多くの人が指摘していることだが、
TPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)は巨大資本が国を支配、主権国家を否定する仕組み。以前から言われていたが、「アナーキズム」の一形態、あるいは
「近代農奴制」と呼べる。そうした仕組みを作り上げるために考えられた理屈が「新自由主義」にほかならない。それを実現するために考え出されたTPPの内容を
日本政府は隠し続けているが、英語では
膨大な文書が明らかにされ、予想以上に酷い内容だと批判されている。(例えば
ココや
ココ。日本語訳は
ココや
ココ)
この仕組みで運営された一例が旧ソ連圏。1991年7月にロンドンで開かれたG7の会談で牧歌的親米派の
ミハイル・ゴルバチョフは新自由主義の導入、いわゆる「ピノチェト・オプション」を渋り、西側支配層はゴルバチョフの排除を決める。そして台頭してくるのがボリス・エリツィン。
エリツィンはG7の首脳会談が開かれた1991年7月にロシアの大統領に就任、その年の12月にウクライナのレオニード・クラフチュクやベラルーシのスタニスラフ・シュシケビッチとベロベーシの森で秘密会議を開いてソ連からの離脱を決め、ソ連は消滅する。その直後、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官などネオコン/シオニストはDPGの草稿という形で
世界制覇プロジェクトを作成した。
アルコールにおぼれていたエリツィンは国を運営する能力はなく、
実権はその娘であるタチアナ・ドゥヤチェンコを含む政府の腐敗グループが握った。そのグループと結びついた一部の人びとが国民の資産を略奪しはじめ、巨万の富を築いて「オリガルヒ」と呼ばれるようになる。エリツィン時代にロシアを支配したのはこのオリガルヒだ。
こうしたオリガルヒは犯罪組織のフロント企業のような会社を拠点にして「ビジネス」を展開、富はこうした人びとに集中する。その
一方、庶民の貧困化は深刻になり、街は荒廃し、売春婦が急増している。ロシアは破綻国家になったが、ウラジミル・プーチンのグループが再独立に成功した。TPP、TTIP、TiSAをルールとする世界もエリツィン時代のロシアと似たようなことになるだろうが、ロシアのように復活できるとは限らない。
新自由主義で教祖的な役割を果たしたのがシカゴ大学の教授だったミルトン・フリードマン。1973年9月11日にチリでCIAを後ろ盾とするオーグスト・ピノチェトが軍事クーデターを成功させたが、その独裁政権は巨大資本にとって邪魔な人びとを排除したうえで新自由主義に基づく政策を打ち出していく。新自由主義が実際の政策に導入されたのはこれが最初だ。CIAの背後にはヘンリー・キッシンジャーがいた。
そうした政策を実践する際、指揮していた学者がいわゆる「シカゴ・ボーイズ」、つまりフリードマンの弟子たち。その実践を肯定的に評価したフリードリッヒ・フォン・ハイエクはアメリカの株式相場が暴落した後、1930年代に私的な投資を推進するべきだとして、政府の介入を主張するジョン・メイナード・ケインズと衝突していた学者だ。後にズビグネフ・ブレジンスキーと親しくなるデイビッド・ロックフェラーもハイエクから学んだひとり。
1932年の大統領選で勝利したフランクリン・ルーズベルトを中心とするニューディール派はケインズの理論を採用、巨大企業の活動を規制して労働者の権利を拡大しようとするのだが、巨大資本の利益を守ろうとする最高裁判所に妨害されている。1934年頃、JPモルガンなどウォール街の巨大資本が反ルーズベルト/親ファシストのクーデターを計画したとスメドリー・バトラー少将が議会で証言したことは本ブログで何度も書いてきた。
こうした経験を踏まえ、
ルーズベルト大統領は1938年4月29日、
ファシズムについて次のように語っている。
「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。
本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」
この「私的権力」はウォール街の巨大資本を指しているのだろうが、
TPP、TTIP、TiSAは巨大資本が国を支配するための協定であり、ルーズベルトの定義に従うと、
ファシズム体制を樹立することが目的だということになる。
巨大資本が世界を支配するというビジョンが浮上するのは19世紀の後半だと言えるだろう。アフリカの南部で大量の金やダイヤモンドが発見され、イギリスの支配層が略奪を始めてからだ。そうした中、ロスチャイルド財閥を後ろ盾として巨万の富を築いたひとりがセシル・ローズ。
このローズの発案で1891年に創設されたのが「選民秘密協会」。その前年に彼はロンドンでナサニエル・ロスチャイルド、エシャー卿(レジナルド・ブレット)、ウィリアム・ステッド、サリスバリー卿(ロバート・ガスコン-セシル)、ローズベリー卿(アーチボルド・プリムローズ)、ミルナー卿(アルフレッド・ミルナー)と会い、自分のアイデアを説明して実現したのだ。
このグループは情報の収集だけでなく操作も重視した。つまり、報道、宣伝、教育で人びとを操ろうというわけである。当時の報道は新聞だけだが、タイムズ紙を「エリート」向けに、そしてデイリー・メールなどを「騙されやすい人びと」向けに使い分けていた。
最近は巨大資本によるメディア支配が進み、新聞だけでなく、雑誌、テレビなど巨大メディアは全て支配されている。出版界も惨憺たる状態。偽情報を広める上でPR会社も重要な役割を果たしてきた。支配層に取って都合の良いイメージを植え付けるだけでなく、
思考力を奪うために「教育改革」も推進されている。安倍晋三政権もそうしたプランに従って動いているにすぎない。
中東の混乱以降、フランスの武器輸出産業は“特需に湧いている”とのこと。対テロ戦争が長引くほど、軍産複合体は利益を得るわけです。アシュトン・カーターなどは、こうした連中の代弁者だと考えています。だからこそ、ロシアがISISを殲滅することに対して、強く反発しているのです。問題は最後の部分。“日本の軍事産業も同じ夢を追っている”という部分です。単に金儲けと言うだけでなく、思想的にハルマゲドンを容認しているところも同じなのです。