[マスコミに乗らない海外記事]地域における大虐殺挑発を狙った、サウジアラビアの処刑 〜サウジアラビアはイランとの戦争に持ち込みたい〜

竹下雅敏氏からの情報です。
 今回のサウジアラビアの蛮行の意図を推察しています。一言で言うと、サウジアラビアはイランとの戦争に持ち込みたいということだと思います。記事では、“シリアでの敗北と、イエメンで継続中の挫折を救済するため…宗教紛争の爆発で吹き飛ばすこと”が、今回のシーア派指導者アム・ニムル師処刑の意図だろうとのことです。宗教戦争が各国の代理戦争に発展すれば、彼らの思惑通り、第三次大戦に発展します。
 しかし、すでにロシアはイランとサウジアラビアの仲介を申し出ています。文末にあるように、サウジアラビアの“計算を徹底的に裏切ることになる”と思われます。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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地域における大虐殺挑発を狙った、サウジアラビアの処刑
転載元より抜粋)
2016年1月2日 イギリス、ロンドンのサウジアラビア大使館前で、著名なシーア派宗教指導者ニムル・アル-ニムルの処刑に反対する抗議行動で、プラカードを掲げる抗議行動参加者  Neil Hall / Reuters

2016年1月2日 イギリス、ロンドンのサウジアラビア大使館前で、著名なシーア派宗教指導者ニムル・アル-ニムルの処刑に反対する抗議行動で、プラカードを掲げる抗議行動参加者
Neil Hall / Reuters


著名なシーア派宗教指導者のサウジアラビアによる処刑に対する中東全体での激しい反応が、処刑は、支配者サウド王家による意図的な挑発であったことを強く示唆している。
この挑発は、サウジアラビアの地政学的権益を推進するために - 既に引火点に近い -地域の様々な国々で、宗派間緊張をあおり、紛争を助長することを狙ったものであるように見える。こうした権益の中心にあるのは、いつも通り、激しいライバル関係にある、地域におけるシーア派大国イランだ。

週末、シーア派宗教指導者ニムル・アル・ニムルが、46人の他の囚人と共に処刑されたというサウジアラビア内務省による発表の後、地域全体、特に、イラン、イラク、レバノンやバーレーンなど多数のシーア派信者がいる国々で、予測通りの憤激がおきた。イランは、過激なスンナ派サウジアラビア支配者を“犯罪人”と非難し、“軽率と無責任の極み”の行為を実行したと糾弾した

元イラク首相ヌリ・アル-マリキは、死刑発動は、サウジアラビア支配者の崩壊をもたらすだろうと述べ、他のイラク政治家連中も、不安定で、宗教的に緊張した地域全体で“地獄への門を開ける”だろうと語っている。

アメリカ合州国も欧州連合も、アル・ニムル処刑には懸念を持って対応し、両国とも、サウジアラビアによる死刑で、宗派間緊張が激化すると警告した。

ニムル・アル・ニムルは、週末に処刑された4人のシーア派活動家の一人だった。彼らは政府転覆とテロなど、いくつかの罪で告訴されていたが、この裁判を国際人権団体は、裁判手続きの茶番だとかたづけていた。

アル・ニムルに対する司法の誤りと、寛大な処置への訴えにもかかわらず、処刑を実施するという恐ろしい判断が、事件を大いに衝撃的なものにしている。

レバノンのシーア派レジスタンス運動ヒズボラは、サウジアラビアの行動を“暗殺”だと非難し、イラン革命防衛隊は、サウジアラビア支配者は“厳しい復讐”に会うだろうと断言した。

2016年1月2日 バーレーン、マナマ西部のサナビス村で、サウジアラビア当局による、サウジアラビアのシーア派宗教指導者ニムル・アル-ニムルの処刑に反対する抗議行動で、 "死は我々にとって当然のことで、神があたえたもうた尊厳は殉教だ" という垂れ幕を掲げる参加者、Hamad I Mohammed / Reuters

2016年1月2日 バーレーン、マナマ西部のサナビス村で、サウジアラビア当局による、サウジアラビアのシーア派宗教指導者ニムル・アル-ニムルの処刑に反対する抗議行動で、 "死は我々にとって当然のことで、神があたえたもうた尊厳は殉教だ" という垂れ幕を掲げる参加者、
Hamad I Mohammed / Reuters


サウジアラビアと他のスンナ派アラブ諸国連合軍が、過去9か月、空爆を行っているイエメンでは、主として、シーア派フーシ派反政府派も、アル・ニムル処刑を非難し、彼の死に対して報復すると約束した。


サウジアラビアに反撃する方法として、イランとヒズボラが、今後イエメンでの軍事介入を強化するだろうというのは適切な仮説だろう。

サルマーン王率いるサウド王家は、ワシントンも、モスクワも支持しているジュネーブ交渉に賛成ではないことが知られている。シリアの政治的未来は、選挙で、シリア国民によって決定されるべきだというロシアの姿勢に対し、ワシントンが妥協したように見えることにサウジアラビアは動揺している。和平交渉の前提条件としてシリア大統領バッシャール・アサドは辞任すべきだ、というワシントンによる長年の主張が放棄されたのだ - その結果、サウジアラビア、トルコとシリアの過激派戦闘集団が、アサドは退陣すべきだと要求し続けている唯一の当事者となってしまった。

トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンが、ニムル・アル・ニムル処刑のわずか数日前にリヤドで、サウジアラビアのサルマーン王と“戦略的サミット”を行ったことには、おそらく大きな意味があるだろう。

9月末以来の、ロシアのシリア軍事介入は、バッシャール・アサドのシリア政府を安定化させる上で大成功だ。オバマ政権でさえ、最近、シリアにおけるロシアのウラジーミル・プーチン大統領の戦略的成功を認めた。

シリアにおける秘密の政権転覆で、最大の敗者は、サウジアラビア、カタールとトルコという地域の同盟諸国とともに、ワシントン、ロンドンとパリが率いる枢軸だ。ワシントンや、他の欧米列強には、シリアでの最終的な政権転覆のため、秘密の反政府活動支援から、遅ればせながら政治的手段へと、戦術を切り替える抜け目のなさがあるが、サウジアラビアとトルコは、依然、秘密の戦争計画に固執しているように見える。

サウジアラビアの観点からすれば、連中のシリアでの敗北と、イエメンで継続中の挫折を救済するための一つの方法は、地域を、宗派紛争の爆発で吹き飛ばすことだろう。もちろん、多くの人々にとって、そのような賭けは、常軌を逸している。だが、もしサウド王家が、スンナ派とシーア派の間の騒動を挑発できれば、それは、ワシントンとモスクワとを対立させることになり、地域全体で、より広汎な戦争をもたらすことになろう。

シリア政権転覆の権謀術数でわけがわからなくなった、サウド王家が、他国の領土に、混乱と流血の蔓延を引き起こしたがっているように見える。

著名なシーア派宗教指導者ニムル・アル・ニムルの処刑は、全く根拠のない野蛮な殺人なので、結論は一つしかない。死刑という全くの狂気は、地域で騒乱を引き起こすことを狙った病的な計算を徹底的に裏切ることになるだろう。

サウジアラビアは、シリア、イエメン、イラク、レバノンや他の国々で大連敗しているため、独裁者連中はおそらく、いちかばちかやってみても、自分たちにはほとんど失うものがないと判断し、地域における大虐殺を挑発したのだ。

記事原文のurl: https://www.rt.com/op-edge/327796-saudi-arabia-nimr-cleric-executed/

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