[創造デザイン学会]シオニズムの崩壊が始まった

 イスラエル政府のパレスチナへの酷い仕打ちや大イスラエル計画への執拗な追及に嫌気がさした多くの米ユダヤ人が、シオニストから離反し始め、「選民思想」から抜け出しているようです。
 これに対するシオニストの反応は、"疑問をもつユダヤ人を追放すること"、"背教者として抹消し、彼らがユダヤ人であること自体を、否定さえしている"ようです。イスラエルの情報長官などは、対イスラエルの「不買・権利はく奪・制裁」政策のリーダーを、“殺しの標的”にせよと要求しているようです。まさにカルト集団そのものの考え方だと思います。記事の冒頭でも"イデオロギー運動は、…自由意志をほとんど許さない運動である"としています。
(編集長)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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シオニズムの崩壊が始まった
引用元)
Lawrence Davidson
May 20, 2016. Information Clearing House
 

イデオロギー的世界観の欠陥 

イデオロギー運動は、宗教的であろうと世俗的であろうと、拘束力の強い、自由意志をほとんど許さない運動である。イデオロギー運動と私が言っているのは、その信奉者に、何らかの「深い真理のセット」を、絶対的に信ずることを要求する運動のことで、この真理は、ある神によって、また、ある不変と考えられた歴史法則によって、あるいは他の何らかの、同じように不可侵の根源によって、定立されたものである。その信奉者は、ひとたび入信すると、あるいは単に、そういうグループに生まれてきただけで、そこに留まり、「信仰を貫く」ことを期待される。

しかし、文化的、政治的、宗教的観点からは、永遠の深い真理などというものはない。歴史には、我々の“この神”“あの法”への信仰を蝕む、腐食的な作用が付き物である。(中略) そしてどの時点かで信仰者は離れていく。

イデオロギーに駆動されてきた指導者たちが、彼らの帰依者たちを失い始めると、どうなるだろうか?もちろん彼らは動揺する。それは、この運動が擁護するすべての証人と考えられていた人々が、いま疑いをもつようになったからである。このような懐疑者は、真の信仰と考えられているものにとって危険であり、したがって通常、2つの方法のどちらかによる処遇を受ける――(1)イデオロギーの責任者は、離反者を否認して退けようとするか、(2) もし全体主義的な性格の信仰集団であれば、彼らは異端者を強制収容所送りか、もっと悪い刑罰に処する。

崩壊していくシオニズム 

この種の――あるイデオロギー運動の伝統的信奉者の数が減ることによる――崩壊は、シオニスト共同体、特にアメリカのユダヤ人の間で、現在進行中のように見える。

シオニズムとは、歴史的なパレスチナの地すべてを支配し、そこに住み着くという、神に与えられたユダヤ人の権利を説き教えるイデオロギー運動である。

1948年のイスラエル建国以来、シオニストたちはまた、“ユダヤ国”は世界のユダヤ民族すべてを代表するもので、したがって、ユダヤ人の自覚をもつ者は、イスラエルにも、その支配的なシオニスト哲学にも、忠誠を尽くさなければならないと主張している。

しかし、過去10年かそこらの間に、その忠誠心は崩れてきている。アメリカでは、主要な米ユダヤ人組織のイデオロギー的に厳しい指導者 (イスラエルを無批判に支持する人たち)の見解や行動と、他方、ごく最近までその指導者たちを代表としていた、ますます疎遠になっていくユダヤ系米人大衆との間に、顕著な分裂が見られるようになった。

この分裂は、Pew研究所調査から、ジューイッシュ・フォーワード紙や、改革ユダヤ主義組織まで、いくつかの情報ソースによって繰り返し記録報告されている。

ジューイッシュ・フォーワード紙が言っているように、この状況の特徴は、普通の米ユダヤ人が「イスラエルに対し、ユダヤ体制派よりも、遥かに批判的」だということである。2013年のピュー研究所の調査では、米ユダヤ人のほとんど半数が、イスラエル政府は、パレスチナ人との平和に達する「誠実な努力」をしていないと考えていた。ほとんど同数が、イスラエルによる「西岸」の植民地化拡大を、非生産的と考えていた。

だからこの分裂は、突然でも新しく起こったことでもない。疑問をもつ米ユダヤ人の数は、ずっと増え続け、シオニストのリーダーシップにとって、事態は悪くなるばかりである。実際、彼らの集会で、AIPAC (米‐イスラエル公共問題委員会)に喝采する人々とほぼ同数の、若い米ユダヤ人が、平和支持の活動家グループに参加している可能性がある。

アメリカにおけるリーダーシップの反応 

上に述べた2つの選択に従って、米ユダヤ人諸組織のリーダーシップの主たる反応は、これら疑問をもつユダヤ人を追放すること、彼らを“知識も、政治意識もない、または間違った考えをもつ者”として、退けることである。

その目的のために、米ユダヤ人の公職者たちは、これを好都合として、こう問いかける――自分たちは「組織的でない、仲間意識のない、ユダヤ人共同体」を本当に代表する必要があるのか?「ユダヤ人の50%は、年に一度もユダヤ教会に足を踏み入れず、ユダヤ共同体センターにも属さず、名前だけのユダヤ人ではないか?」

真の信者を除く全員を追放するこうしたやり方は、「反中傷連盟」(Anti-Defamation League) の国家会長であるAbraham Foxmanの言葉に明瞭に表れている。彼はジューイッシュ・フォーワード紙にこう話した、「ユダヤ体制を代表するのは誰であるかは、おわかりでしょう。関心をもつ者たちですよ。」ここでフォックスマンは、ちょっとした循環思考に陥っている ――重要な構成員は、体制を代表する者たちである。

それはどうしてわかるのか? それは、今もイスラエルに“関心をもつ”者たちである。関心をもつとはどういうことを言うのか? 関心をもつとは、ユダヤ体制とイスラエル政府が彼らに言うことを、どこまでも信ずることである。最後にフォックスマンは更に一歩進んで、ユダヤ人リーダーは、ユダヤ民衆のどんな一部の意見にも耳を傾ける必要はない、と言った。「私は坐って、私の構成員の世論調査をするのでありません。ユダヤ人リーダーシップの一つは、導くことです。我々は導くのです。」時間の経過とともに、彼は、ますます減っていく会員を導くことになりそうである。

イスラエルにおけるリーダーシップの反応 

(中略) 

アメリカでも他の場所でも、ますます増えるユダヤ人から批判されるということは、現在のイスラエルの支配諸機関の責任者には、全く耐えがたいことである。

世俗的・宗教的を問わず、こうした指導者たちは、批判的で懐疑的なユダヤ人を、背教者として抹消し、彼らがユダヤ人であること自体を、否定さえしている。

(中略) 

イスラエルの情報長官 Israel Katz が、(対イスラエル)「不買・権利はく奪・制裁」政策(BDF)のリーダーを、“殺しの標的”にせよと要求しているのを聞くと、事態はさらに恐ろしいものに思えてくる。アメリカでは、そういうリーダーの多くはユダヤ人なのだ。

(中略) 

結論 

(中略) 

シオニズムのリーダーは、Ben Gurion から Netanyahu まで、“より大きなイスラエル”原理に基づいた領土的拡張と、不平等原理に献身してきた。彼らの誰一人として、非ユダヤ人に対する、政治的平等はもちろん、社会的・経済的平等を真剣に考えた者はいなかった。

(中略) 

シオニストのこの追求が、あまりにも執拗だったので、アメリカのユダヤ人の間で、懐疑派がますます増えていき、彼らの大多数は、民主主義の理想を真剣に受け止めている。

(中略) 

我々がこの現状に至るまでに数世代かかった。しかし我々がこうなるのは、ずっと予言できたことだった。これは、シオニズムのイデオロギーが、いかなる妥協をも受け付けず、イスラエルの振舞いが、かつてないほど野蛮になっても、いかなる罪も認めなかったからである。そのために、離反者と批判者がますます増え、イデオロギーの守護者たちは、不安になり、それは復讐心に変わり、更に多くのユダヤ人を遠ざけるだけの、攻撃姿勢を取り始めた。

(ローレンス・デイヴィドソンは、ウエスト・チェスターPA、ウエスト・チェスター大学 の歴史学退任教授。彼の学術研究は、アメリカの中東との外交関係史が中心である。) 

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