[第30回] 地球の鼓動・野草便り
「シャーマンの弟子になった民族植物学者の話」を読んでーその(1)


「シャーマンの弟子になった民族植物学者の話」を読んでーその(1)


薬用植物を探すのは、有効な医薬品が作られ、病気で苦しむ人を救えるのと、インディオに自分たちの知恵を守り残してもらいたいのと、ジャングルが破壊から守られることを願う、地球人として共感する一人の民族植物学者が、未知の世界へ飛び込んでいく冒険物語的な生の情報がいっぱい詰まった上下2巻。それがシャーマンの弟子になった民族植物学者の話』です。

1999年9月30日に発行され、英語版は現在16版を重ね、オランダ、ドイツ、イタリア、スペイン各国でも出版されています。「地球を救う英雄」と評された、著者のプロトキン博士が主演したドキュメンタリー映画「アマゾン」などもあり、ご存知の方も多いのでは?と思いますが、貴重な情報がいっぱいで、私なりに少しでもお伝えできればと思います。


著者が絶対に飲みたくないと言って、後にインディオと交流が深まり、普通に飲んでいたお酒は、インディオの女性が口で噛んで出して発酵させたビール・・・カッサバ・ビール。日本でも昔、アオツヅラフジの実を噛んで壺に貯めて発酵させてお酒を作っていたといいます。

アオツヅラフジ


唾液は分解酵素や抗菌酵素などを豊富に含み、口腔内細菌の出す酸などで歯のミネラルが溶け出すのを防ぐ、ややアルカリ性の洗浄中和作用で中性に保つ働きと、カルシウムイオンやリン酸イオンが飽和状態で存在し、脱灰に対して、再石灰化いう自然治癒力を持っているとか。

ストレスや高齢化、食べ方などで分泌が追いつかないと虫歯や口臭、病気の原因になり、老化を早め、唾液の質と量は健康のバロメーター。リラックスしている時や、よく噛んで食べることで唾液は分泌され、玉ねぎの「ケルセチン」が唾液を増やすことがわかったそうです。

また、唾液が一番の汚れ落としになると聞いたことがあります。汚れた時にすぐに唾をつけて拭き取るというのは、とても理にかなっているのですね。正に唾液がお酒作りに必要な酵素なわけです。

アオツヅラフジ


私はアオツヅラフジの実を噛んだことはないのですが、砂糖漬けにしたことがあります。1年くらい放置しておくと、甘く美味しいお酒になり、まるで◯命酒のようでした。アオツヅラフジは葉茎実を乾燥させて、利尿、消炎、鎮痛薬としてリューマチ、神経痛、関節炎のむくみに用い、強い鎮痛作用があるようです。

南米の熱帯雨林の植物が日本の植物に似ているものが出てきます。 例えばレディロスキという植物は松だろうと思われ、このレディロスキのなれの果ての根株の根元を掘り、化石化した樹脂の塊を掘り出して、燃やすと芳しい松の香りがして、雨の時に火を起こすのに使い、砕いて粉にして飲むと下痢に効くとあります。松の樹脂が化石化したのが宝石の琥珀だから、琥珀を着火剤や下痢止め薬にしているのかも。
日本でも松ヤニは昔から薬にされています。

琥珀を飲むわけにはいかないのですが、以前にもご紹介したように、松葉で充分高い薬効をいただけます。増血、浄血、ボケ、脳卒中、動脈硬化、老化防止、ビタミンA・C、ビタミンK、鉄分、酵素、葉緑素、テルペン精油。仙人、山伏、登山家は松の生葉を噛むと言われます。私達も手軽に松葉を噛むだけでもいいかもしれませんね。

南米スリナムがまだオランダの植民地だった頃、奴隷の黒人クワシという名高い治療師がいて、オランダで自由民になったのですが、治療に役立ったのが南米から持参したクワッシア・アマラと後に名づけられた、霊験あらたかで、熱を下げたり、寄生虫を退治したりするのに使ったどえらく苦い木です。今では強壮剤や食欲増進、消化不良の薬としても珍重され、ギョウ虫退治や、殺虫剤としても使われているのですが、このクワッシアは日本のキハダではないかと思われます。

キハダは優れた苦味健胃整腸剤で食欲消化促進、腸内殺菌効果があり、下痢、打ち身、健胃などの薬になります。

キハダ


山陰地方では昔から「煉り熊(ねりぐま)」というキハダと濃い緑の大きな艶のある低木の葉(名前不明)を煮詰めて板状にして竹の皮に包んだ薬を作っていたそうです。吉野の「陀羅尼助」や木曽の「お百草」といった薬もあります。


南米の熱帯雨林には地球上の植物の4分の1の約6000種もがあるといいます。野生のピーナッツやパイナップルといったよく知っている植物が、南米出身です。薬草の名前は違っても、風邪や喉の痛みにショウガ科の植物がよく使われていたりと、馴染みの深い植物があります。

本の冒頭の話に、次のように紹介されています。

イチョウの木は地球上でもっとも古くからある植物の一種だ。野生のイチョウはすでに絶滅して久しいが、中国や日本の寺院の庭で生き残り、両国では5千年も前から、喘息やアレルギー性の皮膚炎などの薬としてその抽出物が使われていた。今日ではイチョウの成分はヨーロッパ全体で売買され、年間七億ドル以上の収入を生み出している。イチョウの成分は血管を拡張させ、体内の血流を高める為、脳への血液供給がおとろえることによって起こると思われる老人性の疾患などの治療によく使われている。また、喘息の治療にも効果がある。イチョウ成分は体内の血小板活性因子の働きを阻害する。この因子は、気管支を収縮させて、肺への酸素の供給を邪魔するものだ。さらにイチョウはある種の肝臓障害や、中毒性のショック、移植臓器に対する拒絶反応などの治療にも効果があると見込まれている。(※上巻12pより)

また、イチイ属の樹皮や針状葉からとれるタキソルが、がん細胞の分裂だけを阻害するのを国立がんセンターで発見されたが、早くからインディアンたちはさまざまな病の治療に使っていたことなど例にあげ、民族植物学の研究の有用性をこの本の序章として紹介されています。

ポタワトミ族はイチイの葉をすりつぶし、それを患部に直接塗布して性病を治していたし、チッペワ、イロクォイ、メノミネエの各部族では、関節炎やリューマチの痛みを和らげるのに、イチイの枝と葉を煮出し、蒸気浴をしていた。(※上巻13pより)

yasou
自然賛歌

ミヤギノハギとオギ(ススキの仲間)

マタタビ・・・熟すと美味しい



サワギキョウ



タンナトリカブト



タムラソウ・・・棘のないアザミ



シラヒゲソウ


ウメバチソウ

サラシナショウマ




白ソウメンタケ


ホコリタケ・・・中が白いうちは食べられる




■ 参考文献

シャーマンの弟子になった民族植物学者の話 マーク・プロトキン/著、屋代通子/訳 築地書館
イー薬草・ドット・コム
「大地の薬箱 食べる薬草事典」 村上光太郎/著 農文協
「カラダ改善研究所 自然のチカラいただきます」中村臣市郎/監修 西日本新聞社



ライター

ニャンニャン母さんプロフィール

ニャンニャン母さん

プロフィール:1955年魚座生まれ、広島の県北 中山間地域在住、
体癖はおそらく2ー3種

20代の頃「複合汚染」有吉佐和子/著 を読んで、食の環境悪化を考えた時、野草を食べることを思いつき、食料としての野草研究を始める。
全くの素人ながら、健康住宅の設計事務所に入社し、健康住宅を学ぶ。
残された人生と限られた時間について気付かされ、仕事を辞め、自給自足を目指す。
平成22年頃、古民家を借り、Iターン。野草教室を開催。
「古民家カフェ・むす日」「山のくらしえん・わはは」「クリエイティブ・アロマ」等にて野草教室。

現在、野草好きになった87歳の母と、無関心な33歳の長男と猫3匹と暮らしています。

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