話をしながら、家族で大笑いしているそうだ。

ご家族は心配したよね。

ただ、当の叔母はボヤく。あの時はコホンと咳をしただけで、誰かがスッ飛んできて、心配してくれたのに、今じゃコホンとしても、誰も心配してくれない。主人に「あんなに体がスッキリするなら、また同じ事が起こらないかしら」と言ったら、あきれられたそうだ。

冗談も言えるくらい元気なって、良かったよ。


Writer

ぴょんぴょんDr.

ぴょんぴょん

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)


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