翻訳チームからの情報(情報提供:竹下氏)です。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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「水の4番目の状態」ワシントン大学生体工学教授ジェラルド・ポラック博士、ゲルフ大学開催のTED講演にて
転載元より抜粋)
TEDx Talks 13/9/6
文字起こし:
ありがとうございます。水は眺めるととても美しいものです。そして…皆様もおそらくご存じでしょうが、私達の(身体の)3分の2は水で出来ています。しかし…ご存じですよね?でしょう?では。
しかし次のことはご存じないかもしれません。水の分子は大変小さいため、その3分の2は私達を構成する分子の99%を占めることを意味するのです。考えてみてください。私達の分子の99%もが水なのです。
ということは、これらの…要するにあなたの靴は水の塊を運んでいるってことです。なので問題はですね、私達の細胞の中でこれらの水の分子は何かしているのでしょうか?それとも水の分子は基本的に何もしていないのでしょうか?あるいは水の分子は何か物凄く興味深いことをしているのでしょうか?
そしてついでに言うと、水は本当にH2Oなのでしょうか?教科書ではそう教わりますが、実は一部の水がH2Oでない、ということは考えられないでしょうか?
これらの問いに対する答えは、皆様が思われているほど単純なものではないのです。実のところ、水について私達は本当に何も分っていないのですよ。知っているのは僅かなことだけです。なぜ僅かなのでしょう?
皆様はこうお考えでしょう、水なんてどこにでもあるじゃないか、単純な分子なのだから水について全部分って当然だとね。違いますか?つまり、もう(答えは)全て揃っているとね。科学者たちも同じように考えています。
科学者の多くは言います、「まったく、水なんて単純すぎるもの、全てが分かっていて当然だよ」ってね。ですが実際には、そんなことは全然ないのです。
ではご覧に入れましょう。まずは水について私達が知っているべきなのに、実は見当もついていないという事例を幾つか見てみましょうか。
ここに皆様が毎日見ているものがあります。空を見上げると雲があります…。おそらく皆様も一度は疑問に思われたのではないのでしょうか、「どうやって水はあそこに昇れたのだろうか?」と。
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なぜってですよ?空には1つしか雲が浮かんでいないのに、水はあちこちから蒸発しているというのに、なぜ皆様がご覧になっているこの1つの雲だけに水蒸気が集まるのでしょう?もう1つ別の疑問です。皆様は水滴が水の上に浮かぶなんて想像できますか?
水滴は一瞬にして水と融合するとお思いでしょうが、かなりの時間抵抗しているものなのです。そしてこちらが水の上を歩く、また別の事例になります。中南米のとかげでして、水の上を歩くことからイエス・キリスト・トカゲと命名されております。
もちろん皆様はおっしゃることでしょう、「ああ、この答えは知ってるよ、表面張力が水の上では大きいんだ」とね。しかし表面張力の常識的な理解では、水の表面に存在している水の分子層は1層だけであり、何を上に置くにせよ、張力を作り出すにはこの単分子膜で十分な筈です。その理屈が当て嵌まらない例がこれだと思うのです。
またこちらがもう1つの例です。水の入った2つのビーカーの中に2本の電極棒を入れ、高い電圧をかけると何が起こるかというと、間に橋が出来上がります。水で出来た架け橋、水の橋です。
しかもこの橋は片方のビーカーをもう1つから離していったとしても、4センチもの長さまで持続しているのです。これは基本的に無限に持続しうるということです。
なぜ私達はこの現象を理解できないのでしょう?私が言いたいのはつまり、水について私達が理解すべきことは沢山あるというのに、何一つ理解できていないということです。要するに、私達は本当に知らないのです。
いいでしょう、では何についてなら水について分っているのでしょうか?皆様は水の分子が1個の酸素と2個の水素から成っていると教科書で習いましたよね。それについては知っています。
そして(水中には)沢山の水分子が並んでおり、これら水の分子は光学顕微鏡で見ると実際には動き回っています。これも知っています。では水の何について知らないのでしょう?私達が知らないのは水の社会的行動の一部…いえ何もかもです。
「社会的」とはどういう意味かと言いますと、まぁほら、バーに腰掛けて隣の人とおしゃべりするとかですね。
私達は水の分子が一体どうやって情報を共有していくのか、どうやって相互に影響しあうのかが分からないのですよ。また、水分子の具体的な動き方も私達には分かりません。
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水分子が相互にどう影響し合っているのか、例えば水分子がそこの紫色した別の分子と何をやりとりしているのか、全く分かりません。そして水の状態もです。
私達は皆、固体・液体・気体という状態があると習いました。しかし100年前、固体と液体の中間には4番目の状態があるのではないかという説が出されたのです。ウィリアム・ハーディー卿という有名な物理化学者は、今からちょうど100年前に、水には4番目の状態が実はあるのだと公言していました。
しかもその水は他の状態の水よりも構造化されているのです。そして、ゼリー状の濃度でした。そこで疑問が浮かんで来ます。…あのですね、こういったことは全て忘れ去られてしまいました。なぜなら技術が向上し、人々は分子を勉強するようになったからです。分子たちの作り上げる全体像ではなく、です。
そして人々は水分子の集合体についてはすっかり忘れ去ってしまい、生物学と同じような見方をするようになり、個々の分子を見るようになり、全体像を見失ってしまったのです。
なので我々はそこを見ていこうと思いました。このミッシング・リンク、この4番目の状態こそがミッシング・リンクであり、それによって私達が理解できていない水の現象を理解できるのではないかと期待したからです。
そこで我々は固体と液体の中間らしきところを見ていくことから始めました。出発地点となった初期の幾つかの実験では、ゲルを使いました。固体です。それを水の隣に置いたのです。そしてとある微粒子を水に加えました。なぜなら微粒子が何かやって見せてくれるのではないかと我々は考えたからです。
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そして期待通り、実行してくれました。何が起こったかと言うと、微粒子はゲルと水の間の界面から離れて行ったのです。微粒子はどんどん動いて行きました。そしておおよそ皆様の髪の毛一本ほどの距離まで離れたところで止まったのです。
そんなのは僅かだと思われるかもしれませんが、分子の世界ではこれは無限とも言える距離なのです。物凄い距離なのです。我々はこの範囲の特性を調べることにしました。そしてご覧の通りの理由から「排他地域」と命名しました。
この領域に何を加えようと排除されてしまうからです。排他地域、略してEZが構成されるにつれ、追い出されてしまうのです。このような領域を構成する、ないしは領域を凝集させる物質の種類というのは、ゲルに限られません。水を好む性質のものというか、表面が親水性と呼ばれるものなら、何でも同様のこと、つまりEZ水の作成が行われることを突きとめました。
EZ水が構築されていくにつれ、全ての溶質なり微粒子なりは皆、自由水へと追い出されてしまうのです。我々がこの特性について学び始めてからかなりの年月が経ちましたが、ようはこんな感じです。
何か物体を水の隣に置くと、EZの層がどんどん形成されて行くのです。その層の一枚一枚の構造を見ると、蜂の巣つまり六角形の形をしているのです。氷の構造に似てるかもしれません、完全に一緒ではないですが。さらに詳しく見ていくと、分子構造まで分かります。
もちろんこれは水素と酸素で構成されています。水から出来ているんですからね。ですが実を言うと、水素と酸素の分子の数を数えてみたところ、これらは水分子ではなかったのです。
つまりH2Oではなかったのです。実際にはH3O2でした。ということは、H2Oではない状態の水が存在する可能性があるということです。
我々は当然のことながら、この大変興味深い特性をさらに詳しく調べていくことにしました。
何をやったかというと、EZ水の中に電極棒を入れてみたのです。何らかの電位があると考えたからです。するとEZの領域は負の電荷を強く帯びていました。染料を使って正の電荷を探してみると、自由水の領域に同量の正電荷が存在していたのです。
何が起こっているのでしょうか?どうやら、これらの界面の隣では水の分子がなぜだか負電荷と正電荷に別れてしまうようなのです。しかも負電荷の部分は水を好む物質のすぐ隣に留まり、正電荷の方はそこを越えて行ってしまうのです。さらには、界面がまっすぐでなくてもいいことも我々は発見しました。球状でもかまいません。
なので球体を水の中に入れてみます。水中に留まることのできる球体なら、どれでも周囲に負電荷を帯びたEZ層を構築するのです。そしてその外側は正電荷を帯びます。電荷の分離です。これは物的球体に限った話ではありません。水滴を入れたっていいのです、水のしずくです。あるいは、気泡だってかまいません。
どれを使ったとしても、周囲を取り巻く負電荷とそこから分離された正電荷という同じ結果が得られるのです。ここで問題です。ではこの負電荷に包まれた物質を2つ取り出し、水を張ったビーカーに入れて近づけると、2つの間の距離はどうなるでしょうか?
皆様のうち95%の方々はきっとこう言われる筈です、「そんなの簡単じゃないか!物理の時間に習ったよ、マイナスとマイナスは反発し合うんだ。よって互いに離れていく、だろ?」ってね。そう思われましたか?
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実際はですね、単に負電荷だけではなかったことを思い出してください。正電荷も存在しているのですよ。そして、正電荷は2つの球体の合間に特に集中して存在していたのです。なぜなら両方の球体が正電荷を作り出していたからです。
なので間に沢山(正電荷が)存在することになるのです。2つの負電荷の間に正電荷があるということはですよ、引力が発生するということなのです。となると2つの球体は実際には引き寄せ合うのではないでしょうか。同じ電荷を帯びているにもかかわらず、現実にはそうなったのです。
これは何年も前から知られていることです。引き寄せあうのです。2つだけでなく、もっと沢山あったとすれば、こちらの図のような感じになります。
互いに引き寄せあうのです。そしてこれはコロイド結晶と呼ばれています。安定化した構造です。皆様が今朝食べたかもしれないヨーグルトが、ちょうど今ご覧になっているような構造だと思います。
反対の電荷のせいで近付くのです。たとえ水滴で実験しても同じことです。反対の電荷のせいで互いに近付きます。つまり水滴、空気中のエアロゾル液滴のことを考えるとですね、そして雲のことを考えてみると、エアロゾル液滴が集まるのはこの反対電荷のせいなんですね。空気中の水滴も同じように電荷を帯びていて、融合して、空の雲となるわけです。よって四番目の状態、あるいはEZの状態というのは、沢山のことを説明可能にするのです。
説明が可能になるのは、たとえば先ほどの雲です。正電荷が負電荷を帯びたEZ殻たちを引き寄せ、それが凝縮されると空の上に漂う雲となるわけです。
水滴に関しては、なぜ水滴が実に数十秒ものあいだ水面に留まっていられるのかという理由ですが、そして雨の日にボートに乗っていると実際に湖の水面で見ることのできる現象なのですが。
これら水滴はかなりの時間、形を留めています。その理由は1つ1つの水滴がこの殻、EZの殻を含んでいるからなのです。この殻が破られないと、中の水と水面下の水とは融合できないのです。
イエス・キリスト・トカゲに関して言うと、水面を歩ける理由はたった1つの分子膜ではなく、もっと沢山のEZの層が表面に並んでおり、それらがゲルのようになっているからです。
通常の表面よりも頑丈になっており、だからコインを水の上に浮かべることも、ペーパークリップを浮かべることも可能なのです。ただしこれら表面の層の下に置けば、すぐに底へと沈んでしまいますけどね。
以上が答えです。
また水の橋に関して言いますと、これをただの単なる自由水だと想定してしまうと理解できなくなってしまいます。ですが、これはEZ水であってゲルのような性質を持つものだと考えれば、殆ど垂れ下がることもなく形を保っていられる謎も理解できるわけです。
これは大変頑丈な構造をしております。ということで。まあそれはいいでしょう、でも一体そんなことが何の役に立つというのでしょう?
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後編につづく…
翻訳:Yutika
最後の写真に「イーサン・ポラック」との署名があり、調べてみると息子さんのようです。お父さんの本のイラストやパネルを手掛けているアーティストでした。ただ講演当日は機器がことごとく作動してくれなかったようで、息子さんたちがかなりの編集作業を後から加えてこの動画が完成したようです。