[マスコミに載らない海外記事]欧米は経済的破滅への道を歩んでいる 〜その分野の最高の賢者から直接学ぶのが理想〜

竹下雅敏氏からの情報です。
 これまで何度も、経済学者という人たちは経済を理解していないのではないかとコメントしたのですが、今回のポール・クレイグ・ロバーツ氏の記事を読むと、私と同じことを言っているのがわかると思います。本当に経済を理解している人は、ノーベル経済学賞を受賞しているような学者ではありません。むしろあまりにも真相をついていて決して受賞することの無い人物が、きちんと理解しているものなのです。
 経済学をきちんと学びたいという人に対しては、氏のアドバイス通り、“長時間、ハドソンの書物を読む”というのが良いと思います。経済学部に現在通っているような人は、大学での講義内容は話半分に聞いておき、この記事で紹介されているマイケル・ハドソンの著作を直接学ぶことを勧めます。私は語学が出来ないので、是非とも日本語に翻訳してもらいたいものだと思います。
 どの分野もそうですが、その分野の最高の賢者から直接学ぶのが理想なのです。ポール・クレイグ・ロバーツという賢者の言葉に、素直に耳を傾けるのが賢明だと思います。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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欧米は経済的破滅への道を歩んでいる
転載元より抜粋)
Paul Craig Roberts
2016年2月1日


マイケル・ハドソンは世界最高の経済学者だ。実際、彼は世界でたった一人の経済学者だと言って良いと思う。それ以外のほとんど全員、経済学者ではなく、金融業界の権益のための宣伝係ネオリベラルだ。

もし読者がマイケル・ハドソンのことをお聞きになったことがなければ、それは単に「マトリックス」の威力を示しているにすぎない。ハドソンは、いくつかノーベル経済学賞を受賞していて当然なのだが、彼は一つも受賞することはあるまい。

ハドソンは意図して経済学者になったわけではない。著名な経済学部があるシカゴ大学で、ハドソンは音楽と文化史を学んだ。彼はニューヨーク市に出て、出版社で働いた。ジョルジ・ルカーチとレオン・トロツキーの著作とアーカイブの権利担当になるよう命じられた際、自分でやってゆけると思ったのだが、出版社は二十世紀に大きな影響を与えたこの二人のユダヤ人マルクス主義者の著作に関心を持ってはいなかった。

知人がハドソンに紹介してくれたゼネラル・エレクトリックの元エコノミストが、経済制度をめぐる資金の流れを教え、債務が経済より大きくなると、どのように危機が進展するかを説明してくれた。これにはまったハドソンは、ニューヨーク大学の経済学大学院課程に入学し、貯蓄がいかにして新たな抵当権付き住宅ローンへと変わるのかを計算する金融部門の仕事についた。

ハドソンは、博士号課程よりも、実務経験で、経済について、はるかに多くを学んだ。ウオール街で、銀行貸し出しが、どのように土地価格をつり上げ、それによって、金融部門への利子支払いをつり上げるかを彼は学んだ。銀行が貸し出せば貸し出すほど、不動産価格はあがり、銀行が益々多く貸すのを奨励することになる。抵当権支払いが上がれば、家計所得のより多くと、不動産賃貸価格のより多くが金融部門に支払われる。不均衡が大きくなりすぎると、バブルが破裂する。その重要性にもかかわらず、地代と資産評価の分析は、経済学の博士課程の一部ではなかった。

ハドソンの次の仕事は、チェース・マンハッタンで、各国がどれだけの債務返済をアメリカの銀行に支払う余裕があるのかを計算するのに、彼は南米諸国の輸出収入を使った。住宅ローンの貸し手が、物件からの賃貸料所得を、利子支払いに向けられる金の流れと見なしているのと同様に、国際銀行が外国の輸出収入を、外国ローンに対する利子支払いに使える収入と見なしていることを、ハドソンは学んだ。債権者の狙いは、債務返済支払いとして、ある国の経済的剰余を丸ごと獲得することであることをハドソンは学んだ。

まもなくアメリカの債権者とIMFは、債務国に、
それで利子を支払うため、更なる金を貸し出すようになった。これにより諸国の外国債務は複利で増えることになった。ハドソンは、債務諸国は債務を返済することはできるまいと予言し、歓迎されざる予言だったが、メキシコが支払えないことを発表して、本当であったことが確認された。この危機は、アメリカ財務長官にちなんで名付けられた“ブラディー・ボンド”によって解決されたが、ハドソンが予言した通り、2008年にアメリカ住宅ローン危機がおきた際、アメリカ人住宅所有者に対してはなにもなされなかった。超巨大銀行でなければ、アメリカ経済政策の焦点にはなれないのだ。

チェース・マンハッタンは、次はハドソンに、アメリカ石油業界の収支を分析するための計算式を開発させた。ここでハドソンは、公式統計と現実との間の違いに関する別の教訓を学んだ。“振替価格操作”によって、石油会社は、ゼロ利潤の幻想を作り出すことで、税金支払いをまんまと免れていた。税金回避ができる場所にある石油会社子会社が、石油を生産者から、安い価格で購入する。利益に対して税金がかからない、こうした都合の良い国の場所から、利益が出ないように嵩上げした価格で、欧米の精油業者に石油が販売される。利益は非課税管轄圏にある石油会社子会社が計上する。(税務当局は、課税を逃れるための振替価格の利用に対し、ある程度厳しく取り締まるようになっている。)

ハドソンの次の課題は、スイスの秘密銀行制度に流れる犯罪で得た金額を推計することだった。チェースのための彼最後のこの研究で、ワシントンの外国における軍事活動によるドル流出を相殺するべく、ドルを維持するため (犯罪人によるドル需要を増やすことで)麻薬密売人から手持ちドルを惹きつける目的で、アメリカ国務省による指令のもとで、チェースや他の巨大銀行が、カリブ海諸国に銀行を設立したことをハドソンは発見した。もしドルがアメリカから流出しても、需要がドルの膨大な供給を吸収するほど十分に増えないと、ドルの為替レートは下がり、アメリカの権力基盤を脅かすことになる。犯罪人連中が違法なドルを預けることができるオフショア銀行を作ることによって、アメリカ政府は、ドルの為替価値を維持しているのだ。

ハドソンは、アメリカ・ドルの価値に対する圧力の源であるアメリカ国際収支赤字は、性格的に丸々軍事的なものであるのを発見した。海外におけるアメリカ軍作戦の、アメリカ国際収支に対する悪影響を相殺するために、アメリカ財務省と国務省は、違法な利益のためのカリブのタックス・ヘイヴンを支持している。言い換えれば、もしアメリカ・ドルを支えるのに、犯罪行為が利用できるのであれば、アメリカ政府は、犯罪行為を全面的に支持するのだ。


現在の経済学でいうと、経済理論では何もわからない。貿易の流れも直接投資も、為替レートを決定する上で重要ではない。重要なのは“誤差脱漏”つまり、ハドソンが発見した麻薬密売人や政府幹部自国が輸出収入を横領して不正に得た現金に対する婉曲表現だ。

アメリカ人にとっての問題は、二大政党がアメリカ国民のニーズを重荷として、そして、軍安保複合体、ウオール街や巨大銀行の利益や、ワシントンの世界覇権の障害と見なしていることだ。ワシントンにある政府は、アメリカ国民ではなく、強力な既得権益集団を代表している。これが一体なぜ21世紀に、帝国とその受益者のニーズの邪魔にならないところに国民をおいやることができるよう、国民の憲法上の保護に対する攻撃が続いているのかという理由だ。

経済理論は、実際は、劣等人種から金をまきあげるための道具であることを、ハドソンは学んだ。国際貿易理論は、国々は、債権者に支払うために、国内賃金を引き下げさえすることで、膨大な債務を返済できると結論づけている。これが現在ギリシャに適用されている政策で、債務国に押しつけられるIMFの構造調整や緊縮政策の基本で、本質的に、国家資源を、外国の貸し手に引き渡す略奪の一形態だ。

貨幣理論は、資産価格不動産や株などのインフレではなく、賃金と消費者価格だけにしかかかわらないことを、ハドソンは学んだ。経済理論は、世界経済が金持ちと貧乏人へ両極化することへの隠れ蓑として機能していると彼は考えている。グローバリズムのお約束は作り話だ。左翼やマルクス主義経済学者でさえ、賃金面の搾取だけを考えていて、搾取の主要手段が、金融体制による、利子支払いでの価値抽出であることに気がつかない。

経済理論が、債務が搾取手段であるのを無視しているので、ハドソンは初期の文明が債務増大にいかに対処したかという歴史を研究した。彼の研究が余りに画期的だったので、ハーバード大学は彼をピーボディー博物館のバビロニア経済史主任研究員に任命した。

一方、彼は金融会社からも引っ張りだこだ。彼は長年アルゼンチン、ブラジルとメキシコ、債券の極端に高い金利を支払うことができるかどうかを計算するよう雇われていた。ハドソンの研究を基に、スカッダー・ファンドは、1990年、世界で二番目に高い利益率を実現した。

ハドソンは現代の問題を調査するうちに経済思想史を研究するに至った。彼は18世紀と、19世紀の経済学者たちが、金融部門の利益により奉仕できるようこれを無視している現在のネオリベラル経済学者より、債務が債務を負う側を無力化してしまう力を基本的に遥かに良く理解していることを見いだした。

欧米経済が略奪的な形で大衆の利益を犠牲にし、金融部門が儲かるよう金融化していることをハドソンは示している。それが、一体なぜ経済が、もはや一般庶民のためにならないのか。金融はもはや生産的ではないのだ。金融は経済の寄生虫となってしまった。ハドソンは、この話を新刊「Killing the Host(宿主を殺す)」(2015年)で説明している。

読者の方々から、一体どうすれば経済学を学べるかというご質問を頂くことがよくある。長時間、ハドソンの書物を読むというのが私のお答えだ。まず、どういうことが書かれているのかという概要を把握するために、一度か二度通読する。次に、章ごとに、じっくり学ぶのだ。彼の本が理解できれば、どのノーベル賞を受賞したどの経済学者よりも、経済学を良く理解しておられることになる。

このコラムは、彼の本の「はじめに」と見なして頂きたい。私は状況と時間がゆるす限り、この本について、更に書くつもりだ。私の関心事について言えば、現在の多くの出来事は、欧米経済の金融化というハドソンの説明と切り離して理解することは不可能だ。実際、大半のロシアと中国のと経済学者も、皆ネオリベラル経済学教育を受けているので、両国とも、欧米と同じような衰亡の道を辿りかねない。

ハドソンの金融化に関する分析と、私の雇用の海外移転による悪影響の分析を総合されれば、現在の欧米世界の経済的進路が、破滅への道であることをご理解頂けよう。

Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHOW AMERICA WAS LOSTが購入可能。

記事原文のurl: http://www.paulcraigroberts.org/2016/02/01/the-west-is-traveling-the-road-to-economic-ruin-paul-craig-roberts/

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