いなくなった「羊羹」

ウワ〜ン!! ウウォ〜ン!!
おれの愛しい「羊羹」がいなくなっちまった!!

どうしたの?
「羊羹」なら、おいしいお店を知ってるから、買ってきてあげるよ。

ちゃうちゃう!
「羊羹」はネコの名前だ。ほれ、
去年うちの庭で生まれた、
ここで話した、
4匹のうちの1匹。

え、ネコ?

ウワ〜ン!! ウウォ〜ン!! 「ネコは家に付く」なんて誰が言った? ネコだって家出するんだぞ!

でも、子ネコが生まれた時、くろちゃん、パニクったよね。
このまま、ネズミ算式にネコが増え続けたらどうしようって?

ああ、うちのネコたちは去勢してないから、この調子で増え続けたら、「多頭なんたら」になっちまうってな。

多頭飼育崩壊だね。

それそれ。だが、いつしか、そんな恐れも吹っ飛んじまった。だって、かわいいんだもん!

あんなに、お荷物に感じてたのにねえ。

荷物どころか、おっぱい飲んでいる子ネコたちに、どんだけ癒やされたことか!

ふわあ~ いいなあ〜。

子ネコがじゃれ合って遊ぶのを見るのも、至福だった。だが、大きくなるにつれて、また不安がよぎった。おれはこれから、これまでの2匹プラス5匹の面倒を見ることになるのか? となると、獣医に連れて行って去勢、避妊手術をさせなくてはいけないのか? 勘弁してくれ〜!って思っていたら、
3ヶ月後、乳離れがすむと母ネコは、子ネコを1匹ずつどこかに連れ去り、2匹だけ残して姿を消した。

あ、聞いたことある。ネコの知恵だね。「2匹なら面倒見られるでしょ? 後をよろしく」ってことだね。

ちょっと寂しかったが、ホッとした。
残された2匹は「豆大福」と「羊羹」と命名した。

その「羊羹」がいなくなったんだ!?

ウワ〜ン!! ウウォ〜ン!! よ〜う〜か〜ん!!

ま、ま、落ち着いて!! どんな子だったの?
それがある日、一番のお気に入りだった子が家出してしまいました。
「ネコは家につく」と言うから、ずっと家にいると思っていたのですが。
しかし、こんなにガッカリするものなのか~ 正直、自分でも驚きました。
もしもこれが恋人、主人、かわいい子どもだったら、どれほどのショックなのだろう。
抜けきれないもやもやの中で、これを書きながらようやく気づきました。
「執着」を学ぶ機会だったんだと。
いずれこの世からおさらばするために、今のうちに「執着」を手放そう。