[櫻井ジャーナル 他]米副大統領は事実を語ってトルコやUAEに謝罪したが、ISとは米国、サウジ、イスラエルも同盟関係

竹下雅敏氏からの情報です。
 記事によると、バイデン副大統領の発言は責任転嫁であり、ISISが台頭したことの責任を、トルコ・サウジアラビア・UAEになすりつけるためということです。
 確かにそのような面はあると思いますが、これまで共同してアサド政権を倒すために陰謀を働いて来たのに、こういう形でアメリカが同盟国を非難するというのは、通常では考えられません。ウクライナのマレーシア航空機の撃墜事件のように、都合が悪ければ黙ってしまうのが米国のやり方のはずです。すなわちこの発言は、トルコ・サウジアラビア・UAEがアメリカの意に沿わない行動を取っているということであって、事実は仲間割れをしていることの証です。
 すでに言及しているように、アメリカが非難したこれらの国は、すでにISISへの支援を止めていると考えられます。彼らはISISがシリアのアサド政権を倒した後に、その銃口を自分たちの方に向けるということを悟ったのです。しかもそれが同盟国であるアメリカの陰謀であるということも理解したはずです。
 もはやこうなっては、ISISはコントロール不能と言って良いでしょう。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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米副大統領は事実を語ってトルコやUAEに謝罪したが、ISとは米国、サウジ、イスラエルも同盟関係
転載元より抜粋)
 ジョー・バイデン米副大統領は10月2日にハーバード大学で講演、その中でIS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILとも表記)との「戦いは長くかつ困難なものとなる。この問題を作り出したのは中東におけるアメリカの同盟国、すなわちトルコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦だ」と述べた。

 こうした国々はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すため、反シリア政府軍へ何万トンもの武器、何億ドルもの資金を供給して中東を混乱させたと指摘、さらにトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は多くの戦闘員がシリアへ越境攻撃することを許してISの強大化させたと後悔していたとバイデンは語った。

 事実を明らかにされると困る人は少なくない。

 バイデンの発言に「アメリカの友好国」は怒り、発言主はトルコのエルドアン大統領やアラブ首長国連邦のモハメド・ビン・ザイード王子に謝罪したというが、彼の発言に間違いはない。ただ、重要な国が欠落している。アメリカやイスラエルだ。その事情は本ブログで何度も書いてきた。少し前、ペルシャ湾岸の産油国からISとイスラエルを結びつける話が流れたが、これと同じで、バイデンの発言は自分たちとISとの関係を否定する宣伝だと見る人は少なくない。


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米国の見つけた中東混乱の「犯人」
転載元)
© Photo: RIA Novosti/Andrey Stenin

© Photo: RIA Novosti/Andrey Stenin



中東における原理主義思想の急速な拡大は何故起こっているのか。「イスラム国」と戦う国際戦線が犯人探しに躍起となっている。

事の発端は米国のジョゼフ・バイデン副大統領によるハーバード大講演。副大統領は、「この戦いは長くかつ困難なものとなる。この問題を作り出したのは中東における米国の同盟国、すなわちトルコ、サウジアラビア、UAEである」と述べた。バイデン副大統領によれば、この国々はシリアのアサド大統領を追い落とすことに性急なあまり、シリア政府軍に反抗する者であれば誰であれ見境なく、何万トンもの武器、何億ドルもの資金を供給した。それが中東の混乱を引き起こした、というのである。またバイデン大統領は、トルコのエルドアン大統領との協議の「内幕」も明かしてしまった。「エルドアン氏はあまりにも多くの戦闘員に国境通過を許してしまい、いたずらに「イスラム国」を増強させてしまったことを後悔していた」と、バイデン副大統領は語った。


のち、バイデン副大統領は、トルコとUAEに謝罪した。同盟国にテロ支援の疑いをかけているわけでは全くない、と釈明した。しかし、電話で伝えたごめんなさいよりも、世界の何千というメディアによる報道、またインターネットによる情報拡散の方が、はるかに強い影響力を持つ。ジョゼフ・バイデンほどの老練な政治家がさしたる考えもなしにあのような発言をしうるなどと考えることはナイーヴに過ぎる。ハーバードで彼が行った発言はことごとく入念に計算され、具体的な狙いをもったものだった。その狙いとは、イスラム過激派への資金供給について米国政府に向けられた非難の、その矛先を変えることだ。政治学者のレオニード・イサーエフ氏はこのように見ている。

「記憶に新しいことだが、国連安保理および国連総会で、中東諸国や中南米諸国がこんな疑問を提出した。いったい誰が、何の目的で、「イスラム国」に資金を供給したのか、と。米国政府はこの疑問を逃れるために、同盟諸国に責任を転嫁する必要があったのである」

それには特別な工作など何も要らない。ただ真実を言えばよいのである。そこで重要なのは、自分に有利なようにアクセントを打つことだった、と戦略研究所のアジダル・クルトフ氏は指摘する。

「米国は手広く外交代表部、諜報機関、諜報に携わっている非政府組織を展開し、ネットワークを築いている。同盟国が何をやっているかくらいは知悉していよう。アラブ諸国やトルコに対する非難は、米国自身のミステイクをカバーするためのものだったと見るべきだ。シリア反体制派に武器や資金をみだりにつぎ込んでいたのは米国も同じなのだから。これら支援はある部隊に注入されたのち、ほかの部隊に回された可能性も十分にあるのである。米国もトルコやUAEと同罪なのだ」

犯人が多すぎると取り調べもままならない。トルコもUAEも米国に立腹する閑などない。「イスラム国」戦線が荒れ狂っている。

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